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流刑の覇王  作者: 卯月よひら
第二章 賢王リアムの話
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1話 昔話ひかりのおう

 やあ!みんなお待たせ。真夏の日本はとても暑いね!水分補給しながらお話聴いてね!


 みんな、ボクの名前を覚えているかな?名前を言ってみよう。


 せーの!


 マリモヘッド!!


 って、違うから!某海賊マンガに出てくる刀くわえている人じゃないから!確かにボクの髪は緑だけどさ!


 思ったんだけど、あの人って顎も強いけど歯と歯茎も強いよね。刀って結構重いんでしょう?


 戦いで刀にかなりの衝撃が加わるから、顎関節症(がくかんせつしょう)になりそうだよね。



 ってそんなことより、みんなボクの名前を覚えてないの?酷いな。もう一度言ってみようか?


 せーの!…見事にバラバラだね。


 アニバルは前のお話の主人公だから、ボクの名前じゃないし。ブルーノってよく覚えているね。誰だっけって、言っておいて覚えてないんかい!


 おっとキャラが変わってしまった、いけないいけない。うたのおにいさん系を目指していたのに。


 え?その格好からして、うたのおにいさんじゃないって?


 おっほん。改めて自己紹介するよ。


 ストーリーテラーのテラだよ!


 みんな覚えてね!



 今度のお話の主人公はリアムという男の人だよ。


 ハイドランジア大陸の南にあるアナベル地方が舞台で、アニバルのいたエルスター地方とは真逆のとても暑い場所なんだ。


 南に行くほど地球の赤道直下のような暑さになるよ。


 この時代には交通網が発達して、やっとエルスター地方の人でもバナナが食べられるようになったんだ。これでバナナ実験できるね!


 え、何の話って?


 あ、キミ途中参加組ね。わからない話をしてごめん!


 ここからの話でも十分楽しんでもらえると思うから、聴いていってよ。


 さてさて、リアムという人は現代、ハイドランジア暦二九九九年に生まれたよ。アニバルとは違って、はっきり生まれた年はわかっていたよ。


 お父さんのお仕事は傭兵だったんだけど、リアムが生まれた年に戦争で亡くなってしまったんだ。


 お母さんという人もお父さんの後を追うように亡くなってしまって、リアムは一歳になるころには天涯孤独の身となったんだ。


 リアムはお母さんの遠い親戚に預けられたんだけど、肩身の狭い思いしていたみたいなんだ。


 そんな彼が後に王様となって、賢王と呼ばれるまでのお話をするよ。



 それでは、賢王リアムのお話のはじまり、はじまり!!



 中央(ケントルム)の南の端からアナベル地方の真ん中辺りに位置するところに、ランバート王国という国があるよ。その国のプラットという貧しい村があったんだ。


 そこで、何やら子どもたちが輪になって、おじいさんを囲んでいたよ。



「今日は何のお話を聞きたいかな?」


 おじいさんが子どもたちに聞いたよ。


 どうやらおじいさんは、ボクみたいにお話をする人みたいだよ。

 

 この時代に子どもたちに昔話や紙芝居をしてくれる人はぐっと減って、地方でしか見られなくなったよ。


 キミたちも学校やイベント以外で、近所の人から昔話を聞く機会あったかな?


 若い人たちはあんまりなかったって聞いているよ。


 ここは子どもが集まって、お話を聞くことが普通に行われていたんだ。


「ランバートの英雄のお話がいい!」


「統一王マニュスのお話がいい!」


「わたしはわたしは」


「ぼくはぼくは」


 子どもたちがハイハイと手を挙げてる中、少し離れた木の陰にポツンといる十歳の少年がいたよ。


 金色の美しい髪はボサボサで、服も穴がところどころ開いていたよ。


 この国の人たちは小麦色の肌に黒い髪をしていたから、少年が目立っていたんだ。


 おじいさんは少年を見つけて、微笑んでからお話を決めたよ。


「では、『ひかりのおう』にしようかな」


「え~この前聞いたよ!別のがいい」


 女の子が言うと別の子が、そのお話聞いたことないって言ったから決まったよ。


 おじいさんはゆっくりと優しい声で話し始めたんだ。


「むかしむかし。レナータ地方で光の王と呼ばれる人がいました。

 その王様のは千年に一度、たくさんの人が苦しんでいるときにだけ現れるそうです。

 ある年、たくさんの人が死んだ病気がありました。それは人から人へ移る病気でした。

 人々を助けたいと一人の若いお医者様が、エルスター地方に光の王が現れたと聞いて、会いにいこうとしました。その光の王は聖なる水で枯れた大地を潤し、病をも治しました。それにとても強くて悪い人たちをこらしめて、平和にしてくれました。

 お医者様は病人たちにすぐに戻るから頑張ってくれと、後ろ髪を引かれる思いでふるさとのレナータを離れました。

 光の王は災害からエルスターの人々を助けて、人々にとても大切にされていました。よそ者のお医者様はエルスターの人たちに頼んでも、なかなか光の王に会わせてくれませんでした。


 せっかくここまできたのに!


