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流刑の覇王  作者: 卯月よひら
第一章 三王の話
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83話 水神王アニバルの話40

 レイナルドには退出してもらって、デスペハードだけの会議になったよ。


 アニバルはレイナルドと一緒に退出しようと思って立ち上がろうとしたところを、フェデリコにまだですと怒られてしまったよ。


 フェデリコは期待するようにアニバルを見ているよ。


「なんだよ」


「他にもカランバノスの動きを想定されているのでしょう?何か策はございますか?」


「ナニモワカリマセン」


 アニバルが話さないなら、エクトル攻めに来たよ。エクトルはアニバルをチラリと見たよ。


「話されていいのでは?」


「えー。俺はただの王だし?皇帝陛下の方が物知りだし?頭いいし?」


 情報集めて対策を考えているのに何で言わないんだろうね。


 フェデリコも色々考えているけれど、アニバルが言うとさすが陛下ですとその通りにしてしまうのがアニバルは嫌みたい。


 始祖は神。神の発言は正しい。


 さすがにフェデリコはそこまで考えてはいないけれど、一部の高官はそう思っているから、アニバルは公的な場での発言は控えていたよ。


 アニバルが話そうとしないから、仕方なくフェデリコは会議を進めたよ。


 国境沿いに増兵という話になったけれど、ディオスパハロの増兵の話はでなかったよ。


「兵を雇いたいんだが、そういう法はなかったよな?」


 正規兵は試験を受けたデスペハード帝国民がなれるのが決まりだよ。


「陛下が氷の鳥(パハロ・デ・イエロ)の攻撃に巻き込まれたときに助けたという、カランバノスの傭兵のことですか?」


 一言もフアンのことをフェデリコに話していないのに、もう知っているよ。


「さっき俺が話した戦争の報告いらなかったんじゃないか?」


「いえ!陛下のお言葉で、どう感じられたのか直接聞きたかったのです!」


「はいはい。そのカランバノスの傭兵を雇うためではないんだ。傭兵制度は面白そうだなと思っただけだ。

 今回ヴァリエンテの騎馬隊がとてもいい働きをしてくれた。魔力砲を持たせた有効性を実証してくれたわけだ。ヴァリエンテ国は我が国が守らなくても自衛できるようになるだろう。

