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流刑の覇王  作者: 卯月よひら
第一章 三王の話
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18話 暴君ルドの話14

 ルドが両目を封じて一ヶ月ほど経つと、徐々にステファノたちのルドへの恐怖が薄れていったよ。


 エドモンドやキアーラもヴィペラ事件は耳に入っていたけれども、キアーラは別の事に衝撃を受けていたよ。


「ルドに子どもが三人…」


「キアーラ様。養子です、養子。女性の噂もありません。本人にも確認を取りました」


 エドモンドは恋するキアーラの相談役になってしまっているんだ。取り巻き女の子たちはお喋り好きだから、相談したらあちこちに言いふらすだろうからね。


「ルドはいつこちらに来るのでしょう?」


「行ってみればよろしいのでは?私も近々父の付き添いで首都のオリゾンテに行くつもりなので」


 お目々キラキラキアーラに見つめられ、エドモンドは是非一緒にと浮かれて誘ってしまったよ。


 学校をサボ…休んでキアーラは、エドモンドと一緒にルークススペース国に行く事になったんだ。


 ちゃんとアポ取ったから、キアーラはルドに逢えたよ。


 元同級生ということで、三人だけで逢う時間を作ったよ。


 この時もルドは目隠しをしたままだから、介添えには神使や世話係の元奴隷がいたんだ。ルドは身の回りのことを人にやってもらうのが慣れなくて、いらないって言ったんだけれどもミアや元奴隷たちがお世話したいというから、世話係ということでおさまったよ。

 ミアは学校がなければ世話係としてルドのお供をしていたんだ。


 もしものときにルドは見えないからって、護衛もついたよ。その護衛たちはルドに忠誠を誓った元奴隷兵だよ。


「お二人ともお久しぶりです。目を隠している理由はご存知だと思いますが、己を罰するためですので、ご容赦をお願いします」


 ルドは王様になっても貴族に対して丁寧な態度を取るのが、抜けていなかったみたいだね。


 椅子に座ると果実酒やお茶、お菓子が運ばれてきたけれど、ルドは見えないから口まで運んでもらったよ。


 ティータイムといえば紅茶を想像するかもしれないけれど、味は緑茶や中国茶に近いかな。レナータでは茶の木が栽培されていなくて、産地である南のアナベル地方から貴族たちが取り寄せてルドへ献上したものだよ。

 紅茶が飲まれるようになるのはもう少し経ってからになるよ。



「少し子どもに戻った気分です」


 ルドが手のカップを見せながら言うと、エドモンドとキアーラは声を上げて笑ったよ。


 共通の話題は学校だし、ルドも学校作りをしているから二人から授業の話を聞いたよ。


 カップに手を伸ばすと世話係の元奴隷が手に握らせてくれるよ。でもうまく掴めなくて落としてしまって服にかかってしまったんだ。


「申し訳ございません!」


 元奴隷は布でルドを拭いたりしたけれど、横に突き飛ばされたよ。


「ルド様、お怪我は?」


 ミアが急いでルドの服を魔法で乾かしたよ。熱いお茶だったから、やけどしたんじゃないかって心配したんだね。


「大丈夫。服は分厚いから足までかかっていなかったよ。カミッラも気にしないでね。いつもありがとう」


 元奴隷のカミッラは床に膝をついて謝っていたよ。


「別の人を呼びます」


 ミアに言われてカミッラは震え上がったよ。カミッラは奴隷の夫が神殿造りに関わったことで、妻であるカミッラも奴隷から平民になることが許されたんだ。


 功績が認められた奴隷が平民になって、その家族が平民になれるには条件はあるけれど、ほとんどが夫婦とその子どもまでが対象だよ。身分が違うと結婚できないから、例えば夫が平民になったら、妻が奴隷のままだと強制離婚になってしまうよ。ルドは家族は一緒にいるべきだという考えだから、それを避ける救済処置を作ったんだ。


