24話 暴君ルドの話20
ジェンテ・デル・カヴァッロに奪われたモノや人を取り返すために、ルドは自ら軍を率いて彼らの拠点に行ったよ。
驚いたことに、グチュルクは動ける男を全員連れて戦争に来たんだ。女の人は戦場にいるべきではないと考えもあったから、拠点には老人女子どもばかりだよ。
プラテリアから連れ去られた人たちは売られてはいなくて、無事だったみたいだよ。男はみんな遠征に行くから、男手がいなくてさらったみたい。
グチュルクにルドは言ったんだ。
「国民の無事を確認しましたので、この地に雨を降らしましょう。でもまた同じことが起きたらこの地を枯らし、あなたたちを消します」
ルドは王属部隊の水の使い手や土の使い手と一緒に複数の大規模魔法をしたよ。
晴れ渡った空が急に雲に覆われて、ポツポツと雨が降ってきたよ。ジェンテ・デル・カヴァッロたちは驚きながら空とルドたちを見たよ。
雨が地面に染み染むと小さな小さな芽がたくさん出てきたよ。これにはプラテリア領軍と国王軍も驚いたんだ。
ルドは雨の中に土魔法の植物を生やす魔法と回復魔法を組み込んだんだ。これは一時的なもので数時間したら草は枯れてしまうけれども、元々土にあった種たちは回復魔法で発芽しやすくなったよ。
季節の神の神使が聞いたら、神々への冒涜だと大激怒するだろうけど。
大規模複合魔法を見てジェンテ・デル・カヴァッロたちはルドに従うと誓ったよ。
グチュルクは誓いの証としてルドたちに酒と食事を振る舞ったんだ。
ルドは言葉がわからないのは不便だと、学ばせるために人を預けたいと言ったよ。その代わり、グチュルクの信頼する人をルークススペースに預けてほしいと言ったよ。
要は人質だね。グチュルクは男の子を手招きして、隣に座らせたよ。
「息子のゾリグだそうです」
通訳農民さんが疲れながらもちゃんと通訳してくれたよ。ルドはグチュルクが自分の言わんとすることを察して、息子を差し出したことに驚いたよ。無知な蛮族と言われていたのを見直したんだ。
無知な蛮族ならば、投石機を改良したり火薬を作ったりできないだろうね。それに気づいたルドはたくさん質問したよ。
魔法が消した方法とかね。ゾリグは自慢げに首にかけていたペンダントを服から出したよ。
透明な小石ほどの大きさのペンダントには、紋様のようなものが彫られていたよ。
「水晶?」
透明な小石は水晶みたいだよ。水晶は魔法具の核となる天然石で一番効力の強い石になるよ。あまり採れないから高くて、街中で売られている水晶の魔法具のほとんどは紛い物のガラス玉か、効果の低い水晶で作られているよ。
水晶といっても産地によっては質が異なって、魔法具にならないものから使用回数無限の超レア水晶があるんだ。
グチュルクたちは魔法具になりそうな、質の高い水晶の採掘場所を知っているみたいだよ。
ゾリグが持っていた魔法具のペンダントはお守りだそうだよ。
成人を迎えると一人で採掘場所に行って、水晶を採ってきて紋様を刻んでお守りを作る。それが一人前の大人になったという証らしいよ。
「紋様を刻む?それで魔法が発動するの?」
将軍たちに聞いても首を振るばかりで、誰も知らないみたいだよ。
天然石や魔法具は魔法をかけて初めて使えるんだ。お守りつまり魔法具に防御魔法を込めて魔法を消した訳ではなさそうなんだ。ジェンテ・デル・カヴァッロは魔法を使わないで戦闘中に魔法を発動したってことだよ。
「どういうこと?すでに魔法が発動状態ということなの?」
お土産が一つできちゃったね。この後ジェンテ・デル・カヴァッロのお守りの発見で、魔法の分野がもう一つ生まれることになるよ。魔法を紋様や文言でモノに定着して発動できる魔法陣だ。ルドの時代に魔法陣が発見されたけれども、すぐに使えるようにならなかったらしいよ。中世後半でやっと人々は魔法陣を使いこなせるようになって近代でその技術が花が開くんだ。
ルドはこの奇妙なお守りよりも原材料の水晶に興味を持ったよ。
ルークススペース国の特産は塩だけれども、資源はいつか尽きる。お金になる他の資源も見つける必要があるとステファノにも言われていたよ。
グチュルクに水晶が採れる場所に今度案内してもらうことにしたんだ。
