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振り向かない彼女を飼う方法  作者: 一会
第4章
72/81

72 妹 8

 


 私は兄嫁の弟さんと偽装結婚してすぐに、同性の"恋人"を作った。

 弟さんとの約束では「婚外恋愛」を条件にしていたけれど、弟さんは独身の同性の"恋人"も許してくれた。






 私の周囲のカッコイイ男性は、お兄ちゃんを含めて性的対象にはならない。

 お兄ちゃんは実の兄なのでそういうことにならないし、私の結婚相手はお義姉(ねえ)さまのお相手なので、手をつけたいとは思わない。



 そんなときに、お義姉(ねえ)さまと親しくしている「先輩」と、これまでよりも"仲良く"なった。


 姉弟(してい)ものの妄想を大量の作品にしていくなかで、どうしても性的描写にリアリティがなく、ちょうど困っていた。

 話しやすい「先輩」に相談してみると、「私が教えてあげようか?」と誘われた。



 「先輩」は、私が結婚相手に何の恋情も抱いていないことを見抜き、どうして結婚するのかを知りたがった。

 私は「二次元が好きだから、利害が一致したので」、と答えた。



 この「先輩」はちょっと変わっていたけれど、一緒にいて楽しいのでよかった。


 「先輩」は、とても優しくて親切で、私はどんどん彼女に()かれていった。

 彼女のおかげでファッションにも目覚め、メイクや髪型、服や小物にまで気を配るようになった。



 私の結婚を機に、「付き合おうか」ときかれて自然に(うなず)いた。




 私の"恋人"となった彼女はお義姉(ねえ)さまと仲が良くて、会話も親しげだ。

 あるとき冗談混じりに好きな人がいるのかきいてみた。


 私は彼女から、一度も「好き」とか「愛してる」と言われたことがない。

 


 「忘れられない人がいる。」


 彼女は苦しげに言い、次の瞬間、恍惚(こうこつ)の笑みを浮かべて、私ではないところを見ていた。



 彼女が誰のことを想っているのか、きかないでおいた。

 きかないでも観察すれば、態度でわかる。


 ーーこの人もそうなのか。


 恋に苦しむ人を見るのは、嫌いではない。

 苦しむほど純粋に相手を想っている。


 私の妄想も、恋に苦しむ人が作品の中だけでも幸せになっていたらいいな、という思いからきている。


 私は少しだけ、彼女の恋に協力した。


 



 私は"恋人"が、お義姉(ねえ)さまに執着しているのを知って、"面白そうだ"と思った。

 お義姉(ねえ)さまの周囲には、ネタが大量に転がっている。


 ストーリーは考えられないけれど()が上手な同人誌仲間と一般商業誌にデビューし、ネタはいくらあっても足りないくらいだ。




 お兄ちゃんが、彼と離婚するように言ってきたけれど、応じる気はない。

 世間の荒波にさらされるくらいなら、彼のファンたちと楽しく"遊んでいる"方が"面白い"。




 お腹にいる子供は私の子供だと自負しているけれど、"恋人"だった「先輩」は弟さんのDNAにこだわり、お義姉(ねえ)さまのDNAについてこだわっていた。

 「先輩」はそれを断念し、弟さんのDNAを受け継いだ子は、私が産む子だけになった。




 退院してからも伏せっていたお義姉(ねえ)さまが、弟さんとの愛の行為!の末に元気になった。

 弟さんが愛おしそうにお義姉(ねえ)さまのお腹を撫でるところを見て、新しい展開を妄想した。


 ーーイケる!


 私の子供とお義姉(ねえ)さまの子供、二人の子には、お兄ちゃんと私、お義姉(ねえ)さまと彼の、4人の遺伝子が入っている。

 お兄ちゃんと私は当然、子供を作れない。

 同様にお義姉(ねえ)さまと彼も、子供を作ってはいけない。


 私たちは、子供を作れない者同士でパートナーを交換し、方法は違うけれど子供を作った。


 遺伝子が混ざり合った子供が二人、一緒に成長していく様は、限りなく兄弟姉妹に近い!

