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流刑の覇王  作者: 卯月よひら
第一章 三王の話
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11話 暴君ルドの話7

 ルドたちは馬車で移動したよ。馬にはあまり餌が与えられていなかったみたいでとても痩せていたよ。


 領主はメンツがあるらしく、ルドを着飾って送り出したから、とても装飾品が重くて肩がこったよ。着くまで外していいだろうとバンバン取っていったんだ。貴族の人と一緒に馬車に乗れって言われてたけど、話しやすい神使たちと一緒にいたよ。


「領主様たちは一日中なんでこんなものつけていられるんでしょうね」


 純金のずっしり重いネックレスを手に乗せていたよ。


「連中は富と権力を見せびらかしてんだよ。ルドは全然合ってねーな」


 リクは相変わらず謙虚じゃないし、ズバズバ言うし、神使らしくないよ。ルドはそれが気安くてよかったんだ。


「いくらするんだか…。これつけて街中あるいたら強盗にあいそう」


「ルド様はその装飾品よりも何倍も価値のある方です。絶対にお一人では行動なさらないようにしてください」


 エジリオに釘を刺されてしまったよ。せっかくよその土地に行くのだから、好きなように観光したかったけれど無理なようだね。


 一日かけてカスカータ領の中心地に着くと領の後ろには山々があるんだ。本当ならこの時期紅葉で美しい山なんだけれど、木々は早々に葉を落としてしまったようで、寒々しく見えるよ。


 グランデフィウーメのようにカスカータも街を外壁で囲っていて、その外に農地と民家が広がっているんだ。


 カスカータはとても水が豊かだったみたいで、用水路があちこちに張り巡らされているけれど、いまは糸のような細い流れだったり、まったく流れてないところだらけで、泥が乾いた臭いがそこら中にしていたよ。


 魚もいるはずだけれども、農民たちがこぞって小魚やエビまでとってしまったから用水路には生き物の気配はしないんだ。


 夏になれば用水路のそばでカエルがたくさん鳴くのに、この年は声がしなかったという記録があるんだ。産卵するための水がないからね。それとも土から出てきたら人間に食べれちゃったのかな。


 カスカータの壁の中も水路がたくさんあったけど、水は涸れて流れていなかったんだ。


 城の近くになるとルドは宝飾品をつけ直してから、馬車を降りたよ。


「お待ちしておりました。水の神(アックルーア)様の使いの方」


 馬車から城の中まで数歩なのに輿(こし)が用意されていて、それに乗るらしいよ。ルドはエジリオのために用意されたのかと思って突っ立っていたら、エジリオからルド様が座るみたいですと教えてくれたよ。


 輿なんて乗ったことないから、立ち上がるときのグラグラ揺れるのが不安だったんだ。


 ひそひそ話しも丸聞こえだから中央(チェントロ)の言葉でルドはエジリオに言ったよ。


『他の人を下に敷いているみたいで凄く嫌なのですが、降りては行けないんですかね?』


『歓迎してくれてるんだから乗ってれば?マニュス様』


 エジリオの代わりにリクが答えたよ。


『マニュスではないってば』


『マニュスの時代もあったんじゃないのか?』


『…あったね。私の趣味ではなかったが、上半身裸の筋肉隆々男に担がせていた女人がいた』


 リクはルドをちらりと見上げると、眉を潜めていたよ。言葉遣いが変わったから、別の人と話しているみたいでリクは変な感じだったよ。


『それはそれは。夜も担がせてるんじゃないか?』


『本当にリクは神の使いらしくないな』


 ふっと笑う仕草が上品でルドらしくなかったよ。


 お城の中まで輿で運ばれていって、本当におろしてほしいなとルドは思っていたよ。


 領主とその一族や貴族たちが、ずらっと並んでいる前におろされたよ。グランデフィウーメの代表が、カスカータの寄越した親書の返事を口頭でしたよ。ルドの雨をもって戦争をしないということを話したんだ。


