表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流刑の覇王  作者: 卯月よひら
第一章 三王の話
53/278

51話 水神王アニバルの話8

 魔法の気配にアニバルは慌ててエクトルから離れたよ。


「お前、なにする気だ!」


「もう一度瀕死になれば思い出すと思うので」


 医者や魔法の使い手たちはエクトルを羽交い締めにして、アニバルから離すよ。


「何を言い出すんだ。お前は!今魔法で攻撃したら、魔力が枯渇しているお前もアニバル殿も笑い事ではすまされないぞ!」


 ヘラルドがエクトルの前に立って、妨害するよ。エクトルはギリギリと歯ぎしりしたんだ。


「やっと出会えたのに!お守りできなかったことをお詫びして、また共にいられることをどれほど待ちわびたことか!

 忘れるってなんだよ。俺は前世で拾われ、現世でも命を救われ、前世の記憶が戻ってから片時も陛下のことを忘れたことはなかった。それなのに…」


 アニバルはすまなそうな、困ったような顔をしっぱなしだよ。


「なんか、悪いな。でも本当に思い出せないんだ。その、始祖ってやつのフリを俺がしたところで、お前の思いは浮かばれないだろう?

 もしかしたらひょんなことで思い出すかもしれないじゃないか。そのときはちゃんとお前に話すからよ。そんなおっかない顔すんなよ。

 俺、氷の鳥(パハロ・デ・イエロ)を倒せても死ぬかと思ってたけど、お前と一緒に戦えて、生きて帰れて嬉しかったんだ。戦う前にした本当に弟子にする話。生き残れたから続きをしようと思ったんだが。

 貴族のお前と辺鄙な森に住む狩人の俺が出会って、伝説の魔鳥を倒した。凄いことだと思ったけど、お前は始祖しか考えてないんだな」


 アニバルが寂しそうに言うから、エクトルにヘラルドが小突いたよ。


「いいのか。このままだとアニバル殿はお前を弟子にしないって言うぞ。現世の関係はこれで終わりにしていいのか?」


 領主の息子と狩人。両者は日常で会うことは絶対にないよ。


 接点をもち続けないとおそらく関係はなくなってしまうだろうね。


 完全に回復していないエクトルはふらつきながら、アニバルのベッドに腰をおろしたよ。


「俺、マエストロにとても感謝しているよ。助けてもらったし。まさかあの伝説の氷の鳥(パハロ・デ・イエロ)を倒すとは思わなかったし。俺も混乱してて責めるようなこと言ってごめんなさい。

 マエストロとこれからもお話したり、狩りしたいです」


 アニバルは身体の力を抜いて、そっかと笑ったよ。


「俺はお前たちといて楽しかったんだ。これで終わりじゃなくてよかった」


 エクトルも気持ちが落ち着いたようだよ。


 アニバルは完全に快復していないから、また寝てしまったんだ。治療は一週間続いたあとに、一人で歩けるようになるとガルシア領主のお屋敷へ馬車で行ったよ。


 屋敷の前には仮設の大きなテントがあって、テントの中に氷の鳥が横たわっていたんだ。


 エクトルとフィデルの父親のフェデリコやカルロスの父親の姿もあって、その近くにはお偉いさんらしい人がたくさん集まっていたんだ。


「アニバル殿。元気になられたようでよかった」


 フェデリコが笑顔で近寄ってきたよ。カルロスの父親も素晴らしいとたくさん褒めてくれたんだ。


 魔力砲をわざと人々に見せるようにして、アニバルは言ったよ。


「俺の力だけじゃない。エクトルがいたから凍りそうな寒さも耐えられた。あとはこの魔力砲はわずかな魔力でも、あのでっかい魔鳥の頭を撃ち抜いた。俺のしたことは少しで、この技術を開発した人たちに感謝と称賛を送りたい」