 カミッラはさらに治癒魔法の才能があることが分かって、魔法の勉強傍らルドのお世話をすることになったんだ。


 ルドはつらい奴隷生活から解放してくれた恩人だから、役に立ちたいと一生懸命は働いていたんだ。

 


「次はないようにしますから、陛下にお仕えさせてください。お願いします」


「あなたね。どうして真っ先にルド様がお怪我していないか確認しなかったの?治癒魔法使えるでしょう?」


「ミア。お客様の前だよ」


 ミアは恥ずかしくて真っ赤になったよ。エドモンドとキアーラに嫌なものを見せてすみませんって謝ったよ。


「カミッラが転んだみたいだけど、怪我はしてない?」


 ルドが心配するとカミッラもどうしてか、顔を真っ赤にして大丈夫ですと答えるよ。手をちょっと擦りむいていたから、ミアはカミッラと一緒に下がって怪我を治したよ。やり過ぎちゃったってミアは反省したみたいだね。


 給仕がしばしいなくなるとルドはため息をついたんだ。


「功績のある奴隷たちを平民にしたのですが、一部が俺のことを神様みたいに見ているんです。グランデフィウーメの学校時代を知ってるあなたたちからしたらおかしいでしょうけど。

 俺はただ罪もなく奴隷にさせられた人たちに普通の生活をさせてあげただけなのにね」


 手を伸ばしたけれど、お茶がないことに気づいて手を引っ込めたよ。


 キアーラが立ち上がって、ルドのカップにお茶を注いだよ。マナーとして習ったけれど、キアーラのような領主のお嬢様がまず他人にお茶を淹れることはないよ。


「どうぞ」


 キアーラは緊張気味にルドの手にカップを握らせたよ。


「ありがとうございます」


 ルドが飲んでカップを置こうとするときもキアーラは手伝ったよ。キアーラがずっとルドを見つめているものだから、エドモンドは気をつかって席を外したよ。


 二人きりになって、キアーラは何か話さなきゃって思考が空回りしていたんだ。


 ルドも何を話せばいいのかと悩んでいたよ。


「キアーラ様は、ここのテラスからの眺めはご覧になられましたか?」


「え、まだです」


 言っておいてルドは一人では歩けないことに気づいたよ。ドアには護衛か神使がいるはずだから、呼ぼうとして立ち上がると、キアーラが手を握ったよ。


「こちらでよろしいですか?」


 キアーラは頬も身体も真っ赤にして、ルドを景色が見えるところに連れていくよ。


 ルドは立ち止まり、キアーラの手を握るよ。


「あたたかな手。よかった。病が治って。あの時、とても冷たかったから心配しました」


「はい…。ルド、あっ失礼しました。陛下のおかげです。その目隠しはしないといけないのですか?目を見て話したいのですが」


「ルドで構いませんよ。俺が恐くないですか?ヴィペラ様の件は聞いたでしょう?」


「恐くないわ。優しい人だって知っています。冷たく当たった私をあんなに顔が真っ白になるまで魔法を使って治してくれたもの」


 ルドは照れながら、目隠しを外すよ。キアーラはじっとルドの湖面のように蒼い瞳を見つめていたんだ。


「あとついてますよね?」


 女の子に見つめられてルドは恥ずかしそうに目に触っているよ。

 キアーラは見つめてしまったことが恥ずかしくて、もじもじしているよ。


「あ、そんなことはありません…」


「よかった。えっとこの街はステファノ様が作られたそうなので、俺が紹介するのも変ですが。

 あ、キアーラ様はお庭とかご興味ありますか?」


