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振り向かない彼女を飼う方法  作者: 一会
第2章
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 僕は彼女と部屋で過ごしているうちに、彼女の魅力に捕われていった。


 彼女はまだ僕ではない人を想っているようだ。

 僕はせつなさを感じて彼女が欲しくなっていた。

 


 僕は酔ったふりをして、彼女と少し深いキスをした。

 そのまま彼女を押し倒して、彼女の身体を触ろうとしたのだけれど、ちょうど彼女のスマホが鳴って、彼女はそちらに気を()らした。


 弟からの連絡に、彼女は嬉しそうにしている。



 彼女の弟は、来年高校生だ。

 彼女の一人でも作っていそうだけれど、学祭での様子を考えると、逆に一人に決められないのかもしれない。

 




 また別の日に、僕は彼女にキスをした。僕たちは、大学3年生になっていた。


 ハロウィンの猫の仮装をした彼女と一緒に寝転がって、彼女の身体に触れた。

 彼女は身体をかたくして、息を詰めている。


 「怖い?」


 僕が彼女に尋ねると、彼女は小さく頷いた。

 僕は彼女の頭を撫でて、彼女を抱きしめた。


 彼女は、猫だ。

 可愛い猫を、僕は大切にした。





 彼女と僕の交際は、微妙な感じで続いている。


 大学を卒業する頃、恋人未満のこの交際を、僕はどう考えていいのかわからなくなっていた。

 僕は思いきって、彼女に質問することにした。



 「まだ、あの人が好きなの?」


 彼女は僕を見つめている。



 「私、誰とも結婚できないと思う。」


 彼女はあきらめたように僕に答えた。



 「結婚したいの?」


 僕は彼女がそこまで先のことを考えていたことに驚いた。



 「付き合ったら、結婚するでしょ?」


 彼女は首を傾げて、当然のこととして言った。



 「僕との結婚を考えてくれていたの?!」


 彼女はじっと僕を見ている。



 「あの人を一生好きなままでも僕と結婚できるとしたら、どうする?」


 彼女は迷ったように視線をさ迷わせ、最後に僕と目を合わせて言った。



 「時間が欲しい。修士課程を卒業するまで。」


 彼女は必死な目をしている。



 「僕のことが、好き?」

 「好き。」


 彼女はすぐに答えてくれた。



 「待ってたら、結婚できる?」


 彼女は眉を寄せて、苦しそうにする。



 僕は彼女を抱き寄せた。


 彼女は、どこまでも一途(いちず)だ。

 一途(いちず)で、僕に身体を許してくれない。


 身体を許してくれないけれど、キスをすると、猫のように僕の唇を()めることがある。


 彼女を人間の女性だと思うから、先々を期待してしまうのだ。



 僕は、彼女を飼い猫だと思って考えてみた。


 ふらりと僕の元にやってきて、僕に擦り寄って、愛情をもらったらまたどこかに行ってしまう。


 でも、彼女は確実に僕を飼い主と認めている。

 認めているから、結婚まで先のことを考えているのだ。



 僕はにやけて、彼女にキスをした。

 彼女は逃げずに僕のキスを受け入れている。


 もう少し深くキスをした。まだ大丈夫そうなので、さらに深くキスをした。

 びっくりしたように戸惑ったあとで、彼女はやはり受け入れた。


 僕は身体の代わりに彼女の口をたくさんもらった。

 十分もらって僕は満足し、彼女の口を解放する。



 彼女はぼうっとし、意識をどこかに置いてきている。


 「愛してるよ。」


 彼女の目の焦点が合って、僕を見た。



 「私を?」 


 僕は笑顔で頷いた。



 「僕は、あなたと結婚したい。」


 彼女は苦しそうにする。



 「私は、あなたと、そういうことができないかもしれないのよ?」


 泣きそうな彼女を、僕は愛おしく感じた。



 「僕は、あなたの居場所になれる。」


 僕は彼女に僕をアピールした。



 「子供を作るためだけにしか、しないかもしれないわよ?」


 僕は笑顔になった。

 ここまで正直に言われると、かえって清い。



 「いいよ。今までだって、しなかった。」

 

 彼女はまだ迷っている。

 僕は彼女の頭を撫でた。



 「修士課程を卒業するまでに、決めてくれるんだよね?」

 「ええ。それまでに、結論が出るわ。」



 彼女は何か確信があるようだ。

 僕は彼女の決断を待つことにした。



 

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