82話 水神王アニバルの話39
アニバルは遠くて小さな小さな敵に照準を合わせたよ。魔力砲部隊には副将軍を任せたんだ。万が一外しても、カランバノス軍に大打撃を与えるために連射するつもりではいたよ。
アニバルたちがいる反対側で、デスペハード・ヴァリエンテ騎馬隊が大砲のないところを狙って敵陣へ攻め込んでいたよ。
敵の目がそちらに向いている隙に、アニバルは魔力砲を放ったんだ。
カランバノスの将軍の頭がいきなり吹っ飛んだことで、戦況は一気に変わったよ。
副将軍も胸を撃たれて重傷。周りにいた指揮官クラスも魔力砲部隊によって負傷したんだ。
「撤収」
アニバルたちの居場所はばれたから、急いで逃げるよ。大砲がこちらに移動してきたのがちらりと見えたんだ。
「すげぇ」
暗殺の様子をフアンも見ていて、魔力砲の時代が来たと思ったよ。
「旦那、旦那。デスペハードの人間になったら、俺も魔力砲持てるのか?」
小走りしながら話しかけると、エクトルやホセがアニバルとフアンの間に割り込んだよ。
「気安く陛下に話しかけるな」
エクトルはフアンを敵判定したようだね。
「エクトル。そんなに殺気立つな。敵に見つかる。フアンは俺のことが恐かったんじゃないのか?」
フアンはすっかりルドの転生者だって忘れていたんだ。
「すみません。ガキのころお袋に言われた話を思い出しちまって。
でも旦那はお袋が話した昔話の暴君と全然違うし」
「後であんたのお袋が話したっていうルドの話を教えてくれ」
「陛下…」
エクトルが心配そうにしているから、アニバルは大丈夫だっていうように笑ったよ。
「レナータの民が語り継いだのも、俺が知るべき歴史だろう?」
大砲の音がして後方の山が削れたよ。
「俺らがデスペハード軍に戻ろうとしているのは読んでいるだろうな。走るぞ!」
元森の狩人。さささっと走っていくよ。魔力砲部隊は必死についてくるよ。
「待ってくれ、旦那~」
フアンが遅れ始めたよ。
「お前、よく今まで生き残れたな。さては逃げ回ってただろう」
「失礼な!カランバノスの傭兵や軍曹に聞けば証言してくれる!」
「裏切ったお前のことを素直に褒めるか?」
「ぐっ…」
話している間に後方にバカスカ大砲が撃たれるよ。
アニバルたちは一人も欠けることなく、本陣へ戻れたよ。
将軍たちに目的の人物を仕留めた話をして、降伏を促す文書をカランバノスに送ったよ。
カランバノスは降伏ではなく、休戦を申し出てきたよ。
「まだ戦いたいのか?」
兵力としては落とし穴の兵がまだいるからね。カランバノス本国にも兵士はいるし、まだ戦えるってことらしいよ。
交渉に来たカランバノス国の重鎮の息子さんをそのまま帰すことはせず、アニバルは人質として取ることにしたよ。
人質に魔力砲を向けたまま、約一万の兵士を落とし穴から出して、穴の埋め直しをさせたよ。
カランバノスに穴を戻さないなら、兵士ごと土をかけると脅したらやってくれることになったよ。
雪崩の時とは違い、本戦でどうぞ埋めてくださいっていったら国内外から非難轟々だからね。
埋め終わるとカランバノス軍が帰るのをアニバルは見届けたよ。
「やはり、一万は削いでおいた方がよかったのでは?」
西の将軍が言ったけれど、アニバルはカランバノスの動きを見ることにしたよ。人質もいるしね。
休戦とはいえ、シエルボの戦いで勝利したから、ささやかなお祝いの宴がその日の夜行われたよ。
もちろん、お酒はちょっとしかでなかったよ。カランバノスの兵がまだいて、奇襲されたら困るからね。
宴が終わるとアニバルのテントにフアンを呼んだよ。テーブルにお金の入った袋を置いたよ。
「はい、金」
「はい、金って。もう少し言い方あるでしょうが」
フアンはいくらはいっているか確認したよ。
「少し多いと思うんですが」
「話し方普通でいいぞ。レナータでルドがどう言われているか話してくれ」
この場所にはエクトルとホセたち護衛がいて、フアンはちょっと居づらそうだよ。
「話といってもあんまり知らないぜ?
