第2章~スター誕生の予感!?~
昼休みのこと。給食の時間が終わり、クラスメイトのほとんどが教室を出て行った頃だった。ジメジメとした湿気のある暑さを伴う晴れの日には校庭で遊ぶことは避けて、冷房の効いた教室でダラダラするに限る。そんな時だった。
「1年1組、塩崎、職員室に来ること」
校内放送で森先生に呼び出された。サンガンピュールは一瞬青ざめた。
「まさか・・・」
先月、駅西口のマンションで発生した立てこもり事件で犯人を殺害したことが、遂に学校側にもばれたのか。トラウマが蘇ったことから、一気に血の気が引いた。その傍から、
「ゆうゆう、呼ばれてるよ」
教室に残っていた美嘉から声を掛けられた。呼ばれたのになぜ行かないのかと不思議に思ったのだろう。すると次の瞬間、
「ひゃっ!!」
サンガンピュールはとても驚いた。内心では非常にビビりまくっている。
「なぁに怖がってんのさ、ゆうゆうらしくないよ」
美嘉がちょっかいを出し始めた。
「やだ・・・」
サンガンピュールの声は非常に弱々しくなっていた。普段の彼女らしくもない。これが普段の「塩崎ゆうこ」だろうか。こういった緊張状態が数分続いた。すると、
「1年1組、塩崎!急いで職員室に来ること!」
再び森先生が校内放送を通じて呼び出した。先程までとは語気が違う。とても強い。だが彼女は引き続きパニック状態のままだ。
「じゃあ、ゆうゆう、うちが一緒について行くからさ。行こうよ」
「美嘉、お願い!」
サンガンピュールは思わず美嘉に抱き着いた。
「・・・余程のことみたいだね」
美嘉は頼られているような感覚を覚えたが、同時に哀れさを感じた。
職員室のドアの前に立った。美嘉はそこで用件が済むまで待つことにした。彼女は身を賭してドアを開けた。
「失礼します。1年1組の塩崎です。放送で呼ばれたので、来ました」
「塩崎、遅かったじゃないか」
森先生が自分の机のところまで来るよう、サンガンピュールを手招きした。どんな恐ろしい宣告が待っているのだろうか。サンガンピュールは固唾を飲んで、森先生の言葉を待った。
「実はさ、君のお義父さんから電話があったんだ。どうしても折り返し連絡が欲しい、だって」
Kおじさんからの連絡だって・・・?森先生の表情からは、どうやら深刻な案件ではないように感じられる。そこで学校の電話を使わせてもらい、Kの携帯に折り返し電話をかけた。
「あっ、もしもし、おじさん?」
「やぁ、サンガンピュール。折り返しの電話、ありがとう」
Kは東京・原宿のゴールデン出版で遅めの休憩を取っていたところだ。挨拶もそこそこに本題に入った。
「実はさ、さっき俺の携帯に、『レイクタウンTV』という土浦のケーブルテレビ局から連絡があったんだ」
一瞬、聞きなれない言葉が耳に入った。
「レイク・・・タウ・・・ン?」
戸惑って当然だろう。なぜなら彼女は普段、ケーブルテレビを視聴しないからである。
「そこのプロデューサーさんから、『サンガンピュールについてインタビューしたい』と申し込まれたんだよ」
「どういうことなの!?私を糾弾するためなの!?」
彼女は状況を確かめずに声を荒げた。彼女の悪い癖だ。これに対して電話越しのKは、
「待てって!」
と彼女をいさめた。Kは引き続き電話で真意を伝えた。
「実は、ケーブルテレビが以前から、超能力を持つお前の活躍ぶりを見ていててね。お前のお陰で実は土浦では犯罪発生件数が大幅に減ったって言うんだよ」
さらに、自分をバカにするための取材でないのならば、むしろどんどん顔を出した方が得なのでは・・・?そして何よりもこの出演によって、先月にあった市議会への呼び出しだとか悪い印象が薄まる・・・。Kの説得で、彼女はメディア出演に大分乗り気になっていた。最後にKは、
「じゃあ、インタビューに出る?出ない?どっち?」
と選択を迫った。彼女の答えはもちろん、
「出るよ!」
だった。これを受けて、
「じゃあ、プロデューサーさんには俺から連絡するよ。まぁ、本当のインタビューにはあともう少しかかると思うけど」
「『あともう少し』ってどのくらい?」
「さぁね。明日かもしれないし、来週かもしれないし、来月かもしれない」
「もう、じれったいなぁ!さっさと日程を決めちゃってよ!」
「俺に言ってもしょうがねぇよ。まぁ、気長に待つことだな」
「そんなぁ」
サンガンピュールは自分の期待が外れたようで、がっかりしたような声になっていた。
「じゃあね。勉強頑張ってね」
と、Kの電話は切れた。
「終わったか?」
森先生から声がかかった。これに対してサンガンピュールは、
「あたし、テレ・・・!」
テレビに出るかもしれないと言いかけた。その時、彼女は市長との大事な約束を思い出した。自分が「町を守るスーパーヒロインであることは絶対秘密にすること」だった。
「テレ・・・で、どうしたんだ?」
当然ながら、森先生は事情を読み込めていない。
「いや・・・、実に照れちゃうことがあったなぁ~って」
彼女は苦しい言い訳を言った。これに対して、
「そうだよな。女子だから、誰にも言いたくない秘密が1つや2つはあるもんな」
森先生はそう解釈してくれた。
「失礼しました」
要件を済ませ、職員室のドアをガラガラと閉める。その直後。
「よっしゃぁぁぁあああ!!」
サンガンピュールは雄叫びを上げた。
「ちょっ、ゆうゆう、声がでかいって!どうしたの!?」
ずっと待っていた美嘉はかなり驚いていた。だが、
「え?・・・・・・秘密」
事が事なだけに、多くを語ろうとはしなかった。