ジェンテ・デル・カヴァッロの風習を聞いているうちにグチュルクの年齢がわかったよ。ルドは二十代かと思っていたけれども四十過ぎていたらしいよ。
グチュルクはルドを三十代だと思っていたらしく、二人は見つめあってから大笑いしたそうだよ。
「グチュルク殿は若く見えるね!」
「ルド殿は若いのに貫禄がある」
言葉は互いにわからなかったけれども、そんなこと言ってるんだろうなと思って、また笑っていたよ。
酒盛りではないところで、エジリオはジェンテ・デル・カヴァッロの長老に会っていたよ。通訳の農民さんを何人か連れてきて、訳してもらったよ。
そこで信仰について確認をしてから、彼らが理解しやすいように教えを説いていくよ。
「水の神が生命を作った?ではあの王は神様なのかね?」
違うとエジリオは言ったんだけれども、長老は納得してしまったよ。
長老はグチュルクのおばあさんらしく、グチュルクは父と嫁の話は聞かなくてもおばあさんの話は聞いたと言うよ。おばあさんからルドは雨の恵みをもたらす偉い人だから敬いなさいと言われて、ルドに恭順を示したよ。
まだ名もないジェンテ・デル・カヴァッロの国を取り込んだルークススペース国は、ついにレナータ最大の帝国になったんだ。
王国と帝国の違いだって?
キミの世界では時代や地域によって解釈が違うらしいから、ここではこう定義しておくよ。
王国は一つの国を一人の人が支配すること。君主を王と呼ぶ。
帝国は一人の人が複数の国と異民族、広範囲の地域を支配すること。君主を皇帝と呼ぶ。
ルドは王様の権限が強い絶対王政をせずに、立憲君主制と呼ばれる政治方法をとっているよ。共和制や民主主義の思想はあっても一般的ではなく、この時代の国の体制にはあまり見られなかったよ。
ジェンテ・デル・カヴァッロの国を平等な国と認めて連合王国にしてもよかったんだけれども、グチュルクが恭順を示したことと、ステファノたちはジェンテ・デル・カヴァッロに差別的な意識があったから、対等という扱いにならなかったよ。
グチュルク王の上に立つことから、ルドは王を束ねる上の位、皇帝になったよ。
ジェンテ・デル・カヴァッロとずっと呼ぶのはどうなのってことで、ルドはグチュルクに王国の名前どうするのと聞いたよ。
「ルドとはどういう意味だと聞いています」
通訳農民さんもお酒を飲んでほろ酔いだよ。でもちゃんと仕事はしてくれているよ。
光りという意味だと言ったら、グチュルクは、では国の名前をゲレルにすると言ったよ。
「ゲレル?」
「光りという意味です」
国の名前をそんなに簡単に決めていいのかとルドは呆れたよ。
グチュルクはルドの気持ちを察したのか、肩を叩いて笑ったよ。
「あなたの雨が光輝いて大地は芽吹いた。よい国の名前ではないかと言っています」
でもグチュルクはルドをゲレルと呼ぶから、なんだかおかしなことになったよ。通訳農民さんもおかしいと思ったのか国の名前と分けようと思って、ルドや将軍たちに確認したよ。
ここにステファノの息子がついてきていたから、光帝がいいのではという話しになって、ルドを光帝と呼ぶことに決めたよ。
それが何人かの兵の耳に入って、それが広まったんだ。ジェンテ・デル・カヴァッロの戦い以降、多くの人がルドを光帝と呼ぶようになったよ。
ルドがジェンテ・デル・カヴァッロ、以降はゲレル国と呼ぶね。ゲレル国を蹂躙しなかったことにより、双方の兵の死者は予想より少なかったよ。
ゲレル国の兵は本当は一万いってなかったとされるよ。グチュルクは数は後回しにとりあえず戦える人を集めてという感じだったから、人数を把握していなかったらしいよ。
ゲレル国の人口はおそらく当時は二万から三万と思われるよ。遊牧民だし、戸籍制度をとっていないから、戦争のあとは軍の大多数は解体されて遊牧生活に戻ったんだ。国民のほとんどがあちこちに移動してしまっているから、グチュルクは人口を把握できなかったんだよ。
ルドはグチュルクがゲレル国土を支配し、反逆者がいなければそれでもいいよって容認したよ。ルークススペース国も全国民を管理していたわけではないしね。
え?ルークススペース国の人口は何人だって?
