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第12章~心の落ち着き~

 6月25日、水曜日。

 サンガンピュールは2日ぶりにひかり中学に登校した。右手には茶色の戦闘服を収納している鞄を握りしめている。よりによってこの日は雨。左手に傘を持ちながらの通学だ。雨が降ると心まで重く感じる。登校し、昇降口で靴を上履きに履き替えた。そして1年1組教室に迎え前に職員室に立ち寄った。

 「失礼します、1年1組の塩崎です。森先生はいますか」

 「はい」

 担任の森先生が返事をした後、すぐに彼の作業机まで歩いていった。そして沈痛な面持ちで

 「先生・・・、一昨日は給食の時間に・・・勝手に学校から出て行ってしまって・・・ごめんなさい」

 と謝罪した。

 「・・・塩崎」

 「は、はいっ!」

 思わず声がひきつった。何を言われるのだろうか。


 「・・・まずは元気そうで良かったよ」


 担任の予想外の一言に、思わず表情が緩む。だが、

 「ただ、どうして急に学校からいなくなったのか・・・。まぁ、すぐに理由を言うのは難しいと思うけど、あれは絶対にいかんなぁ」

 森先生は慎重に言葉を選びながら、無断早退とも考えられる行動を取ったサンガンピュールを諌めた。

 「はい・・・」

 普段は強気な言動が目立つサンガンピュールだが、この時間はシュンとしていた。

 その後、森先生の計らいにより、サンガンピュールは1年1組の朝のホームルームでクラス全員に対し、迷惑・心配をかけたことを謝罪した。クラスの半分くらいは彼女に対して鋭い目つきだ。給食の時間に忽然といなくなった。おかげで美味しい給食が不味く感じた。事故や事件に巻き込まれたのではと、他の教師から事情を聞かれた生徒もいた。サンガンピュールは席について下を向いた。

 だが、ホームルーム終了後。

 「ゆうゆう、昨日は大丈夫だった?」

 「これは・・・美嘉!」

 サンガンピュールの周りに自然と人が集まった。美嘉だけではなかった。岩本あずみもいるし、初台春もいる。

 「風邪が治ったんだね。良かったじゃん!」

 とあずみが言った直後に

 「・・・ほんと。戻ってこれて、良かった・・・」

 と小声でつぶやいた。

 「・・・ごめんね。お騒がせしちゃって」

 恩人を殺された一昨日と比べたら、少しは落ち着きを取り戻したように見えた。


 一方、原宿のゴールデン出版にて。Kは昼休み中に人事部長に直訴した。印刷室に誘い出し2人で話し出した。


 「私を、今年度の途中に、どこか別の部署か関連会社に異動させてもらえないでしょうか。自宅の近くで働きたくなったんです!」


 サンガンピュールのそばに可能な限りいてあげたい。でも彼女の成長を支えるためには、今の会社を辞めることはできない。だったら、できる範囲の希望を出そう。変わらずに生きるには、まずは自分が変わらなければならない。

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