32 姉 9
私が大学4年、弟が高校2年生になった。春のある夜、私はお母さんに下の階のリビングに来るよう呼ばれた。
なんで、お母さんが、下の階のリビングなの?
不思議に思いながら、ドアを開けてリビングに入ると、お母さんとお兄ちゃんが、ソファーにくっつくように座って、楽しそうに話していた。
「お母さん?」
「いらっしゃい。座って。」
お母さんは、この部屋の主のように振る舞っている。
お母さんは笑顔で私を見ているけれど、私はお母さんがお兄ちゃんと繋いだ手に気づいて、何を言ったらいいのかわからなかった。
お母さんはお兄ちゃんと指を絡めてしっかり繋いだ手を持ち上げて、私によく見せた。
「あなたが5歳の頃、お兄ちゃんと結婚しようと言い出したとき、お母さんがお父さんとお兄ちゃん、二人とも好きだと言ったこと、覚えている?」
私は言葉が出ないので、頷いた。
「その説明をしようと思うのだけれど、ききたい?」
私は返答に窮した。
実のところ、お母さんとお兄ちゃんがそういう仲だと今わかって、思考が停止していた。
夢で母が言ったことは真実だった。
私が何も言わないでいると、お母さんは穏やかな声で、非常識なことを言い出した。
「姉と弟で、関係を続けてもいいわよ。」
お母さんは私たちのことを知っていた!? しかも、お兄ちゃんまで!
私は身の置き所のなさを感じた。
「弟と、実際のところ、どこまでしたいの?」
お母さんの直球に、私は答えられなかった。
私が黙っていると、お兄ちゃんが話し出した。
「彼はとても悩んで、私に相談してくれていたんだ。」
私は今度こそ、消えてしまいたいと思った。
「彼は、本気だよ。」
私は自分の愚かさを知った。
弟を巻き添えにしてしまった。
「今だけよ。」
きっと、彼女がいないから、彼女の代わりに私としているんだ。
「本気でそう思っているの?」
お母さんに言われ、私は唇を噛んだ。
弟は、私を、大切にしてくれる。最近、弟は私に欲情するようになった。
キスだけと言いながら、弟は私の首に触れて、私が思わず出した声に喜んでいる。
キスしながらベッドに横になると、私の身体を優しく撫でて、身体を押し付けてくる。
お風呂上がりの下着姿の私に、これまでになく過剰に反応するようになった。
夜中に、弟が私を求めてくる。
「私は、きちんと誰かと結婚して子供を産むの。弟も、きっと誰かと結婚して、子供を作ると思う。」
私は自分でそうすると、決めている。だから、弟と触れ合えるのは、今だけの特権なのだ。
私は、お母さんとお兄ちゃん、二人を見ながら言った。
「そうなの? それで、弟とはどうするの?」
お母さんはなおもきいてくる。
「どうもしない。私は姉で、弟は弟だもの。」
弟は他人ではないから、私と弟が別々の人と結婚しても、いつまでも私の家族でいられる。
このままがいいのだ。
「弟もそう考えているかしら?」
お母さんが苦笑して言うことに、私は答えられずにいた。
私は黙ったまま、お母さんとお兄ちゃんを見ていた。
二人はいつからそういう仲になったの?
私が好きなお兄ちゃんは、お母さんと許されない結婚をしていた。
お父さんは、知っていて、許しているの?
弟とそういうことをしている手前、お母さんのことを非難できない。お兄ちゃんに弟との詳しい事情を知られて、まだ立ち直れないので、質問なんてできる状態ではない。
私は就寝の挨拶をして、そのまま自分の部屋に戻った。
弟は今の状態だと、結婚しないかもしれない。
弟の女の子対する嫌悪感は、すぐに改善する見込みがない。
だったら、私が弟の彼女の代わりに、彼女にするようなことをされても問題ないはずだ。
私は姉なのに、弟を大人や女の子たちから護れなかった。
私には、弟から女性に対する恐怖心をなくす義務がある。
弟も男性なので女性の身体に興味を持っているだろうから、女性に対する好奇心を満たすのに、姉の私が適任だ。
私が恋人のように弟に接していれば、弟はそのうち女性が怖いと思わなくなるはずだ。
私は、弟にキスをし、抱きしめ、弟を見つめて毎日を過ごしている。
弟にする態度ではないと思うものの、私はブラコンだと自覚している。弟だと、きちんと認識している。だから大丈夫だ。
私がこんなに弟を思っているというのに、弟は最近、私を避けている。毎晩していたキスもないし、朝は私が起こす前に起きている。
弟の気持ちがわからない。こんなこと、初めてだ。
私はうろたえて、付き合っている彼に心配された。
「弟が、私を避けているの。」
私は彼の部屋で彼に身を乗り出して、不安を口にした。この人なら、弟と同じ男性なので、なにか解決策を知っているかもしれない。




