表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流刑の覇王  作者: 卯月よひら
第一章 三王の話
28/278

27話 暴君ルドの話23

 マッテオは渡されたお金の入った小袋を呆然と見つめていると、兵士に城の門の外へ押し出されたよ。


 ルドは奴隷のマッテオの仕事と住むところを探すようにいったけれど、ステファノはそこまでする必要はないとマッテオを追い出してしまったんだ。


 マッテオは途方にくれながら門から離れたよ。ジーナはオリゾンテにいるから、別れを告げられずにまた離れることになったよ。


「あ、いたいた」


 街の子どもの格好をした少年が、馬をひいてマッテオに声をかけたよ。マッテオと門を交互に見てから溜め息ついたよ。


「やっぱり人をつけてなかったんですね。陛下からマッテオ様の家と仕事の手配ができるまで、俺の家に泊めるように言われています」


「…ルドの手を借りないようにするよ。気遣いありがとなって言っておいてくれ」


 ルドも嫌な思いしたけれど、マッテオも傷ついていたんだ。ルドが自分を追い出したことに。理由もルドの気持ちもわかるけれど、割りきれるほど、このときのマッテオには余裕がなかったよ。


「困りますよ。ご命令なんだから。俺が怒られますし。おっと早くしないと外門が閉まっちゃう。俺の家は街の外なんで。早く!」


 少年はマッテオを馬に乗せると自分も乗ったよ。


 マッテオは言われるがまま馬に乗ってしまったけれど、あって思ったよ。


 いい子のみんなは、相手が子どもだとしても知らない人についていちゃっだめだよ。


「お前、ルドのなんなんだ?」


 風をきる音で聞き取りにくいけれど、少年は大声でいったよ。


「俺は元奴隷なんです。グランデフィウーメの貴族の下で働いていたんですが、悪知恵入れられて陛下に魔法で攻撃してしまったんです。

 その場で殺されるのを陛下が助けてくださって。それから陛下の王属部隊の見習いになりました」


「ルドから聞いたことがある。キアーラさんとのデートを邪魔した奴隷の男の子がいたって」


「あーそれです。それ」


 元奴隷少年は楽しそうに笑うよ。街を出て、田舎道を馬で駆けていくよ。


 日が暮れると少年は魔法の火を出して、灯りにしたよ。いっこうに着かないからマッテオは不安になったよ。


「お前さん、ルークススペースの兵士なんだろう?グランデフィウーメの田舎に家があるのか?」


「俺というより知り合いの家なんで。俺は明後日には陛下と一緒に、ここを発たなければなりませんから」


「そっか」


 ルドは遠いルークススペースへ帰ってしまうよ。奴隷のマッテオが会いに行くにはとても危険で長い道のりなんだ。旅の途中で奴隷だと悪い人に見つかれば、捕まって売られてしまうかもしれないしね。


 月明かりに照らされた夜道にマッテオは見覚えがあったよ。


 まさかと思っていると畑の中にぽつんと佇む一軒家の前で止まったよ。


「着きました」


「着きましたって、ここはルドの…」


 ルドの実家だったよ。売らずにいたからね。


「明日俺が食糧届けます。畑は分けてもらえるように交渉しますから」


「俺が使っていいのか?」


「そうです。陛下のご命令なんで。では、これで」


「おい。もう暗いんだぜ?危ないだろう」


「大丈夫です。ここは魔物もいませんし。陛下に無事に届けたと報告しないと。もしここを出ていかれるときはご連絡くださいね」


 と言い残して少年は来た道を戻ってしまったよ。


 マッテオは玄関の扉を開けると懐かしい香りに泣きそうになったよ。


「ただいま…」


 そこにはお帰りというジーナの声はなく、早く夕飯食べようというルドの笑顔もお父さんと呼ぶロレンツォの声はなかったんだ。


 喉が渇いたから、裏の井戸で汲んで火を起こしたよ。捲った腕に目を止めると、あるはずの奴隷の焼き印がなかったんだ。ルドが消したんだってすぐにわかったよ。腕を掴んだときに治癒魔法で消したんだね。


 奴隷の焼き印はある意味怪我だから、治癒魔法である程度治すことはできるよ。


「ルド、お前…」


 ルドはマッテオが二度と人に売られてひどい目に合わないように、こっそり消してしまったんだ。本当はやってはいけないんだよ。バレればいろんな人からルドは責められてしまうんだ。