正直ざっくりしかわからないんだ。戸籍制度もないし、出生や死亡は教会で把握しているけれども、必ずしもあっているかわからないし、災害や戦争で名簿が紛失してしまっているからね。
しかも出生の記載があった教会でお葬式あげるかといったらそうでもなかったから、果たしてその人が生きているのか死んでいるのか履歴がないよ。ほら、結婚したり、仕事を求めて故郷を離れて移住してしまうこともあるからね。
あとは奴隷は人として扱われていないから、教会の記録もないしどこにどれだけいたかわからないよ。
当時の記録でルークススペースとなってから首都オリゾンテの人口は、数年で三倍以上になって街の壁の中では収まりきれないから、近くに第二首都を建設したという記録があるんだ。奴隷が平民になったことや他の地域からの移住者で人口が増えたと言われているよ。
日本だと別の市町村に移住すると役所に届けているでしょう?当時はそんなことしないから誰がどこに移住したか記録はないから、調べたかったら教会の寄付の履歴とか、何かしらの資料や個人の手記とか追うしかなかったよ。
それでルークススペース帝国の人口はというと、ゲレル国約三万、ルークススペース帝国は約五十万人とされているよ。絶世期や奴隷いれたらもっと多いと予想されるよ。
あれ?思ったより少ないって?
当時は乳幼児の死亡率は高くて医療も進んでいないし、栄養状態もよくないから平均年齢はとても低いよ。成人した人も人生四十年、五十年というところだね。もちろん百歳まで生きる人はいたらしいけどまれだよ。
人口が増えない理由は食糧や医療の問題だけではなく、街の構造もあるんだ。ほら街を壁で囲んでいるじゃない?人が増えても簡単に街を広げられなかったということもあるよ。
そう考えると日本ってレナータより面積小さいのに人口多いなって思うよ。百万人超えている都市が十以上あるんでしょう?
ルドたちが見たら都市なのに人口ヤベー栄えてる○○国だって思うだろうね。○○国はお住まい、または近くの百万人超えの都市を入れてみてね。都道府県でも大丈夫!ちょっとここからボクは話が脱線するよ
今の日本の○○国とルークススペース国が戦争したら、魔法使えるルークススペース国が勝てるかな?ほら日本って徴兵制ないでしょう?市町村が持つ兵力って拳銃を持てる警察官くらいでしょう。あ、でも自衛隊さんでてきたらルークススペース厳しいね。
ルークススペースだけではなく、ハイドランジア大陸には飛行機ないからさ。上空から爆撃されたら勝ち目はないね。あとルークススペースは内陸だから海上戦はしたことないよ。国内に大河や運河があるから大型の船はあったけれど戦艦はなかったよ。そもそもルドの時代は火薬でびっくりするくらいだし、銃や大砲ないからね。
空を飛ぶのはハイドランジアの人たちも憧れているよ。近代から現代にかけて飛行機の理論は確立されたけれど、実用化されなかったんだ。
魔法あるんだから飛べそうと思うでしょう?どうしてか。
キミたちの世界にいなくて、ハイドランジアにいるもの。
そう魔物なんだ。
黒い刃なんて出くわしたら、機体が瞬殺されてしまうんだ。空の覇者である鳥類系魔物に人類は敗北したんだ。
あっ、あくびしている人がいる…。飽きちゃったみたいだね。では余談はこの辺りにしておいて。
さて、ルドはグチュルクに水晶の採取場所を聞いたけれど、一族の成人の証として採取する場所は秘密らしいから別の場所を教えたくれたよ。
いくつか水晶をもらったけれど、これが魔法具として使えるものかわからないから、いくつか持って帰って調べることにしたよ。
「鉱山…」
サクスムのことをちらりと思い出して、採掘は奴隷を使わないと決めたよ。
エジリオがグチュルクのおばあさんと交流を深めたと聞いて、二人に会いに行ったよ。
グチュルクのおばあさんは絨毯の上に座って、膝掛けをかけた白髪のいかにもおばあさんという感じだったよ。ゲレル国の遊牧民のほとんどは南のアナベル地方から中央を通ってきた人たちだから、アナベル地方独特の黒髪で肌が茶色みがかっているよ。年取ると白髪になるんだって。
グチュルクのおばあさんはルドを見るとホホホと笑って、手を叩いて喜んでいるよ。
