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おっさんテイマーは、はばからない!〜ソロテイマーだったのに、気が付いたら最強組織を作ってました〜  作者: 琥宮 千孝(くみや ちたか)
第四章 (大陸放浪編)

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査定手続と晩餐会

長らくお待たせして申し訳ございません!

やっと更新できました。

 獣王ラーザイアとの謁見というか、決闘が終わり俺らはサーバンに戻ってきた。


 そこで待っていたメンバー達とも合流し、指定された宿へ来た。


 来てみてびっくりしたよ。

 趣こそ全く違うけど、南大陸の町カルデリアにあった"ホムラ亭"を思い浮かべるような貴族御用達のホテルであった。


 周りとのごたごたを抑えるため、貸切になっているらしく他の客はいなかった。


 明日は、この宿で賠償金の支払いの手続きをして、兵士の武器防具やファルコニアの引き渡しなどをする。

 既に飛行艇ウラノスに残っているガント達には通達してあり、明日の為に準備をしてくれている。


 ちなみにファルコニア達は、ニケの支配下にあるらしくかなり面倒な事になった。

 向こうの資産でもある彼らは、返却しないといけないのだが100頭もいる。


 それだけでも一日が終わるんじゃないかと思うと、ちょっとげんなりした。

 試しに、もらったらダメ?って聞いたら、生きたまま譲渡するくらいなら全て処分して素材にすると言われ、さすがに可哀そうになるので止めておいた。


 ただニケがこそっと教えてくれたが、一度でも今のニケの支配下にはいったファルコニアは、再譲渡しても支配下にはいったままらしく、もう俺らを攻撃する事が出来ないみたいだ。


 なので、そのほうが後々都合がいいかも知れませんよと言われた。

 その方が食費もいらないですし、とも。


 確かに、いきなり100頭ものファルコニア抱えたら食費だけで破産しそうだしな。


 まぁ、明日の事は明日考えよう。

 今日は、流石に疲れたらからな。


 しかし、せっかくアリアを連れて行ったのに、最初から決闘とか言われたら意味がないよな。

 もう少し、交渉をさせてくれても良かったけど。


 一応勝負には勝ったからいいけど、あれで認めらせることが出来ていなかったらかなり面倒な事になってただろうな。

 ぶっちゃけ二度とやりたくないわ、あれは。



 その日の晩ご飯は、そのホテルの食堂で振舞われた。


 獣人の国というから、さぞ肉ばかりなんだろうと思ったら、東大陸は穀物や野菜を特産にしている地域が多いらしく、その種類も豊富らしい。

 なので普通にコメのリゾットと、色んな種類の野菜のサラダとか、炒め物に、魚の煮付に…と様々な物が出てきた。


 養鶏や酪農、めん羊なども盛んで人間領よりも食事事情は良さそうだった。

 どれも魔獣らしいので、獣人のように強くないと逆に喰われるみたいだけど…。

 (卵もダチョウの卵くらい大きいらしいので大量に使えるのだとか)


