表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
振り向かない彼女を飼う方法  作者: 一会
第4章
81/81

81 

 最終話までお付き合いくださり、ありがとうございます。



 信じられないことが世の中にはあるのだと、僕は実感している。

 僕の妻は、どうやら複数の人に好意を寄せられているようだ。



 "ハーレム"は、一人の男性に複数の女性が取り巻くことをいい、妹から仕入れた情報だと、"逆ハーレム"は、一人の女性に複数の男性が取り巻くことをいうらしい。


 では、一人の女性に、複数の男女が取り巻くことを、何という?



 最初、妻には僕と義弟(おとうと)の、二人の男が取り巻いていた。

 ここまでは、納得できた。

 結婚前からわかっていたことだ。


 しかし、気づくと、先輩と、なんと僕の妹まで、妻に好意を寄せていた!

 さらに、義弟(おとうと)に近づいてきた女性まで、妻に好意を寄せるようになった!


 いったい、何がおきているんだ?!

 



 僕は彼女に問い(ただ)してみた。


 「たくさんの人に愛想を振り()いて、どうしたいんだ?」

 「私は普通にしているだけよ?」


 子持ちの女性に見えない愛くるしい顔で、彼女が僕を見つめている。

 僕も彼女を見つめた。

 彼女の目に吸い込まれそうな気がしてくる。


 ・・・・・・細かいことは、どうでもよくなってきた。



 「今夜の相手は、僕でいい?」


 妻と義弟(おとうと)の意味深な会話を、嫌というほど聴かされている。

 僕だって、これくらい言えるようになった。


 妻が目を(つや)めかせて、僕の背中に手を回す。

 触れるかどうか、ぎりぎりのキスをして、お互いの鼻の頭を軽く(こす)り合わせる。

 

 「優しくして。」


 妻のささやくような言葉と共に呼気が僕の口にあたり、どきどきしてくる。

 僕は妻の腰に手をあてて、僕の寝室に連れていく。




 妊娠9ヶ月になると、妻は義弟(おとうと)の家と僕の家を行き来するようになった。

 義弟(おとうと)が実験等で家に帰ることができないときも、僕の家に泊まる。

 これは、妹の提案らしい。


 「新展開に備えて準備中」だそうだ。



 「初産で大変だから、一カ所に落ち着いた方がいい」と僕が言うと、「同じマンション内で、しかも身内同然の人しかいないのだから、マンション全体が一つの家みたいなものでしょ」と妹に反論された。


 確かに、高級低層マンションで、一世帯あたり広い間取りを贅沢に使っているので、世帯数は非常に少ない。



 「それに弟くん、若いだけあってきっと元気だろうから、お義姉(ねえ)さまの身がもたないわ。」


 妹の言っていることの意味を考えるのは、脳が拒否した。



 


 妹は、一時期僕と住んでいたけれど、また元恋人の家に住んでいる。

 その時に、家の鍵を返してもらった。

 妹は渋ったけれど、僕はゆずらなかった。

 妹が妻に何かするのを、みすみす許すわけにいかない。



 先輩に対して複雑な気持ちはあるものの、妹と子供が世話になっているのは事実なので、かつてのわだかまりは水に流すことにした。





 僕は妻を僕のベッドに横たえた。

 妻と目を合わせてから、口を軽く開けて、妻のふっくらとした唇を僕の唇ではむっと()む。


 ふわふわと柔らかい妻の唇の感触を楽しんで、夢中になって味わい始めると、玄関のインターフォンが鳴った。




 このパターンは、もう飽きた。

 僕は無視して、妻を愛で始めた。


 妻は最近、僕の接触を嫌がらない。

 二度と妻を抱かないと決めていたのに、僕はもう何度も妻と肌を合わせようとしている。


 ・・・・妻の妊娠以来、まだ一度も服を脱がせられていないけれど。


 キスマークの一つくらい付けて、僕が夫なのだと主張すべきだろうか?

 それとも、義弟(おとうと)のように、妻に僕の身体にキスマークを付けさせて、僕の妻だという自覚を促す方が効果あるのか?