俺が聞いた話は、暴君ルドが首が斬れる魔法で子どもから老人まで、多くの人を処刑したから、悪いことをしたら暴君に殺されるぞって脅されたってわけ」
エクトルがフアンを睨みながら叫んだんだ。
「光帝陛下はそのようなことはされていない!あの処刑をしたのは神使たちだ。陛下は処刑方法を中止させたのに勝手にやったのだ!」
「エトーレやめなさい。フアンは聞いた話をそのまま話しただけで、彼のせいではない。
事実を訴えたところで、レナータで広まっている俺への評価は変わらないだろう。神使の暴走は監視が行き届かなかった俺の責任だ。
それで他には?」
フアンはエトーレ?エクトル皇子だよなと戸惑った様子で、ないと答えたよ。
アニバルは軽くエクトルの前世について説明したよ。
「エクトルの前世はルドの従者であった、エトーレという貴族の男だった。幼いときに魔物に両親を殺され、たまたま通りすがったルドが、行き倒れになったエトーレを助けたんだ。
だから、かなりのルド贔屓だから気にしないでくれ」
「現世も川に溺れた俺を陛下が助けてくださったのだ。恩人であり、尊敬している方だから、贔屓ではない」
エクトルは補足しながらも、ルド贔屓という言葉にちょっと嫌そうだったよ。
フアンはちょっと間抜けな顔して頭を掻いていたよ。
「はあ。転生って本当にあんのな」
「信じたか?」
ここでアニバルの言うことを信じないと言ったら、刺すような眼で見てくる護衛たちに後で何されるかわからないとフアンは思っていたよ。
「半信半疑ってところだ」
「そうだろうな。いいも悪いも後世に名が残るような人間は少ない。確かめようがなかったのもあるだろう。
ルドはレナータの子どものしつけに役に立てているようで何よりだ。ただ、フアンにはあまり効果がなさそうだったようだな」
「ははは。そうかもしれねえ。傭兵なんざ、危ない仕事してるしな」
「親は反対しただろう?ああ、あまり個人的なことは話したくなければ話さなくていいが」
「別に構わねえよ。傭兵の中では訳ありもいるが、俺はただ大人になる前に両親が死んで、親戚をたらい回しにされて、早く一人前になるんだって、飛び出した口だ」
「そうか。ルドと少し似てるな。ルドは両親が幼いころに亡くなって、両親が残した奴隷に育てられた。親戚もいたが、母親がアナベルからの移民でね。当時のレナータでは移民は差別されていた」
「あー、なるほど。だから王族は髪が黒いのか。デスペハードの始祖はレナータ出身って聞いていたから、なんでみんな黒髪なんだろうと思ってたんだ」
フアンはレナータの人ならではの明るい茶の髪をしていたよ。
「ルドの母親の血が出ているんだろう。現世の俺は親の顔を覚えてはいないが、農民だったんだと思う。飢饉のせいで俺は捨てられてよ。狩人に拾われて育てられた。どうしてかわからないが、ルドの血が混ざっていて転生したわけ。
ああ。デスペハードの王族から転生者が出るのはルドの血を引いた者とされている」
「捨て子だったのか!それが王か。なんだか夢物語みたいだな」
アニバルもエクトルに物語だと言ったのを思い出して、笑ってしまったよ。
「そうだな。物語みたいだな。フアンは魔力砲使ってみたいんだっけ?今は正規兵か俺が見込んだ奴しか持たせていないんだ」
「正規兵か…」
傭兵歴が長いから、今から正規兵は難しいと思ったよ。
「フアンは年齢的に試験は受けられないかと」
エクトルは兵士になる規定を思い出したよ。必ず試験を受けなくては兵士にはなれないよ。
貴族も試験をしなければならないけど、平民よりは簡単らしいよ。
アニバルはフアンが来ても雇ってあげられないかもと思い始めたよ。
「デスペハードは傭兵という制度がないからな…」
「俺がデスペハード行っても傭兵で食ってかれないってことか?」