 キアーラは黙ってルドを見ているから、ルドは気まずいよ。


「キアーラ様?」


「私。ルドが好きです。病を治していただいた、あの…。キスが忘れられません。ずっとあなたのことが頭から離れないのです」


「え、あ…」


 人生初の告白タイムにルドはどぎまぎしているよ。


 キアーラは頬を(あか)くして、自分の唇に指を置いて言ったんだ。


「責任とってくださいまし」


 治療や人工呼吸で責任を負わされるって、医者だったらどうなっちゃうんだろうね。


 貞操感は女子の方が強かったから、口でのキスも結婚相手と決めている女の子が多かったんだ。


 ルドはごくんと息を飲んで、王様なんだ俺はと自分に言い聞かせたよ。


「キアーラ様のお気持ち嬉しいです。あれは治療です。お忘れください」


「嫌でございます!」


 間髪いれずに拒否された。ルドはもっともらしい言葉を探したよ。


「あ、えっと俺は王。あなたは同盟領の領主の娘。あなたとという話しになれば、国の人間ではないあなたは微妙な立場になる。もしこの国の人間ではないグランデフィウーメ領主様が、国政に口を出そうとすれば、俺は阻止します。お分かりですよね?」


 実力主義のルドは結婚相手の家の人が政治的に力を持つのがおかしいって考えていたよ。


 ステファノの娘との結婚を避けるのは結婚に乗り気ではないこともあるけれど、オリゾンテ家の影響力を大きくしたくないんだ。ほかにも領主たちの存在もあるからね。みな平等に扱いたかったんだ。


「わかっています。私が家を捨てればよいのですか?」


「な、何を言うんですか!」


 ルドが焦っていると、タイムリミットとばかりにエドモンドやミアが入ってきたよ。


 ルドは何もなかったように目隠しをしてから、ミアを呼んだよ。


「ここは冷えるから中に入ろう」


「やっぱり濡れて冷えたのでしょう!ルド様は私たちに気を使いすぎです!お着替えもしましょう。湯浴みの準備もします」


「え、そこまでいいよ。ミア?ミアー!」


 ミアがてきぱきカミッラたちに指示を出しちゃったよ。


 ミニお茶会は強制終了となって、中途半端になったキアーラが少しかわいそうだね。


 ルドは部屋に行くとエジリオとリクが来たよ。お仕事持ってきたみたいなんだ。


「そういえばルド様。キアーラ様の前で何で目隠しを外したんですか?」


 ミアがルドの上着を脱がせながら聞くよ。


「ミア。着替えはいいから、キアーラ様とエドモンド様を見送りして」


「ルド様~?」


「エジリオ様たちが待っているから!」


 ミアは膨れっ面になって部屋を出ていったよ。


 ルドは手探りで椅子に座ろうとしてこけたんだ。


 リクが何かあったって勘づいてにやりとしたよ。


「ん?どうした。キアーラ嬢に目を見て話したーいって言われたのか?ん?」


 ルドは目隠しを一気に外して、部屋にはエジリオとリクしかいないことを確認したよ。


「キアーラ、可愛い!」


 ルドはぼーって宙を眺めて、頬杖ついたよ。


「え、陛下?」


 エジリオはルドの変化にびっくりしているよ。ルドははぁとため息ついたよ。


「治療してさ、それだけだよ。なのに、責任とってくださいましって、頬赤くして目をキラキラさせて!

 私だったらお持ち帰りしている」


「マグナス様は黙っていてくださいませんか?ルド様のお気持ちを聞きたいのです」


「だから、あのままこの部屋に連れてきたかったんだって!

