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振り向かない彼女を飼う方法  作者: 一会
第4章
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62 弟 20



 僕は姉の部屋で姉がスマホで僕に連絡をくれるのを待っている。

 姉はうとうとと、夢と現実の狭間にいる時間が長い。


 待ちきれなくて、僕は昔、姉が義兄の部屋に夜までいたときに送った内容を送信する。

 


  『まだ帰ってこないの?』


 姉はゆっくりまぶたを開けて、枕元のスマホを手に取り、スマホの画面を見て、かすれた声で言った。

 

  「もうずっと、家にいる。」

 

 僕は姉のスマホに返信する。



  『知ってる。』

   

  「会いに来て。」



  『そばにいるよ。』

 

  「私に触れて。」

 

 僕は姉の唇に自分の唇で触れる。



  「どこにいるの?」

  


 姉の目は真っすぐ僕に向けられているのに、何も映っていない。


 僕はベッドの上にいる姉に、覆いかぶさるようにして優しく抱いた。


 姉は動かない。

 しばらくして身を起こすと、姉は目を閉じて寝ていた。


 姉の手からスマホを取り、枕元にもどす。



  『また来るから。』


 姉のスマホに送信する。

 





 僕は姉の部屋を出て、リビングに行って義兄(あに)に話を聞いてもらうことにした。


 「僕の計画は、間違いでした。僕たち姉弟(してい)は、家を出るべきではなかった。」


 姉が計画したものに僕が手を加えて新たな計画をたて、実行に移した。

 僕は何もわかっていなかった。

 なぜ姉が、自分でたてた計画を最後まで実行しなかったのか。



 姉の僕に対する愛が、深くて大きすぎる。



 「せめて、僕は独身でいるべきだった。」



 僕は姉が結婚しても一緒にいられるような結婚相手を見つけて、浅慮(せんりょ)にも夢を見てしまった。


 姉が常々言っていたように、僕たちは別々の人と結婚し、子供を作るべきで、それが正しい生き方だから、幸せに繋がるのだと思い込んでいた。



 「僕は将来の二人の幸せを求めて、姉を不幸にした。」



 「彼女に、とても愛されているという自覚はある?」


 義兄(あに)の突然の言葉に、僕は何と返せばいいのか迷った。


 「彼女は毎日、僕に愛の言葉を告げることで弟の君に愛を伝えているんだ。」


 僕は義兄(あに)が何を言っているのかわからない。


 姉と義兄(あに)が抱き合って、キスして、姉が義兄(あに)に愛を告げる。

 あれは、夫婦のいつもの光景ではないのか?



 「彼女が僕にくれているのは、感謝の気持ちだよ。

  彼女は弟に一途(いちず)だからね。心のどこにも、他の人に恋する余裕なんてないよ。


  僕は、夫という家族の一員として、彼女に愛されているんだ。

  僕はたまたま彼女が求める条件に合致した男だから、彼女と付き合えたし、結婚できた。


  夫の子を彼女が欲していたから、僕は彼女を抱いた。

  彼女は子供が欲しいと言いながら、身体は僕を拒んでいた。


  僕が彼女を、どう抱いたか、わかるか?」


 

 義兄(あに)が僕を刺すような目で見る。

 僕は立ち尽くした。



 「彼女は、僕が煮え切らないから、僕を怒らせて僕に自分を抱かせたんだ。


  僕と彼女はカモフラージュのために結婚したから、いつか子供が持てるかも知れないと思っても、僕はあまり期待していなかった。

  彼女がいれば、それで満足だったからね。 


  僕は彼女が嫌がる素振りを見せたら、直ぐに手を出すのをやめていた。

  でも、彼女は違った。子供を持ちたくて必死だったんだ。


  彼女は僕に抱かれるために、わざと僕が怒ることを言った。


  僕たちの先輩と、関係したと言ったんだ。」



 僕は立ち尽くしたまま、義兄の言葉を聞くしかなかった。



 「僕は、一途(いちず)な彼女が好きだ。君に一途(いちず)なら、彼女は浮気しないだろ?  

  君は彼女の弟だから、僕にとって男ではない。彼女を守る、協力相手だ。


  でも、彼女は浮気したというんだ。裏切られたと思った。

  僕は感情のままに、彼女を押さえつけて犯した。

  彼女、終わったら「ありがとう」って言ったんだ。


  彼女は、浮気していない。

  君だけの、彼女だ。」



 僕は姉さんが「夫に抱かれた」と、僕に笑顔で報告した時のことを思い出した。




 「ここまでしないと、彼女は僕に抱かれることができないんだ。

  これがどういうことか、君にわかるか?」



 義兄(あに)が、話すのをやめない。

 これまで言いたかったことを、吐き出しているのだ。



 「そんな彼女が、君がいるかも知れないのに、毎日僕に抱き着いてキスして、愛の言葉を告げる。

  そこに、どんな意味があると思う?」



 姉は、僕の姿が見えなくても、僕が家にいることを知っている。

 僕は義兄にも、そのことを伝えてある。


 姉は、僕に、夫婦仲を見せつけているのだと思っていた。

 「弟なのだから、立場をわきまえなさい」と、行動で示されているように感じていた。



 「あれは、僕ではなく、君に向けた行為だよ。

  君に対する想いを言葉にし、見えている僕に向けて言ってるんだ。」



 僕は、義兄(あに)の言葉に打ちのめされた。



  姉の、深くて、濃くて、大きな、愛。



 僕は、姉が怖くて逃げていた。


 姉の愛に飲み込まれそうになるから、姉がたてた計画にのったふりをして、普通に見えるカタチを整えようと必死だった。


 半面、姉と離れるのが嫌で、姉の近くに居ようと画策した。

 とても卑怯な方法で、僕は毎晩、姉を添い寝させることができた。


 調子にのった僕は、姉の子供が欲しくなった。

 きっと姉に似て、可愛いに違いない。 


 姉の子供を自分で作るわけにいかないから、姉を挑発して、姉が好きな男との間に子供を作らせようとした。

 姉はどうせ、これまでも似たような行為を男としているのだ。

 僕が嫌だと言っても、今さらだろう。

 


 しかし、僕は姉が、僕の声が聞こえないと知って、しかも「夫に抱かれないといけない」と姉に言わせるような夫婦関係に不安を覚えた。


 僕は姉の様子がおかしいので、「しばらく姉に触れないで様子をみて欲しい」と言っただけで、姉と義兄(あに)の関係を確認しなかった。

 僕は、自分の間違いを認めるのが怖かった。


 今、姉が好きなはずの男は、姉の自分に対する好意は恋愛の意味での好意ではなく、家族の愛情という意味での好意だと言った。



 僕は、姉に、何をさせた?

 好きな男と愛し合わせるつもりで、何を受け入れさせた?



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