 動揺と歓喜が同時に起こったよ。魔力砲に注目していなかった人たちは動揺を、推していた人たちは喜びの声をあげたよ。


 アニバルはカルロスの父親にニヤリと笑いかけたんだ。意図に気づいてカルロスの父親も笑い返したよ。アニバルは天災級の魔物を倒したのは魔力砲の力があったからだと、アピールしたんだ。


 伝説の魔鳥を仕留める武器。


 魔力砲の注目は高まることは間違いないよ。



 魔力砲の話にみんななって、ただの狩人アニバルのことを多くの人は見向きもしなくなってきたよ。


 エクトルはそれに気づいてアニバルがしたことを話そうとしたけれど、アニバルが魔鳥に登って頭の飾り羽を二本切り落としたんだ。


 フェデリコの前に降りて、こう頼んだんだ。


「俺はこの羽二本あればいい。あとはあんたにやる。約束通り好きなだけ触れ。ただこの鳥を売った金は貧しい人たちのために使ってくれないか?俺みたいに捨てられる子どもがいないように」


「わかった。そうしよう。これだけあるならかなりの額になるだろう」


「ああ。でも羽根がありすぎて暴落しそうだが」


 フェデリコはくすりと笑ったんだ。


「確かに。暴落しないように私が管理しよう。アニバル殿。貴族にならないか?」


 アニバルはお誘いを断って、翌日には森に帰ってしまったんた。


 兵士に村まで送ってもらって、畑や家々の様子を確認したよ。氷の鳥のせいで秋から冬に数時間だけでも変わったから、寒さで収穫前の農作物が枯れてしまったんじゃないかって不安だったんだ。


 村人たちは馬車からアニバルが降りてきて集まってきたよ。村長が目を潤ませて手を握ってきたんだ。


「よくぞご無事で」


 意識がないままアニバルは運ばれたきりで、誰もこの村にアニバルの無事を知らせていなかったんだ。


「心配かけて悪かったな。氷の鳥(パハロ・デ・イエロ)の影響はなかったか?」


 発車した馬車に軽く手を挙げてから、村長に聞いたよ。


「葉物は一部枯れてしまいましたが、イモ類は無事でした」


「冬越せそうか?」


「なんとかなるかと」


 アニバルは鞄からずっしりと重い袋を取り出したよ。


「色々入り用だろう。これ使ってくれ」


 じゃっと立ち去ろうとするアニバルの腕を、村長は慌てて掴んだよ。


「こここ、このお金どうしたんですか?」


 村長は袋にぎっしり詰まったお金に、目が落ちそうになるくらい目を見開いていたよ。


「ああ。一つ羽根を売ったんだ。この村の被害はよそより大きいだろうから金に替えてきた。その袋と同じくらいの金がまだあるから、額も額だし街の銀行に預けておいた。俺の名義にしたから下ろしたかったら言ってくれ。

 俺は領主サマからの褒賞金もあるし、もらってくれ」


「あ、ありがとうございます!」


 日が傾き始めたからアニバルは足早に小屋へ向かったよ。木々の陰になって暗くて見づらかったけれども、住み慣れた小屋を見てとても安心したよ。


 ドアを開けようしたけれど、建て付けが悪くなかったのか引っ掛かりながら開いたよ。


 目の前に暖炉が見えるはずが、どうしてか木が見えたんだ。窓から細い若木が部屋の中へ横たわっていたんだ。


 氷の鳥が暴風を起こしたときに木がすっとんで、アニバルの小屋の窓に刺さってしまったようだよ。


「…嘘だろう」


 秋も深まり窓が割れた部屋で夜を明かすのはかなり冷えるよ。吹き込んだのか、雨ざらしになって床も濡れているし、魔物も入ってくるだろうからここでは寝られないよ。


 ランタンをつけて、アニバルの師匠の羽根を確認したよ。パッと見、傷はついていなさそうだったんだ。


 夜は間近に迫り、木を退けて窓を板で塞いでと頭の中で猛スピードで計算したけれども、とても間に合わなそうだよ。


「水神様…!」


 村人の男二人が走ってきたんだ。


「家がめちゃくちゃになっているのを村長が伝えそびれたみたいで」


 アニバルが帰ってきたら村長がうちに泊まってくれと言うつもりだったのが、大金を渡されて気が動転してしまったようだよ。


「俺もどうしようかと考えてたところだったから、助かったぜ」


「直そうと思っていたのですが、氷の鳥(パハロ・デ・イエロ)を倒した水神様を領主や皇帝が放っておくわけがないと。水神様はここに戻られないかもしれないから、壊れた村の家々のことを優先してしまいました。水神様はこの村を守っていただいたのに、お住まいを直すのを後にするなど申し訳なく」


