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振り向かない彼女を飼う方法  作者: 一会
第3章
38/81

38 妹 1

 お読みくださり、ありがとうございます。

 「妹」視点については、特にコメディ要素が多めとなっています。



 私がその人物を実際に初めて見たのは、お兄ちゃんの大学の学祭だった。


 男子校に生息するそのイケメンの噂は、男子に興味がない私のところにも届くほど有名だ。

 なんでも美形揃いの家らしく、5歳離れた姉も落ち着いた美人だとか聞いた。

 イケメン君は理想が高いのか、誰とも付き合っていないらしい。

 私には渋くてカッコイイお兄ちゃんがいるので、他の男の人に興味はないのだけれど、学校の友達がイケメン君のファンで、いろいろと情報を聞かせられていた。

 友達から隠し撮りと思われる写真をスマホで見せられていたので、大学のメインストリートで取り囲まれながら歩いている人物が当人だと、すぐに気づいた。

 気づいたけれど、興味がないので、目指す人物の元に急いで行く。



 私は、お兄ちゃんが彼女を作ったと言うので、いてもたってもいられず、わざわざ見に来てあげたのだ。

 先週末、お兄ちゃんが顔をほころばせながら、「彼女ができた」と言った!

 ほやほやとした様子のお兄ちゃんに、衝撃を受けた。こんなお兄ちゃんを見たのはは初めてだ!

 大学に通うために家を出るまでは彼女を一人も作らなかったというのに、一人暮らしを始めたとたんに女の人がお兄ちゃんにくっついた! 

 女の人がお兄ちゃんがカッコイイからって近づいてきても、お兄ちゃんは無駄に女の人に媚びをうらないし、ましてや彼女になんかしない。

 そのお兄ちゃんが、あんなとろけた顔をして、「いつか彼女を紹介するよ。」と言うのだ!

 妹の私に、紹介?! それって、将来も視野に入れてのことだよね?!

 私のお兄ちゃんの彼女だ、よっぽど素晴らしい人でないと、お兄ちゃんと釣り合わない!

 



 イケメン君がもう一人の美形の外国人と騒がれているのをしり目に、私はお兄ちゃんのサークルが出している店に向かう。

 見つけた!


 「お兄ちゃん!」


 周囲の人よりも頭一つ分身長の高いお兄ちゃんの姿は、人がたくさいても見つけやすい。

 遠目でもわかるお兄ちゃんの渋くてカッコイイ姿をめざして、急いで前に進もうとする。

 お兄ちゃんのところに駆け寄りたいのだけれど、人が多くてなかなかたどりつけない。

 やっとたどり着いたとき、いつもは渋い顔のお兄ちゃんが、隣の女の人にでれでれしていた!!!

 ぶちっと何かが切れた音がする。

 私のお兄ちゃんをたぶらかしたのは、この女か!!

 私はいらつく気持ちを抑えて、女の人を観察した。

 今までお兄ちゃんの周りにいなかったタイプの、穏やかな雰囲気の人だ。

 でも、お兄ちゃんは人がいいのだ。悪い女に引っ掛かっている可能性がある。

 

 「お兄ちゃん、来たよ。」


 私が平静を装って落ち着いて声をかけると、お兄ちゃんと女の人が私の方を見た。お兄ちゃんは微笑んで、すぐに私のところまで来てくれた。


 「一人で来たのか?」

 「うん。」


 お兄ちゃんが優しい笑顔を私に向けてくれる。お兄ちゃんを独占できて、とてもうれしい。やっぱりお兄ちゃんが一番だ。

 お兄ちゃんが後ろを振り返って、女の人に嬉しそうに声をかけた。


 「妹を紹介するよ。」


 女の人がお兄ちゃんの隣に来ると、お兄ちゃんは女の人を、「彼女」と紹介した。

 「彼女」は、人懐こい笑みで私に挨拶する。私は「彼女」の全身を観察し、お兄ちゃんへの接し方を見る。

 学祭だから動きやすさ重視だろうけれど、フェミニンすぎることもなく清楚な服装だ。

 お兄ちゃんにべたべたすることもなく、挨拶が済むと、「せっかく妹さんが来てくれたのだから、休憩をもらって一緒に回るといいわ。」と言って、私とお兄ちゃんを二人にしてくれた。

 妹に対する気遣いができる人のようだ。将来のことはおいておいて、お兄ちゃんの「彼女」としては、まあ、合格点をあげよう。



 私はにこにこしてお兄ちゃんと学祭を回ろうとしたけれど、急に人が増えて来て、移動しづらくなった。

 イケメン君がこちらに向かって来て、何事かと思っていると、お兄ちゃんの前に来て挨拶した。


 「お騒がせしてすみません。声をかけていただいたので、今日は二人で来ました。」


 お兄ちゃん、知り合いなの?!


 「あー、すごい人気だね。彼女は在庫を確認しに行ってるけど、呼んでこようか?」


 ちょうどその時、可愛い女の子の声がした。


 「お兄ちゃん、来てくれたの!」


 声の方を見ると、お兄ちゃんの「彼女」だった。


 え?嘘!さっきと全然違う!何、この可愛い生き物!

 「彼女」は人混みの中を、イケメン君と一緒にきた美形の外国人に向かって行く。

 「彼女」は、美形の外国人の前に立って嬉しそうに英語で話している。

 何なの? お兄ちゃんの前だと落ち着いた美人だったのに、美形の外国人を「お兄ちゃん」と呼ぶ「彼女」は、ひたすら愛らしくて可愛い女の子だ。


 「あの人は、彼女が小さい頃から世話になっている人らしいよ。」


 お兄ちゃんが説明してくれたけれど、それって、どういう関係よ?

 

 さっきから写メの音がうるさい。イケメン君もとい、「彼女」の弟くんが、被写体になっていた。

 美形の外国人の方も、「彼女」との麗しい姿を撮影されている。

 ここでは、個人的撮影に肖像権はないらしい。

 美形の宿命だね。私には関係ないけれど、一般人なのに面倒なことになっていて、かわいそうな気もする。

 

 「ちょっと下がってもらえる?」


 気の強そうな女性が私に声をかける。

 「彼女」の弟くんを撮影するのに、お兄ちゃんと私は邪魔なようだ。

 弟くんは嫌な顔をせず笑顔で対応するけれど、一緒に来た美形の外国人の方が気になるのか、途中でそちらに向かった。

 帰ろうとしていると、女性に飲食物を押し付けられ、「彼女」も手伝って持っている。美人の姉と綺麗な弟が仲良くしている姿は、私の目に麗しく尊く映った....。 

 本物の美形の姉弟(してい)愛は画(え)になるね!

 「彼女」に対する好感度が一気に上がる。

 辺りでは、私と同じ考えの人なのか、姉と弟が二人で微笑みあう姿を撮る連写の音がした。


 その後、「彼女」と弟くんと美形の外国人の三人が大学の外に向かって歩き出し、混乱は収集した。

 ふうー。いいものを見た。

 私は満足感でいっぱいで、笑顔でお兄ちゃんを見た。

 あの二人の男の人とは異なるけれど、お兄ちゃんは私の渋くてカッコイイお兄ちゃんだ。「彼女」は見る目がある!

 


 「彼女」が抜けたため、お兄ちゃんは休憩を取りやめることになった。私の頭を撫でて謝るお兄ちゃんに、私は、「大丈夫。お腹いっぱいだから!」と答えた。


 「先に何か食べていたのか?」


 思い違いして言うお兄ちゃんに訂正を入れず、私はお兄ちゃんに「頑張ってね!」と言って幸せな思いで帰った。


 


 

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