 さっそく降らせろというので、ルドは領地が一望できる場所に案内してもらったよ。


 ルドはしばらく周辺を見渡して人がたくさん住んでいる場所や貯水池を探したんだ。誰も住んでいなくて、水を溜められない場所に雨を降らしても意味がないからね。



「雨よ、雨。水の神・アックルーアよ。我らに今しばしの涙をお恵みください」


 祈るような呪文にカスカータの人たちも祈ったよ。


 十分ほどしてポツポツと人々の肌に雨が打ち、地面を湿らせていくよ。


「雨だ!」


 人々は歓びに両手を空に向けて笑っているよ。ルドは魔法を使ってとてもつかれたけれど、それを見ると疲れがとれる気がしたんだ。


「ありがとうございます!」


 領主はルドに何度も握手をして、涙を浮かべていたよ。


「水はもっと必要でしょう。でも大雨は洪水や地滑りの危険がありますので、何度か分けて降らすつもりです」


 ルドの配慮に領主は感銘を受けたような顔をして、しきりにうなずいていたよ。


「しばらくここに滞在していただけるのですか?」


「明日、雨を降らせてからポネンテへ向かいます。ポネンテはここより西に位置すると聞いてますが」


「ポネンテはあちらです」


 遠く西の方に石積の囲いが小さく見えたよ。そこがポネンテらしいね。


 領主にこの周辺の地形や人が多く住んでいる場所、主な農作物を聞いたよ。


「冬に育つ作物の種まきをしましょう。明日の雨は畑に降らせます。農民たちに伝えてください」


「わかりました」


 一時間ほど降らせるとルドは手をくるくる回して東へ雲を流したよ。この後グランデフィウーメも雨が降って、ブルーノとカリーナはルドが降らせたんだと誇らしげにしていたんだ。



「皆様、濡れては風邪をひいてしまいます。着替えましょう」


 歓喜に浸っていたカスカータの人たちは、ルドの言葉に従って次々と屋内に入っていくよ。


「ルド様もお着替えを。本当なら湯浴みの準備をしたかったのですが」


 カスカータ領主はルドに腰が低いね。ずっといてほしいと思っているから、ゴマすり始めたみたいだよ。


「俺は大丈夫です」


 水気を飛ばしてなおかつ温めの魔法を使ったから、お風呂に入ったみたいにあたたかいよ。


「領主様たちも」


 領主やエジリオたちにもかけたら喜んでくれたよ。


「本当にルド様は水を自在に操るのですね!まるで統一王のようだ」


「ありがとうございます。魔法をたくさん使ったので、休みたいのですが」


「どうぞ、どうぞ。お食事はされますか?ささやかながらご用意させていただきました」


 ありがたくいただくことにしたよ。テーブルに並べられた食事は、食糧に困っているような人たちのものではなかったよ。ルドは顔をしかめていたから、リクが耳打ちしたよ。


「連中の見栄だ。食べないとへそを曲げるから食べておけ」


 奴隷たちはきっとパンとイモだけだろうと思うと、ルドは胸を締めつけられたよ。余った菓子や果物を部屋に運ぶよう、使用人に頼んだら快く引き受けてくれたよ。


 ルドの部屋はとびきり大きくて、一人で使うのかと最初は思わなくて、夜になっても誰も来なかったから驚いたよ。何人も寝られる広いベッドで雑魚寝するんだと思っていたみたいなんだ。


 ルドは菓子や果物を持って、ミアたちがいる屋敷へ向かったよ。奴隷は領主や来賓が寝泊まりする建物にはいないよ。さすが領主の城の敷地内だけあって奴隷屋敷も立派だったし、ルドの実家の方がよっぽど貧相に思えたんだ。


「偉くなれば、ミアたちもこういう素敵な場所で暮らせるのかな」


 ルドがそう思っている以上に、ミアは感激していたよ。


「お姫様になったみたいです。だって、綺麗なふかふかのベッドですよ!」


 このベッドもルドの実家より上等なものだったよ。下手な貧乏農民よりも領主の奴隷の方がいい暮らしなのかと、ルドはモヤッとていたんだ。これはルドたちが連れてきた奴隷だから、カスカータ領主が配慮をしたみたいだよ。領主も色々だし、奴隷に酷いことをすることもあるから、やっぱり奴隷は最下層なんだ。


