第17章~感情が再び爆発した日。~
「・・・こ・・・ここはどこ?」
消滅した怪物の体内から吐き出された少女が、弱々しく言った。黒髪の短髪、13歳くらいの少女だ。衣服は溶けかかっており、肌が露出している部分が極めて多かった。サンガンピュールは急いで少女の傍に立った。
「ここ?あたしの家だよ」
「まさかあなたが・・・?」
どうやらサンガンピュールのことを誘拐犯だと誤解しているようだ。
「いや・・・、あたしはあんたを助けたというか・・・その・・・」
どのように伝えたら良いのか、サンガンピュールには分からなかった。ただ、続けて
「とにかく、もう大丈夫よ」
と伝えた。
覆面を被っていた男はこの光景を見て恐れおののいている。
とにかくサンガンピュールはすぐに警察に通報した。ついでに市役所の秘書課の人にも連絡を取った。それから10分後にパトカーが到着し、覆面だった男はパトカーに乗せられた。ここで、パトカーに乗ってやってきた一人の刑事がいた。
「いやぁ、まさかK君の家が事件現場とはな・・・、って、サンガンピュールちゃん?」
彼は、Kの中学時代のクラスメイトだった刑事・茂木だった。
「・・・・・・」
サンガンピュールは申し訳なさのあまり、少しの間無言だった。彼女は6月23日、生放送で小鳥遊彩華の遺体が発見されたと聞いた時に、現場に駆け付けたのだ。だがその際は、すでに現場に居合わせていた茂木に追い返された。その上、中学校を無断早退したとみなされた。散々な記憶しか残っていない。
覆面を被っていた男は住居侵入と銃刀法違反での現行犯逮捕となり、手錠をかけられた。彼はパトカーに乗せられる際、
「同志・・・し・・・失敗しました・・・」
と弱々しくつぶやいた。
「同志・・・?」
サンガンピュールと茂木は、彼のこの言葉を聞き逃さなかった。
7月11日、金曜日の夕方。
学校から帰宅したサンガンピュールは急いでテレビの電源を入れた。前日にあった自宅襲撃事件。そして小鳥遊彩華、小尻勇太の2人が殺害された事件。一見すると何の関係もなさそうだが・・・。夕方4時台という時間帯において、民放各局の多くは関東ローカルでニュース特集番組を放送していた。
「・・・何これ!?」
制服姿のままのサンガンピュールは驚嘆した。
適当につけた某民放のテレビチャンネルでは、昨夜の襲撃事件で逮捕された男が、小鳥遊彩華、小尻勇太の2人が殺害された事件に関与したことを認めたというのだ。それだけではない。
「・・・ほんとに・・・?・・・許さない・・・絶対に許さない・・・」
サンガンピュールは絞り出すようにして言葉を発した。
逮捕されたのは、岩崎守。レイクタウンTVの契約カメラマンであり、サンガンピュールへのインタビュー番組でもカメラマンを務めていた男だ。被害者の告別式にしれっと参列した後は「行方不明」と報じられていた男だ。ということは、「行方不明」のもう一人、黄前葉月もこの事件に関わっているのではないか・・・。
「・・・ううう・・・」
テレビの画面で映し出されている岩崎守という男が、自分の恩人であり、同僚でもある小鳥遊彩華を殺害したことになるのか。それが事実だとしたら、この気持ちをどう表現したら良いのか。サンガンピュールは、小鳥遊が殺害された時の怒りと悔しさを思い出し、嗚咽を出した。