 そして、暗黒の森にはブラックハーブやブラックスパイスと言われるものが多数生息しているらしく、香辛料が普通に流通している。

 もちろん安くは無いらしいが、それでも庶民でも買えるという事だった。


 更にワインや蒸留酒もあるので、ビネガー(日本で言うと果物酢)があるらしい。

 さらに海にも面しているので塩も潤沢にあり、思った以上に食文化が発達していた。


 おかげでドレッシングも、馴染み深い味になっている。


 考えたら、酢と卵と塩があるという事は…、マヨネーズあるんじゃない?!とか思ったけど、そのようなものは無いと言う事だった。

 うーん、残念。


 今度各種材料買いこんでルガーに作って貰おう。

 マヨネーズがあるだけで料理の幅がかなり広がるのだし。


 ビーフシチューや、パスタ、ハンバーグ(挽肉の包み焼とか言っていた)、ミネストローネ風のスープ等々、地球の洋食ではおなじみのものが多数出てきたのは驚いた。


 コメで作った酒もあるらしく、かなり種類も豊富だ。

 明日にでも町に出たらガントとセツナに買っていってやろう。


 一通り堪能し、浴槽はないが、スチームサウナみたいな所で汗を流し、清水で体を綺麗にしてからベッドに潜り込んだ。


 夜は流石に疲れたのか、すぐにベッドに潜り込んだ。

 久々に普通のダンジョンでまったり狩りでもしたいよ。


 最近の戦闘ハード過ぎる気がする。

 暗黒の森に入ったら、テイマーらしく仲間ペット達に任せよう。


 

 翌日、朝からコワン大臣が大勢の部下を引き連れてホテルの大広間にやって来た。

 通常はここでパーティーなどが行われるようであるが、今日は捕虜の受け渡しおよび身代金の支払い手続きの為に使われる。


 ちなみに大勢の部下と言っても、すべてが文官なので武装などはしていない。

 もししていたら、下手したらもう一度戦闘する羽目になるかもしれない。


 カルマの見立てでも、文官たちの戦闘力はそれぞれD~Cランク相当くらいだという。

 俺が数人みても同じような結果だった。


 ちなみにコワン大臣が一番強い。

 文官のTOPなのに何気にAランクオーバーと言う感じだ。


「コワン大臣は、文官なのにお強いんですね」


「はっはっは、それは世辞ですか?だとしたらやめてください。ここでは嫌味になる。あなた方には私より弱いものなどいないではないですか」


「そんなつもりじゃないけど、文官なのに人間の下手な冒険者より強いでしょう」


「人間と一緒にしないでください。いや、馬鹿にしているんじゃないですよ?ただ、種族が獣人というだけでステータスに恩恵を受けますので、それが当たり前なのです」


 コワン大臣は、若いころは当然武官を目指して励んでいたらしいが、才能が伸びずに願いは叶わなかったらしい。

 だが、それでもラーザイアの役に立つために、血の滲む努力をして今の地位まで登り詰めた苦労人だという事だった。


「私めの話はこれくらいにして、手続きに入りましょう。まずはここに───」



 それから2時間くらい書類と格闘し、なんとか調印まで済ませた。

 細かい事は割愛するが、アリアがいてくれて本当に助かったとだけ言っておこう。



 終わってからすぐに町の外へ向かう。

 何をするかと言うと、今度は預かっている兵装の返却だ。


 先ほどの調印で、身代金およびこちらが預かってる兵装の買取金額を合意したので兵士は解放した。

(と言っても、兵士たちは町で待機していただけであるが)


