第1話Part.4~美しくて強い!噂に違わぬ鮑三娘!~
鮑礼・鮑義兄弟をあっさりと倒した花関索。鮑礼は鮑義に指示して鮑三娘を呼びに行かせた。花関索はもちろん心躍っていた。強さも込みとは言っても噂に名高い美女との対面だ。花関索は今か今かと待ちわびていた。
屋敷の扉が開いた。まず出てきたのは彼女を呼びに行った鮑義。そして続いて出てきたのがお目当ての鮑三娘だった。
鮑三娘は噂通りの美女。本当にこの娘が数多の豪傑共を退けたのかと信じがたいほどに可憐な容姿、背中まで伸びた黒髪は非常に艶やかで色気を感じさせ、たきめ細かな素肌でスラリと伸びた白い脚は最早幻想的。そして細身でありながら突き出た胸はまさに泰山の如しと言えた。
花関索はその鮑三娘に思わず見とれちまった。知識としては知っていたし実際綺麗なんだろうとは思っていたが、出てきたのは三国一の美女と言って差し支えの無い女。いや、花関索は貂蝉も大喬・小喬姉妹も見たことはねえ。だがそれでも彼女こそ三国一の美女と言えてしまえるくらいに美しい女だった。
「妹はあの見た目ですが強い。ご油断召されるな。」
「分かっています。」
鮑礼は妹に見とれてしまっている花関索に釘を刺すように言った。だが花関索は油断などしていない。これだけの美女。今まで対峙した者たちは必死になって闘ったであろうことはそこらのガキでも分かる。それでも一度たりとも負けず、こうして花関索と対峙している。尋常じゃねえ美しさが鮑三娘の尋常じゃねえ強さの担保にもなってたわけだな。
鮑三娘の後ろからは馬を曳いた従者。当然さっきと同じように騎乗して槍を打ち合うのだ。鮑三娘の乗る馬も駿馬。兄たちよりは小柄な鮑三娘に合わせたため多少小さいが、それでも脚や身体の筋肉は溌剌。鮑礼・鮑義の馬に引けを取らないほどの名馬だ。
「兄を纏めて倒したそうですね。」
「ええ。」
「おもしろい。しかし私もその程度なら造作もありません。」
「分かっております。」
花関索が鮑兄弟を纏めて倒した事を大したことではないと言い放つ鮑三娘。まあ妹にそう言われちまった鮑兄弟はと言うと物凄く複雑そうな顔だ。面目ないと言うか恥ずかしさというか……まあ何にしても妹にあっさりこう言われちゃあな。そして花関索にも追い打ちを掛けられたもんだから、鮑義は顔を真っ赤にして身体を震わせていた。
「私に挑んだ勇気を称え、一手お譲りいたしましょう。」
「そのような気遣いは無用ですが……分かりました。」
鮑三娘は目の前に居る花関索に負けるなどと毛の先ほども思っちゃいない。だから花関索に先手を譲った。そのような気遣いは無用に思う花関索ではあったが、強情で自分の強さに絶対の自信を持ってる鮑三娘にそう言ったってまず聞きやしない。
それが分かってる花関索はまずは突きを繰り出した。全力じゃあない。花関索も鮑三娘がどれほどの強さか興味あってきたんだ。一撃で終わらせてしまってはつまらないって訳だ。
鮑三娘はその突きを難なく受ける。手は抜いたと言っても並の者なら反応もできずに突き落とされるほどの突きだ。それを難なく受け止めたのだからやはり尋常じゃねえ腕前だ。
そこからは槍の打ち合い。花関索も力を入れていく。10合、20合と打ち合った。手を抜いているとはいえ花関索と20合打ち合えたものは未だかつてない。そして鮑三娘と20合打ち合ったものも未だかつてないようで、鮑兄弟はもちろん鮑三娘も驚いていた。
「今まで闘った中では1番強い。しかし……。」
鮑三娘も素直に花関索を讃えたが、やはり負けるつもりは全くねえみたいで激しい攻撃を仕掛けてくる。さっきよりも切れ味が鋭い。鮑三娘も少し手加減していたようだ。
花関索は鮑三娘の実力を見定めた。なるほど言うだけのことはあるなと。だが花関索の強さはその遥か上を行く。彼が槍を一閃。鮑三娘の槍は彼女の手から消えていた。花関索の一撃で弾き飛ばしたんだ。そして花関索の黄龍槍は鮑三娘に向けられていた。最早いつでも刺せる位置。鮑三娘の敗北だ。
「ま、参りました。」
これが鮑家の女傑・鮑三娘が花関索のものになった瞬間だった。