 俺は王じゃなかったら責任とってましたよ。ちゃんと!」


「はい、ルド。キアーラ嬢に陥落。意外とお前チョロいな」


「…どうするべきか」


 エジリオは額を押さえてしまったよ。ルドは二人の神使を無視して、テーブルをばしばし叩くよ。


「婚姻家の影響力を与えるつもりないし、グランデフィウーメ領は俺の国じゃないからっていったら、私が家を出ますって。本気でそこまで俺のこと!」


「男を落とす貴族の娘テクニックじゃないのか?」


 リクの言葉に一気に冷静になったよ。


「そ、そうなのかな。まずい。俺、そっち方面の授業受けさせてもらえなかったからわかんない。教科書を入手!」


「それ、誰に命令するの?ミアにするのはやめておけよ」


 手を叩いて人を呼ぼうとして止まったよ。


「ミア…。ミアもなんでああなっちゃったのかな。俺はもう主人じゃないって言っているのに」


 もう一つの問題に頭を悩ませはじめたから、キアーラのこともそのまま忘れてくれとエジリオは思っていたよ。


 タイミング悪くカミッラがキアーラの言付けを伝えにきたよ。


「キアーラ様がまた明日も逢えないかと仰せです」


「逢いましょうと伝えてください」


 即答だったよ。エジリオはどうしようとさらに額を抑えているよ。エジリオたちはもう頭になくて、ルドは窓を急に開けて外を眺めているよ。


「キアーラ殿の前で目隠しを外されたと聞きましたが」


 ステファノが来ちゃったよ。ルドは苛つきながら、吐き捨てたよ。


「この街、デートスポットの一つもありゃしない!」


「は?」


 リクがステファノに言っちゃったよ。


「どうやら陛下はキアーラ嬢に陥落したようです」


「な!」


 ルドはリクとステファノの会話は耳に入っていないようだね。


「美しい彫刻をほどこした噴水もない!緑と花で溢れた広い公園もない!だめだ。ここは!

 ステファノはクソ真面目すぎる。もう少し芸術を愛せ!いつも思っていたが、お前の城の美術品はただ並べてあるだけだ。作品は観るためにあるのに、魅せなくてどうする!