「馬鹿野郎…」


 静まり返った暗い家の中で、孤独とルドの想いに、マッテオはその場で泣いてしまったよ。


 元奴隷少年はルドに報告しようとしようとしたけれど、キアーラを胸に抱いたまま眠っていたから朝にすることにしたよ。


 この後、この少年はマッテオにまた会いにいったよ。今度はカスカータの下女、毒入りの酒を持たされた女の人だよ。彼女も処刑しようという意見もあったけれど、ルドは彼女を無罪だと判断したよ。でももうカスカータにいられなくなったんだ。一時的にマッテオのところに預かってもらうことにしたんだ。




「ルークススペース国王陛下を暗殺しようとした罪で処刑する!」


 罪状が読み上げられると、集まった民衆は一斉に罪人を批難したよ。平民の暮らしは次第によくなってきたから、ルドの治世は多くの平民(・・)から支持されていたよ。


 処刑人は元カスカータ宰相の首に斧を振り下ろしたんだ。前にも話したと思うけれど、人間の首って簡単には首は落ちないんだよ。事切れるまで悲鳴が広場に響いたよ。


 知り合いの断末魔の叫びと、その光景がロレンツォの死を連想されて、ルドは耳をふさいでその場から逃げたくなったよ。でも王様だから毅然と処刑を見届けなければならなかったんだ。


 終わると馬車の中でジュストが待っていたよ。


「終わった?」


「うん」


 ジュストにはまだ見せたくないと馬車で待つように指示したんだ。彼は不満そうだけれどね。


 ルドが落ち込んでいるように見えたから、ジュストは明るいお話をたくさんしたよ。ジュストの優しさにルドはあたたかな気持ちが戻ってきたよ。


 人は平気で嘘をつくし、裏切る。冷たい冷たい世界。


 でもまだ俺は大丈夫。人を信じていける。


 そう自分に言い聞かせたよ。

 



 首謀者は処刑され、関係ありそうな人は牢に入れられていたよ。実際に毒を入手した人や元カスカータ宰相の協力者とかね。


「アリエーテ様。相談が」


 ルドは神使として裁判に携わっているアリエーテを呼び出したよ。


「どうされました?陛下」


「処刑方法ですが、首を落とす以外はないのでしょうか?罪人はとても苦しみながら死にます」


「死すべき罪人であり、処刑の苦しみは罰です。

 今日処刑された罪人のことを思われてのことですか?あの方は陛下に毒と裏切りという苦しみを与えました。あの者に罰を与えるべきではなかったというのですか?」


「そういうわけではありません。死ぬことが究極の罰であります。死後に裁きの神(ジュリシーオ)様の裁きも受けるわけで、罪人は二度裁きを受けることになります。死刑の者は死以外の罰を受けるのは重すぎるのではないでしょうか?」


「二回裁きを受ける。確かにそうですね。苦しまない死刑方法を考えましょう。

 陛下は本当に慈悲深い方ですね」


 アリエーテが勝手に感動しているけれど、ルドは首を刃物で斬るのがロレンツォの死を連想させて嫌なだけだよ。

 ただ個人のトラウマで死刑方法は決められないから、アリエーテに裁判官たちと話し合ってと頼んだんだ。


 毒殺という方法はあるけれど、公開処刑は見せしめだからね。目の前で死んだという事実を示すには、首を斬るのがわかりやすいよね。古来から処刑方法は斬首を取られていたんだ。慣習として裁判官は首を落として死を示す方法は変えられないと言うよ。


 裁判官や処刑人は、斬れやすい刃物の研究や魔法が使えないか試行錯誤したよ。処刑人の一人がルドが心臓を破裂させられると聞いて、心臓を破壊してから首を落とせばという話が出たよ。


