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振り向かない彼女を飼う方法  作者: 一会
第1章
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 僕は、40代のオッサンにこんなに可愛い彼女をとられるのは納得できなかった。納得できないけれど、現実的には、彼女がオッサンに恋している限り、彼女が僕に振り向いてくれることはないだろう。

 40代のオッサンに負けたような気がする。


 「それで、次はどうするの?」


 僕は立ち直り、彼女に話を促す。


 「私が二十歳になったら、彼に告白する。」

 「告白して、二十歳になるまで、いろいろ待ってもらえばいいんじゃないの?」


 気長なことを言う彼女に、僕はさっさとけじめをつけるよう助言した。


 「あなたは付き合ってる彼女に、あと一年、そういうことをするのを待って、と言われて待てる?」


 彼女は俯いた状態から僕を伺い見るので、上目遣いになっている。可愛いから、やめて欲しい。


 「大切にしたい人なら、待つよ。」

 「本当に?」


 彼女は僕の近くに寄ってきて、僕の手の上に自分の手をのせた。ふよふよした柔らかい感触に、僕はどきどきした。


 「多分。」


 自信がない。こんなに可愛くて柔らかい生き物を、触りたくなるのは当然だ。

 彼女は直ぐに手をどけて、自分の場所に戻って食事を続けた。

 僕も食事を再開し、二人とも黙々と夕飯を食べた。

 食べ終わって二人で食器を片付け、テーブルを拭いて、彼女は今日買ってきたティーパックの緑茶を入れた。


 「彼は大人だから、私が二十歳になるまで何もしないでも待ってくれるかもしれない。でも、それまでの間、彼に無理をさせるのは嫌なの。」

 「大人だからこそ、待ってくれると思うよ?」


 僕は若いから無理だけど。


 「小さな頃からの知り合いなら、君の言うことをきいてくれると思う。」

 「わかった。今夜、それとなく、きいてみる。」


 彼女は納得して、そのまま帰って行った。



 翌日。

 彼女は深刻そうな表情で、僕に頼み事をした。

 彼女は週に1回、僕の家に通うようになった。





 週に一回、彼女は僕に手料理を作ってくれる。カレーばかりでは作るのに飽きるので、小さなキッチンでできるものだそうだけど、僕には十分だった。


 「いつも家族の分も作るから、二人分なんて簡単よ。」


 彼女が普段料理をしない、と言ったのは、正式な料理を作らない、という意味だった。家庭で作る普段の料理はきちんとしていた。

 

 彼女は毎週一回、告白の練習をするために僕の家に来る。

 彼女は僕が提案した通り、告白相手に待ってくれるか、それとなくきいたそうだ。告白相手は、「場合によっては。」と答えたそうで、不安を覚えた彼女は、結局二十歳になるまで告白を延期した。

 告白を延期すると決めると、彼女はより完璧な告白にこだわりたくなったらしい。


 「一年近く練習をしないことになると、本番が不安だから。」


 本番なんて、誰でも不安だと思う。

 一度引き受けたことなので、僕は最後まで見届けるつもりで練習台を引き受けた。そのかわり、彼女は僕に夕飯を作ってくれる。

 


 「好きです。」

 「私、あなたが、好き。」

 「あなたのことが好きです。」

 「私は、あなたが、好きです。」

 「好き。大好き。」


 可愛い告白。

 溜めた想いがあふれる告白。

 ストレートな告白。

 情熱的な告白。

 素直な告白。


 彼女はいろいろなパターンで、僕に向かって告白してきた。僕は練習台だ。わかっていたけれど、可愛くて好みの女の子が毎週僕に告白する状況は、僕の精神衛生上、好ましくなかった。

 僕は気を静めようと、彼女に告白相手の40代のオッサンについて、いろいろ質問した。

 外国人、海外で会社経営、年に一度日本に滞在、優しく頼もしい。

 彼女が言うにはオッサンはカッコイイらしい。いちゃもんをつけてやろうと思いながら写真を見せてもらい、僕は降参した。そうだね。カッコイイし、男に対する感想としては変だけど、綺麗だね。

 モデルでも俳優でもない。これだけ好条件ならモテてるはずだ。モテてるのにこの歳まで独身?

 

 彼女は多分、オッサンにフラれる。彼女は可愛いし美人といえる分類に入るけれど、このオッサンは別格だ。40年も生きていたら、彼女と同じかより素敵な女性がオッサンの周囲にいたこともあるはずだ。すでに結婚しているか、結婚同然の生活をしているか、もしくは独身が好きか、いずれかだろう。

 彼女はフラれるとわかっているから告白を先延ばしにしているのだろう。つまり、フラれること前提の、フラれて区切りをつけるための告白。

 僕は彼女がフラれた後の対策が必要だと思った。

 

 

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