 インターフォンが、また鳴った。

 無視して妻を裸にしようと服に手をかけた。

 

 インターフォンがしつこく鳴った。

 ベビーベッドで寝ていた子が、泣き出した。



 妻が起き上がってベッドを下りた。

 子供を抱き上げて、あやしはじめる。


 僕は仕方なしにインターフォンで訪問者を確認する。

 子供を抱いた妹と、先輩がいた。



 インターフォンをしつこく鳴らす二人を追い返すために玄関のドアを開けた。


 「お兄ちゃん、何で早く開けてくれないの~?!」



 ーーそれは、妹も、妻を狙っているからだよ!!!



 妹は玄関を開けると僕の横を通りぬけて、手早く子供をベビーベッドに寝かせ、戻ってきて僕の腕に(から)んでくる。


 先輩も妹と同時に家の中に入ってきたので、不安になって家の奥に妹を引っ張って行く。





 「私のことを、避けているの?」


 先輩の声がした方をみると、妻が肌を露出したまま子供を抱いて、壁際に追いやられている。


 妻は僕が脱がせにかかった状態で子供を抱き上げたから、服が乱れたままだった。


 

 「こんなかっこうをして、私を誘っているの?」


 妻は泰然(たいぜん)としているけれど、僕は(あせ)った。

 

 「今晩は、義弟(おとうと)のところに行きなさい!」


 僕は妻に避難するよう伝えた。

 妻の相手は、義弟(おとうと)までは許せれるけれど、その他はダメだ!



 僕のそばにいる妹の視線も、妻のはだけた胸元にくぎづけになっている!

 僕は妹の目に片手をあてて、妹から妻を隠した。


 妹は僕の手を()がしにかかる。

 本気で抵抗する妹に力を強めることができず、妹の目の位置から手がずれてしまう。



 

 妻は僕が初めてみる妖艶(ようえん)な笑みを先輩に向けて唇だけで何か言い、先輩のそばを(ゆう)々と通って自室に向かった。


 先輩が少しも動かないので心配になり、僕に引っ付いている妹と一緒に先輩の顔が見えるところまで行った。



 「先輩....?」


 先輩が僕たちに気づいて顔を向け、手で口を覆った。顔が真っ赤だ。



 ーー妻はいったい何を言ったんだ?!



 先輩はそのまま玄関から出ていってしまった。

 僕は妹と顔を合わせた。



 「お義姉(ねえ)さま、(みが)きがかかったわ。」


 妹の言葉の意味を僕は知りたくない。


 

 「お兄ちゃん、今晩も、一緒に寝て欲しいの。」

 

 妹が可愛らしくおねだりする。

 今晩も、僕は妻とすることができないようだ。



 妻は弟の家と行き来するものの、結局弟の家に泊まることが多い。



 たまに先輩の家を出入りしているようだけど、所詮(しょせん)女同士だから、僕の立場を脅かすものではないという考えに至っている。

 同性婚では、彼女が求める人目を引かないカモフラージュ結婚のレベルに達していない。


 妹だって世話になっているし、付き合っているときも、妹は描写の指導を受けただけだと言っていた!


 かと言って、妻に対してそういう行為を許した覚えはない!

 当然、お泊りは無しだ!!




 妻が着替え終わって部屋から出てきて、僕たちの方を見た。

 いつもとかわらない、愛らしい微笑みだ。


 僕は妻の前で、妹の頭を()でた。

 そのまま妹の髪を一房(ひとふさ)すくい、妻の方を見ながら口づけた。


 妻は少し目を開いた後で笑顔になり、玄関の方に向かって行った。




 「お兄ちゃん、お義姉(ねえ)さまのことが、本当に好きなんだね。」

 

 僕は腕の中にいる妹を見た。

 僕が妻を気遣って、こちらを気にしないように合図を送ったことが、気になるようだ。


 ーー妹が、珍しく、やきもちをやいた?