「まあ、あんたの話を聞いてから傭兵について検討してみる。新しい土地の護衛はまだまだ少ないし」
翌朝、アニバルを暗殺しようとしたイメルダさんを口説きに行ったよ。
魔力砲を持たせて魔力砲部隊と一緒に彼女の腕を見ていたよ。
的を全部中てて、全然練習していないと聞いた魔力砲部隊は驚いて口々にイメルダさんを褒めたよ。
父親が弓の名手で、父親の影響で幼い頃から弓で獲物を狩っていて洞察力があったようだよ。
彼女は最初は無口だったけど、たくさんの人に褒められて顔を赤くして照れていたよ。
褒めていた男性兵士たちは女性のイメルダさんの気を引きたかったのもあるようだけどね。
イメルダさんは病気の母親の治療費を出すために、兵士になったそうだよ。なんで兵士かというと女性が働いてお金がたくさんもらえるのは、兵士か風俗しかなかったらしいよ。
デスペハードでは魔法の使い手以外は女性が兵士なんてありえないという風潮だけれども、カランバノスは様々な地方から人が入ってきてわりとデスペハードより開かれた考え方をしていたらしいよ。でも兵士となれば女性の数は少なくて、食事を作ったり軍服を洗濯したりとそういう仕事が多いみたい。
イメルダさんは弓の腕がよかったから、男性に混ざって訓練して戦場に来たそうだよ。
一見イメルダさんは華奢に見えるけれど、腕の筋肉がしっかりしていて、デスペハードの新人兵士を何人も腕相撲でなぎ倒した伝説の女性になったとかなんとか。
アニバルに仲良くしてやってと言われた開発室のヘッサニアと意気投合して、上司のセクハラ話や愚痴に、はたまたコイバナに花を咲かせたらしいよ。
そのヘッサニアだけれど、アニバルが帰国してお祝いムードのときに、ツカツカ近寄ってきてこう言ったよ。
「お帰りなさい。室長。私の魔法具はいかがでしたか?」
「あ、あれな。よかったぞ。敵の魔力を使って雷を落としてやった!」
壊したことを思い出して冷や汗が止まらないよ。直すのをすっかり忘れていたんだ。
「そうですか。改良しますのでお返しください」
ちょいちょいと手を出してきたよ。ちなみにここは兵士もたくさんいる王宮の玄関前。中には皇帝フェデリコなど偉い人たちが待っていたんだ。
「ここでなくてもいいだろう?」
「私はすぐに開発室に戻るので」
研究の時の作業着姿だったよ。といっても女性は兵士以外はズボンを履かない時代だから、フリルとか少なめのシンプルなスカートだったよ。
とても王様を出迎える服装ではないから、その場にいたヘッサニアのお父さんも冷や汗が止まらなかったようだよ。
「あーわかった。怒るなよ?」
「怒る?」
腕から外してヘッサニアの手に魔法具を乗せたよ。彼女の顔が能面のようになったから、アニバルは早足で王宮に入ろうとしていたのに、腕をガシッと掴まれたよ。
「室長!壊れてるではないですか!どうしてくれるんです!研究費を室長が出してくださいよね!」
「耳元で金切り声出すな!」
部下に怒鳴られる王様。
周りの兵士は蒼白になり、フアンは大笑いして、イメルダはヘッサニアを尊敬の眼差しで見ていたよ。使者としてシエルボから公爵のレイナルドも来てて、眼を丸くしていたよ。
「ヘッサニア!!」
たまらずヘッサニア父は駆け寄って、アニバルに平謝りしたよ。
「陛下、申し訳ございません!!」
やっとヘッサニアはやらかしてしまったことに気づいて蒼白になったんだ。
アニバルはヘッサニアの肩を抱いて、頭をくしゃくしゃに撫でたよ。
「俺がご息女の研究の最高傑作を破壊してしまったのがいけないから。ま、俺とヘッサニアの仲だし、こんなんで怒らないぜ。な?」
ヘッサニアは男性に肩を抱かれたことはなく、赤面してふるふると震えていたよ。アニバルはニヤリとしたんだ。
「どうした?さてはお前、男に肩も抱かれたことないのか?」
「…離してください」
