71話 水神王アニバルの話28
何故、人は希望をひかりと喩えるのか。
一面の雪と瓦礫にどこから手をつけるべきか、アニバルたちは途方に暮れたよ。
誰かいるかと遠くから声が聞こえて、アニバルははっとなったよ。
「ここだ!」
アニバルは半壊の家を迂回して声の方へ向かうと、初老の男性の姿が見えたよ。
「水神様、ご無事で…」
「他の連中は?」
男の人は涙を浮かべて首を振った。
「わかんねえ。雪が止んだから、お袋の様子を見に行く途中に雪崩が来てよ。必死に森に逃げ込んで…。教会に行こうとしてもどこもぐちゃぐちゃで、村のほとんどが雪崩に飲まれちまった。水神様はご無事じゃねえかって、ここまで来たんだ」
「あんたが無事でよかった。他に生きているやつがいるかもしれない。まだ動けるか?」
「おう!手伝うよ」
男の人は助かったはいいけど、村がめちゃくちゃになったのを見てパニックになっていたんだね。心細くて人を探して、助けなきゃという考えが浮かばなかったみたいなんだ。
アニバルは可視化魔法で埋もれた人を探したよ。半壊した建物や雪の下にたくさん見えたんだ。
「大勢いる…」
全員助けたい。でも人も道具も限られている。助かる見込みの人を優先しようとしたけれど、その順番が定まらないんだ。
半壊した建物がカタッと音がしたよ。動いている人の気配がしたんだ。
「三人は家の方へ、近くに埋ってるからウーノたちはそこを頼む」
アニバルは倒木から木の枝を何本か折って、雪にどんどん突き刺したよ。この辺りに人が埋っているってことだね。
村人たちはアニバルの目印周辺を掘っていくよ。でも雪は深く積もって重労働だったんだ。
アニバルは魔法で辺りの雪を吹き飛ばすと、埋もれていた人の身体の一部が見えたよ。
融かすのは厳禁だよ。寒いから雪が凍ってしまって氷になれば、ますます掘りにくくなるからね。
ほら、ふわふわのかき氷と、ガリガリの氷の塊みたいなかき氷ではふわふわの方がスプーンですくいやすいでしょう?
「助けるから、頑張れ!」
手や足が弱々しく動いたよ。
助けられた人のほとんどはもうろうとしていて、話せないよ。
地震などの災害の生存率で、七十二時間とよくいうよね。
雪崩に巻き込まれたら、それよりももっと短くなるよ。雪の重みで身体が押し潰される。寒さで体温が奪われる。そして多いのが窒息死なんだ。
雪は水と違って隙間があるから呼吸出来そうでしょう?でも意外と空気が少ないんだ。
アニバルのマエストロが雪崩に巻き込まれたとき掻けと言ったのは、少しでも息が出来る空間を作るためなんだ。
だから埋もれた人の生存率が高いのは約三十分と言われているよ。二時間経過したらほぼ〇パーセントとされていて、すでにこの時一時間は経過していたんだ。
アニバルたちのいるところは雪崩のはじっこ。つまり比較的雪が薄く積もっている場所だよ。アニバルが森の中の小屋に向かえと従った人たちなんだ。
倒壊した家屋から二人救助されて、怪我はしていたけれど意識はあったよ。
懸命に掘っていったけれども、見つかった人は息をしていなかったよ。
アニバルは今まで人の形が視えていたけれども、よく視ても雪と同化して姿が見えなくなってしまったんだ。
アニバルは目を閉じて決めたよ。
「…倒壊した家の捜索を優先しよう」
みんな動きを止めて、まだ埋っているからと言うけどアニバルは首を横に振ったよ。
「埋もれた人はもう死んでいる。それよりも雪の上にいる人を助ける」
雪の中より地上にいる人の方が生存の可能性が高いと踏んだよ。でもアニバルが雪に刺した木の棒はまだまだあったし、実際そこから人が出てきたからみんなは諦められなかったよ。
「待ってください、水神様。この近くに妻と子どもがいるはずなんです!」
若い男の人が懸命に訴えるよ。
