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02臨時ボーナスですか?貰っておきます


 聖女召喚システムってやつで召喚された30代OLでーすうっすうっす。


 別に世界に絶望もしていないし、今流行りの深夜帯のアニメでよくある異世界転生しちゃいたい願望もないし、ゲームに入り込んじゃいたい願望もないし、そもそも死ぬ予定もないめちゃくちゃ健康体でなんなら最近人間ドック行ったし30過ぎになってようやく仕事も安定して、おうち時間充実、趣味もできる時間が出てきた。最近は引っ越しもできて、料理器具も買い直して、お気に入りの空間を作り上げたところなわけだがしかし。


「この世界に初めに来た聖女が、若過ぎるゆえに上手く力を使えないようなのだ......使える力もまだ開示されぬ。さらにはまだ成人もせぬ子供。こちらの言うことを理解しておられず、自分に得になる力の方がまだ得意な様子なのだ......」

 

 などと証言しており。




「はぁぁぁぁ」


 盛大に吐き出したため息が、目の前の鏡にぶつかって跳ね返ってくる。ふわっと黒く艶のある髪の毛が跳ねて踊った。


 つまり?

 で、私が聖女?

 え? 1人目が若すぎて自分のためにしか力を使わないし要求も多いしわがままで(言っていない)使い物にならない?(言っていない)


 だから私を呼んで? 

 友情育んで一緒に修行しろって?

 で?


 目の前の鏡に映る、多分おおよそ15年前あたりの自分よ、こんにちは。懐かしいね。



 給料は若返り!若返らせてやったんだよーってか。

ふざけんなよ。これが本当の中身は大人ってか!そんなに子供の姿でもないけど......!

 ありがとう若返ったのは嬉しいわ。もらっとくね。でもその自分基準の考え方マジ嫌いだから。

 クライアントの意見大事にしなさいよね!



 はぁ


 おい国王様よ。

 さっさとお家に帰してくれや。






「はぁああぁぁぁ」


「やめてくださいよ」

「うーんうんうんうん。そうねそうよね。仕方ない仕方ないのよ」

「そうですね〜」

「ちょっと、うるさい! 人に言われるとムカつくわ」


 むきーと両手を振り回して抗議すれば、部屋の入り口に控える2人と鏡越しに目が合った。


 あの無表情筋肉とニコニコ魔人のイケメンコンビは私の見張り役である。万が一にも逃げ出さないように見張られていると言うわけだ。チッ。


 


 ロココ調のスイートルームのような部屋を割り振られた私は数日前からこの部屋に滞在している。

 実はこの部屋は、元々は私の部屋ではなく、来客用の部屋らしい。ベッドルームは一つ。リビングは一つ。応接室一つ。ベランダは1人で早朝ヨガできるかな程度の広さが一つ。トイレに洗面所にシャワールームにウォークインクローゼット。わりと良いとこのホテル仕様である。


 聞いて驚け。なんと初めに通された部屋はこの部屋の4倍はあった。

 もうそれは部屋ではない。家や。

 


◇ 



 戸惑いながらも準備をしてくれたであろうメイドのような女の子に「本当にこの部屋でいいのですか......?」と震えながら驚愕されたが、むしろこの部屋の何がダメなんや?としか思えない。日本だったらこの部屋一泊なんぼすると思ってんだ。10万はくだらないだろうよ。


 そんな事を姑よろしくブツクサ言ったが、なーんにも伝わらなかった。無念。

 

 部屋に入ったら、やはりと言うか、だろうな、と言うか。やっぱりホテル同様土足仕様の部屋だった。


「ごめん、ちょっと靴脱いでね」

「え?は、はい……っわ、私は何か気に触る事をしましたでしょうか……申し訳ございません、どうか、どうか足の切断だけは……!」

「……」


 ちょっと怖い、なにその発想。


 拝みながら涙ぐむメイドを横目に、何も言わずに、そっと自分も靴を脱いで扉の隣に敷いてあるマットの上に綺麗に並べてちろりとメイドを見上げた。


「は、はい! 今すぐに!」


 ひぅ、と声を上げると目にも止まらぬ速さで靴を脱ぎ、サッと私と同じ場所に靴を置くメイド。



 いいのよいいのよ、そう言って早速一緒にこの部屋でお茶をした。まぁ、メイドが用意してくれたんですけどね。


 始終メイドのシェリルちゃんはカチコチだったが、話してみるとめちゃくちゃ良い子だった。

 年齢だって15歳と恐ろしく若かった。

 もはや娘じゃん。

 娘くらいの年齢じゃん。

 早くに出産した友人はそれくらいの子供いるぞ。


「なんだか今日の紅茶、いつもと全然違う気がします......不思議……とっても美味しく淹れられたみたいです......あれ?指の怪我が治ってる......」

「うんうん。良かった良かった。すごく美味しいよ」


興味本位で聖女の力とはいかがなものかと、出されたお茶にリラックス効果ありますように、と唱えてみた。心の中で。それだけでも効果はバツグンなようで、しっかりシェリルちゃんの怪我も治したようだ。すごい聖女。



 でも、なんだか。



 すごく疲れる……?



「もしかして聖女様が……!ありがとうございます……!実は少し、怖かったんです。前の聖女様はメイドを嫌っていましたし、ご用意したお部屋もお気に召さなかったようで怒鳴られてしまいました……新しい聖女様は、お優しいのですね」


「いや、全然そんな事ないけど……その前の聖女よりは大人、かな」


 大人?と不思議がられてしまったが、はっ、そうだった。この体、結構若返ってるんだった。

「私、一生懸命お仕えしますね!」

「ありがとう。よろしくね、シェリルちゃん」


 ものすごくクタクタだったが、シェリルちゃんがしっかり靴を履いて部屋を出たのを確認するまでお見送りをした。その後のことは覚えていない。多分シャワー浴びてベッドに入って寝ました。


 そして朝である。


 数日間はこの部屋から出るなよって事らしかった。ついでに見張もついた。


 はぁ。


数ある小説の中から、この小説を読んでくださりありがとうございます。


面白かった、続きが気になる!と思っていただけましたらブックマークなどしていただけると嬉しいです。執筆の励みになります。


楽しんでいただけましたら幸いでございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] しょっぱなから現実世界に帰りたい聖女様で、いい意味で裏切られました(笑) [一言] まさかの子守り役!?そりゃあ聖女様だって怒りますよ~!見知らぬ土地で修行させられるくらいなら自宅でごろご…
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