 お医者様はふるさとの人たちを助けられないと悲しくなりました。雪も降ってきてとても寒くなったので、みじめに思いました。

 お医者様が泣きそうになっていると、ぶあつい雲が消えて日が差したと思ったら、まぶしい強い光に包まれました。


『わたしを呼んだのはあなたですか?』


 目を開けるとさっきまで誰もいなかったのに、一人の男の人が立っていました。お医者様は光の王だとすぐにわかりました。

『光の王様。どうかわたしに力をかしてください。たくさんの人が病に倒れているのです』

 話を聞いた光の王は、お医者様に知恵と治癒魔法を与えました。

『その病は一人だけでは治せません。レナータの人たちがみんなで協力しないとみんな病気になってしまう。それを忘れないで』

 お医者様はとても感謝しました。

『あなたのことをレナータの民に伝えましょう』

『わたしのことよりも、あなたは病気の人を助けなさい』

『わかりました。また会えますか?』

 光の王は空を見上げてから、こう言いました。

『そろそろ天の国(シエル)に帰らなくてはなりません。

 千年後にふたたびこの世界に生まれるでしょう。どうかわたしが言ったことを忘れないで、たくさんの人たちを救ってください』

 光の王は消えてしまいました。

 お医者様は急いでレナータに戻り、光の王から教わったことをみんなに教えて治療をしました。こうしてレナータの人々は救われたました。


 このときお医者様が光の王から教わった中の一つに、手洗いが大切だということがありました。

 みんなもごはんを食べる前に手を洗おうね」


 はーいと元気よくみんなお返事をしたよ。


 日も傾いて子どもたちはおうちに帰っていったよ。


 おじいさんは木の椅子に座ったまま、子どもたちを見送ったよ。


 子どもたちが誰一人いなくなると、木の陰にいた少年がおじいさんのところにやってきたんだ。


「マロおじいちゃん。ひかりのおうはいるの?」


 お話をしていたおじいさんはマロという名前だよ。マロおじいさんは笑って少年の頭を撫でたよ。


「この時代に現れたという話は聞いていない。でも今から千年前に現れたというから、そろそろ生まれるのかもしれないね」


 少年は手を胸の高さで握って、目を輝かせたよ。


「レナータに行けば会えるのかな?」


「さあ、どうだろう。エルスターにも現れたというからもしかしたら、アナベルにも現れるかもしれない。でもギムペルかもしれない」


 握っていた少年の手がだんだん下がって、しょんぼりしていたよ。


「おれ…。おかねないから、とおくにいくのは、むりだ」


「いい子にしていれば会えるさ。もし現れなくても、お前が光の王になればいい。光りというのは希望という意味だとわしは思う。貧しくても人々の希望になることはできるんだ。諦めてはだめだよ、リアム」


