第1話~臥竜鳳雛の占い~
ところ変わって興劉寨。大きな屋敷の暗い部屋の中で3人の男が立っていた。その中の内の1人は身の丈9尺もの大男。そして2尺もの長さの艶やかで立派な髭を蓄えたこの男こそ花関索の父である関雲長その人だ。
そして残りの2人、まず1人は身の丈8尺の偉丈夫で白い羽扇を携えた男。もう1人は偉丈夫とは対称的な冴えない身なりをしており身の丈も6尺4寸と小柄な男だ。この2人は『天下に臥龍と鳳雛あり、そのどちらかを得れば天下をも取れる』と評された奇才、諸葛亮と龐統だった。
「お二方にご足労頂いたのは少し胸騒ぎを感じたのです。故にお二人に占っていただきたいと思いお呼び立ていたしました」
関雲長は用意していた席に2人座るよう促して自分も座る。そして今日呼び出した訳を説明した。関雲長が言うには胸騒ぎは感じたのだがそれが吉兆なのか凶兆なのかそれもどっちともつかないようで占いもできる2人の軍師を呼んだ。客人を呼んでいるというのに部屋が暗いのは占いをするためだったってわけだ。
劉備軍の将軍で筆頭は当然この関雲長。その関雲長が吉凶分からぬ胸騒ぎを感じているともなればそれを放置したままでいるわけにはいくまい。諸葛亮と龐統は関雲長を占うことにした。
「私が占ったところによりますると、三兄弟のどなたかに何か凶事が起こると出ました」
「なんと!?それは一体どのような……?」
「具体的には分かりかねまする。申し訳ございません」
まずは龐統から結果を重々しい口調で関雲長に伝えた。だが彼の妙に甲高くしわがれた声がどこか重い雰囲気を和らげるようだった。
彼の申すところによると劉玄徳、関雲長、張翼徳の三兄弟の誰かに凶事が起こるとのことらしい。関雲長が胸騒ぎを感じているというのに三兄弟の誰かとは三兄弟の結びつきは強固だとよく分かるな。
凶事とはどういった類いなのかは全く分からないようで、関雲長は腕を組み難しい顔で思案していた。
「私が占ったところによりますと、三兄弟のどなたかに新しい兄弟が加わると」
「我らのいずれかに新しき兄弟……?」
次に諸葛亮からの報告。諸葛亮は悠然としておりどこか達観したような口調で言う。関雲長は意味が分からず困惑していた。この3兄弟に加われるほどの者なら間違いなく仁義に篤く英雄豪傑の類いだろうが、そんな者が居るのかと信じられなかった。
「むむぅ……占っていただいたが全く見当もつかぬ。しかしご苦労掛け申した。ささやかながら酒と肉を用意させていただきました。ごゆるりと過ごしていってくだされ」
「おお!関将軍、お言葉に甘えさせていただきますぞ」
「将軍のもてなしとなれば喜んで」
結局考えてもよく分からなかったものの、忙しい中参った二軍師に酒と肉を振舞いたいと申し出て、関雲長は手をパンパンと叩いて、控えていた使用人たちに灯りを点けて用意していた酒と料理を持ってくるように命じた。
特に龐統は酒に目がないようでうれしそうに答える。諸葛亮の方はというといつもの口調で恭しく礼をした。
今も曹操軍が荊州を窺っていること、孫権軍も何か怪しい動きをしているため3人の酒宴はしめやかに行われた。