 



 やっぱり離婚している場合ではない!

 積極的にお義妹(ねえ)さまと彼の間に子供を置いて、ネタを収集せねば!




 私は「美形の」子供を自分の手元に置いて同性のパートナーと愛でながら育てるという野望を捨てて、「禁断の愛の果ての」子供という妄想に浸ることにした。


 お兄ちゃんも、私が"恋人"だった彼女と同居するに当たって子供の教育上云々と言っていたから、産まれた子をお義姉(ねえ)さまの手元においても文句は言わないだろう。




 私が計画をお兄ちゃんに話すと、お兄ちゃんはいつものように私の頭を撫でてくれた。

 それから、私のお腹に手をあてて、愛おしそうに撫でた。

 

 「名前はもう、決めてある?」

 「お兄ちゃんも一緒に考えて。」


 お兄ちゃんが私の目をじっと見る。

 私もお兄ちゃんの目をじっと見返す。



 私たちは兄と妹の関係からはみ出ない。

 ここは二次元ではなく現実の世界なのだから、はみ出ていいことは一つもない。


 お義姉(ねえ)さまのところは、弟がモテすぎるからいけなかった。

 誰かに盗られないよう、お義姉(ねえ)さまは必死にならざるおえなかったのだ。


 かわいそうに。

 世間から認められない関係を築くなんて。


 私のお兄ちゃんは、私を自由にしてくれている。

 世間から隔絶された場所に連れては行かない。

 私のお兄ちゃんは、とてもデキル人なのだ。



 お兄ちゃんは私の頭をいつものように撫でて、微笑んだ。






 たまに週末に実家に帰ると、お母さんと趣味の本の話で盛り上がった。

 お母さんも、私と同じ趣味の持ち主なので、とても気が合う。

 

 出産準備品は整っているので、ぐーたらしたいけれど、ネタの収集とストーリーは作っておかないといけない。



 「お兄ちゃんの子ではないのよね?」


 さっきまで、二次元の話で楽しく盛り上がっていたのに。


 ケーキを食べ終えると、微笑んだままのお母さんにはっきりと質問された。

 そういうストーリー展開もよかったのか、と一瞬考える。


 私がストーリーの検討を考え始めて無言でいると、目の前に離婚届とかかれた用紙を出された。



 「結婚するときに言ったわよね。お兄ちゃんとは、子供を作らないって。

  産むなら、離婚しなさい。」


 これまで確認なんてしなかったのに、妊娠後期になってお母さんが不安になって(あせ)っているのか、珍しく真面目な顔で私に詰め寄る。


 信じてくれていたのなら、最後まで信じてくれればいいのに。

 お母さんは気が小さい。




 私は大きくなりつつあるお腹を押さえて、よいしょ、と立ち上がった。


 「離婚は、しない。この子は私の子だけど、5人の子供だから、5人で大切に育てる。」


 お母さんは目を真ん丸にしている。



 私は帰る準備をし、お母さんが気にかけていることを最後に答えた。


 「生物学上の父親は、きちんと彼だから、心配しないで。」



 お母さんとはとても気が合うけれど、さすがに兄と妹の結婚は想定外で、認めてくれない。

 私の結婚相手のお義母(かあ)さまが特殊なのだとわかっていても、お義姉(ねえ)さまがうらやましくてならなかった。


 あんな緩い環境の家庭ですら、血の繋がった姉弟(してい)では容易に結ばれない。

 なおさら、かわいそうに、と思う。


 甘やかされた特殊な環境ですら結ばれないのならば、他では生きていけないだろう。

 せめて、話の中では、たくさん結ばせてあげよう。



 でも、お義姉(ねえ)さまにはお兄ちゃんの相手も、少しはして欲しい。

 ストーリーに起伏は必要だ。

 お兄ちゃんが気に入っている女性だし、"おもしろそう"だから、お兄ちゃんに甘えるのは大目に見てあげよう。



 私はいいことを思いついたので、今後のことについて、お義姉(ねえ)さまに話そうと思った。

 



 

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