 カスカータの奴隷たちも同じ建屋にいたから、ルドが菓子を持ってきたと聞いてミアは仲良くなった女の奴隷たちを呼んだよ。


 奴隷たちは恐縮そうにしていたけれど、お菓子を見ると目を輝かせたよ。


「飲み物がほしいけれど」


 奴隷たちはこっそり城から持ち込んだ皿やカップとかを出したけど、水はないみたいだよ。


「茶葉が捨てられそうになっていたから、下女の子からもらったんだけど」


「ちょっとルド様にそんなもの出さないでくれる!」


 ミアは怒ったよ。ルドは笑ってから、奴隷たちに聞いたよ。


「まあまあ気にしないで。ちょっと前までカビのはえたパン食べたりしていたし。誰か火の使い手いる?」


 少しならつけられるとカスカータの奴隷の一人が手を挙げたよ。


「ルド様。私が水を出します」


 奴隷が持ってきたケトルをミアは凝視するよ。


「水、水よ。器を満たせ!」


 適当な呪文だけれども、ケトルに水がいっぱいになったよ。


「うまくなったね」


 ルドはミアが水の魔法が使えるとわかって、こっそり教えていたんだ。ミアは得意げな顔をしているよ。


 熱々の紅茶を飲みながらミニお茶会になったね。ルドは奴隷たちと話すのに魂胆があったんだ。


「領主様のはとこの名前は…」


 流れるように紹介されたから、名前を覚えていられなかったんだ。奴隷たちはよく知っていて、人柄や噂話も教えてくれたよ。


 ルドは食べ物が半分くらいに減ってから、部屋に戻ったよ。長居したら、奴隷たちとお茶していたことがバレてしまいそうだからね。


「ポネンテに行くんですか?あそこは臭いから口を覆った方がいいですよ」


 奴隷の一人が教えてくれたけれど、ルドとミアは顔を見合わせて首をかしげたよ。


 次の日も雨を降らすと、カスカータ領主の弟が声をかけてきたよ。


「ルド様は中央(チェントロ)の言葉がわかるんですか?」


 エジリオたちと会話を聞かれていたみたいだね。ルドは困っているとエジリオが微笑みを浮かべて代わりに答えてくれたよ。


「私は中央(チェントロ)に行ったことがあったので、それを話したら言葉を教えてほしいとおっしゃったので少し教えました。言葉をご存知なので?」


「統一王について調べてましてね。その時代のものとされる壺とか石板の文字を収集しているんですよ。話し言葉は習っていて少し分かりますが、文字はわからなくて。どんなことが書いてあるんだろうと、あれこれ想像するのが楽しいんです」


 近くにいた奥さんは微笑みを浮かべていたけれど、骨董品買う金を装飾品に回してくれ思っているだろうね。


 碑文を買ったが読めないんだと連れられた部屋には、たくさんの骨董品が並んでいたよ。ルドの腰ほどの高さの碑文にはエジリオも苦笑していたよ。ルドは物珍しい品々の方に目が行っていたよ。