離してあげるとヘッサニアはダッシュで逃げてしまったよ。ヘッサニア父はキラリと眼を光らせたんだ。
「陛下。お歳も近いですし、娘をぜひ」
「勘違いすんな。ヘッサニアは開発室の優秀な部下だ。普段からああいう可愛げあればいいんだけどな」
アニバルはやっと王宮に入れたよ。
フェデリコたちはアニバルを見ると一斉に膝をついたよ。
「お帰りなさいませ、陛下」
「ただいま、フェデリコ。俺は王で、お前は上司なんだからよ。膝つくな。シエルボの客人もいるんだから」
「…陛下がお戻りいただき本当に安心致しました。またも雪崩に巻き込まれたとうかがったときは、王宮に留まりいただくよう、強く言えばよかったと後悔致しました」
フェデリコはホロホロと涙を流したよ。宰相も涙を流して無事を喜んでたし、他の重鎮たちも泣いたりしていたよ。
アニバルは嫌な予感がしたんだ。
「心配させて悪かったな」
「二度と戦地へ行かれませんよう」
「我々からもお願い申し上げます」
将軍たちも膝をついてお願いしてきたよ。
宰相の涙は止まらないらしくグシュグシュしながら、アニバルに言ったよ。
「陛下になにかがあれば、我が国の空は陰り、永遠に光りが失われます」
大げさなと思うかもしれないけど、アニバルは神様ポジションだからね。これは何か言わないとみんな引き下がらなそうだよ。
「わかったから!もう泣くな。危険な場所には行かない」
フェデリコは涙を拭って、ではと言ったよ。
「お約束してくださいませ。敵の主将が目の前で逃げたとしても、追いかけず、兵にお任せかくださいませ」
誰かがフェデリコに、カランバノスの将軍をアニバル自ら仕留めたことをチクったようだよ。
「わ、わかったから。しばらく大人しくしている」
「しばらくではございません」
フェデリコが何か言うのかと待っていたけれど、じっと見上げているだけだよ。
「しばらくだ」
「しばらくではございません」
「ずっとは無理だ。ディオスパハロに行かないといけないし」
「領主に他の者をつけましょう」
アニバルの直轄地だからアニバルに全て権限があるけど、アニバルがいない間は、代行で国から派遣されているよ。
「そういう訳にはいかない」
「お出かけの際は護衛をこちらで選定致します」
「…俺の母ちゃん役はホセで十分だけど」
「陛下、ふざけないでください。こちらは真剣なんです!」
フェデリコがハラハラとまた涙を流すよ。
「ルドには泣き落とし効いたが、俺は効かないからな!」
デスペハード帝国の皇帝がお目付け役のように、部下の王にキレる。かと思えば公然で泣き落とし。
レイナルドはデスペハードは面白い国だなって思っていたよ。
やっとフェデリコは立ち上がって、何事もないようにレイナルドを出迎えたよ。
「私がデスペハード帝国の皇帝である」
アニバルは今さら威厳出しても仕方ないじゃないかとフェデリコを見ていたよ。おめめ真っ赤だしね。
レイナルドとフェデリコが握手をしていると、アニバルはそろっとその場から逃げようとしているよ。めざとくフェデリコが見つけたんだ。
「陛下!」
「うおっ。外交は任せた!」
「逃がしませんよ!レイナルド殿からも、陛下の武勇伝を聞かせていただきます!」
「俺の話は後だろう!まずはカランバノスだろうが!」
「私はカランバノスより、陛下のお話を…」
「エクトル、任せた!俺は開発室に行って…」
エクトルに腕をがっしり掴まれて、フェデリコの方に身体を無理やり向かされたよ。
「お仕事なさってください。俺は子どもなのでお先に失礼しますね」
「エクトル。お前も来なさい。陛下が敵の将軍を撃たれたところを見ていたのでしょう?」
なんで知ってるのとエクトルもフェデリコの圧…熱意に引いていたよ。
なぜかレイナルドと会談をせずに、みっちりとアニバルの話を聞いていたよ。
「…俺も人のことを言えないが、皇帝として先にカランバノスのことを話し合えよ」