 そして今度は、ウラノスを町の近くまで呼び寄せてゲンブの中にしまってあった兵装を取り出して渡す。


「ほう、そちらも霊亀をお持ちなのですか。人間では珍しいですな」


「ええ、昔このイーガス大陸のある山脈で出会って、その時に手懐けたんです。最初はもっと小さかったんですが、育って結構大きくなりましたよ」


 ちなみに今のゲンブは、地球の軽自動車くらいのサイズだ。

 そんな大きさの亀が、やや宙にプカプカ浮いてやってきた。


 背中のカーゴからガントが出てきてどんどん武器や防具などの兵装を出していく。

 そとに控えた兵士たちがそれを受け取っていった。


 流石にどらが誰のかなどをやっていると、1日使っても終わらないのでこればかりは自陣に帰ってから仕分けしてもらう。

 なので、今はリレー作業で相手のカーゴにひたすら詰め込む作業をしている。


 それだけの作業でも、終わるころには夕方近くになっていた。


「うはぁー!疲れたぁぁぁ!!」


 ずっと受け渡し作業をしていたガントは、思わず吐きだす様に呻いた。


「お疲れさん。これで終わりだな。あとは帰るまでに証書をお金に換えればいいだけだ」


 コワン大臣は、すべての受け渡しを完了すると、受領書に証印して俺に渡すと、すぐに兵士たちを引き連れて帰っていった。


「やっと終わりましたね主様。これでやっと遺跡に向えます」


「いや、ラーザイアの案内がないとたどり着けないらしいからな。行くのは明日になるだろう」


「そういえば、そうでしたね。昔はそんなこと無かったと、記録にありますが…、何が起きているんでしょうか」


「獣王ラーザイアの話を聞けば分かるかもしれないですね」


 そこで辺りを巡回に出ていたカルマが帰ってきた。


「カルマか、ご苦労さま。何か発見出来たか?」


 変な動きをしていないか、念のため町の周りを巡回してもらっていた。

 兵と武具が無事に返ってきたので、相手を裏切るなんて魔王なら常套手段といえる。


 称号とはいえ、魔王を名乗っている以上警戒するに越したことは無いはずだ。


「一応気配を完全に隠ぺいして飛び回ったんですが、兵を動かす気配はなかったですね。それどころか、獣王ラーザイアが明日我らを案内するのに、単身で行こうとしているらしく、必死に止める家臣たちの様子が伺えました。中々の問題児のようですな、あの獣王は」


「なるほど、見たまんまのヤツなんだな…。こちらとしては、分かりやすくていいけどね」


 今のところはこちらの心配している事はなさそうだ。

 そう安心して、ホテルに帰ってみたら。


「よおっ!遅かったじゃねーか。うちの連中はとっくに戻って来ていたぜ?」

 

 当の本人がホテルのロビーで待っていた。

 って、いやいや、家臣に止められなかったのかよ!


 曲がりなりにも他国の冒険者だぞ?

 自国の町のホテルとはいえ、単身で来たのか?


「ユート、すまんな。殿下がどうしても行くと聞かなくてね」


 一緒にレオナルド将軍が来ていた。

 なるほど、レオナルドもなかなか苦労が絶えないらしいな。


「普段なら俺が来ることはないんだが、他の連中は今回の件で忙しいからな。俺がお前たちの監視役を仰せつかっているのもあって、一緒に来たんだ」


「そう言えば、そんな事になってたんだったな。もうすぐ夜だっていうのにご苦労様だよ」


「はっは。この国で一番強い俺が襲われること自体あり得ないんだが、家臣どもが煩いんだ。折角だ、一杯やろうぜ?」


「人間の王様と違って、ラーザイアは自由気ままだなぁ。これから夕食なんだ、酒は飯の後にしよう」


 そう言って、ラーザイア含めてユニオンメンバーと一緒に夕飯にすることにした。

 それならと、レオナルドも一緒に席に着いた。


 なんでも、レオナルドですら滅多に泊まる事が出来ないホテルらしく、ここで夕食を食べたいと思っていたと食べている途中で白状していた。


 将軍クラスが滅多に泊まれないって、さすが王族御用達のホテルだ。

 どおりでご飯が美味しいはずだ。


 カイトやセツナは、最初こそ緊張した面持ちでいたが、俺とラーザイアが気軽に話をするのを見て安心したのか途中から気にせずに普通に食事を楽しんでいた。


 ちなみに今日は、高級鳥であるコウテイダックという鳥の皮をパリパリに揚げたものに、挽肉と麹味噌を和えたものを塗りを蒸かしたパンにはさめて食べると言う、まるで北京ダックみたいな料理だ。

 その他、ロブスターみたいなエビとか、タラバみたいな蟹をチリソースみたいに辛みのあるソースで炒めたものが出てきた。


 そして、なんとチャーハンが出てきた!