 そこでだ。今回の戦いはヴァリエンテ国には費用をこちらから出してはいない。これからは雇うことにし、魔力砲は無償で貸し出ししてきたが、購入または有料で貸し出す」


「それではこちらの費用がかかるのでは?もしカランバノスなど我が国と敵対する国に味方したらどうするのです?」


 フェデリコの心配はもっともで、デスペハードとヴァリエンテが友好関係にあるからできる話だよ。


「そうなったら魔力砲を取り上げる。関係が破綻しないようにこちらも努力すべきだ。一方的な関係は軋轢(あつれき)しか生まない」


 不満を募らせたヴァリエンテがデスペハードへ侵攻したこともあったしね。


 魔力砲の管理としては他国へ流出するのを防ぐために、定期的にヴァリエンテへ魔力砲の数と点検をしていたよ。


 ヴァリエンテとしてはうっとうしいみたいで、点検の回数を減らしてほしいと王様からアニバルは言われていたよ。


 小言はフェデリコには言いにくいけど、アニバルには言いやすいらしいよ。


 ヴァリエンテには魔力砲を作る技術も魔法が使える人はあまりないから、どうしてもデスペハードに最新式のものを買ったり、点検をお願いするしかないよ。


 だから兵を雇ったとしても、魔力砲を使う限りヴァリエンテはデスペハードにお金を払い続けるわけ。


 試しにやってみようということで、傭兵制度の法律作りが始まったよ。


 アニバルがヴァリエンテの傭兵について考えたんだ、すごいって思うかもしれないけれど、実は仲良くなった商人に相談したよ。


 その商人さんはエスコンディド村の建物の建材等の手配をしてくれた人だったんだ。


 デスペハード以外の国でも商売をしたことがあって、中央(ケントルム)教にも理解があるよ。


 村の再建はまた後で話すね。


 商人さんはアニバルに一つ忠告したよ。


 カランバノスは貿易国家。他国で買ったモノをまた他国に売るってこともしていたよ。


 シエルボで買ったモノが実はカランバノス経由だったということもあるんだ。


「戦争となれば品の値をあげたり、止める可能性がありますよ」


 つまり、デスペハードが他国で買っているモノをカランバノスが絡んでたら、カランバノスが売らなくなるってことだよ。


 商人さんいわく、レナータの国と戦争したときに鉄などの武器になる原材料や製品そのものを各国に働きかけて、敵国にモノが入らないようにしたんだ。


 フェデリコもその話を聞いていたらしく、魔力砲などの武器の材料の買い占めを始めていたよ。


「まあ、急ぐことはないぜ。魔力砲を研究されればわかることだが、買い占めしてわざわざ材料はこれを使っているって教えなくていいさ」


 東にある鉄の生産国はデスペハードに味方すると表明してくれたよ。


 アニバルの活躍にみんなが期待していたんだけれど、次の会議をすっぽかしたよ。


 面倒なのはわかるけどね。




 そういえば、イメルダさんのことだけど、彼女の意志を確認したら、やっぱり家族のことが気になるから帰りたいと言っていたんだ。


 アニバルは家族も移住したらどうだとかいうけれど、休戦といっても戦争中なわけで、敵国に移動するのは危険だよ。


 留めても仕方ないから、イメルダを帰すことにしたよ。


「もしその気ならいつでも来い」


 仲良くなった商人さんがカランバノスの近くまで行くというから、イメルダも連れていってもらったよ。


 ヘッサニアはイメルダを妹のように可愛がっていたから、とても残念に思っていたよ。イメルダもヘッサニアを姉さんと呼んで慕っていたんだ。


「姉さんが陛下を叱っているのを見て、なんだかすごい国に来たと思いましたよ」


 ヘッサニアはデスペハードのことをどう思うかって聞いたら、イメルダがそんなことを言っていたよ。


「陛下はいい人なのよ」


 王様をそんな言い方でいいのかな?