 少年リアムは、マロおじいさんに励まされても元気になれなかったんだ。


「むりだよ。おれはいらない子だもん」


「リアム!」


 リアムはパッと走って行ってしまったよ。


 薄暗くなりはじめて、一軒のおうちの前に立ったよ。とても入りたくなかったけれど、お腹がすいてたからドアを開けたんだ。


「遅いじゃないの!畑に水を撒いたのかい?えぇ?水撒いたら掃除しろって言ったの忘れたのかい!」


 リアムの養母・スザンヌが顔を見て早々、甲高い声でガミガミ言ってきたよ。


「ママン、リアムがマロじいさんのところにいたのを見たよ」


 一人息子のダヴィドがチクったよ。スザンヌは怒ってリアムに外にいろと言ったんだ。


 玄関のところで待っているとスザンヌがスープを持ってきて、地面にびしゃっとぶちまけたよ。


「食わせてやってるんだから、言われたことをちゃんとするんだよ!じゃないと追い出すからね。

 食べたら綺麗に掃除するんだ」


 言い残してバタンとドアを閉めたんだ。


 リアムは落ちた具を拾って水魔法で洗って食べたよ。スザンヌが機嫌が悪いと決まって外に追い出されて、ごはんはお皿に入れたのを出してくれないんだ。


「犬がいるぞ、リアム犬。スープが残ってるぞ。地面をなめろよ」


 窓からダヴィドが顔を出して、馬鹿にしていたよ。リアムとは年が一つしか違わないのに、彼の方が背が高くて身体ががっしりしていたんだ。


 リアムは黙々と地面に落ちているごはんを食べていたよ。朝ごはんがないってことがあるからね。


 家の中からスザンヌと養父・ナトンの声が聞こえてきたよ。


「あののろまを捨てようかしら」


「あいつがいなくなると水を遠くから引かなくてはならなくなる。役所に頼んでも畑の方まで水道を通してくれないしな。

 それにまた値切られた」


「また?赤字なのに?どうすればいいのよ…」


「俺らは飲むしかないって、みんな言っている。あとは帝国に子どもを差し出すかだ」


「帝国は魔法を使える子どもを集めているんでしょう?いくらかもらえると聞いたわ。リアムは?あの子は水魔法使えるわ」


「畑の水はどうする?」


 ああとスザンヌはため息をついたよ。


 養父母とその親戚はコーヒー豆の農家だったよ。帝国っていうところに安く叩かれているみたいだね。


「帝国って悪いやつらだろう?ランバートと昔戦争したって聞いた!」


「あら、よく知ってるわね。さすがダヴィドだわ。悪い人たちばかりで私たちが貧しいのは帝国のせいなのよ」


 スザンヌはずっと悪口を言っていたよ。でもリアムと話すときとはまったく違うし、優しい声だよ。


「ママン、テレビ観ていい?」


「節約しくちゃいけないから、三十分だけよ」


「もう少し観たいよ~」


「ごめんなさいね。我慢してちょうだい」


 人の声や音が家の中から、聞こえてきたよ。アニバルの時代にはなかったけれど、テレビが開発されていて、ブラウン管テレビのような箱の形をしていたよ。


 リアムには観せてくれなくて、いつも音だけ聞こえるからラジオだと思っていたようだよ。


 リアムは人恋しくて寝床の物置に行くのは嫌で窓の下にいたけれども、養父母家族の笑い声が聞こえてきて、なんだかもっと寂しくなったんだ。


 たまらなくなって、道路に出て走ったよ。


 街灯がポツン、ポツンとしかない暗い道を走り、最後の街灯を過ぎるとそこは舗装されていない、でこぼこした土の道だったよ。


 幽霊屋敷のような暗くておんぼろのおうちのチャイムを押したよ。壊れているのか、鳴った気配はなくて、リアムはドアを叩いたよ。


「おじちゃん。エドおじちゃんいる?」


 中から椅子を引く音が聞こえて、ドアが開いたよ。


「どうしたんだ、リアム?帰らないと怒られるぞ?」


 エドおじさんという人は金髪混じりの茶髪色の髪をしていたから、この辺りの人の出身ではなかったんだ。


 リアムのお父さんとお母さんの知り合いで、ランバートの首都の出身らしいけれど、詳しいことを話してはくれなかったんだ。


 子どもの世話をしたことがなくて、自分では育てられないと幼いリアムを養父母に預けた人だよ。


「なにをしてもおこられるから、べつにいいよ。おじちゃん、とまっていい?」


 エドおじさんはとても困った顔をしたよ。


「俺といたら、お前まで嫌なこといわれるぞ?」


「もういわれてるからいいよ。なんで、いっしょにすんじゃだめなの?」


 エドおじさんは家の中を見渡したよ。


 壁紙もところどころ剥がれていて、床板も割れているところもあったよ。


「金がないんだ。自分の飯を食うので精一杯だ。悪いが」


「そう…」


 リアムはトボトボと、もと来た道を戻るよ。


 どこにいても邪魔者なんだ。


 リアムは幼少の時から感じていたそうだよ。


 エドおじさんは村でリアムに優しくしてくれる数少ない人だけれども、とても不器用で畑の作物はすぐ枯らすし、ごはんもまともに作れないそうだよ。


 だからリアムの分もなくて、毎日食べるのが大変らしいんだ。


 スザンヌがしていた噂話によると、貴族だったのが悪いことをして、王都から追い出されて、ここまで来るのにお金を使い果たしちゃったらしいんだ。


 リアムはエドおじさんにお金がないのは自分を預ける人を探すためだったんだと、負い目を感じてたそうだよ。


「きっとひかりのおうがやってきて、おれをたすけてくれる」


 リアムは自分を励まして、寂しい思いを抱えたまま、クモの巣が張る汚い物置で眠ったよ。


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