 名前は違うみたいだが、どう見てもチャーハン。

 味もまさにって感じだ。

 こっちでこれを食べれるとは思ってもいなかった。


 何気に高級肉で造られたチャーシューに、卵も入ってて、ブラックスパイスとバターがふんだんに使われているようだ。


「これは…、コメですか?コメの炒め物は初めて食べるわ」


「アリア様もですか?私は、コメ自体あまり食べた事がないですが…」


 アリアとサナティにとっては、コメ自体があまり馴染みがないようだ。

 しかし、一口それを食べると…。


「これは…!こんなに美味しく食べれるものなのね!」


「うわぁ…、なんて芳醇な味なんでしょうか。とても美味しいですね!」


 興奮するくらい気に入ったようだ。

 そんな中、LBO組はというと…。


「うおおおっ!超久々に食べたぞ!やっぱうめーなチャーハン!」


「やっぱ、お米ですよね!ブラックスパイスっていうんでしたっけ?まさに胡椒ですよね。これがあると無いとでは…、とにかく美味しい!」


「うん、久々に食べると美味しいものですね、ユート殿について来て良かった…」


 とやはり好評だ。

 俺も同意見なので、何も文句はない。


「パパ~、美味しいねチャーハン」


 リンもご満悦だ。

 満面の笑みで、かみしめながら食べている。


 シュウやショウタ、ユウマ、ダイキなんかは、喋る暇もないと言うくらい掻っ込むように食べていた。

 さすが育ち盛りの子供たちは食欲旺盛だ。


 レーナとアーヤは、さすがお嬢様学校に通っていただけあり、お行儀良く食べているが喜びが顔に出ていてちょっと和む。


 ちなみにアイナとミラ、ザイン、ダンも似たような感じである。

 大人ぶっているが、顔には出ているよ君たち?


 ここにメイドはメイアしか来ていない。

 ホテルの従業員がしっかりやってくれているので必要が無いのと、ウラノス船員たちの面倒や、運行するための魔力供給を手伝ったり、俺らが不在の間に掃除をしたりと相変わらずしっかりと働いてくれている。


 ほんといつも感謝しかないよ。

 帰りに甘いものでも差し入れてあげよう。

 (進化してからも食事は必要ないらしいけど、食べる事はちゃんと出来るようになっている)


 カルマやニケもウラノスに寝泊まりしている。

 理由はメイド達と一緒でウラノスの運行の為と、魔王軍の監視のためだ。

 ラーザイアは襲ってこないだろうが、他の連中がどう出るかは分からないし、他の魔王軍がやってくるとも限らない。


 ウラノスは世界に一つしかないので、万が一にも墜とされるわけにはいかないのだ。


 マリエルも船に残っているので、ホテルで飯を作って貰って持って帰るとガントが言っていた。

 なのでガントもここには泊まらないで船に帰るらしい。


 一緒に来ればよかったのにと言ったら、『そりゃお前たちが居ない方が夫婦仲良く出来るだろ?』と返された。

 くそう、惚気かよ。


 仲間ペット達も町には入れないので、ウラノスの専用部屋でのんびりしている。

 一部を除いては…。


「ちょっと!これは私のよ!貴女のほうが後から配下になったのだから、少しは遠慮しなさいよ!」


「妾は好きな時に、好きなものを食べるのじゃ。お主の指図はうけぬよ」


「ヘカティア、ニクス、マスターが呆れた目でこちらを見ていますよ…」


「こんな事で、主殿は怒ったりはしないのじゃ。のう?主殿」


 そう、ヘカティアとディアナ、そして久々に人型になって自由にしているニクスだ。

 元々潜入させる予定ではあったが、それが無くなったので留守番にしようとしたら、『妾だって、たまには外で羽を伸ばしたいのじゃ!あ、今のは本当の羽を伸ばすって意味ではないぞ?』と鬱陶しいことを宣ったので、めんどくさいから連れてきた。


