66 姉 23
翌日も翌々日も、私は弟に遊ばれた。
弟は、私のそばにいる。毎日、私のそばにいる。
弟という男がそばにいて、毎晩私を求めてくる。
『今日は、どこを触ろうか? 起きている姉さんを堂々と触れられてうれしい。』
弟の言葉にぞくぞくする。
体調がいいわけではないのに、気力がみなぎってくる。
『いい加減、認めてよ。
僕が欲しいって。誰にもあげたくないって。』
そんなことはない。私はお姉ちゃんだから、弟を独占したりしない。
実際、弟は、私を想っていたとしても、彼女を抱いた。
捨てたはずの感情が戻ってきて、私を苦しめる。
「私ではない人を、抱いたのに、、!」
『僕は、姉さんとしか、しない。』
弟は、強く言い切る。
そうだ。弟は、私としか、したくない。したくないから、あんな惨めな方法でしか、義妹を妊娠させられなかった。
そして私も、夫に無理矢理させた。
『僕を、食べてくれないの?』
「私に、食べられてもいいの?」
私は姉だから、弟の人生を邪魔したくない。
弟を好きになりすぎたのは私の過失だから、これ以上好きにならないよう、自分を戒めないといけない。
『僕は、姉さんと気持ち良くなりたい。姉さんは、僕としたくない?』
ーー私が、弟と?
される一方ではなく、する側になる?
私は弟という男の裸体を想像した。
私は姉だ。弟にされたことは、きちんと返さないといけない。
ここ数日、私はいいように弟に遊ばれた。
私がこんなに弟を思って自制してあげているというのに、弟ときたら、やりたい放題だ。
弟が、私の唇に触れた。
私はスマホを枕の横に置き、そこにあるであろう弟の頭を両手で抱え、弟の口を食べ始めた。
弟が私の口に夢中になりはじめたところで、弟の頭から背中をたどり、脇腹を撫でていく。
そのまま遠慮なく、弟のお尻も触れて撫でる。
上の服の中に手を入れて、素肌を性的に撫でる。
まだ足りないというのなら、弟の下を触ろうかと弟の素肌をたどってズボンに手を入れようとしたら、耳元でかすれた声が聞こえた。
「姉さん、やる気ありすぎ。」
目の前に弟の肩がある。
そうだ。私は、姉だ。ただし、不埒な姉なのだ。
私のお返しはまだ終わっていない。
手探りで弟のズボンを脱がせ、私もズボンを脱ぐ。
弟の脚に私の脚を絡ませ、私の身体を押し付けた。
弟の首に舌を這わせ、繰り返しゆっくり舐める。
弟の背中を堪能するように撫でてから素肌の腰を触り裸のお尻に触れる。
その手を、再び弟の前に持ってこようとして、弟が私の手を掴む。
「姉さん!」
弟が私を咎めるように悲鳴をあげて上体を浮かし、私を見る。
私は、久しぶりに弟の顔を見ている。焦った弟の顔が、愛おしい。
私は弟の唇に軽くキスをした。
「ただいま。」
「お帰り。遅いよ、姉さん。」
私の弟が、少しやつれている。
「あなたが迎えに来てくれるのを、待っていたのよ。」
弟のご褒美は私の笑顔だと知っているので、私は姉の晴れ晴れとした笑顔を見せてあげる。
弟が、とても嬉しそうだ。
私は弟を私の横に寝かせて、ずっと欲しかった弟を、男として遠慮なく食べ始めた。
弟は、無駄な抵抗をしなかった。
中学3年のクリスマスイヴの夜に何があったのか、事実はわからない。
でも、弟は、何かあったと私に思わせたいのだ。
夜中に何があったのか、知らなくてもいい。
クリスマスイヴの夜に、15歳の弟が、20歳の私に欲望を向ける夢を見た。
痛みのある生々しい体感を伴った夢だ。
翌朝身体が少しおかしかったけれど、弟は何も言わなかった。
父にボタンの掛け違いを指摘されて、夢ではない可能性を考えた。
その後、弟が夜中に私に触れることがあっても、夢と同じことにはなっていない。
あの夢は、私の浅ましい願望が見せたものだった。それでいい。
私は弟が、ずっと欲しかった。