「…森や近くの家に避難したかもしれない。そこをあたろう」
「この辺りで分かれたんです。俺は…先にいけと言われて、雪崩が怖くて…」
恐怖にかられて、逃げ遅れている妻子を置いて自分だけ逃げてしまったようだよ。子どもは小さくて妻が背負っていたようなんだ。
「俺が子どもを背負っていれば…」
「お前の妻子は生きているかもしれないから、最後まで諦めるな。少しでも生きている人を探そう。その中にいるかもしない」
声を出しながら倒壊した家を見て回ったよ。何人か助けられたけれど、人のいる気配があまりなかったんだ。
「みんな教会の方へ逃げてました」
救助された人がそんなことを言ったから、アニバルたちは救出が絶望的だと思ったよ。教会は村の中心部にあるよ。逃げ延びた初老の男性が、教会の場所もわからないほどになっていると言っていたからね。
粉雪がちらつきはじめて辺りが薄暗くなりはじめたよ。
アニバルたちは二つのグループに分かれて、村の周辺をぐるりと周って森へ逃げた人がいないか、家屋に取り残されている人がいないか声を上げながら探したよ。
暗くなってきたから、この日はやめようとアニバルが言いかけたとき、森の方から灯りが見えたよ。
「誰かいるのか?」
アニバルが声を張り上げると応える声があったよ。
「ホセでしょう」
灯りが魔法具のように見えたよ。この村の人が持っていないから、ウーノはホセだと考えたよ。
「水神様!」
少女の声にアニバルは泣きそうになったよ。トニアたちの姿がなくて、彼女の一家はだめだったのだろうと思ったんだ。
ホセがトニアの母親を背負い、トニアとイバンは怪我がなさそうだったよ。
トニアとイバンはアニバルに抱きついて、大泣きしたよ。
「お母さんが雪崩に巻き込まれて…。怖かったよ!」
「ホセお兄ちゃんが助けてくれたの」
ホセは見回りと柵の点検をしていたら、トニアたちが柵の外にいたそうだよ。本来なら秋に採れる薬草を、今年はみかけてないから生えていないか見に来ていたらしいよ。
「風邪薬なの。とても苦いんだけど飲んだら次の日には治っちゃうんだよ。今年はとても寒いから風邪をひく人が多いと思って」
ホセが危ないのではというから、トニアが説明したよ。トニアの母親とイバンは、遠巻きにこの二人を見ていたんだ。
ホセはなんとなく放っておけなくて、親子についていったんだ。雪を掘っても薬草は見当たらなかったよ。
「やっぱりないか」
帰ろうとなったときに、雪崩が起きたんだ。
大きな音に不安になった四人は、早く森を抜けようと村の方に向かっていると、白い悪魔が手を伸ばすように木々をぬって森の中へ入ってきたんだ。
「走れ!」
立ち止まったトニアとイバンを、ホセは咄嗟に腕を掴んで走り出したよ。
トニアの母親も走ったんだけど、ずぶりと雪の深みにはまって転んでしまったんだ。そこに雪崩が覆い被さったよ。
「お母さん!」
戻ろうとする子どもたちをホセは強く手を引いて走ったんだ。雪崩はすぐに収まったから、トニアたちは母親のところへ行ったよ。
半分ほど埋っていたけど雪から顔は出ていたよ。
ホセたちは手で雪を掻き分けてトニアの母親を救出したよ。
「怪我はあるか?」
「足が…」
雪にはまった上に雪崩がぶつかってきて変な方向へ倒れたから、足首をひねってしまったようだよ。
「治療するが魔力温存したいから、完治はさせられない。しばらく痛いだろうが、我慢してくれ」
ホセは簡単に治療を済ませたのは、魔法を使う場面が必ず来ると考えたからだよ。
村の外れに雪崩が来たんだ。村にも被害があるかもしれないし、アニバルを治療する必要が出てくるかもしれない。
村の方へは分厚いふかふかの雪になっていて、トニアの母親みたく足を取られるかもしれないから、森の中を通ってアニバルの小屋を目指したよ。
