31 姉 8
クリスマスイヴの夜、日付けが変わる前に弟の部屋に行き、私は弟の寝顔を見た。
結局、後で欲しいプレゼントって、何だったの?
私の愛おしく賢い弟は、たまに私の理解が及ばないことを言うので、私は謎を抱えたままのことが多い。本当に理解して欲しいことは私が理解できるように言うだろうから、私はあえて質問しない。
寝ている弟の鼻の頭に唇で触れた後、両方のまぶたにも唇で触れた。弟が愛おしくてたまらない。
弟の鼻に私の鼻で優しく触れ、弟の唇に自分の唇を軽く押し付けた。
プレゼントをもらったので、自分の部屋に戻ろうと身体を起こすと、弟が私の手首を掴んだ。
弟は起きているはずなのに、目を閉じている。
弟はしっかりと私の手首を掴んでいるので、振りほどくことはできなさそうだ。
目を閉じて私を離さない弟が、可愛くて仕方がない。
私は弟のベッドに入り、弟の横に寝転んで羽毛布団をかけ、朝まで一緒に寝た。
朝、私は珍しく弟より遅くに起きた。
弟と向き合って横向きに寝ていたようで、目を開けてすぐに弟の顔が見えた。
「おはよう。」
「おはよう。」
弟から朝の挨拶をされ、反射的に挨拶した。
弟の目の下にうっすらとクマが見える。
寝ていないの?
でも、お肌は心なしか、昨日よりつやつやしている。
私の疑問が顔に出ていたのか、弟が微笑んだ。
「姉ちゃんと一緒に寝たから、興奮して寝付けなかった。」
何それ? お姉ちゃんと一晩中一緒にいられて、うれしかったの?!
弟が素直だ!
ナチュラルハイか?!
私が弟をまじまじと見ていると、弟は私を抱き寄せて、私の口を食べ始めた。
夜はともかく、朝に、しかも寝起きにこんなことをするなんて初めてだから、私は弟に翻弄されて頭がぼうっとしてきた。
「プレゼントはもらった?」
弟の口が離れたので、私は昨夜思ったことを回らない頭で何気なくきいた。
「もらったよ。」
弟が後ろめたそうに、私から視線をそらして言う。
顔が赤い。
何をもらったのか、きかない方が良さそうだ。
弟の考えていることは、やっぱりわからない。
私が弟の部屋から出ると、キッチンではお母さんが朝ごはんの準備をしてくれていた。
今朝は何だか腰が怠い。パウダールームではお父さんが顔を洗っている。
顔をタオルで拭いたお父さんが、鏡に映った私を見て、振り向いて言った。
「ボタンがずれてる。」
私は自分のパジャマを見た。
パジャマの前ボタンが一段ずつずれていた。
昨夜、弟の部屋に行く前は、きちんととめていた。
弟は、私の裸をプレゼントして欲しかったの?
「ありがとう。」
私は教えてくれたお父さんに感謝した。自然と笑みがこぼれてくる。
朝は何も考えずに行動しているから、お父さんに指摘されなかったら気付かなかったかもしれない。
クリスマスプレゼントを理由に、弟が自制心を捨てた。
見たいならそう言えば、いくらでも見せてあげるのに。恥ずかしがりな弟には、無理な注文か。
私はどうしてか、とてもうれしくて、朝から気分が高揚していた。
今年もサークルで、ハロウィンパーティーを開くことになった。昨年と一昨年は簡単なので、黒のマントと帽子をつけて、魔女に扮した。三度も同じでは、つまらない。
大学3年生の、今年のハロウィンの仮装に迷ったので、高校1年生の弟にきいてみることにした。
「姉ちゃんは、魔女か黒猫、どっちかしかないよ。」
それ以外、選択肢はないと言い切られたので、今年は黒猫にしようと思った。
早速衣装を調べて購入した。黒い服を着て、猫耳とスカートにしっぽをつけて完成だ。
私は弟の部屋に行って弟に黒猫の私を見せた。
「姉ちゃん、今は猫なの?」
弟の視線がちょっと痛い。
どこかおかしいところでもあるのかしら?
「猫は、ここが好きなんだよ。」
弟はベッドの端に座り、私を呼んだ。
弟の横に座ると、肩を抱かれて、横に寝かせられる。こてんと倒れて、私は弟の膝の上に頭を乗せた。
弟の、ひざ枕だ。
高校1年生の弟の積極的な態度にわくわくした。私は何かを期待している。
弟をじっと見つめると、私の頭を撫でてくれた。
とっても優しい時間。でも、何かが足りない。
私は手を伸ばし、弟の顔に触れた。
弟は熱をはらんだ目をし、何か言いたげな表情で、私を物欲しげに見ている。
「好き。」
私は自然に弟に言った。
私は、弟が、好き。
弟の目が潤んで、私の唇を指先で撫でた。
私は口を開いて弟の指先をなめ、キスした。
私は弟が好きなのだ。
付き合っている彼がいるというのに、私は弟を欲しがっている。
弟の指先をもっと感じたくて、私は目を閉じて弟の指を口の中で味わった。
愛おしい、私の弟。
今日の私は、弟の言った通り猫なので、猫になりきってみることにした。
弟の指をぺろぺろ舐め、手の平を舐め、弟に向かい合ってまたがって座って弟の首を舐めた。
弟はじっとしていたのに、急に私をベッドに寝かせて私の上にまたがった。
「姉ちゃん、やり過ぎだ。」
弟は口を開いて私の口を塞いで、私を味わいだした。
私は弟の背中に手を回した。
二人の身体が熱くなってくる。
弟は日に日に、男になっていく。毎日の変化を、私は楽しみにしていた。
私の心を弟に預けたままなので、私は付き合っている彼とは身体が熱くなることはない。
弟が、私を抱きしめて耳に熱い息を吐いた。
私は弟のシャツをたくし上げて背中をさらし、部屋の空気で冷やしてあげようとした。
弟の背中の素肌は筋肉があってなめらかで、私は触り心地のいい素肌をたくさん撫でた。
もっと触りたくて弟の脇腹を触り、弟が苦しそうな息をしていることに気づいた。
「どうしたの?」
私が心配すると、弟は顔をあげた。
弟は濡れた目で私を見ていた。
何か言いたげな、せつない顔をしている。
「熱くて汗をかいたから、シャワーを浴びてくる。」
弟はそう言って、私をおいて部屋を出てしまった。
置いてけぼりを食った私は、弟のベッドにうつぶせになり、弟を想う。
弟の身におこっていることが私にはわからない。
彼に同じことをしたら、彼も同じ反応をするのだろうか?
私は起き上がって弟の部屋を出た。
たまたまお母さんがリビングにいて、私にスカートのシワについて教えてくれた。
自分の部屋に戻って衣装を着替え、弟と入れ違いにパウダールームに入ってスカートを湿らせて干して、手入れをした。
正直、面倒だ。今後は、シワの目立ちにくい衣装を購入しようと思った。




