プロローグ
~主な登場人物紹介~(声優さんの欄はあくまでもイメージです)
人物設定で参考にしたキャラクターも併せて紹介します。
・サンガンピュール(Sangimpur)/塩崎ゆうこ(CV:田村ゆかり)
1990年12月23日生まれ。
この物語の主人公。ロンドン旅行の最中に身体が縮む代わりに超能力を得た少女。その卓越した戦闘力で町の平和を守る・・・はずだ。「かっこ可愛い」という評判だが、女の子らしさが少し薄いのが玉にキズ。
モデル・・・バターカップ(パワーパフガールズ)、神崎・H・アリア(緋弾のアリア)
・K(CV:中村悠一)
1964年3月17日生まれ。
もう一人の主人公。サンガンピュールの保護者であり、普段は原宿にある出版社・ゴールデン出版で勤務している。人当たりが良くて冷静沈着であるが、結婚や恋愛に興味を持てないのを少し気にしている。
モデル・・・司波達也(魔法科高校の劣等生)、上条当麻(とある魔術の禁書目録)
・岩本あずみ(CV:生天目仁美)
1991年2月3日生まれ。
中学でのサンガンピュールの親友。成績優秀のしっかり者だが、過剰にスキンシップをする傾向があり、声掛けが裏目に出ることもしばしば。それでもみんなのことを第一に考えている元気な少女。
モデル・・・相田マナ(ドキドキ!プリキュア)、本庄アル(ひとりぼっちの〇〇生活)
・初台春(CV:豊崎愛生)
1990年10月28日生まれ。
ひかり中学の同級生で、物静かで少し内気な少女。趣味は読書で、昼休みや放課後になると決まって図書室で本を読んでいる。将来の夢は国語教師。
モデル・・・初春飾利(とある魔術の禁書目録)、犬吠埼樹(結城友奈は勇者である)
・長谷川美嘉(CV:赤崎千夏)
1990年8月10日生まれ。
ひかり中学の同級生。不真面目でチャラチャラした印象を与える少女だが、情には篤いところがある。あずみとは幼稚園の頃からの付き合い。
モデル・・・城ケ崎美嘉 (アイドルマスター・シンデレラガールズ) 、桜野亜玖璃(ゲーマーズ!)
・今田愛美(CV:三瓶由布子)
1991年2月28日生まれ。
ひかり中学での同級生。男性アイドルに恋する少女。彼らの出演するテレビ番組は積極的にチェックしている。勉強は苦手な方。
モデル・・・夢原のぞみ(Yes!プリキュア5)、佐天涙子(とある科学の超電磁砲)
・茂木 元(CV:小野大輔)
1963年5月4日生まれ。
土浦警察署に所属する刑事。階級は警部補。主に強行犯(殺人、強盗、誘拐など)が関わる事件を担当している。Kとは中学校時代、3年間通してクラスメイトだった。
モデル・・・重松(博多豚骨ラーメンズ)
2003年5月29日、木曜日。
「塩崎ゆうこ」ことサンガンピュールにとってはビクビクする日々が始まった。そう、ひかり中学に入学して最初の定期試験が終わり、答案の返却が始まったのだ。
1・2時間目は技術家庭の時間だが、これはセーフだ。なぜなら、技術家庭、音楽、体育、美術という芸術系の科目は今回は試験が無かったから。だが問題は3時間目以降だ。理科、国語、英語と微妙な出来の科目が続くのだ。サンガンピュールは内心冷や冷やしていた。
運命の3時間目。担任でもある森先生から理科の答案が返却された。その結果は・・・。
14点だった。
ちなみに国語は35点、英語は70点だった。
Kが帰ってきたらどう言い訳をしようか。メアリー先生に暴言を吐いた時みたいにまたこっぴどく叱られるのは避けたい。今日は自宅には帰りたくない。彼女はひかり中学を下校すると、自宅とは反対方向の亀城公園に向けて歩き出した。しばらく国道125号線に沿って歩き、新川サクラ通りとの交差点で東へ曲がった。この道をしばらく歩けば霞ヶ浦の河口だ。この時点で16時半。ただ、彼女の行動は無意味だった。なぜならKはいつも21時頃に帰宅してくるから。夕方のうちに様々な箇所へ寄り道して帰宅しても所詮Kはいないのだ。
