第1話Part.2~女傑・鮑三娘、強き婿を求む~
関雲長を探していた花関索は父の情報を聞きこんでいる最中にある女の噂を聞いた。これは関雲長には全く関係ねえんだが、この時に居た場所で人に話を聞くと決まってこの女の噂を聞くんだ。
人間ってのは繰り返し同じことを聞くとついついそれが気になっちまうってことはよくある。もろちんそれが煩わしく感じて嫌いになる奴も居るが、良くも悪くもみんなが知るところになるわけだ。
それで花関索はというと前世の知識でその女の事を知っては居たんだが、正直言うと花関索の好みでは無かったんだ。まあ正しく言うと花関索に生まれ変わった男の好みだな。
この男の好みは従順で何でも素直に言うことを聞く女。まあモテてなかった上に多少ひどい目にあったもんだからちょっと女に苦手意識を持ってたんだ。
でもこう何度も話を聞くと気になるし、何といっても今は花関索。その後の展開も知っていたので彼はその噂を詳しく聞いて回った。
噂によるとその女というのはこの辺りの名家、鮑家の三女である鮑三娘という娘だった。彼女は非常に美しい娘に育ったが、どこで何を間違ったのか武芸に興味を持ってしまったんだ。しかも彼女には素質があったようでとんでもなく強かった。下手をしなくても兄の鮑礼・鮑義よりも強く、まさに女傑と呼ぶに相応しい娘だった。
まあそんな娘なので、父の鮑凱も何とか縁組を持ってくるものの「私より弱い男などと結婚はしませぬ!」と言ってのこのこと彼女を娶りに家に来た縁談の相手を叩きのめしていたらしい。
当然こんなことが続いては鮑凱が他家に縁談を持って行っても首を縦に振る者は現れるわけも無かった。俺だってそりゃあ行きたくない。
しかし幸か不幸か、時は乱世だ。今は英雄が求められる時代。この際なら名家でなくても鮑三娘が希望する強い男でも良いと思った鮑凱は四方八方に噂をバラ蒔いた。【鮑家の鮑三娘、強き婿を求む】と。もちろん彼女が類稀に見る美女であるということも付け加えた。
更に鮑家荘の軒先には石碑を立てておいた。【私を娶りたくば矛を交えて私を倒してみよ しかし恥をかきたくなければ諦めることです】という鮑三娘の言葉を刻み付けて。
噂を聞いた腕に自信のある貴公子たちは鮑三娘に果敢に挑みかかった。だが鮑三娘の可憐な姿のどこにそのような力があるのかと言いたくなるほどの力の差があった。
男たちは鮑三娘と50合も打ち合わぬまま馬から突き落とされてすごすごと手ぶらで帰らされるハメになったんだ。
数多の男どもが彼女に挑んだものの彼女の息を乱せる者すら現れない。これには父の鮑凱も顔を青くした。このままでは娘は結婚しないまま行き遅れてしまうと。
鮑凱はそれなりに名の知れた豪傑や強者をそれとなく鮑家荘に誘導して娘に挑みかからせたが、やはり鮑三娘に敵う者は現れず、最近ではたまに酔狂な輩が彼女に挑んでは倒されるくらいで彼女を嫁にとろうと本気で来る者もほとんど居なくなってしまっていた。
花関索はそんな時に鮑三娘の噂を聞きつけて、彼女が住んでいる鮑家荘へと進路を進めることにした。




