英雄オッタル対おっさんテイマー。
ペット達を使ってはいけないという条件で始まった試練。果たしてユートは…。
口から蒸気みたいなのを出して、こちらを睨みつけている戦士オッタル。
勇者では無いと言っていたが、そもそも何でフレイヤに従っているのか、なぜ数百年も前の人間が生きているのか、疑問がいっぱいだ。
だが、まずは戦って勝つしかないのだろう。
正直本物の戦士相手に、まともな戦いを挑んだらこちらが圧倒的に不利だと思う。
なんとか、こちらのペースに乗せないといけない。
まずは…高位鑑定!
英雄王オッタル ランクSSS 種族:超人
HP:88800/88800 MP:8800/8800 SP:5800/5800
属性:火 耐性:火
特性:火属性無効 状態異常耐性 爆破耐性
STR(力):1000 MAG(魔):200 VIT(耐):880 INT(知):200 SPD(速):200
なんだこれ…、下手なボスよりつえーだろっ!
これに生身で勝てとか無理じゃねーか?!
ステータスは、スキルとかで上回れるけどちょっとHPが多すぎる。
しかも耐性高いからダメージ与えにくいし!
でも、物理半減のイドラよりマシといえばマシか。
こうなったらやるしか無い。
うし、やってやる!
てか、俺テイマーなんだけど?仲間ペット達を使わせてくれよ…。
いかんいかん、気持ちを切り替えていこう。
SPポーションは10本ある。
これが切れたらもう終わりだな。
「いくぞ、アイシクルエッジ!…アイシクルエッジ!…アイシクルエッジ!」
ひとまず牽制で氷魔法を3発撃っておく。
ダメージは微々たるものだが、効くのかどうかは試しておきたい。
「ふんぬ!」
オッタルは両手に持った炎の剣で、いとも簡単に氷魔法を打ち砕いた。
あれくらい気にしないと思ったが、思った以上に慎重なタイプのようだ。
見た目同様に脳みそ筋肉タイプだったら少しは楽なのに。
でも、あのくらいを気にするならもしかすると…。
俺は素早くクロスボウを用意して、3本の矢に神秘術により別々の属性を込めていく。
込める属性は、爆破と幻と氷だ。
「オッタル、氷の矢を食らえ!」
口に出して言うのはもちろんブラフを入れてあるからだ。
オッタルは、軌道を読んで正確に矢を打ち落とした。
が、一発目を打ち落としたその瞬間に盛大に爆発する。
そして二発目を打ち落とし損ねて、幻惑を食らう。
こっそりイドラの力を使っているので、結構かかる幻惑効果は高いはず。
そして、氷属性を纏う矢を見失ってまともに喰らってくれた。
「ぐはっ、姑息な事を!正々堂々と戦え!」
存在が卑怯な状態なお前にそんな事を言われても何にも思ないわ!
ダメージは…300程度か。
気が遠くなりそうだな。
MPは回復アーティアファクトがあるから、ガンガン使って行っていいな。
まともに斬り合ったらこっちが持たない。
なるべく、距離を取って削れるところまで削っていこう。
「くらえ!"エクスプロージョン"!!…ブリザード!アブソリュートゼロ!!」
これでもかと、昨日習得したばかりのスキルと威力の大きい魔法を重ねて撃ち込んでいく。
オッタルも流石に躱すことが出来ずに、すべて剣でガードするもダメージは通っているようだ。
「ぐぅぅ!中々にやるな…。だが、この程度はかすり傷よ!ふんぬぅ!!」
ガードを解いた瞬間に、両手の剣をただその場から斬り払った。
それだけで、強力な炎の波が襲い掛かってきた。
「たったそれだけで、なんてめちゃくちゃな!」
咄嗟に〈錬気壁〉を張るも、たったの2発で打ち砕かれた。
魔王相手に一人で戦っている気分になるよほんと。
『はははは、オッタルは我が知る中で最強の戦士だぞ?それくらいで驚いては困るというものだ。さあ、オッタルよ。そ奴にお前の力を見せてやるがいい』
フレイヤがそ言うと、オッタルは全身から炎を溢れ出させる。
その熱気が離れている俺を焼いてくる。
「ニケ!パールを守ってくれ。普通の人は危険だ」
「分かりました主様。まぁ、耐性はあるようですけど…仰せのままに」
そっか、一応火焔の守護者なんだっけか。
でも、念には念をだな。
与えたダメージは1000程度だけど、回復しないところをみると再生能力とかは無さそうだな。
これらなら、俺が死なない限り倒す見込みはありそうだ。
長期戦を覚悟しながらも、俺は次の手を繰り出す。
「〈錬気弓矢〉!五連!」
といいつつ、10本のオーラの矢を射る。
勿論、属性も付与してあるのですべてを見切ることは到底無理だ。
カキンドドドッカキンドドドゴンドドドドッ!っと音を立てて、剣で捌く音と矢が突き刺さる音が交互に鳴り響いた。
「ガァッ!小癪な真似をする!これでも喰らうがいい!!"カイザーバーン"!」
突如目の前が警告するかのように一面真っ赤に染まる。
ヤバイ!