 リクは少し中央(チェントロ)の文字が読めると言っていたけれども、今では使われていない単語が多くて降参していたよ。


「駄目でしたか…」


 領主の弟は残念そうにしているよ。ルドは陶器の香水入れに目を奪われていたよ。


『懐かしい。流行っていたな、これ』


 目を細めて見ているとエジリオが聞いてきたよ。


『絵柄は馬ですかね?』


『違う。羽がついてるからペガサスだ。あの時代、ペガサスがいると信じていたから』


『確かに持ち手が羽っぽいですね。この辺りのはご記憶あるものですか?』


 ルドは見渡したけれど、自信がないよ。


『全部思い出したわけじゃないからわからないけれど、この香水入れだけだと思う』


『そうですか』


「あの…。先ほどからあの時代とはなんのことですか?ルド様はお詳しいので?」


 領主の弟がいるのを忘れて話してしまって、二人は気まずそうだよ。リクが取り繕うのが面倒だと考えたみたいで話しちゃったんだ。


「あ~ルド様には千年前の中央(チェントロ)の霊がついているらしいんです。確かではないので黙っていてくださいね」


「なんと!最上級の水の使い手であられるし、もしかして」


「統一王ではないです。多分、彼の近くにいた人ではないかと思います」


 ルドは、目を輝かせてジリジリ迫ってくるオジサンに困っていたよ。


「これ読めますか!」


 無理矢理碑文の書かれている石の前に立たされたよ。


「文字…」


 文字に苦手意識があるから、あまり見たくなかったけれど、ルドは碑文の下に彫られた紋章に釘付けになったよ。


 カスカータ領主の弟くんが紋章を指差して言ったよ。


「その紋章は統一王の家のものと似ているんです。もしかしたら、その時代のものかと思いまして」


「…統一王の家の紋章?私の記憶にあるのはマニュス…マグナスの弟の家のもの。マグナスの姓は(アルクス)。紋章に弓があるはずだから、この紋章に弓がない」


「ん?知っているということは、つまり、ルドに憑いている霊は統一王に近い人だったってことか?」


 リクが言うと領主の弟くんもエジリオも興奮したようだね。どういうことですか!って領主の弟くんがはしゃいでいるよ。


「…統一王マグナスの紋章はありますか?」


 弟くんは意気揚々とあれこれ紋章を出してくるとルドは目を見開いて、ふふと笑ったよ。


『真ん中に大鷹、その下には弓、鷹の背後には矢をあつらえて家の紋章(あかし)とする。まごうなきアルクス家のものだ』


「えーとルドに憑いている霊さん。俺も聞き取れなかったから、こちらの言葉で話してくれない?」


 リクが頭をかいたんだ。後ろではうんうんとエジリオと領主の弟くんが期待をこめて頷いているよ。


 ルドはニヤリと笑ったよ。


「おめでとう。お前たちの期待に添えそうだ。私はどうやら統一王と近しい人間だとわかった。ただマグナスとの関係や名は思い出せぬ」


「なんと!霊様。それでこれはなんですか?」


 期待を膨らませて弟くんは石碑を叩くよ。


「これは記念碑ではない。徴兵の規定が書いてある法律文だ」


 ルドは掘られた文字を指でなぞるよ。


「出兵したものには馬と日に金一枚。食糧を支給する。一日に金一枚?高いな。これは百…。文字が欠けていてわからないが、百年代のものでマニュスの時代より後だろう」


「そうですか…。統一王時代のものはなかなか見つからないものですね」


 領主の弟がルドの言葉を信じたかは定かではないけれど、疑う様子はないよ。


「ルド様に憑いている霊は誰なのでしょうね!千年前の都に思いを()せるのが好きで、私は色々集めているのですが」


 器の破片やらガラスの変なオブジェのどこらへんに思いを馳せるんだろうね。


 ルドは困った顔でガラクタ、おっほん。骨董品を見ていたよ。


『これのどこがいいのだ?ただの生活品ではないか。使えもしない穴の開いた器を集めるなんて理解に苦しむ』


「おぉ、中央(チェントロ)のお言葉ですね。ふむふむ。どうして集めているのかとおっしゃってますか?それは昔の人はどんなものを使って、どんなものを食べて生きていたか、知りたいのですよ」