 あ、庭か。神殿の庭がある。くく。キアーラはきっと純粋な乙女だろう?花びらを撒いたベッドとか喜ぶであろう」


「宰相様。訂正します。陥落したのはマグナス様のようです」


「またややこしいことを!陛下!グランデフィウーメはよくありません」


 デートプランを考えていたルドは苛立たげにステファノを睨むよ。


「邪魔するな」


「しかし!」


「あの子は家を捨てて俺の元に来たいといっていた。貴族はお家大事で簡単にできることではないだろう。

 彼女のすべての言葉の中に嘘はなかった。よって明日も逢う。

 どこで逢おうかな。服は何を着よう。気合いは入れてはだめだ。いつも通りに、俺は別に興味ないって感じでいってじらして…」


 三人は一斉にため息をついたよ。


 翌日、ルドは目隠しをしたまま、キアーラと神殿の庭で待ち合わせしたよ。残念ながら冬だからあまり花は咲いてなかったんだ。


「庭は寒かったですか?」


 ルドに声をかけられたキアーラは嬉しそうな顔をしたけれど、ルドが目隠しをしているからすぐに残念そうにしたよ。


「大丈夫ですわ。今日も目隠しですか?」


「戒めなので。でもお庭を観るのに観られないのはおかしいですね。キアーラ様が気に入った場所があったら教えてください」


「教えてどうするのです?」


「戒めが外れたら観にきます」


「一人でですか?」


「はい。そのときはもうキアーラ様はグランデフィウーメに帰られてますから。では行きましょう」


 昨日寝ずに考えた()らし作戦を開始したみたいだよ。

 ルドが介添えの女の神使の手を引かれるから、キアーラは嬉しくないよ。


 キアーラは歩きはじめて五分経ったけれど、まったくルドと話せないよ。ルドが今どの辺だろうかと聞くと神使が答てしまうから、ちっとも二人で逢っている気がしないんだ。


「あの。私が気に入った景色を選ぶのならば、ルドは私の隣にいるべきでは?」


 キアーラの我慢の限界は五分らしいよ。神使は困ってるけど、ルドは笑ってキアーラの声の方に手を伸ばすよ。


「では探して俺を連れていってください」


 キアーラは緊張気味に手をとるよ。段差があればルドに教えたり、意外と細やかな気づかいができたんだ。


 三十分すると大体お庭をまわれたよ。


「どこがいいかしら。お花は枯れていたし」


「花はないけれど、冬にしかない景色があるはずですよ。建物も庭の一つです。今日の空の色は?雲の形は?」


 キアーラは目の前の草木しか見ていないことに気づいたよ。


「もう一度お庭を見ても?」


「わかりました」


 キアーラは庭の配置と神殿、澄みきった真冬の空が綺麗に見える場所を見つけたよ。


 道がまっすぐ神殿へ延びて、木々が道の脇に並んでいたよ。


 ルドは片目の目隠しをゆっくり外したよ。目が眩んだけれど、辺りを見回すうちに慣れてきたんだ。


「ここか」


 キアーラはいたずらっ子みたいなルドの無邪気な顔に息がすっと止まったよ。


「だったらこっちがいいですよ」


 片目の目隠しを外したまま、ルドはキアーラの手を握って走り出したよ。


 急なルドの行動に神使や護衛たちは慌ててあとを追ったよ。といっても十数秒だけだったけど。


 キアーラが立っていた場所は円形の広場にベンチが並んでいたんだ。来た道を戻って城と円形の広場が見られるところに立ったよ。


「さて、問題です。この庭にないものはなんでしょう?」


「え?何かしら」


「ヒントはこの庭が造られた時期です」


「神殿と同じ時期だから…。あ!池が一つもなかったわ」


「そうです。干ばつだったから水が少なくて済む設計にしたようです。俺が水の使い手なのに水がありません。だから今から造りましょう」


 キアーラは期待に目を輝かせているよ。


『水よ。我が想いに応えてくれ。ほとばしり、そしてこの道へ流れよ』


 ルドが立っている場所に水が溢れだして、ベンチのある円形の広場に押し寄せて噴き上がったんだ。水は神殿へ続く道へ流れていくよ。


「凄いわ!」


「水はあったほうがいいですね」


「そうね。冬のお庭は静かで全部が枯れてしまったようだったけれど、ルドの水で生き返ったみたいだわ」


「そういっていただけると嬉しいです。キアーラ様が今度来るときまでには水路を引いて池を造っておきましょう」


「一緒に見てくださる?」


 ルドは自分たちが周りに見えないように水の壁を作ったよ。


 キアーラと目が合うとじんわりと手に汗をかいて、目をそらしてしまったよ。


 サクスムは恋とは無縁だったし、マグナスさんの恋愛テクニックを引っ張りだしたけれど、まだルドには難しいみたいだよ。


「あーだめだ!」


「何が?」


 キアーラを見ないでルドは繋いだ手を強く握るよ。


「キアーラ様があんなことを言うから…。意識してしまいます」


「え…」


「まったく寝れなかったし、公務全然力がはいらないし。俺は王様なんですから。キアーラ様こそ、責任をとってください」


 ルドは緊張で声が震えていて、だっさいな俺って思っていたよ。キアーラは顔が真っ赤になっていたよ。


「ルド…。嬉しいです」


「でも今は国がとても難しい時期なんです。あなたが成人するときにまだ互いに同じ気持ちだったら、そこから頑張りましょう」


 反グランデフィウーメのステファノをまず説得しないと、ルドとキアーラは結ばれないからね。


 キアーラは泣きそうになりながら、ルドの手を両手で握ったよ。


「わかったわ。あなたがずっと私を好きでいてもらえるように頑張るわ」


 二人とも顔を赤くして照れていたよ。


「…そろそろ。目を隠さないと」


 キアーラは少しルドの瞳を見つめてから、目隠しに手を伸ばしたよ。ルドの目を隠すと魔法の水がすべて消えたよ。



 二人は何か言いたくても言えなくて、黙って手を繋いだまま、別れの時間が来てしまったんだ。


「また逢いしましょう」


 それだけ言ってキアーラはグランデフィウーメに帰っていったよ。



 春になるとグランデフィウーメが治水工事をするということで、奴隷や農夫が集められたよ。


 ルドはマッテオを探しだす機会として現地視察をしたよ。


 キアーラも行きたかったけれど、父親である領主に止められてしまったんだ。キアーラはルドに逢いたくて手紙を書きまくっては、読み返して自分で恥ずかしくなって破り捨てたよ。