弟がくれるものなら、痛みすら快感になるだろう。
幼い性欲でもいい。
だから、弟に性的な意味合いをもつ何かをされても、嬉しかった。
弟の全部が欲しい。
姉としては間違っている。
だから、これまでは、姉と弟でいられるよう、最後の線を越えないように意識してきた。
夜中に弟が恋人のように私を抱こうとしていても、姉弟でいようと思うから、目を閉じて、声を殺して、起きないでいた。
弟が欲望のまま最後までしたとしても、私は寝たふりを続けただろう。
私が起きていると知ったら、弟は弟でいられなくなるから。
弟を卑怯だとは思わない。
弟は、私が弟を男として好きだということを、言葉にしなくても知っている。
弟は、私が喜ぶことをしていたのだ。
私は弟から快感と安心感をもらっていた。
弟にされたところまでは、付き合っている彼としてもいい行為なのだ。
弟が、姉という名の女性の身体に、男として欲望を向ける。
女嫌いの弟にしては、上出来だ。
愛しい弟の、女嫌いを直す役に立つのだから、最後までされても不満はなかった。
起きている私にではなく寝ている私に何かしたいというのは、私に女ではなく姉でいてほしいということだ。
弟が正常だという証拠であり、この世界で生きていくための、ぎりぎりの選択だ。
でも、弟は、自分を私の恋人だと言った。
15歳の弟がかつてしたかもしれないことを持ち出してまで、私の最初の男だと、所有権を主張した。
弟が、境界をまたぐ決意をした。
私と弟は、"正しい方法"で幸せになるよう努力してきた。
努力して、お互い他人と結婚して、無理矢理子供を作った。
やるべき努力はした。
だから、納得せざるおえない。
私たち姉弟は、"正しい方法"では幸せになれないと。
幸せは、目の前にある。最初からずっとあった。
倫理的に間違っていても、認めるしかない。
私たちは、子供の頃からずっと恋人だったのだ。
ーー恋人を抱いて、何の問題がある?
私は弟に抱かれてなんかあげない。私が、弟を抱くのだ。
私の身体はこういう行為を求めていないけれど、今ここで、弟をもらうことにした。
倫理観にこだわる弟の言葉が信用ならないので、弟が態度を翻す前に、さっさと既成事実を作るべきだと思ったのだ。
弟の、姉を想う気持ちはよくわかっている。
弟から私を襲うなんて、一生無理だ。
疑わしい中学3年の夜の出来事でさえ、本当にどこまでしたのか微妙なところだ。
夫との行為では、私が初めてかどうか、気が動転して考えてもいなかった。
夫に確認するのも変なことだから、知る術もない。
私たちはしっかりと二人の意識があるときに、合意の上で、身体を繋げた。
弟は、とても幸せそうだ。
これで、私たちは姉弟とは言いきれなくなった。
弟も、弟だからと言い逃れできない。
私は弟という名の年下の恋人に私を感じさせると同時に、私も弟を覚えさせられた。
弟はきっと、もっと私が欲しくなる。
私は弟の冷めない身体を優しく撫でた。
続きをねだって熱い息を吐く弟を、抱きしめてあげる。
ここのところ体調が良くなってきたけれど、過信してはいけない。
私は妊婦なのだ。
少し落ち着いて、弟の温かい手が子宮の上を撫でる。
「姉さんの子供は、僕の子供でもあるんだからね。」
弟が私にキスをする。私はとろけた顔の弟を見た。
匂うような色気をまとわせて、弟が私を見ている。
ーー私のお腹の子供は、弟とも血が繋がっている。
私と弟に共通の遺伝子がある以上、たしかに、私のお腹にいる子供は弟と同じ遺伝子を持っているのだろう。
弟は、私を恋人にできて幸せそうだ。
もっと早く、こうしてあげればよかった。
なんて回り道をしてしまったのだろう。
弟が、私の後ろから、肩や背中にキスをしている。くすぐったいのに気持ちいい。
私は弟に背中を預けて、幸せな気持ちで目を閉じた。




