勇者転移・1
目が覚めると見知らぬ世界にいた。
まず目に入るのは空高く伸びる銀色の建物らしきもの。私の知る丘や山とも違うものだからおそらく建物だろうが、中に人がいるのだろうか。
そして、人。人人人。
溢れんばかりの人。
武大音と音を立て何かが駆け抜けていく。あれはなんだ?魔術の一種か?
人。また人。目。目、目、目。
吐き気。
なんだここは、地獄のようだ。そして、やけに熱い。なんだこの暑さは。全身を舐め回すかのような。気持ちの悪い暑さ。
はっ。
いけない。真っ白になっていた。
思わず暗いところに逃げる。人のいないところへ、目を気にしなくても良いところへ。
逃げ込んだ先はどこかの裏路地だろうか、息を整える。
おかしい。
この世界、明らかに異世界であろうが、走っただけでこんなに疲れるだろうか。
そしてこの吐き気。暑さや人の多さだけじゃない。この空気が、私の体にあっていないのかもしれないと思うほどだ。
しかし、疲れた。マナを回復しよう、そう思い地面に手をつける。
・・・・・・おかしい、まなを感じない。
思わず耳をつける。大地の音を聞こうとするが、反応しない。しかしここの土はやけに固いな、掘れないほどとは、大地が枯れ果てたのだろうか。
探ってみる、そうしていると枯れ果てたわけではないというのがわかった。しっかり土はあった、だがそれを何かが覆っていたのだ、このやけに硬いからで大地からのまなが途切れてしまっている。
なんたることだ、この星のマナを、せっかくの大地を無駄にしている。この星の人間は一体何を考えているのだ!?
ステータス・・・・・・ステータスが出ない!?くそ、この世界には空気中のまながないのか!?それとも理論ができていないからだろうか、魔術構想が不可侵領域に入ってしまったか・・・・・・ならば仕方ない。
とりあえず暑いな!鎧は脱ごう。あの暴走する馬車のようなものはここらへんにはいない、人もいない、大丈夫だろう。
アイテムポケットを取り出す。中身は・・・・・・よし!こちらの世界にも四次元は存在している!ありがたい、ならば無限に入れられるというもの。
とりあえず鎧を袋に入れ、私はこれからどうしようか悩むのだった。