「またいい男が来たと言っています」
通訳農民さんに言われて、ルドはありがとうと返しておいたよ。エジリオにはこそこそなにか言っていたよ。
「あんたもいい男だからね、だそうです」
エジリオはにこやかに笑うと、おばあさんはまたホホホと笑っているよ。
「陛下、興味深いことがありまして。ゲレルの民は南から来たときに中央を通ってきたためか、そこの文字を使っているそうです」
独自の文字はないけれど生活に必要な単語、ウマとかヒツジとか使っているらしいよ。でも発音は彼らの言葉だそうで、文字だけ借りたようだね。
どういう意味かって?漢字がそうじゃない?中国の文字を日本語読みするでしょう。あー説明?ボク漢字苦手だから…。
例えばローマ数字のI、Ⅱってキミたちなんて読む?「いち」や「に」と読むかな?または英語読みするかもしれないけど、プリーモやセコンドってイタリア語読みしないよね?そういうことだよ。
おばあさんが幼いときに移民世代は生きていて、少し中央の言葉を覚えたそうだよ。
試しに話すと単語ならわかるところもあるみたいで、ルドは楽しかったよ。エジリオの興味はそこではなかったよ。
「彼女たちの教えに魂や霊という考えはあるそうですが、霊憑きになった人はいないそうです。
彼女の祖母という人が別の地域の遊牧民で、私はあまり理解できないところもあったのですが、死んだらこの世界の生き物に生まれつくという考えを持っていたそうです。よい行いをすれば人として生まれ変われるけれども、悪い行いをすると動物や虫に生まれ変わるそうです」
仏教の輪廻や流転の考えのようだね。
「虫…。生まれ変わりたくないですね」
虫に転生ってボクも嫌だな。台所とかにいる茶色いあのG様になるかもしれないんだよ。
ルドは人間以外になった記憶がないから、この教えは違いそうだと思うよ。ただ転生という考え方は各地にあるのかなと思っていたよ。
ルドはどうして自分が転生したのか知りたいんだ。
エジリオは別のことを考えていて、リクが聖戦で派遣された異教徒の住んでいる地域と近いから、同じ教えがどこかで変わったのではないかと言うよ。
「同じ教えでも人によって解釈が違います。そのブレがないように神使が正しているのです。例えば子どもときに天の国にはたくさんのお菓子があるんだと想像したことはありませんか?教えにはそのようには書かれていません。望むように教えを人は考えてしまいます。
もし神使の役割を担った人がいないのならば、教えにはないことが付け加えられていってしまいます。でもリクの記憶はあいまいですし、違う教えだったのかもしれません。あまり考えたくはありませんが、中央の教会が滅ばした異教徒はこの方の祖母の一族だったかもしれません」
「…。そうでないことを祈っています」
通訳農民さんも事情を察して気まずそうにしているよ。エジリオは今の話はおばあさんにしなくていいと言っておいたよ。ルドたちの言葉がわからないおばあさんは、ルドとエジリオにうちに泊まって行きなさいとお誘いしていたよ。
グチュルクのおばあさんに転生に関係した教えについて他になにかないか聞いたけれど、覚えていないというよ。
ルドはお泊まりのお誘いを断って、今度は魔法について聞いたよ。グチュルクにどうして魔法を使わないのと聞いても使えないからだと言われたんだ。
グチュルクのおばあさんはつれないわねと愚痴をこぼしてから、少し考えてから話したよ。
「魔法が使える人はいる。むかしむかし、魔法が使える人が使えない人を馬鹿にして、人として扱わなくなった。それは間違っているとそのときの長が魔法をみんな使わないことにしようと決めた、と言っています」
長々話していたようだけれども、通訳農民さんが要約して話してくれたみたいだよ。
ルドはみんなが使えるように練習すればいいじゃないかと思ったよ。グチュルクのおばあさんは一つの家族に一人か二人くらいしか魔法が使えなかったから、みんなが魔法を使えないと言ったんだ。家族といっても家長とその妻、子どもだけではなくて、おじいさんやおばあさん、家長のきょうだいもいたりするから大所帯だよ。