 暴れたりはしないが今まで放っておいた分、わがままなヤツになっていた。

 見た目はニケに引けを取らない大人の美女という感じなのだが、性格がどうもね。


 ニケが淑女系の女神のような美女であるなら、ニクスは女王様という言葉が似合いそうなタイプの美女だ。

 同じ露出が多い服装でも、ニケは神秘的に見えるのにニクスの場合は官能的に見える。


 中身が違うだけでかなり印象が変わるんだなと、再認識させられたよ。


 ただ、戦力的にはこの3人がいるだけでかなり安心だ。 

 力を解放すればSSダブルエスクラスの戦力なので、ここにいる獣王ラーザイア以外に負けそうな相手は居ない。


「はっはっは、お前の所は賑やかで良いな。少し羨ましいよ。して、お前が異常なのか?それとも人間達はいつのまにか強くなったのか?」


 俺の仲間たちが騒いでいるのを愉快そうに眺めていたのに、急に真顔になってよく分からない事を聞いてくるラーザイア。


「ん?一体何のことだ?」


「いやいや、そこの魔族達は俺の配下の将軍クラスと同等だぞ?それに、他の人間達もかなりの強者揃いだ。基礎ステータスがこちらが上だとはいえ、そこの5人とかはうちの隊長クラスでは歯が立たないだろうし、そっちの女騎士はレオナルドと同等だぞ?お前達が異常なだけか?」


「ああ、そういう意味で言ってたのか。まぁ、ここにいるのは俺のユニオンの最高戦力でもあるからな、人間の中でも最高峰だと思うぞ」


 心の中で、裏切ったグラム達は別としてな、と呟く。


「なるほどな。お前達みたいなのが今の人間領に沢山いたら、あの大魔王は戦争を始めそうだからな…。ちょっとだけ安心したぜ」


「まぁ、だからと言って極端に弱いわけでもないぞ?変な気は起こさないでくれよな」


「大丈夫さ、お前が生きている間はわざわざそっちの領土に踏み入れる気はないぜ?…俺はな」


「そう言ってくれると助かるよ。俺は戦争とかしたくないからな」


「だろうな!お人好しの顔をしているもんな!」


「それ…、絶対褒めてないだろ!」


 はっはっはと笑いながら、きつめの酒を一気に煽って誤魔化すラーザイア。

 こうやって話をすると、悪い奴ではないんだよなぁ。

 

 でも、これでも魔王の一人なわけで油断は出来ない。


「今日、俺が来たのは飯を食いに来ただけじゃないのは分かっているな?」


「ああ、そうだろうよ。明日、行けるのか?」


「そう、明日は霧が薄くなる日だ。行くなら一番いいタイミングだろう。お前は運がいいよ」


 理由を今度はレオナルドが説明してくれた。

 なんでも暗黒の森に入れるのは、月に1~2回くらいだそうだ。


 理由は、黒い霧が濃くて視界が遮られてしまい碌に探索出来ないらしい。

 そのため、霧が薄くなる日を狙っていくんだそうだ。

  