「気にするなって。俺も色んなやつから生き返るとは思わなかったって言われたからよ。とりあえず、真っ暗になる前に村に戻ろうか」


 アニバルは飾っていた師匠の羽根を鞄にしまってから、村に戻ったよ。家が直るまで村長の家に泊めてもらうことにしたんだ。


 小さな客室を一部屋借りてアニバルは寝ることにしたよ。でもなかなか寝付けなくて、辺りが薄明かるくなるころに起きて外へ出たんだ。


 すっかり冷え込んで暑がりなアニバルも腕をさすったよ。


 村で唯一の教会の前で足を止めたんだ。小さな小さな教会で入り口も一人通れるくらいだよ。扉に鍵はかかっていなかったようで、押したらギィッと小さく音を立てて開いたんだ。


 日の出前の教会の中は真っ暗だったよ。


 この教会にはアニバルの師匠がたまに祈りに来たけれど、アニバルは興味がなくて幼いころは扉の前で待っていたんだ。大人になってもあえて入ろうとはしなかったよ。


 アニバルはロウソクに火をつけて、祭壇へ向かったよ。寒々とした空気の中に静ひつさと荘厳さが漂い、無意識に身が引き締まったんだ。


 祭壇の前の燭台(しょくだい)にも灯りをつけて、うっすらと浮かび上がった神々の像を順に眺めていったよ。


水の神(アグルア)火の神(ジャーン)大地の神(ティーエス)…」


 そして、一つの像の前に膝をついたんだ。


裁きの神(ジュリシオ)よ。どうして俺は裁かれなかった?どうして俺は転生した?異教徒の教えは正しかったのですか?

 どうして、この国の多くの民はあなた方は信じられていないのですか?」


 どうして、どうして。


 問うても答える声はなかったよ。


「…何で?どうして、いつも答えてくださらないのですか?

 死ねば会えると思ったのに。俺が間違っていたなら、裁いてくださると思ったのに!」


 吹雪と凍てつく寒さで意識が遠退く中、濁流のように押し寄せた自分ではない誰かの記憶。


 アニバルはエクトルたちに嘘をついたんだ。前世の記憶があるのに覚えていないと。


 ルドという名のレナータの男であったということを。


「生まれ変わり、異教徒の教えを知らなかった敬虔なエトーレが生まれ変わりました。生まれ変わり、転生。あの時代ではあなた方の教えにはなかった。なんで転生がさも当然のように信じられているのです?

 エトーレたちがいう始祖は、ルドのことなのですか?ここはレナータではありません。何故、こんなことに?」


 アニバルは口を閉じて思考の海へ深く潜ったよ。


 息子のフェデリーゴが初代ならば、こんな寒い場所に国を作ったのだろう。ルークススペース帝国は、ルドの死後に滅んだのだと簡単に考えられたんだ。そしてフェデリーゴたちはレナータを追われた。


 滅んだかどうかは地図を見ればわかるじゃないかって?

 アニバルは学校に行っていないし、デスペハード帝国のごく一部、生活してきた場所しか知らずに生きてきたんだ。エクトルたちに聞けばよかったんだけど、前世の記憶がないふりをしているのに今のレナータはどうなっていると急に聞くのは変だよね。


「何が何だかわからない。俺はどうすべきだと?あの子らの望む通りに皇帝になれというのか?

