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第四話:『展望』

招かれた部屋は落ち着いた雰囲気だった

これで『ギルドマスター』と書いた札が外に記されていなければ

落ち着いて珈琲の一つでも嗜みたかった物だ。


「パルよ、今一度聞いておくが

 あの閃光は『炎玉(ファイアボール)』で違いないな?」


「勿論です、僕はそれぐらいしかその…魔術は分かってなくて……」


デリアスは顎に手を当てて思案していた。


「ふむ…貴殿はアルテの事を知っているか?」

「いえ、ずっと仕事に明け暮れていて世情には疎く……」


「彼女はこの国でも最上の位を持つ魔術師の一人


 『最後の要塞(ラストフォートレス)』の…」

「ヴェクライト・アルテです、パル君」


流石に自己紹介は自ら行いたかったのか、アルテは声を上げた。


「『最後の要塞』……あのアマ荒野決戦の…?」

「良かった!!知ってました…!」

「えっと、新聞で…」


それなら自身の事も知っていてほしいと思ったデリアスだったが

その思いは心に仕舞い込んで言葉を続けた。


「貴殿は史上初の『最後の要塞』を打ち破った男という事だ

 過去の大戦で確認されたあらゆる決戦術式を『炎玉』で上回ったという事になる

 余りにも現実離れしている故に聞きたいのだ、どうやってあれを撃ったか」


デリアスは語気を強めて伝えたからか、アルは震えた

しかし押されるのは慣れてる為か言葉がスラスラ紡がれた。


「僕のアレは、『並行運用(マルチタスク)』で『炎玉』を同時に撃った魔術で

 一気にやれば少しは強くなる、そういう意図でした…」

「余り激しく言いたくは無いが、一般的な基礎魔術は例え同時に放っても

 魔道障壁どころか試験用の的すら破壊出来ないぞ」


パルは困ったような顔で冷や汗を流していたが、絞り出すように言った。


「一応その…()()()()程一気に撃ったから、かも…?」


「………………()()?」


デリアスの雰囲気が砕けた、余りに予想外の返答であった。


「えっと、僕は最大で十万個魔法を並行運用出来て、えーっと……だから多分

 そんだけ重ねたらこう、いい感じに…えっと、えっと…」

「パル君、落ち着いて、私は信じてますので」


アルテが見かねて声をかけている横で、デリアスは腕を組んでさらに深く思案していた

そこにノック音が響いた。


「マスター、マリです」

()()は持ってきたか?」

「勿論です」


マリが抱えていたのは大きな板だった。


「これは『戦術評価項盤(タクティカルシーカー)』という大層な名前の道具だが…

 言ってしまえば使用した者の情報を表示する道具だ」

「著名な人の実力を精査したり、捕虜から情報を引き出すことにも使える物です

 そうそう表には持ち出されません」


「先に私が使って見せます、内密に頼みますよ?」


そういってアルテが板を持ち魔力を通して見せた


「…どうぞ」

「あ、はい」


板には文字が浮かび上がっていた

――――――――――――――――――――

[名称]ヴェクライト・アルテ

[称号]最後の要塞(ラストフォートレス)


[資質]体力:C-

   精神:A+

   知性:SS

   魔力:SSS+


[魔術]『魔導城塞(マナフォートレス)』Class:EX

    初~最上級砲撃魔術

    etc…

――――――――――――――――――――


「おお…すごいことが書いてるのは分かります」

「どうもありがとうございます

 パル君もどうぞ使って下さい」


パルはその板に魔力を通し直すと新たに文面が浮かび上がった

――――――――――――――――――――

[名称]アロン・パル

[称号]元ガイアバトラーズ所属データバンク


[資質]体力:B-

   精神:E+

   知性:S+

   魔力:EX++


[魔術]『並行運用(マルチタスク)』 Class:EX

緊急思考展開(アルテマ・インシンク)』 Class:?

    管理魔術

    etc…

――――――――――――――――――――


「…え?」


その結果を見て一番驚いたのはパル自身だった


「EX++か、逸材だな」

「普通ならC-が良い所の並行運用をEXに引き上げているのは

 先程の証言の証拠になりますね」

「パル君、これでデータバンクをしていたのですか…!」


三人は興味深そうにそれを読み込んでいて、パルは既に置いてきぼりだった。


「…パル君、驚いているのは分かりますが、貴方自身の才能は

 至高の領域です、一体どうやってここまでのモノを持ちながら

 データバンク(非戦闘員)に従事していたのですか?」


「と、いうかどうしてデータバンクを辞める事になったのかも気がかりです

 まさか『ガイアバトラーズ』に貴方以上のデータバンクがいたなんて事はないでしょうに…」


「待て二人共、彼が困っているぞ」


デリアスの言葉で二人はハッとした、パルは既にショートしていた為である。


「すいません…ちょっと紅茶でも淹れますね」

「私も熱くなり過ぎました、すいませんパル君」


「ふむ…一般的なデータバンクと言えば、ギルドにおいては運用履歴や任務記録

 団員の情報など幾つもの情報を扱う仕事だ、例え『ガイアバトラーズ』でも

 健全に運用している限りは足りなくなるとしても、クビにする余裕はあるまい」



「そうなんですか?ウチは僕一人だけでやってましたから…」

「…は?」


声が漏れたのはマリであった。


「『ガイアバトラーズ』はA級かつギルドシティである『ガイア街』もあります

 一人で扱えるような情報量でじゃありません、最低でも熟練のデータバンクが30人は要ります

 いくら何でも一人、は…」

「十万個、と言っていたからな、それだけあるのならば納得できる」


「あはは…えっと、それでも足りないことはあったんですけどね」

「ふむ、ならばどうしていたのだ…?」


パルはもう一度板を構えて見せた。


「すごい名前付いてて恥ずかしいんですけど、その…

 この『緊急思考展開(アルテマ・インシンク)』っていうやつで凌いでました」


「聞き覚えのない魔術ですね、どういうものです?」


「『並行運用』とのセットで使うんですが、スロットにこれを入れると

 事実上もう一つ自分の思考が増えるんです

 その分疲れちゃうんですけど…」


「…つまり十万をもう一つ増やせると?」

「えっと、理論上はいくらでも、です

 最大で百万にすれば間に合ってはいたんですけどね」


「成程、把握した 貴殿の事は一旦伏せたいと思う」

「マスター、把握できたのですか!?」

「彼が噓を付いてるようには思わん、それに真偽はすぐわかるだろう?

 ここにある彼が送った報告書や人事書を確かめれば良い」

「了解です、念の為こちらで確認してきます」


そういってマリは部屋を出ていった。


「さて、続きだが貴殿の事はアルテに預かってもらう

 基本的には一人でやるものだが、此度に関しては

 特例としてアルテの下で先に色々知ってもらう」


「実際この実力で野放しは色々問題が出そうですしね

 元が非戦闘員だとわからないことも多いでしょう」


アルテがこちらに手を伸ばしてくる

恐らく握手を求めているのだろう。


「えっと、その、よろしくお願いします…」

「はい、では改めて『最後の要塞(ラストフォートレス)』のヴェクライト・アルテです」

「アロン・パル、です、はい」


どうなるかはわからないけれど、新しいことが始まるような、そんな気がした。



ざまぁは次になりそう



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此度の作品の精進の為にもお願いします。

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