 イメルダが帰るころに商人さんの言う通り、カランバノスがデスペハードへ輸出または流れているモノを止めるまたは税金をかけて高くし始めたよ。


 デスペハードは困ったモノもあるけれど、入手ルートを変えて頑張っていたよ。


 商人さんいわく、少しの辛抱だって。


 アニバルは何でかなって思ったけれど、少し経ってその意味がわかったよ。


 カランバノスからモノを買って、デスペハードへ売っていた人たちの商売がなくなってしまったんだ。


 貿易国家カランバノスとしては、商人を敵に回したくないよ。彼らがたくさん稼いで税金を納めてくれるから、国は豊かになったんだ。


 もちろん、お仕事がなくなった人もいれば、別のお仕事ができてお金持ちになった人もいるよ。


 デスペハードとカランバノスはお互いにライバルだったけれども、交易もしていたんだ。


 だからカランバノスのモノの封鎖は商人や商人と繋がりが強い貴族の反感を買ったよ。


 長くは持たないで一ヶ月で封鎖はとけてしまったんだ。


 カランバノスが挙兵した知らせはアニバルの元に届いたけれど、フェデリコたちからお留守番を言いつけれて、王宮にこもっていたよ。


 アニバルはやることがないから、魔法陣や魔法具の研究をしていたよ。


 魔力砲の研究を今まででやっていたけれど、試し撃ちは動かない的ばかりで狩りのように動物や魔物を狙えないからだんだんつまらなくなったよ。


「なあ、ヘラルド。あったらいいなっていう魔法具はないか?」


 ガルシア領主のお屋敷に行ったときに、ヘラルドもいて久しぶりに話したよ。


 ヘラルドは成長するにつれて、幼さがなくなり、真面目くさった顔は神経質そうに見えるよ。


「そうですね。いちいち本で調べるのが面倒なので、聞いたら内容を教えてくれる魔法具とか」


「フィデルが似たようなことを言っていたが、お前が言うのと全然印象が違うのはなんでだろうか。でもそれ面白いかもな」


 アニバルは色々調べてみたけれども、録音や収納できる魔法具はないよ。


「ちょっと難しいかもしれないな…」


「そこまで欲しいと思わないので、大丈夫です!」


「そうか?悔しいじゃないか」


 アニバルは頑張って研究したけれども、なかなか成果がでなかったよ。


 フェデリコのお使いの人が開発室に来て、アニバルは研究の邪魔されてちょっと嫌そうな顔をしながらついていったよ。


「陛下。戦地から朗報が届きました。カランバノスを撃破し、降参した将軍を捕虜にしました」


 アニバルは戦地?とすっかりカランバノスと戦争していたのを忘れてたいたよ。


 兵士が戦地から戻ってくると、祝賀パレードをやることになったんだ。


 嫌がるアニバルをフェデリコが無理矢理連れてきて、屋根のない馬車に乗せたよ。


 帝都メインストリートにはたくさんの国民がいて、一目アニバルを見ようと押し掛けていたよ。


「始祖万歳!皇帝陛下万歳!」


 みんな笑顔で手を振ったり、花びらを撒いていたよ。アニバルの足元にも花びらが落ちてきて、よくよく見ると色がついた紙だったよ。


 秋も深まり鮮やかな花はあまり咲いていないんだ。


 子どもたちが二階から色紙(いろがみ)の花をばらまいていたよ。


 アニバルは馬車の中に落ちてきた花を一つ手に取って、胸ポケットに挿してから民衆に手を振ったよ。


 歓声が響き、人々は笑顔だったんだ。


「デスペハードに栄光と繁栄を!」


 この時代は都市国家はほぼ消滅し、カランバノスのように植民地を作り、国をいかに大きくし富を得るかということに権力者たちは夢中になっていったんだ。


 その風潮にデスペハードも例外ではなく、カランバノスを手に入れようとフェデリコたちも考えていたんだ。


 カランバノス侵攻の機運が高まると、フェデリコと宰相がアニバルに助言を求めてきたよ。


「お前たちの望みに俺は口を出さない。ただレナータのルークススペースが滅亡した原因として、国が大きくなりすぎたことで、端々まで監視が行き届かなくなった。

 それ故、敵対する者たちの把握も難しくなった」


 グランデフィウーメは警戒していたけれど、神使たちの反ルド派が多かったことにルドは驚きがあったんだ。


「ではカランバノスをどうせよと?」


 フェデリコが聞いたよ。


「我々には東の海がある。東の諸国が安定すれば、多くの資源が我が国に流れ込むだろう。

 カランバノスが動いたら対処すればいい」


 そのカランバノスは兵ではなく、親書を送ってきてデスペハードの出方をうかがってきたよ。


 カランバノスとの武力の戦いはアニバルが行ったシエルボの戦いと、二回目のカランバノスで行われたカランバノスの戦いだけだったんだ。


 あとはモノや人の流れを止める経済封鎖や駆け引きが主だったよ。


 本音なんて言わずにフェデリコはあしらうように親書を返したけれど、親書にはアニバル宛のものがあったんだ。


 カランバノスもアニバルという人がわからなかったよ。


 皇帝の下についているけれど、皇帝が言いなりだと聞いたようで、アニバルにも親書を送ったみたいだね。


 アニバルは純粋に国を大きくするのはどうしてと聞いてみたんだ。カランバノスの王様はアニバルは腰抜けと判断したようだね。


 大きくするメリットを上から目線で、つらつらと書いてきたよ。


「カランバノスの王は調子に乗ってるらしいな」

 

 下に見られて怒ってはないけど、この態度には苦笑していたよ。


 フェデリコやエクトルは怒っていてアニバルを侮辱した報復をすると騒いでいるときに、妙なお客さんが来たよ。


 それはレナータで中央(ケントルム)教の聖神使のお使いという人だったんだ。


 ルドの時代は聖神使は各地にいて、ルークススペース帝国になった際にエジリオ一人になったといういきさつがあったよ。


 アニバルもその感覚でいたから、どこの国のと聞いたらハイドランジア全土の聖神使だっていうんだ。


 ルドの時代は聖神使は信者の味方であり、政治から距離を取るような風潮があったのを覚えているかな?


