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第19章~生中継事件の全貌~

 事件の全貌はこうだ。


 岩崎守はレイクタウンTVに契約カメラマンとして入社した男だ。同局で働き始めて2年目になる。しかし実は、カメラマンというのは表向きの顔で、本当の姿は「世界平和の実現」と称して少女を誘拐したり、テロ事件を起こしたりする秘密結社「ドンレミ騎士団」のメンバーだった。彼はドンレミ騎士団の「同志サウラー」として、レイクタウンTVに潜入。いわば彼はトロイの木馬。サンガンピュールをはじめとする土浦市内の少女の動向を探っていたのだ。

 一方で、黄前葉月は入社2年目のアナウンサーだった。京都府宇治市出身、24歳と若い彼女は学生時代からアナウンサーを志すも、昨今の就職難でなかなか内定にこぎつけず。運よくアナウンサーとして唯一内定をもらったのがレイクタウンTVだった。しかし、本当に大変だったのは入社してからだった。教育係の先輩として黄前についたのが、小鳥遊彩華だった。アナウンサーとしてのプライドが高く、仕事に一切の妥協を許さない小鳥遊は黄前に厳しく接した。奮起を促すという意味で「この基本的なルールすら守れないのならば、これから先の人生で苦しむ必要はない。荷物をまとめてさっさと京都に帰りなさい」と言われたこともあった。社会人としてのマナーにとにかく厳しい小鳥遊は黄前にとっては鬱陶しい存在になっていった。その必死な心を、岩崎守に利用された・・・というのである。


 事件前々日の6月21日の夜、岩崎は「男だけのお疲れ様会」と称して小尻プロデューサーを呼び出した。21日はサンガンピュールへのインタビュー番組が放映された。それがトラブルなく終わったことを記念してのお疲れ様会だった。小尻は実は酒にやや弱い男だったが、このような慰労会を断ることはなかった。21日の夜10時から土浦駅西口の居酒屋でお疲れ様会が始まった。その後、場所を移して2次会、3次会と続き、結果として日付が変わって午前4時まで飲み明かした。小尻は吞み潰されてアルコール中毒のごとくフラフラな状態になってしまった。その一方で岩崎は、お酒はビール1杯しか飲まず、後は水やウーロン茶などソフトドリンクで通した。

 その後、岩崎は黄前の運転する車に、アル中で酔いつぶれた小尻を乗せた。この際、岩崎は白い軍手をはめて行動していた。そして黄前と一緒に岩崎のアパートに移動。そこで浴槽に水を溜めた後、小尻を水責めにして窒息死させた。そしてとどめを刺すために念のために彼の首をロープで縛ることで首を絞めたのだった。最後は動かなくなった彼の身体を大きなキャリーバッグに入れて、死体遺棄のための準備を整えた。なお、この時点で黄前は一旦帰宅している。


 翌日の22日。非番だった岩崎は正午頃までずっと寝ていた。起床した彼は1時間かけて次の犯行の準備を行った。黄前を経由して小鳥遊彩華を「次のインタビュー企画について緊急の打ち合わせをしたい」として呼び出したのだ。午後2時、岩崎は小鳥遊を自分のアパートに入室させた。その際、岩崎は玄関の鍵をかけ、脱出できない状態にした。その直後、岩崎を後ろからサバイバルナイフでめった刺しにした。後ろから心臓にあたる部分を一突きにされ、彼女は何もできない状態になった。徐々に意識が遠のいていった彼女は3時間後に心肺停止状態となった。

 その後、黄前を呼び出し、小鳥遊が息絶えていることを確認させた後、2人で死体遺棄の作業を開始。これまた別のキャリーバッグに入れ、車に乗せて準備が完了した。


 そして事件が発覚した23日の未明。岩崎と黄前はレイクタウンTVに出勤。同局社員としての権限を悪用し、スタッフがほとんど通らない通路に、キャリーバッグから小鳥遊の遺体を取り出し、遺棄した。その後、岩崎は同局事務所から牛久沼へ逃走。そこの湖畔で小尻の遺体を遺棄した。

 では、生放送で流れた小鳥遊の悲鳴の音源はどうしたのか。それは、CDにあった。以前、小鳥遊が出演した番組の中でタコに触れる企画があり、タコを見つけて悲鳴を挙げた小鳥遊の悲鳴を利用したのだった。そして生放送「おはよう茨城365」の時間帯で黄前が司会を務める天気予報のコーナーで、悲鳴が流れるようにセットしておいたのだ。このようにして黄前は小鳥遊の遺体の第一発見者を装うことができた。そして小鳥遊の遺体が救急車に乗せられた後、黄前は悲鳴が収録されたCDを処分したのだった。

 黄前は犯行当初、「口うるさい先輩がいなくなった。しかも岩崎さんが手を下したので、自分が関与したことはバレないだろう」という気持ちになった。だが27日の告別式を終えた後、急に良心の呵責に悩まされ始めた。その日の夕方に急な体調不良を訴え、翌日以降の病欠を申し出た。そして病欠を口実に、宇治に帰郷していった・・・というのである。


 7月12日の未明、黄前葉月は死体遺棄と犯人隠避の疑いで逮捕された。そして住居侵入で一旦逮捕された岩崎守は数日後、小鳥遊彩華と小尻勇太の2人に対する殺人と死体遺棄の疑いで再逮捕された。

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