 俺の国ではないのに?どうしろというのか、この俺に!」


 いつの間にか祈りの格好から床にうずくまっていたよ。床は氷のように冷たかったよ。


「…水神様?どうされましたか?」


 村長がランタンを持って教会に入ってきたよ。


「具合も悪いのですか?」


 うずくまっているアニバルをそっと起こすよ。


「…なんでもない」


「そうですか。珍しいですね。水神様がここにいらっしゃるのが」


「村長。お前たちが帝国から見捨てられているのはこの教会のせいか?」


 村長は一度祈りを捧げてから、アニバルに長椅子に座るように促すよ。


「そうです。帝国は始祖という方は神の力を持ち、神としています。詳しいことはわかりませんが、俺たちが信じている神々のお一人、水の神(アグルア)様の存在が邪魔なのだそうです。

 昔、皇帝に始祖という方は人間であって、神ではないと神使様が発言したことで多くの神使様や信徒が殺されたといいます。今はそのようなことはありませんが、信者たちは息を潜めるように暮らしています。

 ここの教会も神使様がご病気で亡くなったあとは、新しい方が来ておりません。呼ぼうにもこのような辺鄙なところに来ていただけません。それに神使様がいる教会は兵が置かれます」


「…兵?監視しているということか?そんなことになっているのか」


 ルドの息子であるフェデリーゴは信者であったから弾圧は考えにくかったよ。ただ千年の時を経るうちに王権を確かなものにしようとして、フェデリーゴの後の皇帝が自分の祖先である始祖という人を神にし、神の血筋である自分たちの信仰や政治は正しいとして、他の宗教を弾圧したのかもしれないね。


「水神様。おたずねしてもよろしいでしょうか?あの貴族の子どもや領主様がおっしゃったように、水神様は始祖という方の生まれ変わりなのですか?」


 朝日がステンドグラスに差し込み、アニバルの顔を照らしたよ。村長は目にうっすら涙のあとと、アニバルの暗い瞳に息を飲んだよ。


「…俺は転生者だ。前世はレナータで神々の教えにそって帝国を築いたことがある。その皇帝をデスペハード帝国の連中が始祖というのなら、そうなのだろう。当時はエルスターにデスペハード帝国なんてなかったはずだが」


「…レナータの国の名前はルークススペースといいますか?」


 アニバルが勢いよく振り向いたから、村長は驚いて身を少しそらしたよ。


「そうだ。あの国は今はあるのか?」


「俺らは帝都の人間のように学んだわけではないので。ただそういう国はレナータにないと聞いています」


 アニバルは唇を噛んでから、ステンドグラスを見上げて、しばらくしたらクツクツ笑いだしたよ。


「思った通りだった。俺が死んで滅んだんだ。息子たちはこの寒い土地に追われて国を築いた。

 でもどうして俺はまた転生した?

 神々の教えにそって作った国はたかだか三十年で滅んだのに、息子が築き、あなた方を否定した国は千年続いている。

 こんな裏切られ、負けた男よりはフェデリーゴを転生させた方がいいだろうが!何故だ?何故今ここなのだ?

 散々な死を迎えた後に、前世もその前も親はいないし、現世では捨てられ、なんの嫌がらせなのだ?転生こそが罰なのか?平民風情が王になった罰なのか?

 …どうしていつも神々は答えてくださらない。どうしてこの村のように、あなた方の教えを信じた者たちは救われないのか?疫病のときもわずかな蓄えや明日食べる食糧を捧げて祈った者たちに、救いの手を差しのべなかった!」


 アニバルは頭を抱えていると、村長が落ち着いてと優しく背中を撫でてくれたよ。とてもその手があたたかくて懐かしかったんだ。


「神々は俺たちを見守ってくださり、お言葉をかけてくださるわけではないと聞いています。祈りをやめてはならない、やめてしまえば天の国(パライーソ)には届かないと」


「信じて待った。教えにそって法を定め、生きてきた。神々はなにもしてくださらなかった。

 教えが正しいと異教徒を殺すことを許した。正しいと思ったからだ!なのに、どうして異教徒の考えである転生がこんなに浸透している?教えを子孫が否定している?」


 聞かれても村長はわからないよ。


「レナータでは神々の教えは普通だったのですか?」


「俺…の前世のころは絶対だった。異教徒だと判れば異端審問にかけられ、殺された。

 ここはレナータでもあの時代でもない。

 …ああ、そうか。フェデリーゴは教えに忠実に生きたのに殺された俺を見て、神々に失望して、存在を否定したのか?