無意識に〈錬気障壁〉を展開するも、それごと吹き飛ばされた。
「ぐああっ、いってぇえ!」
入口の方まで吹き飛ばされたが、壁が無かったのが幸いした。
すかさず高級HP回復ポーションを自分の口にねじ込んで飲み干し、なんとか命を繋ぐ。
さらに着地と同時に、回復魔法を使った。
「グレーターヒール!」
魔法を使いつつ、追撃をしてくるかと思ったがオッタルはその場から動く気配は無い様子だ。
「主様!」
「ニケ、手出しは無用だ。主はあの程度ではやられはしない。いざという時までは、手を出すなよ?…いざという時は、この茶番などすぐに終わらせれるのだ」
ニケとカルマが一瞬殺気立ったのは分かったが会話を聞く余裕まではなかったので、今はスルーする。
正にそれどころではない。
「くっそぅ、たった一巡でこれかよ。一瞬でも気を抜いたらあの世行きだな…」
『ふははは、我のオッタルは素晴らしかろう?お主など足元にも及ばぬのだ』
「勝手言ってくれるぜ。人間のままならこっちが有利だったのに、本物のバケモノにしやがって!」
口からは罵声しか出せていないが、頭の中では全力でどうするか考え中だ。
俺が与えたダメージはまだ2000程度。
相手の攻撃は、完全ガードしても2000弱ダメージ。
前の俺なら即死していたな。
当たれば死ぬくらいで考えないと、いつ死ぬか分からないぞ。
『攻撃予測』が発動したのに、全部が攻撃範囲じゃ躱しようがないし、こうなると瞬間移動以外に回避しようがない。
だけど、このタイミングで使って最後までもつか…。
「どうしたニンゲン。腰が抜けたか?戦う気が失せたなら立ち去るがいい。弱者に用はない」
悠然と構えるオッタルは、こちらを見据えて攻撃してくる様子もない。
どうやら立ち向かってくるのを待っているようだ。
ここでこいつを倒せなければ魔王幹部と戦うなんて無理だろう…。
次は本当に誰かを失うかもしれない。
『君は、本当にそれでいいの?』
?誰かが俺に話しかけてきた気がする。
それでいいのかだって?
「いいわけないだろうっ!!竜玉解放!いくぞイドラ!〈幻体龍神〉!!…スキル解放!」
〈幻惑術〉、〈転送術〉、〈闘神〉を即座に発動しつつSPポーションを1本飲む。
それと同時に幻体を2体出現させた。
本体で〈精霊使役〉を使い水の精霊たちを辺りに散りばめて火の力を幾分か弱体化させつつ、隠蔽した闇の精霊を使って視覚を共有する。
幻体1号でまずは、水魔法のビックウェーブを起させ、幻体2号でそれをベールに雷魔法サンダーボルトを撃たせる。
さらに本体の俺が、
「…貫け!〈錬気砲〉!!」
〈幻惑術〉のスキルで消えた状態のままで"瞬間移動"し、どてっぱらに直接スキルを撃ち込んだ!