まだまだお話をとおねだりするフェデリコに、アニバルはげんなりしていたよ。
フェデリコは、がばっと立ち上がって熱くなっているよ。
「どうしてです?始祖が転生されて、今まさに伝説が生まれようとしているのです。この場に居合わせた幸せを噛み締めているんですよ!おそばにいられずに悔しい!」
「近い、近い。圧が…。ちょっと恐いんだが。そしてオッサンに目を輝かされても嬉しくない」
「父上。外国の大使殿の前ですよ」
息子にまで言われて、フェデリコは渋々引き下がったよ。
やっとカランバノスの対策になったよ。
「次はどうでると思うか?」
フェデリコは将軍たちに聞いたよ。
レイナルドもそうだけど、挙兵するだろうという意見だよ。
「陛下はどう思われますか?」
フェデリコがアニバルに振ると聞いてなかったって顔をしたよ。
「帰ってきたばかりだし、情報はないしな」
お耳ホジホジ。
フェデリコは眼を細めていたよ。
「嘘はいけませんよ。陛下。何か案がありますでしょう?」
「嘘ついてないし。俺の完全防御で可視化魔法は使えないから、視えてないだろう?」
フェデリコはむすっとしてしまったけれど、今度はにっこりとエクトルに微笑みかけるよ。
「エクトルは何か知っているでしょう?」
皇帝とアニバルの間に立ってエクトルは、唇をきゅっと結んで目を明後日の方向へ向いていたよ。
アニバルは苦笑していたよ。
「エクトルに転生して、嘘が下手になったな。エトーレ?」
「素直だと言ってください」
アニバルは地図を持って来させて、立ち上がったよ。
「まずは、フェデリコ皇帝陛下に謝らねばならないことがあります」
アニバルが急に改まったから、フェデリコや将軍たちに緊張の色が浮かんだよ。
「戦闘中に無くなった騎馬隊が持っていた魔力砲三丁が行方不明になりました。他に一丁はイメルダという女斥候が持っていたものは回収しましたが、三丁はカランバノスが持ち帰ったものと考えられます。
故にカランバノスの富と技術の高さから、数年には同等の魔力砲を開発するでしょう。
魔力砲を流出させてしまったことをお詫びします」
「それは承知の上です。開発できたとしても生産できるまで時間がかかるでしょう」
「いや、魔法具の製造についてはカランバノスよりも技術のある国はいくつかある。それらの国ともカランバノスは友好関係です。そこに作らせるでしょう」
「つまり、カランバノス以外の第三国も魔力砲の製造が可能になるということですね」
東の将軍・ロドルフォが代表して言ったよ。
「そういうことだ。俺の見立てでは、十年以内に魔力砲を使用した国同士の戦争が普通になるだろう。我が国の優位性は崩れつつある。
故に友好関係のある国に渡して防衛を強化する。もちろん、費用は出していただくが」
シエルボ国公爵のレイナルドは困った顔をしたよ。
「我が国が大量に購入するのは難しいかと」
当初よりは生産数は増えて、豪邸が買える値段からは下がったけれど、家が買えるくらいの値段はしたよ。
「一番高い材料費が貴国から出れば問題ないでしょう」
「水晶の話は本当なのですか?」
シエルボ国王への親書の追伸に、水晶が出るかもしれないから一緒に掘ろうと書いていたよ。
「あくまでも予想ですが。俺が直轄地にした土地についてどのくらい知ってますか?」
「水晶が取れる場所だと」
アニバルは指し棒代わりにステッキで、ディオスパハロとシエルボの間の山脈が書かれた地図を叩いたよ。
「詳しい場所は言えませんが、この山脈は水晶が出やすいと考えられます。
もちろん実際に調査しないとわからないので、シエルボ国王陛下の許可は必要ですが」
「鉱物の調査をしたことがないようなので、調査は必要でしょう」
シエルボも調査に乗り気だったから、デスペハードから調査団が派遣されることになったよ。




