勇者転生・3
こちらの世界に来て驚いたことはまだある。
どうやらこの世界では異世界に転生したり転移したりするのが流行っているらしい。さてそんなものは気になってくるだろう、私の世界も描かれているのかもしれない。
しかしどれを見ても自分の世界に似たようなものはない。
それどころか、読んでいて胸糞が悪くなってしまった。
と言うのも、どの異世界転生の話も、こちら側の世界の方が有利にできているのだ。
どの世界も文明レベルが著しく低く、どの世界の人間もクズばかりいる。
そんなわけないだろ。
そもそも私たち異世界の住人はこちらの世界と比べ団結力が強い。だから新人には優しいし、一脱して嫌味なやつには皆の力で解決を急ぐ。
なぜだと思う?
魔物がいるからだ。
人類が力を合わせなければ到底倒せない化け物がいる。それだけで人間は進化する。
強敵のいる動物はその動物から身を守るために、生き延びるために進化しなければならない。
だから、普通は異世界に転移したのならばまずその過酷さを知るはずなのだ。
それがない。
てきとうだ。
全ていい加減だ。
よく考えていない。
ああ、イラつく。
なぜこの世界の人間は自分が劣っているとは思わないのだろう。