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25 【番外編】もう一度あの衝撃を

番外編です。

 ユナは、まるで小さな花の様な穏やかで吹けば飛んでしまう綿毛のような儚さを持っていた。


 それも当たり前だ。

 彼女は異世界よりやって来た神秘の力を持っている聖女なのだから。


 彼女を見ていると何故か湧き上がる愛情と執着心に頭が沸いていたのだと思う。

 轟々と音を立てて、彼女を守らねばと腹の底が唸っていた。愛おしいと思う気持ちよりも、ユナを仇なすものを放っておいてはならないという強い焦燥感があった。


 あれがなんだったのか。病のように体が蝕まれ、水に浸かっているように、どんどん体は動き難くなっていくあの感覚。


 父上や、同じ病にかかっていたダトー、ハウ、ウレックスは『魅了』という魔法だと言った。


 抗うすべもなく、ユナの強い魅了の魔法によって操られていたそうだ。


 長く続いた焦燥と憤怒と曖昧な記憶。

 途切れ途切れの記憶に残る、強烈な甘い囁き。


 今すぐに手に入れなければ。

 彼女を。

 彼女の望むものを。彼女の敵を潰す。潰す。潰ス。


 そんな時、頬に走った衝撃と、肌と肌がぶつかる衝突音。音ほど痛くは無い殴打(おうだ)

 目の前がパチパチと光が弾けて、一瞬だったが霞がかった視界がさぁと開けて色づいた。


 そっと頬に触れると、もう傷はほとんど残っていない。腫れぼったくなっていた頬はすっかり元通りだ。唇の傷も大した事はない。


 あっ!しまった!またトキの事を考えている!

 ブンブンと記憶を追い払うように頭を振る。そうすれば頭を占領していた記憶は散布し、散り散りに頭の端に散っていく。


 いやいや、もう国を出て4日は経っているんだ。

 今までの事よりも、今は先の事を考えなくてはなるまい。良い貿易、国益になる友人、繋がりを確保するのが目的だろうが。しっかりしろ私。


 時間は潤沢にあるようで、実は存外少ない。私が持つ年齢と地位で得られるものは数年後はもう無理かもしれない。


「次に会えるのはいつになるだろうか……」


 聖女トキは放っておくと勝手にどこかにいってしまいそうだ……まるでふわふわと花から花へ移る蝶のようなもので……って、いやいや!いやいやいや!違う違う。なんで私がトキの事を考えているんだ!



 あ、このネックレスは価格も良いし、魔法の付与がついているのか。研究して我が国でも生産できないか調べればきっといいものになるな。この色は、黒い宝石か?



「王子殿下、お気に召されましたか?それはブラックシェルの中から取り出される宝石ですよ」

「ほほう、良い色だ……まるで、トキの髪の様……」


 白い肌に、黒い髪、黒い目、このネックレスならよく似合う……っじゃない!!!!


なんで俺はトキのことばかりっ!!!!


「これをもらおう」


くそ!!!!!






聖女トキのことばかり考えてドキドキしちゃうフロルド王子。SMが国で密かなブームになる日も近い……かも。

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