23 弟 8
神様なんて、いやしない。
いたら、ぼくを姉ちゃんの弟に生まれさせるはずがない。
僕が弟である限り、ぼくが姉ちゃんを幸せにする未来なんてこないのだから。
ぼくは、姉ちゃんとキスしていることを父さんにも兄さんにも言わなかった。
妄想までならよかった。たまにふざけてかすめるように触れるのも、日本では珍しいと思うけれど家族のスキンシップと見なすことができた。
でも、あれだけ激しいキスを姉と弟で交わすことは、許されないことだ。
ぼくは姉ちゃんにとんでもないことをした。
我慢して耐えなければならない場面で、感情のままに動いてしまった。
兄さんに教えてもらった「魔法の言葉」は、ぼくに効果をもたらさなかった。
ぼくの劣情は、魔法でも打ち消すことができない。
ぼくは毎晩、姉ちゃんの口を犯した。
姉ちゃんの口は甘くて美味しい。他の女の人としたことがないから比較できないけれど、ぼくにとって極上だ。
いつまでもキスを続けていられるけれど、姉ちゃんのとろけた顔をみると先に進みたくなるので、理性があるうちに自室に戻ることにしている。
姉ちゃんは、ぼくに見せ付けるように自分の肌をさらそうとする。ぼくに接触し、ぼくの心をかき乱す。
姉ちゃんが付き合っているという男のところに行った日は、ぼくは苛立って姉ちゃんに八つ当たりする。
いつもより姉ちゃんを求めて姉ちゃんの口をなぶり、ベッドに寝転がして姉ちゃんに僕の身体を押し付ける。
姉ちゃんがぼくにさせたいのは、こういうことなのだ。
ぼくは結局、姉ちゃんの望むままに動かされていた。
姉ちゃんは、ぼくが好きなのだ。この、「好き」というのがくせ者で、恋愛の、純粋な「好き」とは違う。
姉ちゃんは、ぼくを独占したくてぼくのことが「好き」なのだ。
女の子を恐怖の対象としていた小学生の頃に、ぼくは姉ちゃんのキスによって姉ちゃんを性の対象として心に刻んでしまった。
幼児の時分に大人にいたずらされそうになったときに姉ちゃんがぼくを助けてくれたことも、姉ちゃんに心酔する一因だと思っている。
姉ちゃんのすることは、世間的に間違っていようとも、ぼくにとっては正しい。姉ちゃんに対する絶対服従の精神がぼくの深層に刻まれている。
わかっているのに姉ちゃんに対する気持ちを断ちきれない。
断ち切れないまま、僕は姉に気付かれないよう罪を犯していった。
中学3年生の大晦日、雪が積もるほど降った。
「寒いでしょ。一緒にお風呂に入る?」
姉ちゃんがぼくを誘う。
ぼくは今、どんな顔をしてる?
きちんと弟の顔になってる? それとも、飢えた男の顔になってる?
姉ちゃんは笑顔で、ぼくの手を引いてバスルームの隣の洗面所に連れていき、自分の服を脱ぎ始めた。
簡単に畳みながら服を順に脱いでいく。
ただ普通に脱いでいくだけの行動に、ぼくは理性を必要とした。
姉ちゃんは下着だけを身につけ、ぼくのシャツに手をかけた。ぼくは姉ちゃんの手首を握って止めた。
姉ちゃんが不思議そうに言う。
「脱がないと、お風呂に入れないよ?」
姉ちゃんはぼくを脱がそうとするのを止めて、もう片方の手をぼくの空いた手の甲に添えた。ぼくの手を姉ちゃんの腰にあて、ぼくの手を使って下の下着を脱ごうとする。
ぼくは弟の領分をわきまえている。
どんなに姉の身体が魅力的でも、姉の記憶に残るような方法で実際に手をだしたりしない。でも、魅力的で目を離せない。
姉はぼくに見せ付けるように、身体を隠さない。
姉ちゃんがぼくにどうして欲しいのか。ぼくは知っている。
ここを耐えないと、ぼくたちに祝福された未来はやってこない。
姉ちゃんは、明るいところで自分をさらした。ここで姉ちゃんだけを下着姿にして逃げるのは、卑怯な気がした。
父さんと母さんと兄さんの絆を思い、ぼくたちも今より強い絆を持てるよう、自分の理性をかき集めた。
ぼくは姉ちゃんの腰から手を離して、自分から服を脱いだ。上から順に全部脱いでいく。
下着一枚になり、ぼくは姉ちゃんの前に立った。
姉ちゃんはぼくをじっと見て、くるりと回って背中を向けた。
「ホックを外して。」
姉ちゃんが背中にかかるストレートの髪を前に寄せて、ぼくに要求する。
姉ちゃんの白い背中がぼくを誘ってるように見える。
僕は唾を飲み込んだ。
ぼくの理性だけでは心もとない。ぼくは姉ちゃんの理性も信じて頼った。
ぼくは姉ちゃんの下着のホックを外し、肩から下着を脱がせた。
姉ちゃんがぼくの方を向いて、ぼくの腰に触れた。
ぼくたちは緊張感を持って互いの目を見ていた。
姉ちゃんが、ぼくの下着のところを見ている。
姉ちゃんは僕の身体の状態をしっかり理解して、判断に迷っている。
ぼくは姉ちゃんの頭を撫でた。
ぼくは弟なので、明るいところで姉ちゃんに触れるとしたら、この場合頭くらいしかなかった。
ぼくはまだ未熟だけど、姉ちゃんのために姉ちゃんに関することだけ大人になろうとしている。
身体が熱い。早く脱いでしまいたい。
姉ちゃんの視線がそこにあるだけで、ぼくは変になりそうだ。
姉ちゃんが目を閉じた。
ぼくは姉ちゃんのストレートの髪がかかった裸の胸を、きちんと見ていた。
姉ちゃんの呼吸に合わせて、ゆっくりと動いている。
姉ちゃんは再び目を開けると、ぼくに抱きついた。
「ぎゅってされるの、好きよね?」
「うん。好きだよ。」
姉ちゃんの肌が、ぼくの肌に直接くっつく。
ぼくは冷静になりきれず、告白した。この流れでは、姉ちゃんに気付かれない。
「私も、ぎゅっとされたいな。」
ぼくは熱でくらくらする頭のまま、姉ちゃんの言葉に従い抱き着いた。
姉ちゃんは、小さかった。
昔、姉ちゃんの身体はとても大きくて、いつでもぼくを護ってくれていた。
でもこれからは、ぼくが姉ちゃんを護らないといけない。
ぼくは大人にならないといけないのだ。
意識のはっきりした姉に手を出すのは危険過ぎる。
ぼくは姉ちゃんを一人でバスルームに押し込め、服を着て自室に戻った。




