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妹は、どんどん綺麗になっていく。
義弟のためかと思うと苛立ったけれど、どうやら違った。
妻と先輩に連れられて、店を回ったりしているうちに、自分を飾ることを覚えたようだ。
それに、四人でいるときに、妻と義弟を見て顔を赤くしながら「お腹いっぱい」と言って、最近あまり食べない。
食べないせで、ぽっちゃりではなくなった。
綺麗になっていく妹に、僕は心配になる。
これでは、義弟が妹を襲うかもしれない!
僕がこんなに心配しているのに、妹ときたら、「ないない。」と言って、手を振るのだ。
「彼は、あの美しいお義姉さまをずっと見てきたのよ?」
妹は可愛いらしく笑って言っていたが、直ぐに妊娠した!!!!
僕は、僕の胸で泣いている妻を抱いた。
妻は妊娠した。
妻は、僕に振り向かないまま僕に抱かれ、子を宿した。
子供はそのうち僕に似てくるだろう。
妻は、僕の特徴が出てきた子供を、母親としてきちんと受け入れてくれるだろうか?
僕はあの時、無理矢理、彼女の身体を開いた。
そうでもしないと、妻が願った未来は訪れないのだから仕方がない。
妻に子供を孕ませるためにも、僕が妻を強引に抱くしかなかった。
妻は未だに弟が好きなのだ。
妻は義弟の子を産めない。
妻が子供を望むならば、カモフラージュでも夫である僕が、妻を妊娠させる必要があった。
妻だって理解している。
子を儲けて家庭を築くために、僕と結婚したのだ。
それでも感情がついていかなくて、心を殺した。
幸い妻の心は戻ったけれど、以前の妻とどことなく違い、積極的に僕を愛そうとしてくれる。
僕はこれがいいことなのか悪いことなのか、不安になる。
僕には、妻の異変に気付けなかった前科がある。
弟を愛するあまり心を殺した妻に対し、僕は無力だった。
今の妻が本当に以前と同じ妻なのか、僕が答えを知ったのは、ずいぶん後になってからだった。
「お義姉さま~! 腰、痛いですよね。さするので、ベッドに横になって!」
妻が妊娠後期になると、妹が妻にやたらと触るようになった。
妹も妊娠中だというのに、妻をかいがいしく世話をする。
妊娠後期になると胎児のいるお腹が大きくなってきて、前後のバランスをとるために、腰に負担がかかるそうだ。
妹は毎晩訪れるようになり、妻を僕のベッドに誘う。
そして、マッサージをしあうのだが、、、。
「ああん、お義姉さま、もっと、、、、ください、、、!」
妹が艶っぽい目を妻に向ける。
様子を見に来たら、変なことになっていた。
どうなってるんだ???
「あなたも、義妹の腰をさすってあげて。」
僕の視線に気づいた妻が、僕に手伝うように言った。
僕のベッドに女性が二人、横になっている。
妻が妹に背中を向けて横になり、妹が妻の腰を押して、腰の痛みを癒している。
僕はベッドに片手をついて、横になっている妹の腰を押してあげる。
「お義姉さま、気持ちいい?」
「とっても、気持ちいい、、。」
妻が心から気持ち良さそうに返事をする。
「お義姉さま、ここは?」
妻は答えない。
当たり前だ。そこは、妹が触るべき場所ではない!
僕は妻の胸を撫でている妹の手を元に戻した。
妻は起き上がって、妹の顔をじっと見下ろしている。
「お、お義姉さま、私、、!」
妻はふわっと笑顔になって、妹の頭を撫でた。
「弟のところに、行くね。」
妹がこくこくと頷く。
妻はベッドを降りて、僕の頬に軽く唇で触れて、行ってしまった。
「どうなってるんだ?」
僕がたまらず妹に質問すると、妹がにこっとかわいらしく笑って言った。
「新しいことを始めたの。」
妹が産んだ子を連れて、実家からマンションに戻ってきた。
「お兄ちゃん、私の子供、可愛いでしょ。」
妹が当然「可愛い」と言うのを知っていながらきいてくる。
本当に可愛い。
義弟よ、でかした! しかし、もう、妹に手出しするな!
「彼ね、私が妊娠しないと、お義姉さまは妊娠しないだろう、って言っていたわ。
私、一人は産む予定だったから、彼に協力したの。
でも、私はもう産まないから、あとはお兄ちゃん次第だよ。」
なんてお兄ちゃん思いな妹なんだろう。
でも僕も、子供はもういい、と思った。
義弟を想う妻が痛々しいのだ。
僕は妻の弱さに付け込んだ。
妻を抱いたときの罪悪感がまだ残っている。
子供は一人いるのだから、これ以上、彼女に無体なことを強いるのはやめようと思った。
そして、妹に言われたように、義弟と好きなように関係しても怒らないと、妊娠中に伝えた。
たとえ妻が義弟と恋人になっても、妻は僕の妻であることに変わりない。
僕は彼女に選ばれて彼女が愛する家族の一員になった。
妻が僕を選んで身を任せた。
僕は妻の心を、心の底から信じた。