 アリエーテはルドに確認したけれど、心臓を破壊された人は苦しむからと許可しなかったよ。それに処刑人で心臓を破壊できる水の使い手は少なかったんだ。


「心臓ではなく首の血管を破裂させてみては?」


 ということで水の使い手たちは動物で実験し始めたよ。首の血管は心臓より視やすいいらしいよ。

 連れてこられたサルを使ってルドもやってみたよ。最初は上手くいかなかったけれど、最終的に綺麗に一瞬で首ちょんぱにできたよ。


「次の処刑はこれでいきますか」


 アリエーテが言うとルドは試しにやってみようと、あまり気乗りしないように言ったよ。


 元カスカータ宰相がルドに毒を盛るとわかってて、手伝った人も死刑になったよ。


 関係者五名と別の事件で死刑になった人五名が、広場の処刑台に並べられたよ。罪人はうつ伏せに寝かせれたよ。


 刃物で斬るときは一人ずつしたけれど、魔法だからいっぺんにやろうという話しになったよ。


 ルドが合図すると罪人の首に魔法がかけられて、一斉に首ちょんぱになったんだ。床に首が転がり、処刑台から血が溢れて流れ落ちたよ。魔法を使えない人たちからすれば、勝手に首が落ちたように見えてホラー映画さながらだったと思うよ。


 新しい処刑方法に民衆は一瞬しーんと静まり返ってから、悲鳴をあげる人や吐く人が続出したよ。罪人を苦しめないようにと慈悲の気持ちが、結果とて多くの人に恐怖を与えてしまったんだ。

 ルドも気分が悪くなったから、やっちゃったと思ったよ。


 王様がここでゲロするのは威厳が保てないって頑張って立ち上がって、処刑人を労ったよ。振り返ると青い顔をしたジュストが立っていたんだ。


「ジュスト。見たのかい?やめた方がいいと言っただろう?」


 大人の威厳をフル動員して、微笑みかけるとジュストは恐怖を浮かべたままルドを見上げるよ。


 ジュストはどうしてこの光景を見た後でルドは笑っていられるんだと、恐くなったんだ。


 ルドが肩に手を置こうとするとジュストは身体を縮ませたよ。


「…。行こうか」


 ジュストに部屋で休むように言ってから、ルドはアリエーテに教会に来るように頼んだよ。待っている間に教会の祭壇の前で祈っていたよ。


「陛下。お呼びでしょうか?」


「今日の処刑方法はあまりよくありません。やめましょう。それと魔法で人の首をはねるのを禁止せねば。真似する犯罪者がいるかもしれません」


「犯罪に利用される可能性はありますね。至急法整備をしましょう。

 しかし首も綺麗に落ちて、罪人は苦しまなかったと思いますが?」


「民が怖がっていました」


「罪を犯せばあのような目に合うと民衆に見せれば、犯罪の抑止力になります。そのための公開処刑でしょう。恐ろしいのなら効果があったのでは?」


 アリエーテは一度に大勢の人を首ちょんぱできる魔法を恐ろしいと思わないみたいだね。処刑人がしたことだけれども、許可したのはルドだから自分のせいだと思っていたよ。


天の国(パラディーゾ)にあのような処刑はないでしょう」


「陛下、天の国(パラディーゾ)には罪穢れのない者しかおりません。処刑自体がないでしょう」


 ルドがビビっちゃっていることに、アリエーテは困ってしまったよ。


「…あの方法でも構いませんが、一人ずつにしてください。

 魔法は神々がくださった神聖な力なのに、あのような使い方をし、処刑人を(おとし)めてしまいました。民に魔法の正しい使い方をきちんと広めなくては」


 魔法を使えない人が、使える人は前触れもなく首ちょんぱにできるという風に思ってしまわないか、ルドは心配だったよ。


「陛下…そこまでお考えだったのですね。私が浅はかでございました。よほどの罪人ではない限り絞首刑にしましょう」


 絞首刑も苦しいと思うけどね。ルドはこれ以上はわがままだなと思って黙ったよ。祭壇の前に立って、裁きの神(ジュリシーオ)にこれでいいのかと聞いたよ。


 でも答えはなかったんだ。




 ジュストは自分の部屋に戻らず、庭を散歩して気分転換をしたよ。処刑のあとのルドのことばかり考えてしまって、ちっとも気分が変わらないよ。マグナスという恐ろしい一面はルドの中にもいる。優しいルドが仮初めで、あのマグナスが本当の姿なのではないか。そんなことを考えてしまうのが嫌だったよ。


