30 姉 7
私が付き合っている彼は、とても優しく私に接してくれる。彼はとても気遣いのできる人で、私の些細な心境の変化もかぎ取る。
私は弟と深いキスをするけれど、付き合っている彼とはそこまでのことをしない。
彼は遠慮深く、私を大切にしてくれていた。
大学2年の学祭の時、彼の妹を紹介された。愛らしく、兄好きな様子に、私は好感を持った。
私を見る目に敵を見るような感じを受けたけれど、お兄ちゃんをとられるとでも思ったのだろうか。自分と通じる感性の持ち主かもしれない。
弟は、口には出さないけれど彼のことが気にいらない様子だ。
彼の部屋で夜9時を過ぎると、弟から連絡が入る。
私のスケジュールを私は毎日弟に伝えていた。
ある時期から、彼は私に積極的に関わるようになった。
彼はお酒の力を借りて、私と先に進もうとする。
彼は優し過ぎるから、お酒を飲まずに私を触るのは難しいのだろう。
私に他に好きな人がいると知っていても、彼は私を欲してくれる。
私に言葉を求めない。
私は彼の彼女の地位が心地好かった。
でも、彼に性的に身体を触れられると、不安が先だって緊張してしまう。弟に触れられると逆に安心するというのに、これはどういうことなのだろう?
彼の何が私を不安にさせる?
私は彼に会って、彼をもっと観察するようになった。
私は大学2年、弟は中学3年。弟との年齢差は決して縮まらない。
今日はクリスマスイブだ。彼と外でデートをするため、弟を起こした後はあまりゆっくりせず出かける準備を始めた。
髪の毛にウェーブをつけて髪を少しとって結び、飾りをつける。薄く化粧をし、ワンピースを着て、変なところがないか、大きな姿見の前で確認した。
ドアの音がしたので振り向くと、弟が私を見ていた。
「夜になる前に帰って来るね。一緒にクリスマスケーキ食べるから、待っててね。」
私は弟に言って、デートに持って行くものを確認し始めた。
「今日はどこに行くの?」
弟にきかれたので行き先を答えて、弟にハグをした。
「今度、一緒に行こうね。」
私が弟と出かける約束をすると、弟は私の背に手を回してぎゅっと抱きしめてくれてた。
「待ってるから。」
私も、待ってるから。
弟に言われて浮かんできた言葉に疑問を持つ前に、弟が私にキスをした。
弟の甘いキスを受けて私も弟に返そうとしたのに、弟は私から顔を離した。
不満に思って弟を見ると、弟はにっこり笑って同じことを言った。
「待ってるから。」
私はお預けを食らった。
にっこり笑う弟が、憎らしいくらい可愛いらしい。弟にキスしたい。
姉としては、弟にやられたらやり返すことを信条にしているので、弟が私からのキスが欲しくなるようにしなければならない。
私は弟をじっと見つめた。
しばらく見つめると、弟の顔が私に近づいてきたので、私は目を閉じて弟を受け入れた。でも、キスをかえしてあげない。
弟は顔を離して物足りなそうに私を見ている。
「帰ってきたらね。」
私はにっこり笑って言った。
弟が主導権を握ろうだなんて、まだ早いのだ。
弟が、面食らったような顔をして笑い出した。
私も笑って、唇を塗り直して出かけた。
彼と映画をみて、お昼を食べ、お互いの服を買って、一緒にいてとても楽しかった。クリスマスイブだけに人が多かったけれど、映画も店も彼が予約してくれていたので、楽に過ごせた。
デートに慣れている様子なので以前付き合った人の影響なのかと思ったら、妹とよく出かけるそうだ。
彼から聞く仲のいい兄妹の話に、私は微笑んだ。
彼はスマートに私をエスコートし、私は父やお兄ちゃんと一緒にいるような気楽さで楽しんだ。
家族のように一緒にいても気取らずに過ごせる、友達のような彼。
とってもいい人なので、私は他人であってもこの人となら先に進むのもいいと思うのだけれど、私の心はそれだけでは納得してくれない。
クリスマスイヴのデートで、夕方帰る時に彼からおでこにキスされた。彼は照れ屋なので、外で口にキスすることはない。
私は急いで家に帰り、手洗いとうがいの後で着替える前に弟の部屋に行き、約束通り弟にたくさんキスをした。
弟の口を堪能してほっと息をつくと、弟が何かを我慢するように身体に力を入れていた。
「姉ちゃん、後でプレゼントをもらってもいい?」
弟の声にしては低くて硬い声に、私が不信に思っていると、弟は顔を赤くしている。
とっても可愛い!
「何でもあげるわ。」
よくわからないけれど、突然言われてもあげられるものなのだろう。
家族でのクリスマスイヴのディナーの締めくくりに、ブッシュ・ド・ノエルをカットして、人数分お皿に出した。
自分の分をフォークで切って口に運ぼうとしたとき、弟が声をかけた。
「姉ちゃん、口を開けて。」
隣に座る弟の方に顔を向けると、弟がフォークに一口分のケーキをのせて、私に向けている。
「はい、あーん。」
弟に言われて口を開けると、弟がケーキがのったフォークを私の口の中に入れた。口を閉じると弟がフォークを戻して、私のことを観察するように見ている。
もぐもぐ食べて味わう。毎年家族でクリスマスケーキを選んで予約している。今年のケーキはこの店のものにしてよかったと、美味しく思いながら飲み込む。
美味しいので、私も自分のフォークにのったままのケーキを弟に差し出す。
「あーんして。」
弟がみるみる真っ赤になり、親の方をちらちら見る。
「ほら、早く。」
私が促すと、弟は目をぎゅっと閉じて口を開けた。
弟の口に私のフォークにのったケーキを入れ、食べさせた。
弟が嚥下するのを待って、感想をきく。
「甘すぎないのにコクもあって、ふわっとしていて軽い口当たりで、美味しいよね?!」
弟が私の目を見て、少しぐったりした様子で答えてくれる。
「うん、さっぱりして、おいしいよ。」
お母さんがくすくす笑っているので弟から親に目を向けると、お父さんがため息をついているところだった。
「私も、して欲しいわ。」
お母さんが隣の席のお父さんにねだった。お父さんは照れず、私たちにお手本を見せるようにお母さんにケーキを食べさせた。
両親の行為がうらやましくなり、私は弟の方に顔を向け、口を開けて弟に催促した。
「あーん。」
弟は私を見て、はにかみながら私に食べさせてくれた。
弟は自分のケーキを私に食べさせ、私は私のケーキを弟に食べさせて、幸せなクリスマスイヴを過ごした。