ルドはマッテオみたいに生まれたときから使えない人もいるのは理解しているけれど、練習したらもっとゲレルの人たちも使える人がいると思ったよ。
馬を乗りこなし、魔法を自在に操る兵。とても魅力的だけれども、グチュルクのおばあさんは決まりだからと譲らなかったよ。
残念に思いながらルドは首都に帰ることになったよ。プラテリア領主はルドがチーズを食べ損なったという話を誰かから聞いたのか、たくさんくれたよ。ルドは火薬に水晶にチーズと、お土産たくさんあって結果的に大満足だったよ。
グチュルクの息子ゾリグはルドたちの言葉を話せないから、ゲレル民でわかる人についてきてもらったよ。
十四歳らしんだけど、ジュストは酷くゾリグのことが幼く見えたよ。逆にゾリグはジュストを年上だと思っていて、丁寧に話していたらしのだけれど、ジュストの方が年下と分かって、兄貴と呼べと言い始めたよ。
ジュストは言葉がわからないと、知らんぷりをしていたのだけれども、ルドに構ってあげなさいと言われて仕方なく相手をしたよ。ゾリグと年の近い子はジュストくらいしかいなかったからね。
一週間かけて首都オリゾンテに帰るわけで、はじめは大人しく馬車に乗っていたゾリグは飽きたらしく、自分で馬に乗りたいと言い出したよ。
人質が脱走されたら困ると将軍たちは思ったけれど、ルドは許したよ。ただし、街についてからだけど。
ゾリグはジュストに馬に乗ろうよとしきりに誘ったくせに、下手だと知ると大笑いしてから教えてあげたよ。ジュストとしては言葉がわからないけれど、馬鹿にされて上から目線で言われているのがなんとなく理解できたから、ストレスマックスだったよ。
しまいにぶちギレて、土の兵を作ったら、ゾリグは馬に乗りながら喜んで矢を射るよ。
ゾリグはジュストに手を振って何か叫んでいるよ。
「ゾリグは、アノ兵はジュストが、作ったのかと言っている」
通訳さんに言われてそうだと答えたよ。ゾリグはもっともっとと言うけれど、ジュストは兵を消しちゃったよ。
「疲れた。休む」
「ジュスト、ジュスト!」
名前を連呼しまくるから通訳さんに聞いたよ。
「黙れガキって何て言うの?」
通訳さんは笑ってから教えてくれたよ。ジュストの発音は完璧だったみたいで、ゾリグが怒りながら馬で駆け寄ってきたよ。
ワーワー言うけれど、ジュストは無視してルドのいる屋敷へ向かうよ。
ルドはというと、ゾリグたちが持っていたお守りについて魔法の使い手たちと話し合っていたよ。
魔法の使えない人間がどうやって魔法を発動できたのか不思議なんだ。魔法が使えるのは生まれ持ったものだから、使えない人は訓練しても一生使えない。
ゾリグが魔法が使えるか簡単なテストをしたけれども、魔法が使えない人だったよ。
「魔法が使えるのは人間と魔物とされてきました。もしかして石自体に魔法の力が宿っているのかもしれませんよ。これは大発見です」
ブルーノが興奮しながら言ったよ。魔法を使える人と使えない人がどうしているのかはこの時代は謎だったんだ。
だから魔法が使える人は神様が特別に力を与えてくれたと考える人もいたよ。
「ブルーノ様の言う通りだとして、どうやって確かめますか?」
ルドが聞くとエジリオはもう答えは出ているというよ。
「ゲレルの者が唱えていたのは呪文でしょう。訳してもらうとそれらしいものでした。水晶ではないものでは呪文を唱えてもだめだそうです。水晶の方に何かあるに違いありません」
「魔法が使えない人でゲレルではない人がもし、あのお守りを作れたら俺らは魔法具を作れることになりますね」
防御魔法を唱えずに発動できるのなら、攻撃に専念できるから軍事上とても魅力的に思えるよ。
エジリオは紋様を写しとっていたし、水晶もあった。でも魔法が使えない人はこの軍にはいなかったんだ。街の人でもよかったけれど、まだ秘密にしたかったんだ。協力してくれた人が、周りにペラペラ話されちゃったら困るよ。
「奴隷の中に誰かいないか…」
ブルーノが言うと、ルドはそれならというよ。
「マッテオとジーナは魔法が使えないのでやってもらいましょうか。でもマッテオは不器用だからこれ彫れるのかな?もう少し水晶もらっておけばよかった」
ということで帰ってから実験をすることになったよ。