 前に薄くなったのは半月ほど前だったみたいで、そろそととは思っていたみたいだ。

 それがまさか明日になるとは思ってもいなかったみたい。


「霧の動きを常に監視することで、霧が晴れる日が分かるんです」


「なるほど、俺らは霧を監視する者達に発見されてレオナルド達に襲われたんだな」


「その件は…面目ない」


 俺とラーザイアに向って謝るレオナルド。

 色々と思う所はあるだろうけど、結果が全てだ。


 ただ、お互い事故のようなものなので、実質被害はないからもう気にしてないけどね。

 結果、ラーザイアと友好を結べそうだし、結果オーライだろう。


 決闘はかなりシンドかったけどね…。


「そこはもう終わった事だし、これからの話を進めよう」


「そうだぞ!いつまでも負けを引き摺って、これから足引っ張るようなら解雇すっからなっ!」


「陛下には御迷惑おかけして申し訳ないです。これからはもっと精進しますよ」


「お前はくそ真面目だからなぁ。そんなんだから、他の奴らに付け込まれるんだ。だいたいお前は…」


 という感じで、レオナルドに小言を言い出すラーザイア。

 意外と細かい所もあるんだな。


 しかし、思った以上に二人の信頼関係は深いようだ。

 あっさり身代金を出したのも、レオナルドだったからなのかもしれないな。


「でだ、明日は朝から暗黒の森に向かう。入ったらノームから加護を貰うまでは出ないからな。そのつもりで準備しろよ?」


「分かった。因みに一緒に神殿入るのか?」


「まさかだよ。あそこには、呼ばれた者しか入れない。今回はお前と選ばれた仲間しか入れないだろうよ」


「なるほど…、他と少し違うんだな」


「ノームはかなり気難しいからな。機嫌損ねて失敗するなよ?次のチャンスはいつか分からないからな」


 そういうラーザイアは過去に2度入ったらしく、一回目は喧嘩になり追い出されたという。

 なんでも、口煩い事を抜かすから力づくで従わせようとして失敗し、強制排除されたという。


 因みに、二度目はレオナルドと一緒に入ったらので、なんとか穏便に済んだのだとか。


 やはりレオナルドは苦労人らしいな。

 

 話をよく聞くと、実はレオナルドが小さい頃からの付き合いで、歳もそんなに違わないみたいだ。

 なので二人とも俺の何倍も生きている訳だが。


「ここ数年、おかしな奴が次々に現れるな。こりゃあ、そろそろ波乱がありそうだ」


「俺ら以外にも、ラーザイアから見て不思議な奴がいたのか?」


 今までの人間からしたら、俺も相当異質な部類に入る事は自覚している。

 そもそも異世界から来ているし。

 魂だけなんどけど。


 他にも同じように来ている者達が多数いる事は分かっているが、魔族側でも同じ事が起こっていても不思議はない。


 もしかしたらと、詳しく聞いてみることにした。

 するとラーザイアが意外な事を口にした。


「そうだなぁ。さっき言ってたおかしな奴の一人に、最近魔王になったクロが筆頭だな。アイツは異常だ」


「魔王のクロ?そいつはどんな風に異常なんだ?」


「獣人の中では、最下層の種族であるケットシーから成りあがってきた魔王でな、いくら元王宮魔導士が育てたとはいえ、強すぎる。なんせ…、俺と互角にやり合えるからな」


「はぁ!?ラーザイアと互角って…」


 つか、魔王が結託して人間領攻めたら一瞬で滅亡するだろ?!

 魔王ってみんなこんなに強いやつばかりなのかな。

 俺一人じゃどうにもならない話だぞ。


「これでも俺も百年以上生きているのに、あいつはまだ生まれて数年だという。その割に理解度が早いし、チカラが強すぎる。たまに訳の分からんことも言うし…」


「ん?なんか話を聞いていると、結構あったりするのか?」


「ああ、アイツとはワケあって今じゃ同盟を結んでいるからな。それなりに交流がある。というか、お前達もあった事あるんじゃないか?」


「へ?いや、魔王なんてあった事無いぞ?ラーザイアが初めて…、いや一人だけあった事があるわ。名前はクロじゃなくてクロノスだったけど」


「ああ、すまんすまん。そいつの名前は魔王クロノス。周りがクロって仇名で呼ぶからつい癖でな」


「あの意味不明な魔王と、というか本当に魔王だったのか…」


「はははっ!そう、あいつは意味不明な点が多いからな。分かってくれる奴がいて嬉しいぜ!」


 あの魔王クロノスにはリンとクロ(うちのペットの方)を助けて貰った借りがある。

 でも、なぜあそこに現れてしかも人間である俺らの手助けをしたのか。

 それに、俺を『覇王』だと認識していた。


 もし次に会う機会があれば、色々と聞きたい相手ではあるな。


「まぁ、お前が『覇王』である以上は、また近いうちに会う事になるだろうさ。俺も同じ理由でお前を待っていたからな」


「…俺を待っていた?」


「そうだ、それは明日ノームに会えたら話をしてやる。それよりも、さっきの続きだ。あのクロ…クロノスが現れた時期には、やたらとこの大陸に魔王候補ロードが生まれたんだ。しかも、大魔王の奥方であるルーティアによって、神より王の子が生まれると託宣が降りたとお触れが出てな。そのせいで、ロード狩りが始まった。もちろん、やつもその一人さ」