『今も昔もそうは変わらぬ。飢餓と疫病は常にあり、どう生きようか若者はもがき老人は死を見つめる。我らは乗り越えようともがいたが、人は争いしかせぬ』


 ルドは徴兵について書かれた石をなでているよ。


 領主の弟はエジリオとリクに言葉がわかりましたかという顔をしていたんだ。


 リクが全部はわからなかったけれど、わかったところだけ訳したよ。


「耳が痛い言葉です。グランデフィウーメの食糧を求めて私たちは戦争をしようとしたわけで」


『思い止まってくれてよかった。飢餓と戦争の後は、人の心に(うじ)がわく。そこに天の国(カエルム)はない』


 ふっとルドは目が覚めたように瞬きをしたよ。


「本当に誰なんだろう?」


「ルド様ですね?」


 エジリオは老神使と話している気持ちがして、十代の若いルドに似合わなくて変な気持ちがしていたよ。


「はい。俺です」


「ここではっきりわかったのはルド様に憑いている霊が統一王マグナスの時代の誰かということと、マグナス王に近かった人ということです」


 エジリオの言葉を簡単に領主の弟くんは信じたようだよ。感激して涙を浮かべているんだ。


「すごいことを知ってしまいました。ただ千年前の方とお話できて嬉しいですが、生身の人間に霊が宿るのはよくないと聞きます」


 領主の弟くんは、聖神使がなんで霊を祓わないんだと思ったみたいだね。


「水の魔法が使えるのは霊なのかルド様ご自身なのか判断つかないのです。もし霊が使えるとなると祓ってしまったら、天候を操る術を我々は失うことになります」

 

「そういうことですか。悩ましいですね。あまり霊には深入りなさらぬように。御身が大切ですからね」


 ルドを案じてくれてるみたいだけど、きっと水魔法が使えるってところにしか興味ないのだろうと、リクはちょっと斜めに思っていたよ。


「ありがとうございます」


 ルドはにこやかにお礼をしたよ。



「ふぅ。ちょっと危なかったぜ」


 三人きりになったときにリクは汗をぬぐう素振りを見せたよ。霊つきだと信じてもらえなかったら、転生って考えもないし、ルドは頭のおかしい子になっちゃうからね。


 ほら、もしキミの友だちがいきなり、織田信長の生まれ変わりなんだとか本気で言い始めたらヤバい奴って思うでしょう?


「あの人、とてもいい人です。俺のこと心配してくれてましたし」


「建前と本音があるんだぞ、おぼっちゃん」


「だって、血の巡りが穏やかだったもの」


「ああ、あんたは嘘が見破れるんだっけな。裁きの神(ジュリシーオ)の神使の方があってるんじゃないか?」


「俺は人を裁けないよ。そろそろ出る時間かな?」


 グランデフィウーメ側とカスカータ側で話し合いがまとまったみたいだよ。カスカータ領主はルドを見ると軽く頭を下げて、エジリオにヒソヒソと何かを話したよ。


 それを聞くとエジリオは満足そうにしていたんだ。


「よき判断をされたと思います」


 エジリオに聞いても話してくれなかったよ。ルドは馬車に乗って隣のポネンテに向かったよ。


 ポネンテまで馬車で一時間あれば領主の城がある中心街まで行けたんだ。塀の中に入ってカスカータの奴隷が言っていたことがよくわかったよ。


 生き物の糞尿の臭いが鼻をついたんだ。農民だったルドは家畜を飼っていたから慣れた臭いだったけれど、グランデフィウーメの貴族は顔をしかめていたよ。グランデフィウーメもカスカータも水が豊富な場所だから、街の至るところに水路があって、そこで街の人はモノを洗ったり、用を足したりしたんだ。


 そうそう。野菜とか食材を洗う水と用をたすところは同じなんだよ。


 日本人は汚いと思うだろうけど、彼らは綺麗好きな方だと思うよ。


 トイレなんてなかったから、ポネンテの人たちは道のそこら中にしていたからね。ルドは直接見なかったけれど、誰かが二階の家から、う○こを投げ捨てるときは投げるぞって声だして、捨てたんだ。下にいた人は声を聞いて退避してたんだよ。


 だいたい中世のレナータ地方の都市はこんな感じだったよ。上下水道の重要性はもう少し後になってみんな自覚することになるんだ。


 あ、どんなことが起きたか勘づいちゃった?

 わからない人いるから、しっーだよ。


 お隣のカスカータと似たレンガ造りの街並みだけれど、建物の二階の窓の下に板がはってあって、人が一人歩けるくらいの幅だったよ。それが隣の建物にまで続いていて、ちょっとした通路みたいなんだ。


 眺めているとご婦人が窓から出てきて板を伝って、隣の建物に入っていったんだ。


「どうして二階に板がはってあるんですか?」


 ルドが道案内してくれている兵士に聞いたよ。


「スリとか犯罪が多くなりましてね。特に女性は外を出歩くのは危険なんです。何人も襲われていまして。かといって閉じこもることもできませんので、ああやって建物に板を渡して親戚の家に行ったり、買い物をしていたんですよ」