「おじいちゃんとおばあちゃんの家にいきたいの」
トニアが言うけれど、ホセはトニアの母親を下ろそうとしたよ。
「俺は一刻も早くアニバル様のご無事を確認しに行きたい。行くなら行け」
「…村の方を一目でも見られませんか?」
薄々トニアの母親は村は大変なことになっていると思ったんだ。雪崩が想像以上の深さがあったからね。
ホセもアニバルが村に行っていたのを思い出して、黙って村の方へ向かったよ。
「待って。俺が先頭になる」
イバンが新雪を踏み固めるように歩き始めたよ。
ホセは母親を背負っているから、足を取られやすくなっているんだ。
ホセはイバンの足跡と重ねて歩いたよ。その後ろをトニアが歩いたんだ。
やっと開けたところに出て、イバンはそんなと呟いたよ。
家の屋根まで雪が覆い、村で一番高い教会の鐘楼が斜めに傾いているんだ。
「ああ、神様…」
トニアの母親は目の前の光景が信じられないよ。取り乱すだろうと思われたイバンは冷静だったんだ。イバンがヴァリエンテ兵を殺して以来、子どもらしさがどこかに行ってしまったようにトニアの母親は感じていたよ。
「…水神様のところへ急ごう。水神様ならなんとかしてくれる」
トニアも我に返って、強く頷いたよ。
「ヴァリエンテの人が来たときに村を守ってくれたもの。きっとみんなを助けてくれる」
急ぐ気持ちを抑えて、イバンを先頭にアニバルの家に向かったよ。
森は暗くなるのが早いから、ホセはイバンに灯りの魔法具を貸したんだ。イバンは魔力があるから、 魔法具が使えたよ。
こうしてアニバルたちと合流できたんだ。トニアの母親は村の男に背負われて、ホセは一息ついたよ。雪に覆われた村を見て、アニバルもだめかと思ったんだ。
「ホセ」
アニバルがトニアたちから離れて、ホセを抱きしめたよ。
「よかった。お前が無事で。姿が見えないからダメかと思った」
「アニバル様…」
ホセは急に安心感が身体を包んだよ。
よかった、よかったとアニバルが言うから、ふいに涙が込み上げたよ。
「よくトニアたちを守ってくれた。ありがとう。お前の役目ではないのに」
「え?」
役目を優先させるなら、あの親子を置いてアニバルのところに向かえば、もっと早く辿り着いただろうね。
雪崩に巻き込まれたトニアの母親を見捨てれば、魔力も体力もアニバルを守るために使える。屋根が倒壊して下敷きになったトニアの父親を見捨てたときのようにね。
でも実際は親子を助けていたんだ。
ウーノに怒られると思ったけれど、逆によくやったと褒められたんだ。
アニバルたちは小屋に戻ると、いくつもの焚火が焚かれていたよ。
「ここに人がいると、森に逃げた人が気づいて来れればいいなと思いまして」
若者がそう言ったよ。
食事は全員分あったけれど、冬を越すまでは到底もたないよ。
そうだと鞄を下ろして広げたんだ。おばちゃんたちから、たくさん食べ物をもらっていたからね。
分けていると瓦礫から助け出された女の人が涙を浮かべて、ご飯を食べていたよ。
「お母さんが作ったお惣菜」
無事だといいねとまわりが言うけど、多くの人が雪の中で命を落とすのを見ていたアニバルは、生きているよと言えなくなったんだ。
夜更けからまた雪がちらついて、寒さが増したよ。洞穴にいた人たちはガタガタ震えて身を寄せあっていたんだ。
「焚火があたってるところは焼けると思うほど暑いんだけど、背中がとても寒いの」
トニアは手を擦りながら、寒そうにしていたよ。
翌朝、救出された重傷者が次々と亡くなっていたよ。
治癒魔法が使えるのはアニバルやウーノたちくらいだったけれど、救出に行ってしまって手当てが遅れたんだ。
みんな言葉少なげに小雪が舞う空を見上げたよ。
「今日は教会の方と、村の周りをまわってみる」
まだ家の中に取り残された人がいるかもしれない。わずかな希望を抱いて、アニバルたちは出発したよ。
