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振り向かない彼女を飼う方法  作者: 一会
第4章
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63 弟 21



 姉は、姉の立場で僕を好きになったことを罰しているんだ。


 最初に、僕の声を聞けなくして、自らを罰した。


 僕の結婚相手は姉の入院先の個室で、姉を励ますために、姉に僕との"行為"の話を伝えた。

 兄さんとの話の後で彼女に確認し、その話をしたと彼女が誇らしげ言うのを絶望感をもって聞いた。


 僕の考えが足りなかった。

 彼女は好意で姉に言ったのだけれど、繊細な姉に耐えられる内容ではなかった。


 姉はさらに自分を罰し、僕の姿を見えなくした。




 「妹が今度一緒に住むという人は、妹の恋人で、僕たちの大学時代の先輩だ。

  先輩はずっと彼女に恋していると、妹が言っていた。


  妹は明るくていい子だけれど、彼女のような繊細さはない。

  君たちを応援しているようで、傷つけるようなこともする。


  妹と離婚したいのなら、僕の方からも親にうまく言っておくよ。」



 「僕は、彼女と離婚するべきですか?」


 僕はどうしたらいいかわからず、義兄(あに)にきいた。



 「君にはまだカモフラージュが必要か?」


 義兄(あに)は僕をあきれた様子で見ている。



 「でも、お腹に子供がいます。」

 「愛し合ってもいない、二人の子供か?」


 僕の心に義兄(あに)の言葉が刺さる。



 「妹は新しくて珍しいものが好きなだけだ。

  直ぐに飽きるだろうから、子供は僕が引き取って養子にして、彼女と育てるよ。」


  義兄(あに)の言ったことを僕は想像した。

  僕の子供と姉の子供が、兄弟姉妹として生活する。



 「子供が生まれたら、彼女と離婚します。」

 「今も妹は君とは住んでいないのだろう?」


 その通りだ。彼女はしばらく前から、僕と住んでいない。



 「君は今日から彼女の部屋に泊まるんだ。彼女に認識してもらえるよう、そばにいるべきだ。」


 義兄(あに)はそこで、深呼吸した。



 「彼女を抱きなさい。彼女を優しく抱いて、君がここにいると知らせるんだ。」


 僕は息を止めた。僕たちは、姉弟(してい)だ。それは、してはいけないことだ。



 「これまで想像したことがあるだろう? 君たちは、愛し合っている。想像しても不思議ではないよ。

  

  もしくは、もう、、、、彼女を抱いたことが、あるのか、、、?」


 義兄(あに)は苦しそうに僕を見ている。

 僕は答えられない。

 義兄はさらに眉を寄せ、大きなため息をついた。



 「倫理的なことより、彼女が心の健康を取り戻すことの方が大切だ。


  抱くのは、彼女の体調が良くなってからだ。

  流産すると、彼女はもっと傷つく。気をつけて接してくれ。


  僕は、彼女を抱きたくない。二度とあんな彼女を見たくない。


  だから、彼女のお腹の子は、最初で最後の彼女の子供だ。

  君が彼女に子供を作れないのだから、そういうことになる。」



 僕は、目まぐるしく頭の中を掻き乱す現実を直視し、心を静めて考えるのに必死だった。



 僕は姉であろうとする女性と、どう関係すればいいのだろう? 

 弟として? 男として? 姉を、・・・抱く?




 「姉を抱くのは、最終手段です。僕は弟なので、姉に寄り添います。」


 僕が覚悟できずにいると、義兄(あに)が苛立ったように言った。



 「早く決断しないと、取り返しがつかなくなる。」


 姉が今より酷い状態になると言うのか?



 「何を躊躇(ためら)っている? 夫の僕が義弟(おとうと)の君に、妻の恋人と名乗っていいと言ってるんだ。」


 「その前に、姉と僕は、恋人になる資格がない。」


 「そんなもの、誰も持っていない。彼女の恋人になりたいかどうかが大事なんだ。」


 僕は義兄(あに)を見つめた。



 「僕が姉さんの恋人になって、いいのですね?」


 義兄が鼻で笑う。



 「彼女の中で、君はとっくの昔に恋人になっているよ。

  弟に言われて、誰が結婚したり妊娠したりしようとするか? 

  君が彼女の恋人だから、彼女は君の意見に従ったんだ。」


 頭を殴られたような、衝撃を受けた。


 姉さんの中で、僕は弟ではなく恋人だった!



 「弟を恋人だと思っているから、彼女は心を壊したんだ。恋人なのに姉であることが、()えられなくなったんだよ。」


 義兄は辛そうに、顔を(ゆが)める。



 「彼女は、性的なことは何も感じていない。反応を示したふりをするだけだ。


  感情も、借り物だ。何も感じていない。でも、僕に対しても演技して、普通でいようとする。


  僕では、手の(ほどこ)しようがないんだ。」




 義兄(あに)の嘆きをきいて、僕は決断した。


 僕は弟だけど、姉の本物の恋人になる。世間に許されなくても、そうなるのがとても自然なことだと受け入れた。


 自分の親たちがとうの昔に受け入れた事実を、僕たち本人が受け入れきれていなかった。 


 まだ間に合う、まだ普通の姉弟(してい)でいられると先延ばしにして、姉の心を疲弊させてしまった。

 僕の中でも姉は僕の恋人だったのに、弟でいようと常識にしがみついて、普通に結婚して子供を持った人を装うことに必死だった。




  姉の壊れた心を治したい。


 

 世間体や倫理観より、姉の心が大切だ。


 僕が見ようとしない欠落と欺瞞(ぎまん)を、義兄(あに)は気づいていた。


 義兄は姉のために、自分の論理感や嫉妬心を抑えて、僕に姉の恋人になるよう忠告してくれた。


 僕は義兄の姉への愛の大きさを知った。

 この人だから姉が結婚したのだと分かった。


 今だけ、僕は姉の弟であることよりも恋人であることを選ぶことにした。



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