 エジリオが皇帝であったルドととても近い距離にいた前例があったから、この後レナータの聖神使たちは権力者にとても近い存在になったよ。


 感染症の流行で一時は、神々に尽くす神使さえも感染して死ぬということで、宗教も神使も地位は下がったよ。でもレナータの戦国時代に宗教は盛り上がっていったんだ。


 病で、戦争で。死はありふれたもので、人の寿命はとても短くなった。もっと生きたい。天国という人生の続きがあるとみんな信じたんだ。


 次第に聖神使の権力は強まり、時には宗教心を巧みに操り、言うことを聞かない権力者には破門ね~と言って脅したよ。


 破門になれば神々から見放され、加護を失い、天国に行けなくなるよ。


 とある国の王様が聖神使が認めていない宗派に傾倒しそうになったときに、やめなさいと言ったのに王様がやめなかったんだ。


 聖神使が破門ですと言ったら、王様は顔を真っ青にして、聖神使のいる教会の前で三日三晩平伏して取り消すように求めたという事件もあったよ。


 その時代よりは多少権力は弱くはなっていたけれど、影響力絶大なレナータの聖神使様のお使いが来たんだ。


 なんで今なんだろうね。


 アニバルやフェデリコが急いで調べさせたよ。


 どうやらカランバノスが、神々を信じていない異教徒の国であるデスペハードが、勢力を増していて神々を信じる国を侵略しようとしていると告げ口したみたいなんだ。


 一国では勝てないから、レナータの国を利用してデスペハードを潰そうとしたみたいなんだ。


 ちょっとズル賢いね。


 レナータと聞いてアニバルはほろ苦い思いをしていたよ。


 デスペハードで頑張ろうと思っていたのに、ルドの故郷への思いが嫌でも思い出してしまうんだ。


 フェデリコが配慮したのかアニバルと使者が会わないようにしたみたいで、謁見時に大臣、将軍クラスが揃っているのにアニバルだけ声がかからなかなったんだ。


 アニバルは仲間外れにされたって不貞腐れず、謁見の日時も知っていたよ。


 だから謁見をコソっと隠れて見ていたよ。


 長いご挨拶のあと、短いフェデリコの労いの言葉が終わると使者は聖神使の手紙を読み始めたよ。


 要約すると、戦争はやめて皇帝や貴族が改宗して中央(ケントルム)教になり、神々の教えの通り国を作りなさいとことだよ。


 案の定、デスペハード側は侮蔑の色が浮かんでいたよ。


中央(ケントルム)教の神々は、千年前のレナータの干ばつや疫病から人々を救わなかった。

 救ったのは我らの始祖である。始祖は転生されてこの世におられる。だが神々は、天地を創造したとき以来この地に姿を現していないというではないか。

 本当はいないからではないから、姿を現さないのではないか?」


 宰相がいうと使者たちは怒ったよ。使者団の一番後ろにいた二十代くらいの男の人だけは怒らず、静観していたのがアニバルは気になったよ。使者はエルスターの言葉を話していて、彼だけ言葉がわからないってわけではなさそうだよ。


 使者たちが今でもレナータの国々に呼び掛けて、神々を侮辱したデスペハードを倒すと言いそうだよ。


 アニバルは仕方なく出ていくことにしたんだ。チラリとフェデリコがアニバルが隠れているところを見たから、彼の策に嵌められた感は拭えなかったよ。


 アニバルは部屋の中にゆっくりと入っていくよ。


「神はこの世に姿が見えなくとも、我々を見守り、そばにいてくださる存在である。神の存在が見えるかどうかではなく、感じ信じることだ。この国の民が信じるシエロ教にも中央(ケントルム)教にもそう教典に書いてあります。