「ロードねぇ。で、他のロード達はどうなったんだ?」


「ああ、殆どがこの戦乱の中で死に絶えたよ。残ったのはせいぜい10人くらい。そのうち、何人かは俺が保護して育てているが、殆どがあのクロノスに下についた。まず間違いなく、ルーティアが探していた王の子というのは、アイツの事だろうな…」


 一気に現れた魔王候補 = ロード。

 発見した者達は、こぞってその者達を祭り上げて自分の国を作ろうとしたらしい。


 その戦乱に巻き込まれたロード達は、戦うしか術を持たず、次々に命を落としたらしい。

 その中で、最後まで生き抜いて新しい魔王となったのが、あのクロノスという魔王だというのだ。


 ただ、1年程前に大魔王に挑んで敗れたらしく、それからは活動が大人しくなっていたみたいだけど。


「アイツが動くと碌な事にならん。面白い奴なんだが、巻き込まれると結構被害が出るからな」


「クロノス殿は、戦闘になると人が変わりますからな。それまでは少女の様に大人しいというのに」


「あいつの持っているスキルもヤバイな。同盟組む前にぶち当たった事があるが、一瞬で数百人が消えた。未だにあれがなんだったのか、俺にもわからんしな」


 そこからは、酒を飲みつつクロノスの愚痴大会になっていた。

 どれだけ被害が出たか分からないとか。

 そのくせ、窮地に陥った時に真っ先にきたのはアイツだったとか。


 そして、久々に来たと思ったら厄介な話を持ってきたりとか。


 途中から酒盛りになったので、他のメンバー達は先に寝かせて大人たちだけで盛り上がった。

 その中にセツナやサナティもいたが、結構酒が強いので気に入ったラーザイアが口説いていた。


 まぁ、あっさり断られていたけど。


 まぁ、口説き文句が俺の3番目の奥さんにならないか?ではなぁ…。


「ユート殿なら、まだ2番目ですよね?それならいいのですよ?」


「あ、セツナさんズルイです!私だって、ユートさんになら立候補します!」


 ただ俺も、完全に出来上がったしまった二人から、ラーザイアからの流れ弾を喰らう羽目になったのだけどね。


「はいはい、冗談でおっさんをからかうじゃないぞ。それより、そろそろ寝ようか。明日は早いんだろう?」


「ああ、日が昇ったら出発したいからな。俺はこのまま起きているぜ。ここの酒は滅多に飲めないのばかりだからな。俺は王なんだから、もっと融通利かせてくれても…」


 そんな独り言を始めたので、ラーザイアとレオナルドを置いて俺らは寝所に向かった。

 二人を部屋まで送ってから、俺も自分に割り当てられた部屋に入る。


 このホテルには、なんとシャワーがあるので、持参の石鹸で体を洗いシャワーで汗を流した。

 体を拭いてから、キングサイズのベッドに潜り込み睡魔に誘われるのだ。


 そうしてこの日も終わっていくのだった。



 ───

 朝起きると、甘い香りに目を覚ます。

 

 目を開けると俺の左右には薄着だけ纏った美女が二人寝息を立てていた。


「…あ、おはようございますユートさん…すぅ」


「…ん。もう、起きたのかユート殿。もう少しこのまま…くぅ」


 なぜかサナティとセツナが俺のベッドで寝ていた。

 いや、昨日は俺一人だったよな??