 そんな乙女キアーラを知らずしてルドはマッテオを探したよ。


 視察だから見ないとね。戒めの目隠しは外していたよ。


 男たちが働いているのを観察しているように装ってマッテオを探したよ。エドモンドも同行して、ルドに工事の内容を説明したからちゃんと勉強しているようだよ。


 一時間ほどしてそろそろ城に戻るかと言うときに、下流の方で悲鳴が起こったんだ。


「魔物です!陛下は下がってください」


 エドモンドや神使たちが言うけれど、ルドは後方にいた護衛たちに言ったよ。


「魔物だそうです。あなたたちの練習の成果を見せてください」


「御意!」


 元奴隷や平民からなるルド専属の護衛部隊は、ルドが直接魔法を教えたんだ。その中にミアもいるよ。ジュストたちは子どもだからオリゾンテにお留守番していて、ここにはいないよ。


 ルドは戦っている様子を見たかったけれど、止められちゃったから待つしかなかったんだ。


 十分くらいして伝令から仕留めたと聞いて安心したよ。


 ルドの前に運ばれた巨大なコイのような魚は、頭が二つあって大きな歯がぎっきりはえていたよ。


「これって食べられるの?」


「小さいものは煮て食べますが、ここまで大きいのは大味かもしれませんね」


 グランデフィウーメの貴族が教えてくれたよ。


「こんな大きいものが。熱波で河が干上がったときはどこにいたのでしょうね」


「大河の先は遠い海に繋がっていると聞きます。海からここまできたのでしょう」


「ここまで!世の中不思議なことばかりですね。ああ、そうだ。みんな怪我はありませんでしたか?」


 リクも同行していて、最たる不思議はルドだって思ったけれど、人がいるから言わなかったよ。


 護衛部隊は膝をついてルドの言葉をずっと待っていたんだ。


 大丈夫ですと口をそろえたけれど、何人か負傷していたよ。


「怪我しているじゃないですか。我慢してはいけませんよ」


 ルドが治癒魔法をかけたよ。護衛部隊は王様直々に治してもらえて恐縮していたけれども、元気にお礼を言ったよ。


「あの魔物は食べられるということなので、貴重な食糧です。みんなでわけましょう」


 倒した魔物をぶつ切りにして野菜とか入れてスープのようなごった煮にしたよ。工事に関わる人全員に振る舞われたよ。


「確かに大味ですね」


 近くの貴族の館にお邪魔して、ルドはコイの魔物を食べたよ。泥臭いし生臭いんだ。


「ちょっと臭い消しに香草みたいなものを入れたらいいかもしれませんね」


「それなら食べやすいかもしれませんね」


 生臭い河魚に食べなれたルドは完食したけれど、エジリオは苦手みたいで食が進まなかったみたいだよ。


 グランデフィウーメ領主が見せたいものがあると言うから、ルドは目隠しをして、食事をした部屋とは別の部屋に案内されたよ。


「マッテオという名の奴隷を集めました」


「え?」


 グランデフィウーメ領主はルドが親代わりだった奴隷を捜しているのを知っていたから、マッテオを捜してくれたみたいだよ。領主はルドへのごますりではなくて、キアーラにおねだりされたみたいなんだ。


 部屋にいる総勢十七名のマッテオさんが整列しているよ。ルドは緊張と期待の中で目隠しを外したんだ。


「え?ルド?」


 ちょっと間抜けな懐かしい声がルドの耳に届いたよ。


 

テラ「ルドのあおはるきたよ!」

卯月「あおはる?青春のこと?うーん。成人しているから青春なのかな?」

テラ「じしょでしらべたら、としわかいとかせいねんってあったよ。せいねんのひとはせいしゅんなのさ、ボクもね!」

卯月「テラって歳いくつなの?」

テラ「うーん。ヒ・ミ・ツ」

卯月「意外と歳いってる回答だな、これは」

テラ「うっ。しかたない。ボクのとしはごまんにじゅういっさいだよ!」

卯月「…無駄に数字を大きく言う小学生レベル」

 

 後書きのテラの会話がカナなのはメールをそのままコピペしているからです。変換するのも面倒…ごほんごほん。

 投稿ペースはまた土日に戻ります。

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