 初めまして、聖神使様の使者の方々。俺が水神王アニバルと申します」


 使者たちもアニバルについて調べていたようで、こいつか始祖と呼ばれる男の転生者かとジロジロ見ていたよ。


 アニバルはさらに続けたよ。


「シエロ教の多くが中央(ケントルム)教の教えに影響を受けています。それはこの国の始祖と初代皇帝が中央(ケントルム)教だったからです。

 だから決して中央(ケントルム)教を蔑ろにしているわけではありません」


 アニバルは感情的になるなとデスペハード勢を目で牽制したよ。


 シエロ教はルドを神と信じるデスペハード特有の宗教だよ。ほぼ他の国では信じられていないよ。


 一番年上の使者さんがアニバルに言ったよ。


「ではなぜ教えを模倣しながら、神々を否定したのか教えてくださいますかね?」


「さて?始祖を神と祀った当時を俺は知らないし、その時代の者はもういませんので聞くことは叶いません。

 ただレナータにはないこの地独特の気候もあり、人々は中央(ケントルム)教にはない神を求めたのです。

 使者殿たちは吹雪の中を歩いたことはありますか?」


 レナータの冬は雪が降るところもあるけれど、エルスターほどは積もらないよ。


 使者たちは吹雪にあったことはなさそうだよ。


「では一度歩いてみるといい。吹き付ける雪と風は身を凍らせるほど寒く、視界は足元さえ見えず己がどこにいるかさえもわからなくなる恐怖。

 人々は(シエロ)を見上げ、吹雪がやむことを祈る。冬の間中ずっと。

 この子らは天候を操れる俺を神だと思ったのです。曇天を振り払い、晴天をもたらす者として。

 我々は使者殿たちとは対話を望む。それとも異端だと我々を排除しにきたのですか?」


「対話を歓迎します。武力での信仰の強制を聖神使様は望まれていません」


「ではもう異端審問はしていない?」


「異端審問は約二百年前に廃止されています。現在行えば実行した神使は罪に問われます」


 そうかそうかと、アニバルは嬉しそうに笑ったよ。


「よかった!あのような風習はやめるべきだと思っていたんだ」


 アニバルの感覚でルドが異端審問を否定しない考えが、変だと思っていたよ。


 エスコンディド村や隣村の迫害を見ていて、宗教が違うだけで、同じ国(・・・)にいる人間ではないかって思っていたんだ。


 使者は絨毯に膝をついていて、皇帝は椅子に座っているよ。


「対話なら同じテーブルを囲むのがいいでしょう」


 アニバルはフェデリコにいいよなと目配せしたよ。


 使者団を別の部屋に移動させている間に、宰相がアニバルの前にきて膝を床についたよ。


「始祖は中央(ケントルム)教を信じていらっしゃるのですか?我々は信じるべきなのですか?」


 その場にいた重鎮たちも問うような眼差しをアニバルに向けていたよ。


 神が信じるなら中央(ケントルム)の神々も信じるべきなのか。


 アニバルは初代皇帝フェデリーゴを含め皇帝たちが、ルドを神格化した意図や想いがわかるから、自分の信仰を国の人々に押し付けたくなかったんだ。


 神が違う神を信じてるってなると、宗教的に混乱を招くだろうし、国の生い立ちと宗教は密接に関係しているから下手したらデスペハード帝国が崩壊してしまうよ。


「お前は何を信じている?」


「始祖。転生者であられますアニバル様です」


「それでいい。俺だろうが他の神であろうが、人の心にある信仰を変えることは許されない。だからお前が信じたい神を信じればいい。

 でもルドは確かに中央(ケントルム)教を信じていた。どんな教えでもいいところも悪いところもある。

 すべて否定せず、聞く心を持って理解して欲しい。いや理解だけではなく配慮してほしい。

 ルドの願った理想の世界は中央(ケントルム)教だと思っていたからな。俺は違うと思うし、理想の世界、つまり国を作るにはデスペハードはまだまだ途上だ。みなの力が必要だ。まずはレナータの国と衝突するのを避けたい」


「承知致しました」


 宰相たちは安心したような顔をしたけれど、フェデリコだけは浮かない顔をしていたんだ。


 宰相たちに先に行くように促して、フェデリコはアニバルと話したいと謁見の間にとどまったよ。


 皇帝の椅子から降りてきて、膝をついたよ。


「毎朝、お部屋であの村にあった教会の燭台に向かって祈っていると耳にしました。

 王宮に中央(ケントルム)教の教会を建てますか?」


 フェデリコはアニバルが中央(ケントルム)教の信者だと公言しないのは、国の安定のためだとわかっていたからだよ。


 でも始祖が我慢しないといけない状況にフェデリコも嫌だったみたいなんだ。


「いらねえよ。祈りはどこでもできる。このことは宰相たちには言うなよ?」


「…ご不便をおかけします」


「不便だって思ってないし、お前が気にすることはない。皇帝として国や民のために俺を利用すればいい」


「利用だなんて!」


「悪い悪い。言い方間違えた。せっかくお前たちの望みは叶ったんだ。共によい国を作ろうってことだ。さて急ごう。使者と宰相たちがケンカでもされたら困る」


 使者たちのいる部屋に急いだよ。

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