この日は教会に向かって進んだよ。途中、雪かきの道具や日用品、食糧があれば回収したけれども、人が見つかってもみんな死んでいたんだ。
別の班は村を一周して、逃げた人が村に戻っていないか、生存者の捜索が行われたよ。
教会には辿り着けず、夕方になってしまい、アニバルたちが小屋へ戻ろうとしたとき、男の子が血相を変えて走ってきたよ。
「魔物が!魔物が出て…」
アニバルの恐れていたことが起こってしまったよ。魔物避けの魔法陣を家や洞穴の周りに置いたけれども、上級の魔物には通用しないんだ。
アニバルは急いで戻ると血の跡があって、人が集まっていたよ。
「子どもが一人魔物に連れていかれて、それを追って…」
妻子を置いて逃げた男の人が血だらけで倒れていたよ。負い目から責任感からか、魔物に連れていかれた子どもを助けようとして殺されてしまったようだね。
アニバルは目を瞑り、周りに言ったよ。
「魔物も雪崩でねぐらをやられたんだろう。冬眠から覚めちまって、食糧を求めてまた来るかもしれない。ここは危険だ。隣の村へ避難しよう」
「埋まった人たちは?」
十代の若者たちは雪の中にいるだろう、親やきょうだいを早く見つけたいと思っているよ。
アニバルもそうしたいけれど、幼い子どもたちを魔物の住む森に長くとどめるのは危険だよ。魔物も人間の子どもが弱くて狩りやすいと知っているからね。
「人手が足りない。助けを求めよう」
みんなの体力と食糧が尽きる前に隣の村まで辿り着いて、休めるところを見つけないといけないよ。
翌朝、動けない人は男たちが背負って、子どもも持てる荷物を持って出発したよ。
村には五百人ちょっといたけれど、ここにいる村人は百人もいなかったよ。
隣の村へ逃げ込んだ人がいるだろうとみんな淡い期待をして、雪の中、歩いたよ。
出発前に言葉を交わせた重傷者が、亡くなったのは隣の村の近くまで来たときだよ。
吹雪にも見舞われ、みんなとても冷えていたんだ。
アニバルは移動するのは早かったかと悔やんだけれど、子どもを中心にあの魔物のいる森から離れたかったんだ。
隣の村は固くドアが閉められて、歩いている人の姿がなかったよ。
目についた家のドアをノックしたら、男の人が出てきたよ。
事情を話すと痛々しそうにアニバルたちを見たよ。
「おとといでかい音がしたなと思ったら雪崩だったのか。村長に聞いてみる」
村長さんも労ってくれたけれど、少し困っていたよ。
「うちの村も食糧が春までもつかわからない。一日分は出そう。それ以上は」
「わかった。村には雪に埋もれた人たちがいるんだ。助けるのを手伝ってほしい」
村の若い人たちは訴えるけれど、隣の村の村長はうんと言わないんだ。
「雪は止まず深くなるばかりだ。助けてやりたいが、うちの連中を巻き込まれるのは勘弁してほしい」
二次災害を心配しているんだね。
アニバルは持っていた旧式の方の魔力砲を、村長の前に置いたんだ。
アニバルは救助のお願いは無理だとわかったから、幼い子どもや怪我人だけでもこの村にいさせてほしいと頼んだよ。
魔力砲はとても高いと説明してあげると少し心が動いたようで、幼い子どもと怪我人を預かってくれることになったよ。その人たちの二週間分の食糧も置いていくことにしたんだ。
「ガルシア領主の屋敷に行きますか?」
村人が集まって今後について話し合っているときに、ウーノがアニバルに聞いたよ。一番頼れるのはガルシア領主の屋敷にいるエクトルだよ。
ウーノの一族の拠点は帝都で、近場で村人全員を受け入れられるのはガルシア領主の屋敷のある街にいかないとだめみたいだよ。
アニバルはすぐに行こうとは言わなかったんだ。理由の一つは皇帝がエスコンディド村に冷たいから、村人を保護してくれるかわからないこと。あとは距離だよ。
