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小話① 懺悔の時間のイスカ(イスカ視点)

ティパルーが懺悔の時間中ご老人と話してる間、イスカは何をしてたのか。という話をただ書きたかっただけです。


イスカは愚かな錠前には“錠前共”ですが、理解のある錠前のことは“錠前たち”って呼びます。

 女神が初めて参加する、懺悔の時間。

 フードを被っても隠しきれない女神のオーラに、やはり彼女は女神なのだと再認識する。


 俺は女神を長椅子に座らせた後、壁際に移動し、錠前共が変な動きをしないか監視の目を配らせる。

 ここに来ない錠前は救いようのない愚か者だが、毎日顔を出している錠前も少なくはない。


 懺悔したところで、罪が軽くなるわけでも、消えるわけでもない。

 だが、こうして毎日欠かさずここに来る錠前たちを見ていると、少しでもその願いで報われたらいいと、そう思う時もある。


「イスカ先輩、イスカ先輩」

「……何だ。職務中だぞ、静かにしろ」

「錠前Ⅸ〇ⅡⅦⅦ、隣の錠前と話してるけど?」

「何?!」


 ジャンヌの視線を追えば、確かにそこには女神が隣に座る錠前と何やら話し込んでいた。


「あれは確か、錠前番号ⅡⅡⅧだな。神聖な懺悔の時間に、俺の女神に気安く話しかけるとは……。少し注意してく――」

「今日の僕たちの配置は、ここだよ」


 懺悔の時間中の私語は禁止されている。

 注意しに行くついでに、あの錠前から女神を引き離すため向かおうとしたら、ジャンヌが俺の左腕を掴んで止めてきた。


「おい、離せ。女神が危険だ」

「見た感じ、この時間のやり方教わってるっぽいから、注意は終わってからでもいいんじゃないかな」

「……分かるのか?」

「読心術使ったら丸分かり。これは、懺悔の時間の詳細を教えなかった先輩の監督不行き届きだね」

「うっ……。女神に冷たく接する罪悪感に苛まれて、すっかり忘れていた。俺のせいで、女神が錠前と! あの錠前が女神の魅力に気付き、万が一にも信者になろうものなら……俺が徹底的に排除する」

「先輩、抑えて抑えて。錠前共に変な目で見られたら、看守の矜持(メンツ)丸潰れだから。後、先輩も結構煩いからね」

「わ、悪い。気を付ける」


 俺は今すぐにでも女神のところに行きたかったが、ジャンヌの言葉も最もだからな、佇まいを正すことにした。


「でも、何で排除? 信者が増えることはいいことなのに」

「不埒で厭らしい目をして女神を崇拝する者を信者になど、絶対に認めん。女神が穢われる」

「じゃあ純粋な僕は信者としてオーケー?」


 小さくウインクするジャンヌに、俺は汚物を見るかのような目を向ける。


「純粋? どこがだ。何千回転生しても無理だろ」

「えー」


 女神がまだ錠前番号ⅡⅡⅧと話し込んでいるのは気がかりだが、あまりにも続くようなら近くの看守が止めに入るだろ。

 …………俺と場所を変われ、そこの看守!


「イスカ先輩、頑張って『ティパルー教』の聖典作ったのに、即却下されたね。あれは笑った」

「お前、さっきから俺に喧嘩売ってるのか?」

「まさか。僕じゃ先輩には勝てない」

「……はぁ。くそ、懺悔の時間に相応しい、女神のお言葉を纏めたというのに」

「錠前番号Ⅸ〇ⅡⅦⅦにも“冷たい”って言われたり、今日の先輩は可哀想だなぁ」


 こいつ、俺が気にしてることを……! 本当に喧嘩売ってるだろ。


「可哀想とか微塵も思ってないくせに、よく言えるな。聖典の件はまだ諦めていないし、冷たいと言われたのは俺の早とちりだっただろうが」

「可哀想は本当だって。でも、面白いのが見れたので僕は満足だよ」

「そっちが本音だろ」


 全く、俺も長話をしてしまった。

 チラッと女神の方を見れば、話し終わったのか前を向いて頭を垂れ、胸の前で手を組み祈りを捧げていた。


(なっ、なんて美しい……!!)


 すぐその姿を宗教画として後世に残したい!!


 遠目でもはっきりと分かる。

 祈りを捧げるその姿の、なんて神々しいことか。

 現代で俺を殺した、現代の聖女的存在、魔法少女すら霞むぞ。


 あぁ、女神よ。俺は貴女に出逢えたことに感謝する。


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