「なるほど。そういうことなんですね。グランデフィウーメの外はこうなっているんですね」


 この旅をするまで、グランデフィウーメの街しか見たことないから、とても珍しかったよ。


 領城はグランデフィウーメよりも小振りだったよ。ルドは早くついてしまったので、教会でお祈りしようとしたら、ポネンテの神使たちが大興奮してルドを出迎えたよ。


「アグネーゼ大神使よりうかがっております。お会いしたかったですわ」


 水の神(アックルーア)の神使たちは、少女のように目を輝かせて握手を求めたよ。


 そうイケメンエジリオを無視してね。一応、彼女たちの上司なんだけど、挨拶なしのガン無視されたよ。


 エジリオは一生独身を誓っている聖神使だから、そんなことでは怒らなかったよ。大人だね。


「ルド様、モテモテ」


 リクはわざとエジリオの隣で言うけれど、エジリオは涼しい顔だよ。


「たまには神使たちも息抜きも必要だろう」


「まっ、いつも質素倹約、清廉であれでは疲れちまうからな」


闘う神(バッギア)様の神使はもう少し酒を控えるべきだな」


「んー。聞こえない」


「エジリオ様とリクは仲良しですね」


 ルドは神使の歓迎に疲れて、エジリオたちの方を見て助けを求めていたよ。


 ポネンテの神使たちは気まずそうに、エジリオとリクに挨拶をしたんだ。聖なる教会で騒いでとエジリオに怒られると思ったのかな。


 やっと静かにお祈りができて、ルドは一息ついたよ。


 お祈りが終わると領主が来ていて、教会の一室で会ったよ。部屋の壁には水の神(アックルーア)が涙を流して、生命が誕生したという神話の(えが)かれていたよ。


 神話の絵がたくさん教会にはあったんだ。文字が読めない人に、どんなことを神々がしたのか分かりやすく教えるためにあるんだよ。


 ポネンテ領主も終始にこやかで、昨日の雨は素晴らしかったって、ゴマすりしまくり、ぜひずっといてくださいとルドに言いまくっていたんだ。ルドは、ポネンテにずっといるつもりはないと言いたかったけれども、グランデフィウーメよりも待遇がよさそうで、ちょっと揺らいでいたよ。


「農民の出なので、まったくモノを知らないので勉強しているんです。ポネンテの学校も三年制なんですか?」


 ついつい本音がポロリ。ついてきたグランデフィウーメの貴族が片眉をあげてルドを見ているよ。


「そうです。よろしければ見ていきますか」


 雨を降らせるとポネンテの住民たちはとても喜んでくれたよ。女の人たちも笑顔で窓から手や顔を出していたんだ。


 ポネンテの貴族の学校は、グランデフィウーメの学校の半分くらいの大きさだったよ。


 生徒たちはグランデフィウーメと違ってお揃いの制服を来ていたんだ。貴族の服装より動きやすそうで、ルドは羨ましかったよ。


 それを言ったら是非入学してくださいと言われてしまったんだ。


「ルド」


 ふらふらとカスカータやポネンテの誘いに乗りそうになっていると、グランデフィウーメの貴族が行くなって釘をさしてくるんだ。差別されるよりも、チヤホヤしてくれるところのほうにいたいよね?


 ルドは仕方なく断ってから、次の日雨を降らせてから、グランデフィウーメに帰ろうとしたよ。


 するとオリゾンテという他の地域の領主の使者がきて、うちにも来てくれと言い出したんだ。


 長年グランデフィウーメと仲が悪くて、数十年前に戦争をしたことがあったから、グランデフィウーメの貴族はこぞって無視しようという話になったよ。


 でもルドはエジリオが話でもいいから聞いてと言われたから聞くことにしたよ。


 エジリオを腹立たしそうにグランデフィウーメの貴族は見ていたけれど、聖神使を敬っているから駄目だってルドに言えなかったんだ。


 話を聞けばルドは行くと言い出すからね。案の定、ルドは行くことにしたよ。

 次回は目指せ年越し投稿っ。ということで大晦日に投稿します。新年はテラが挨拶したいそうなので、元旦も強制投稿となりそうです。

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