「おい、二度寝するんじゃない。というか、二人はどうやって入ったんだ?」


 俺に抱き着いたまま二度寝を始めようとした二人だったが、声を掛けるとすぐに答えは分かった。


「メイアさんに言ったら開けてくれましたぁ」


「はい、旦那様にはそろそろ世継ぎをつくっていただかないと判断し、ご案内しました」


 そして、急にメイアの声が聞こえる。


「うおっ!いつからそこに!?てか、世継ぎって…」


「私達は、旦那様が呼べばいつでもお傍に現れますよ。そうそう、ゼフが言っておりました。いつか旦那様は元の世界に帰ってしまわれるかも知れない。それまでに次代を残していってもらわねば、と」


 そうか、あの屋敷の主人である俺が居なくなるとゼフ達は再び存在意義を失ってしまう。

 そうならないように、跡取りを残せと言っているのか…。


 日本じゃ考えられないが、ここは異世界だからな。

 しかも、王命による依頼を達成したら領土を持つ領主になってしまう。


 そのうち真剣に考えないとダメなやつなのかこれ?


「その中でも、お二人ならば候補として相応しいかと…」


「うん、配慮はありがたいが、それは俺個人で考えるから…。そういうは無しで!」


「いいえ、ダメです!旦那様は思ったよりも奥手で、手を伸ばせば届くところに多くの美女が居ても誰も手を出さないではないですか!前の旦那様なんかは、それはもう毎日のように女性を侍らせて…」


「おおい!そんな下種な野郎と一緒にするなよ。俺は俺なんだから」


「そうですね、あんな薄情で傲慢な人物とは比べ物にもならないくらい旦那様は素晴らしい方だと存じしております。なので、もう一人や二人を奥様にいただいても誰も文句は言わないと存じます」


 かなりの勢いでそう言われてしまい、半分押し負けた形で『もう分かったから、今度ゆっくり考えさせて』と言ってしまう。


 それを聞いてハイタッチしているセツナとサナティを見て、君たちもどこまで本気なの!?と戦々恐々とするのであった。


 

 そんなドタバタがありつつも、出発の準備が整い、全員がウラノスに乗り込んだ。


「いいなぁ、これ。今度俺にも作ってくれよ」


「いやいや、ダメだから。そんなことしたら、王国を追い出されるよ」


「そうなったら、こっちに住めばいいじゃねーか。土地は用意させるぜ?」


「好意は嬉しいけど、自由に出来ないのは俺の本意にそぐわない。悪いけど却下で」


「ちぇー、ケチくせーなぁ。ま、気が変わったらいつでも言ってくれ」


 そんな遣り取りをラーザイアとして、俺らは暗黒の森に向かった。


 流石にウラノスに乗ったまま、森に入る事は出来ないので入口前に停泊させる。

 数日前と一緒だな。


 そこから降りると、全員で中に入った。


 ちなみにウラノスの護衛は、ニクスとフィアとセリオンにした。

 整備のためにマリエルとガントも残り、他は船員たちだけだ。


 中では飛ぶことは出来ないので、他のペットは、飼育クリスタルに入れて待機中となっている。

 

 もちろん、ニケ、カルマは魔獣化して俺らを乗せているし、ディアナとヘカティアは一緒にいる。

 他のメンバーも、捕まえた馬や、カルマが呼び出した眷属のナイトメアに乗り移動していた。


 ちなみにラーザイアとレオナルドは徒歩、というかダッシュしている。

 下手すると置いてかれそうになるくらい早いので、さすが獣人というところだ。


 中に入り、1時間くらいで目的の場所についた。

 あの場所の入口からが、一番神殿に近いらしくそのため一番重要な場所なのだという。


 たどり着くと、神殿の入口に誰かが座っているように見える。

 その人影は、こちらに気が付くなり声を掛けてきた。


「やーっと、来たにゃ。遅いぞ『覇王』。お…そっちはラーザイアだにゃ。これは色々と手間が省けたんだにゃ」


「お前はクロか?なんで、()()()()なんだ?というか、どうやってここまで来た?」


「それには深いわけがあるんだにゃ」


 こうして俺は、ひょんな形で昨日話をしていた魔王クロノスとの再会をするのであった。


長らくお待たせして申し訳ございません。

昨今の情勢により、時間が取れない日々が続いて約1か月更新が途絶えていました。

これからもゆっくりではありますが、必ず更新し続けますのでよろしくお願いいたします。

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