 「不満?」

 「ううん。私は、苦しいのは嫌いだから、構わないわ。それよりも、」



 妹は、新しい本の話をし始めた。

 「姉弟(してい)の物語はもういいのか」と尋ねると、「まだ続きがあるけれど、進展があるまで保留」だそうだ。



 「魔女の話を作っているの。」


 妹の夢中になるものは、いつでも奇抜だ。


 「今は、魔女が魔女になるまでの話を作っているのよ。」



 僕は妹とベッドに入って、続きを聞くことにした。


 妹に腕枕して、妹が楽しそうに話すのをきく。

 


 妹は僕と結ばれない恋を、表だってはしてくれない。

 珍しく苦しい恋をしている姉弟(してい)に出会って、僕との恋を二人に重ね、本の中で結ばせて満足している。


 次は妻を取り巻く話を作るらしく、何やらとても楽しそうに画策中だ。


 「お手柔らかに。」


 僕の妻を、あまりイジメないでやってほしい。

 妊娠させるときもその後も、妻が壊れるのではないかとひやひやしたのだから。



 「お兄ちゃんは、お義姉(ねえ)さまと一回したから、もういいでしょ?」

 

 妹が僕に背中を向けてしまった。

 もう一人妊娠させようと、あんなに僕をたきつけていたのに、心境の変化があったようだ。


 ーーすねてる? 嫉妬か?



 「そういうけれど、」


 ーー義弟(おとうと)と、しただろ?


 僕は言いたくなくて、言葉を飲み込む。



 「私は元"恋人"の紹介で人工妊娠したから、彼に身体を見せても触らせてもいないわよ。」



 僕は妹の後ろ頭を見ていた。

 こちらを見てほしい。

 妹の肩を引いて、僕の下にした。



 妹が電波なのは、僕との恋が実らないことに絶望して、他に興味を移すためだ。

 妹は、とても僕のことを愛してくれている。


 母は妹の気持ちに気づいて、当時高校生だった僕に注意を促した。

 間違いを侵さないよう、僕たちは静かに想いあった。


 僕たちは大人になった。

 こんなに愛しているのだ。

 一度くらい、関係をもってもいいのではないか?




 僕は可愛い妹に覆いかぶさって、顔を近づけた。


 「苦しいのは、嫌いよ。」

 

 あと数センチで唇が触れ合うところで、妹が言った。

 僕は身を起こした。


 妻と義弟(おとうと)に、感化されたようだ。



 僕たちには僕たちの、愛し方がある。

 妹とは身体を繋げなくても、血の繋がりも家族の繋がりも既にある。

 わざわざ身体を求めて心の繋がりを確認する必要などない。


 逆に、身体の関係を持つことは兄と妹であるということを否定するということなので、既にある家族の強固な繋がりを壊すことになる。


 今持っている強固な繋がりを壊してまで身体を繋げる利点はない。


 


 僕はベッドにうつぶせになった。

 枕の上に顔を伏せていると、妹が僕の髪に優しく触れた。


 僕がうつぶせのまま顔を妹の方に向けると、妹が顔を近づけて、僕の頬にキスをした。

 

 「苦しいのは、嫌いなんだろ?」

 「家族の、キスよ。」


 妹が真顔で言う。

 僕も真顔で返す。

 

 「もう一度、ゆっくりと。」



 妹が、僕の頬に、ゆっくり唇を触れさせる。

 離れないでくっつけたまま、妹の鼻から出た呼気を、僕の頬に感じる。


 僕は目を閉じて、妹を感じる。




 僕の最愛の彼女は、決して僕に振り向かない。

 僕だって、苦しめたくないからそれでいい。


 僕は妹の枠からはみ出てくれない彼女を抱きしめて、僕たちの幸せに(ひた)った。




 コメディ風に仕上げましたが、血の繋がった関係で恋人または夫婦の関係になりたい、もしくはなった方は、世間体もあり、辛い思いをすることもあるようです。

 ここでは一案として、二組の恋人でのカモフラージュ結婚を話の軸に据えました。


 姉弟(してい)兄妹(けいまい)、どちらも一組だけで夫婦になるということは、30代以降厳しい現実にさらされますので、早期解決の方向で話を進めました。

 妊娠ついても、この家庭環境で子供を持つか持たないか、いろいろと意見があると思います。


 以降、子育てをしつつの展開になりますが、出来上がった恋人たちが本格的にいちゃいちゃするお話「振り返らない彼女を『抱く』方法<R18>(仮題)」になるため、ここで完結にしました。


 「先輩」については主題からそれるので、割愛させていただきます。



 最後までお読みくださり、ありがとうございました。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