「兄ちゃんは優しい人だ!」


「ジュスト殿」


 誰もいないと思っていたのに名前を呼ばれて驚いたよ。


 少し離れたところに、黒い服の男が立っていたよ。


「驚かせてすみません。思い悩んでいるようで気になりまして」


「えっと、あなたは?」


 ジュストはどこかで見覚えがあったけれど、名前まで浮かばないよ。男は妙に肌が白くて不健康そうだけれど、にっこりと笑うと案外若く見えたよ。


「失礼しました。私はトンマーゾ・ヴィペラと申します」


「ヴィペラってグランデフィウーメ家の?」


「そうです。兄が陛下の母君に大変失礼しました。

 兄は色々ありまして、私が兄のあとを継ぐことになりました。ルークススペース国王陛下にご挨拶しに参った次第です。今後ともお見知りおきください」


 恭しく頭を下げたよ。ヴィペラ家の人にいい印象がなかったから、ジュストは警戒したんだ。それがもろバレしてて、トンマーゾは敵意はありませんと、にっこり微笑んでみせたけれども、逆に死神みたいで怖かったよ。


「…こちらこそ、よろしくお願いします」


「よろしければお話しませんか?」


「いえ、陛下に部屋で休むように言われてますので」


「ああ、あのカスカータの罪人の処刑を見られたのですね。私もあのような方法は初めて見ました。どのように魔法を使えば人の首は斬れるのですかね?」


 ジュストは集団首ちょんぱを思い出して、顔を背けたよ。トンマーゾは共感するようにうんうん頷いていたよ。


「ルークススペース王を怒らすと恐ろしい目にあうということを、私も改めて思い知りました。ジュスト殿はお義父(とう)様と一緒にいて恐ろしいと思いますか?私は兄のこともありまして、少々会うのが恐ろしいのです。でもグランデフィウーメ領主より、エドモンド様と共にルークススペース国との外交を任されることなりまして、嫌だと言えないのです。

 だから陛下を怒らせないようどうしたらいいか、ジュスト殿に助言をいただきたいのです」


 ルドを恐いと思っていたジュストは、言い当てられたような気がして怯んだよ。


「助言って、別に特にありませんが。兄ちゃ…父は嘘つきと悪いことをした人に冷たいだけです。あの処刑は罪人が苦しまないように神使様たちと考えた方法です。父は優しい人なんで、恐くありません」


「そうですか。ジュスト様のお話を信じて陛下に挨拶しに行くとしましょう。お話ありがとうございました。よろしければまたお話しましょう。

 では」


 ちょっと残念そうな顔をトンマーゾが浮かべたのが不思議だったよ。ジュストは部屋で一人いると、トンマーゾにからかわれたのかと思い至ったよ。元平民の子どもが処刑を見てビビってるってね。


 でもちょっと違うような気がしたけれど、トンマーゾがどこの馬の骨かわからないジュストに声をかけた理由が思い当たらなくて、考えるのをやめたよ。


 ちょうどミアが、夕飯できたと呼びに来てくれたからね。


 アズーロとローザの他にゾリグが加わって、賑やかな食卓のおかげで処刑とトンマーゾのことを忘れたよ。


「そういえば、ジュスト。トンマーゾ・ヴィペラ様に会ったんだって?彼がジュストのことを年の割にはしっかりしてて、驚いたって言ってたよ」


 食事が済んで、部屋に戻ろうとしたジュストを呼び止めたよ。ジーナはアズーロとローザに支えられて部屋に戻っていたよ。ジーナの前では嫌なことを思い出すだろうと、ヴィペラの名前を出すのは控えていたんだ。


「あ、うん。会ったよ。ちょっと不気味な人だよね」


「ん?そうかな?生まれつき肌が白いから病人と間違えられるって冗談言っていたけれど。

 マルコさんが。あ、トンマーゾ様のお兄さんが、俺に仕えたいって言っているそうなんだ。でもジーナのことがあるから神殿には置きたくないんだよね」


「あの変態、マルコっていうの?俺も反対。ジーナ母さんはマッテオ父さんがいなくなって気落ちすることも多いし」


「そうだね。どうしようかな」


「どうしようも、断ればいいじゃないか。気が変になってるんだろう?」


「変になっちゃってるね。正直治ってほしい。俺に赦してほしいとか言って、たくさんお金くれようとしたし」


「お金もらっておけば?」


「ヴィペラ家のお金だよ?もらえないよ。教会に寄付してといったら本当に全財産寄付しようとしたらしいし。エジリオ様が気づいて、マルコさんのお父さんに話して発覚したんだって」