雪のないときで馬車で半日ならば、悪天候の中、慣れない道を子ども連れで歩かねばならないと考えると一日で辿り着けるか分からないし、現実的ではないよ。
頼れる場所はこの隣の村だけだったんだ。同じ神々を信仰しているよ。
それでも協力してくれないのは冷たいからではないよ。この村も急な冬の到来のせいで、無事に全員が冬を越せる準備が出来ていなかったんだ。だからよそから来たアニバルたちを受け入れる余力がなかったんだよ。
「大きな街を目指す。宿もあるから寝床は確保できる」
「そうですが、俺らは金がないです」
村人たちは着の身着のままで、貴重品を持ち出す時間はなかったんだ。アニバルは自宅である小屋が壊れなかったから、お金になりそうなものは持ち出したんだ。
魔法の本とかいくらになるかわからないけれど、ないよりはいいと持ってきたよ。
「氷の鳥の褒賞金は、まだ半分くらい手をつけていない。宿の値段によってだが、安いところならしばらくは泊まれるはずだ」
村に帰って復旧させるのは、雪が止む春以降になるよ。
それまで身を寄せる場所を確保したいんだ。
「宿屋がありそうな街でも、雪道なら半日近く歩かねばなりません」
ウーノが地図を広げたよ。途中の村に寄って休ませてもらうしかないよ。
多くのエスコンディドの村人はもう一晩休みたいから、雪が止まないでくれと願ったけれど、翌朝は久しぶりの晴れになったよ。晴れといっても快晴ではなく、薄日が射すくらいだよ。
隣の村の村長たちに礼を言って、アニバルたちは出発したよ。怪我人や幼い子は見送ってくれたけれど、みな口数が少なかったよ。
晴れは束の間で、一時間ほどすると曇ってきたよ。雪がちらつく頃に家々を見つけたよ。
ここでも身を寄せる場所や食事の提供を求めたけれど、断られたよ。
「あんたらエスコンディドのやつか?森の主を殺しちまったからだよ。自業自得だね」
偏屈そうなおばあさんがそんなことを言うよ。
「森の主?」
「氷の鳥さ。あの魔鳥は寒いのが好きだが、あいつも生き物だから寒すぎるのは苦手なんだ。ちょうどいい気温になるように天候を操っている森を管理しているのさ。その魔鳥がいなくなって、とたんに寒くなった。
冬が早く来たのはあんたらのせいだよ。お陰でこっちもカツカツなんだ。出ていきな!」
追い出されてしまったよ。アニバルは交渉も忘れて呆然としたよ。
「アニバル様。迷信です。お気になさらずに」
ウーノがすばやくフォローしてくれたけれど、アニバルはおばあさんの言葉が頭の中でこだましていたよ。
「ちょっとあんたたち。これ持っていきな」
話を立ち聞きしたのか、この村のおばさんがライ麦と木の実が入った固そうなビスケットをくれたよ。
「街に行くなら、そこ並木道に沿っていきな。隣の村とうちはよく行き来するからね。朝のうちに雪かき済ませたから、積もる前に行きな。うちより大きい村だから受け入れてくれるかもしれない」
アニバルは上の空で礼を言うと歩き始めたよ。
確かに村は大きかったけれど、宿はなかったんだ。事情を話すと、体力の限界に来ていた女性や子どもを何人か置いてもらえることになったよ。
トニアの家族もここに残れと言ったけれど、イバンよりも小さい子はまだいたから、その子たちを優先にしたよ。トニアの母親は足を痛めていたけれど、子どもたちと離ればなれになりたくないから、頑張って歩いていたんだ。
アニバルや村の人たちは、もしものときはここに戻ろうと話し合ったよ。少し食糧も置いていくと軽くなった鞄と反対に、不安で心が重くなっていくよ。
目的の街にも全員休める場所がなかったら、食糧が尽きてしまったら。
雪は止む気配はなく降り続いていたよ。
アニバルたちはまた歩き始めたんだ。
明日も投稿予定です。




