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振り向かない彼女を飼う方法  作者: 一会
第3章
45/81

45 妹 5



 お兄ちゃんと弟さんのお姉さんを二人にする作戦が成功し、私は達成感で満足していた。後は二人で決めればいいことなので、私の出番はもうない。

 私は玄関を出て、外で適当に時間を潰して戻って来ればいいと考えていた。

 考えていたのに!

 

 「こっちだよ。」


 私がエントランスを出ようとすると、弟さんが私を別の場所に案内しようとした。

 ん? ああ、マンション内に、休憩できる場所があるということか!

 ()った作りのマンションだから、そういう場所もあるのだろう。

 私は弟さんに素直について行き、別の部屋の玄関の前に来た。

 んん? 他の世帯の部屋?


 弟さんがインターフォンを鳴らすと直ぐに玄関が開いた。


 「いらっしゃい。どうぞ、上がって。」


 ドアを開けてくれた美しい女性が、弟さんを見てから弟さんの斜め後ろにいる私を見て、笑顔で家に招いてくれた。

 誰かに似ていると思って弟さんを見ると、私に微笑んで「母だよ。」と教えてくれた。

 言われて見れば確かに感じが似ている。


 「ここは両親の友達で、僕たちの家族である兄さんの家だよ。」


 弟さんは玄関が閉まった後で、不思議な説明をしながら私をリビングに通してくれた。


 リビングに、二人の男性がいた。一人は以前見たことのある美形のつかみどころのない雰囲気の外国人で、もう一人はかっちりとした印象の素敵な中年の男性だ。


 「僕の父と、僕たち姉弟(してい)が小さな頃から家族だと思っている両親の友達です。」


 私は心の準備もなく弟さんの家族に紹介され、「姉の彼氏の妹」という弟さんの紹介の後で少し緊張しながら名前を言った。


 「緊張しなくていいのよ。と言っても、知らないところに一人連れて来られて、困っちゃうわよね。」


 弟さんのお母さんが、微笑みながら私に気を遣って言ってくれた。


 「いえ、そんな。」


 知らないところだから、緊張しているのではないの!

 美形集団4人に見られているという状況に、普通顔の私のメンタルが崩壊しそうなのだ! 

 俯瞰(ふかん)してみると、美形揃いの空間で、私一人、すごい違和感がある。

 浮いているのよ!!

 いてはいけない空間にいるという居心地の悪さを感じ、私は今すぐ帰りたい気分でいた。


 「娘のことで息子に協力してくれていると、息子からきいているよ。ありがとう。」


 弟さんのお父さんが、私に優しい表情で言ってくれるのを、お兄ちゃんのために悪い印象にならないよう、なんとか返事をする。


 「いえ、こちらこそ、突然押しかけて兄と別れた理由をきいてしまい、失礼しました。そのあとで、兄とやり直す計画も立ててこうして実行してくれていますし、私の方が感謝しています。」

 

 「彼女は、お兄さんのことを、とても心配して、思いあまって僕のところに来てくれたんだ。お兄さんと仲がいいんだよね。」


 弟さんが、フォローしてくれて助かる!


 「はい!兄は優しくて、誠実で、」


 私は兄について、いいところを熱弁した。お兄ちゃんの彼女の家族に、お兄ちゃんのことを認めて欲しかったのだ。

 ただ、ちょっと熱が入り過ぎたかもしれない。気づくと、私一人が延々とお兄ちゃんについて話していた。

 気づいて口を閉じると、弟さんのお母さんが優しく微笑んで言ってくれた。


 「お兄さんが、とても好きなのね。」

 「はい。」


 弟さんのお父さんもお友達の人も引いたりしないで、優しい表情で私を見ている。

 なんていい人たちなんだろう!

 私はこの人たちとなら、お兄ちゃんは嫌な思いをせず幸せな結婚生活をおくれると思い、安心した。

  


 私のお兄ちゃんについての話が長かったのか、あっという間に1時間経っていた。

 弟さんと私はお兄ちゃんがいるところに戻り、二人が結婚を前提に付き合うことを決めたときいた。

 私は友達との約束があるので、弟さんに写真を数枚撮らせてもらい、私用に弟さんとお姉さんの美しい姉弟(してい)の写真も撮った。

 お兄ちゃんはこの後彼女の両親と会い、私はその間弟さんと今後について話して過ごし、お兄ちゃんと一緒に家に帰った。

 帰り道、お兄ちゃんはとても嬉しそうだった。苦労したかいがあったわ!


 「彼女の弟と、本当に付き合っているのか?」


 お兄ちゃんが私にきくので、私は「詳しいことは家で話す。」と言って、道中でこの話をすることを止めた。弟さんのファンが、面倒なのだ。

 


 家に帰って、私はお兄ちゃんと彼女を結婚させるために弟さんと協力しているのだと教えた。


 「だからね、私はお兄ちゃんの彼女が安心できるように、弟さんと付き合っているふりをしているだけよ。」


 私はお兄ちゃんに安心してもらおうと、秘密を打ち明けた。

 お兄ちゃんは私が付き合っていないから安心して笑顔になると思ったのに、悲しそうな顔になった。

 どうして?

 お兄ちゃんが深刻な顔をして言った。


 「あの二人は、本当に好き合っているよ。」


 それはね、姉弟(してい)愛だもの! 好き合うのも当然よ!


 「だから?」


 私はお兄ちゃんが何を気にしているのかわからず、きいてみた。

 お兄ちゃんは表情を和らげて、私の頭を撫でてくれた。



 それからのお兄ちゃんの行動は早かった。

 お兄ちゃんは「結婚したい人がいるから会って欲しい」と両親に言い、直ぐに日取りを決めた。お兄ちゃんも彼女と結婚するため、外堀から埋めることを考えたようだ。

 私はその後も弟さんとちょこちょこ連絡をとり、お兄ちゃんと彼女がうまくいくよう情報を提供しあった。




 弟さんのファンである友達は、私が弟さんの彼女になったときいて、即連絡してきた。


 「付き合いを申し込まれて大変だから彼女ふりをして欲しいって頼まれただけよ。お兄ちゃんの彼女の弟さんの頼みを、断れないよ。」


 私は弟さんと打ち合わせたとおりの情報を友達に伝えた。


 「そっか、そうだよね。ファンクラブの幹部には、うまく伝えておくよ。」


 どううまく伝えるのか知らないけれど、弟さんの彼女の立場でファンに絡まれるという心配事は消えた。

 これで万事うまくいく!

 私はこの姉弟(してい)の恋愛ストーリーを妄想し、同人誌仲間と煮詰めて薄い本を作る作業に没頭した。


 

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