 色々事情があるみたいだね。


「変態はなんで変態になった上に、そんなに変になったの?」


「変態、変態言うのやめなさい。ジュストは知らないんだっけ?」


「知りたくないもん。変態のこと」


「マルコさん、だ」


「変態マルコさんは、どうしてジーナ母さんに酷いことしたの?」


「マルコさんは魔法が使えない人だったんだ。昔から劣等感があったらしく、だから魔法が使えないジーナに最初は優しくしていたらしいんだ。

 どうやらジーナが話す農民ルドが俺だと分かって、段々辛く当たるようになったらしい。ジーナも俺のことを平民なのに魔法が使える凄い子とかいって、マルコさんの前で褒めていたらしいし」


「変態マルコが精神脆弱(ぜいじゃく)なだけじゃないか。兄ちゃんもジーナ母さんも関係ないし、立場の弱い人に八つ当たりって最低だと思う」


 ジュストは正論をズバズバ言うよ。


「ジュストは強い子だね。人はみんなそんなに強くないんだ。

 多分マルコさんは自分に自信がなかったんだ。自分は凄い人なんだって思いたくて、ジーナに酷いことしたんだと思う。

 マルコさんがそうなったのは、魔法使えて当たり前という貴族の考えのせいだと思うんだ。グランデフィウーメだけの話ではないよ。ルークススペースだって同じで、マルコさんと同じ思いをしている人が大勢いる。

 魔法が使えない人が貴族でも平民でもつらい思いをしない国。そのためには少しずつみんなの考えを変えていこうと思うんだ。いきなりだと反発する人もいるからね。

 まずは平民も力があるんだって貴族たちに見せて、徐々に平民の学校をつくって知識をつけてもらおうと思っているよ。魔法を使えない人にも魔法が使えるだけがすべてじゃないって、自信をつけてほしいんだ」


「ゲレルのお守りのこと?」


 ルドの計画は進んでいて、プラテリアに生産場所を建設しているよ。ゲレルのお守りを大量生産して兵士たちに配ろうと考えていたよ。もちろん、売るよ。そうじゃないと作った人も国にもお金が入らないからね。


 兵士を守りたいというのもあるけれど、実戦でお守りがどのくらい使えるかということも知りたいからね。

 

「マルコさん、結構器用だって聞いたから働いてもらおうかと思って」


「グランデフィウーメだよ?大丈夫?秘密をペラペラ話さない?」


 ジュストの心配はもちろんステファノも考えたよ。寄付事件を聞いて、エジリオと一緒にステファノはマルコ・ヴィペラに会って、ルドのことを畏怖の神だと思っているからこいつは使えると思ったようだよ。


 カスカータの弟くんのような下手な味方より、口は固いだろうってね。


「えげつない」


「エジリオ様も神々は、この者に更生する機会を与えたのでしょうだって」


「エジリオ様ってたまに悪党っぽいよね」


「聖神使様だよ。そんなことを言わないの。

 グランデフィウーメはヴィペラ家をうちの外交担当にするって決めたから、どのみちトンマーゾ様と仲良くしなきゃいけないんだ」


「わざわざ因果のあるヴィペラ家を窓口にしなくても」


「俺もそう思う。あの領主のことだから俺を試しているのかと思うよ。トンマーゾ様がやる気だったみたいだから仕方ないよ」


 ジュストは首をかしげたよ。本当はやりたくないって、トンマーゾから聞いていたからね。


「兄ちゃんのこと恐いってビビってたけど?」


「え?そうなの?まあ外交官だから口と腹は違うのかもね」


 ルドに会ったときは、お会いしたかったとハイテンションだったらしいよ。ルドがグランデフィウーメの貴族時代のときには会っていなかったんだ。


 ジュストはトンマーゾ・ヴィペラに引っ掛かりを覚えつつ、部屋に帰ったよ。


 ルドはジュストと普通に話せてよかったと思っていたんだ。処刑のあと、ルドを恐がっているように見えたからね。


「血筋大事の貴族が、わざわざ平民出で養子のジュストに会うとは。トンマーゾ・ヴィペラが何を考えているかわからないけれど、しばらく様子を見てみるか」


 グラスに残ったワインを飲み干すとルドも部屋に戻ったよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