 ああ、そうか。ここでは神々の教えは異教なのか」


 ルドを神様にするとは別のお話だけど、そこまで混乱していてアニバルは頭がまわらないよ。立ち上がって祭壇に向かって叫んだんだ。


「俺はどうして天の国(パライーソ)にも地獄(インフィエルノ)にも行けない!

 一番最初の生で罪を犯したからか?何の罪でこの世に彷徨わねばならないのか!どうして、俺は転生するんだ?どうして…」


「水神様」


「水神と呼ぶな!俺は神なんかじゃない。人間だ。国を築くのを失敗した男だ!

 水の神の名はアグルアだろうが!」


「すみません。俺たちはあなたを尊敬しているので、これ以上どうやって敬えばいいのか、学のない俺たちの浅知恵です。不愉快ならばやめます。

 アニバル様。あなたはこの村を何度も助けてくださった、恩人です。俺らはあなたの前世を知りません。あなたは狩人アニバルです。

 帝国とか始祖ととか考えないで、この村にいてください」


 村長はアニバルの手をとってから、ああと呟いてさすったよ。


「とても冷えてますね。風邪をひいてしまいます。妻が温かなスープを作っていますので、飲んでください」


 アニバルは村長が呼ぶ水神様は神という崇高なものではなくて、愛称のようなものだと知ったよ。


 日本人でお稲荷さんとか仏さんとか、神仏を親しみやすく呼んでる人がいるでしょう?その感覚に似ているかな。


「取り乱した。悪い」


「いえ。落ち着かれたようでよかったです。水神様が始祖という方なら、どうして帰って来られたのかと思っていました。前世に色々あったのですね」


 真っ暗だった教会に朝日がさしこみ、アニバルの背に柔らかく届いたよ。村長はアニバルが小刻みに震えていたから、家に戻ろうと言ったけれど、アニバルは動こうとしないよ。


「…こわかったんだ」


「え?」


「あの子らといることが怖くなったんだ。

 前世で死ぬとき故郷の領主たちに囲まれて殺されて。

 そのときあいつら俺に言ったんだ。化け物だと。

 熱波で作物も枯れて、人も家畜も死んで。みな苦しんでいたから、少しでも助けたくて魔法を使った。それが自分の寿命を縮めるということを知らずに。

 それなのにあいつらは抵抗した俺を化け物だか悪魔だとか言って!

 故郷のため、人々のために尽くしたのにこの仕打ち…!もう嫌になった。だから国とかそういうのは関わりたくない。普通に…普通に生きたい」


「お辛い目にあわれたのですね。前世がどうであれ、アニバル(・・・・)様がこの村を救ってくださった。誰もが恩を感じて恨みはしません。それを忘れないでください。

 まずは冷えてしまった身体をあたためて、傷ついた魂を癒しましょう。そうすれば気持ちも少し楽になるはずです。

 狩人アニバル様。ここはあなたの村です。村人たちはあなたがいてくれると喜びます。教会はいつでも開かれています。祈りたいときはあたためますから、今は帰りましょう」


 村長は優しく背を押して手を引いてくれたよ。


「ありがとう、村長」


「いいえ。礼には及びません。俺は水神様にこんなことしかできませんから」


「…氷の鳥(パハロ・デ・イエロ)を倒したけど、あの小屋に住んで今まで通りこの村に顔を出そうと思う」


 村長はそうですかと嬉しそうにしてくれたから、アニバルいや、ルドは少し泣きそうになったよ。


「あなたのおかげで俺の魂が救われそうです。感謝します」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