「あたしって・・・ほんとバカ。・・・なんで頭の良くなる方へ超能力が出てこなかったんだろ。・・・これじゃユートニウム博士には程遠いよ・・・」
幼い頃に見た「パワーパフガールズ」に出てくる天才科学者・ユートニウム博士みたいになりたい。今は亡き母親に対して語った夢を思い出したら、彼女は自己嫌悪に陥った。
時間稼ぎを諦めて新川サクラ通りから南へ進路を変え、土浦郵便局の近くに来た時だった。自分が歩いている国体道路が何だか騒がしくなってきた。後ろ(北側)から何やらパトカーのサイレンが聞こえる。どんどん音が大きくなっていく。もしや緊急事態か。
サンガンピュールは人通りの少ない道に一旦入り、学校のセーラー服の上からトレードマークである茶色のローブを着た。そして腰回りにホルスター付きのベルトを締める。これでスーパーヒロインに「変身」完了だ。荷物を持ったまま、横断歩道を西側から東側へ横断し、車の特徴をつかむ。
「・・・見えた。あれかな?」
パトカーに追われているのは、白いホンダ・ライフだった。フラフラしながら時速80kmくらいの高速で走っているのが非常に危なっかしかった。飲酒運転か、それとも薬物か。いずれにしても市民に被害が出る前に食い止めなければ。
サンガンピュールはタイミングを見計らって車道に乗り出し、右手から念力を発してライフの速度を強制的に低下させた。ライフは速度を低下させられ、さらにサンガンピュールに気付いた反動で右へ急ハンドル。
ズドーン!!
運良く、土浦郵便局のトラック用搬送口に入り込み、壁に激突した。ライフは横転の上、壁との激突で中破となった。運転士は助け出された直後に警察へ連行された。これで一件落着かな。
その直後。
「・・・これは、サンガンピュールさん!」
警察官から声を掛けられた。サンガンピュールは振り向いた。
「・・・はい」
やや緊張気味に答えた。
「やや荒っぽかったですけど、ありがとうございます!おかげで容疑者を確保することができました」
「いやぁ・・・、別に助けたくてやったわけではないので・・・」
「いやいや、いずれにしてもありがとうございます」
「・・・はい、素直に受け取ります」
言葉はやや尖っていたが、サンガンピュールの顔はやや赤くなっており、デレていたのはみんなに気付かれていた。
後に判明したが、ライフを運転していた男はやはり重度の飲酒運転だった。30歳代である彼はその日、「仕事をしろ」と両親から叱られたことに逆上。両親が所有するライフを運転し、途中、コンビニで缶ビールを3つも購入。がぶ飲みして泥酔状態になった上で車を引き続き運転していた。あまりに身勝手な犯行であった。
時刻は17時半。彼女は茶色のローブ姿のまま現場から離れた。だが、
「あれっ、もしかしてあの子、サンガンピュールじゃない!?」
しまった、服を脱ぐのを忘れてた!サンガンピュールは先日、市議会に呼ばれたこともあり、自分のことがまた悪く言われるのではないかとビクビクしていた。だが、
「あっ、ほんとだ」
「握手させて!」
「サイン下さ~い!」
むしろ大歓迎。ちょっとした人だかりが出来てしまった。つい1か月前に人質事件の加害者を殺害した際、市議会で議員や被害者家族からバッシングを受けたことなんてすっかり忘れ、有頂天になってしまった。予想外のことに戸惑ったものの、チヤホヤされて心底うれしかった彼女だった。
だが、笑みを浮かべている時間は長くはなかった。21時半のこと。Kからテストを見せるよう命令されたサンガンピュールは、恐る恐る答案用紙を彼に見せた。
「おい、なんでこんなに悪いんだ?特に国語!」
案の定、本当の地獄はKに怒鳴られることだった。普段は温厚な人ほど怒ると怖いという伝説を体感した彼女だった。