ドゴアッッッ!!とオッタルの腹を貫き、彼のHPを大きく削り取っていく。
「ぐおおおおおっ!ぬううん!!」
だが、黙ってダメージを食らうものかと炎の剣を目に見えない速度で振り捌いてこちらに攻撃をしてきた。
くそ、剣の速度が尋常じゃないぞっ。
危なく俺も喰らうところだったが、瞬間移動で回避に成功したかと思ったが、今ので幻体1号が消し飛ばされた。
くっそう、SPがもったいない。
言っててもしょうがないので、もう一度ポーションを飲みつつ再度幻体1号を呼び出した。
これだけやって、与えたダメージは…1万ちょいか…。
残りHP見ると、76000とある。
くっそ、並みの魔獣なら消し飛んでるのに。
でもダメージは入っているし、何度もやるしかない。
HPは回復しないみたいだが、致命傷じゃない攻撃での傷は再生されるようだった。
いま腹に開けた傷がみるみる塞がっていく。
若干みてて気持ち悪いな。
人間辞めるとあんな感じなのかね…。
「ほう…少しはやるようだな。爆ぜろ"エクスプロージョン"」
な、魔法!?
いや、スキルだったか!
「打ち消せ!"エクスプロージョン"」
俺がすかさず同じ技で相殺をしようとすると
「そこだな…"カイザーバーン"!!」
爆発する炎を一刀両断するかの如く、強烈な一撃を俺目掛けて繰り出した。
ち、本体しか使えないと踏んでの罠だったか。
こうなったらガードするしかない。
「〈錬気障壁〉!!」
しかし、さっきと違ってこっちはステータスが倍になっているのだ。
なので今なら防ぎきれるはず!
パリイィィィィィン!
って、なんでだ!?
「主よ。それは、次元を切り裂く技。見た目に惑わされては駄目だ。あのアモンの技と同種だと考えるのだ」
それ、分かってるなら早く言ってくれよ!
「がはっ!…でも、さっきよりはダメージ無いか。防御力無視ってわけでもなさそうだな…グレーターヒール!」
こっちも中々攻撃を与えれないが、あっちも回復が使えるうちはこちらにダメージは与えれても回復出来るので、状況はまだ拮抗している。
いや、少しでも減らせている分こちらが有利…だと思いたい。
「む?さっきよりもステータスが上がっているのか。まあいい。斃れる迄やり続ければいいだけの事!"カイザーバーン"!」
ブウウンブウウン!と剣を振り下ろす度に発動する技を今度は受けずに瞬間移動で回避し続ける。
無茶苦茶だが当たれば大ダメージ必須なため、かなり厄介だ。
だが、俺も黙ってみてるだけではないぞ!
SPを全回復するため、SPポーションを3本一気に飲み干した後、俺は瞬間移動でオッタルの目の前に出現した。
「くらえっ!〈錬気斬〉!!」
「馬鹿め!"カイザーバーン"!」
目の前に現れた俺の攻撃に合わせて剣技を合わせてくるオッタル!
だがしかし…
「!?な、馬鹿な消えただと!?」
かかった!
オッタルが切り刻んだ俺がふわっと霧散する。
そう、それは〈幻惑術〉で作った幻影だ!
「「「〈錬気砲!!!」」」
真裏に現れた3人の俺が同時に同じ技をオッタルの背中に撃ち込んだ。
決まった!
「ウガアアアアアアアアアアッ!!!」
オッタルは背中から煙をあげつつ、大きな穴をあけて倒れた。
だがまだHPは残っている。
ここしかない!
「我が力は【覇王】の楔。すべての敵を打ち貫く神の槍。顕現せよ!〈神葬の槍〉!!」
三人の俺の力を一つに集めて威力を高める。
眩く輝く一本の白き槍がオッタルに照準を合わせて出現する。
フィィィィィィンッ!と何かが振動するかのような音を発しながら、オーラの槍が光速でオッタルを貫いた。
「カハッ…なんだと…我を只の人間が打ち破るだと…?」
HP0になったことを確認すると、オッタルの体は燃え上がり炎となった後に消えてしまうのだった。
それを見て俺はやっと幻体を解く。
「お、終わったか?」
『な、なななんだと。我の愛しいオッタルが負けただと?ぐうぅ、かくなる上は!!」
オッタルが倒されて動揺と怒りをあらわにしたフレイヤ。
今度は、フレイヤ自体が戦いを挑んでくるのかと思ったが…。
「いい加減にせよフレイヤ。それ以上は使命の範疇を超えているぞ?」
「そうです、我らの使命は試練を与え資格者を試すだけ。己が手を下すことは許されません」
いつの間にかニケとカルマが力を解放した状態で大精霊の姿になり、フレイヤを睨みつけていた。
『な、お、お前たち。眷属かと思ったが大精霊の本体だと!?ど、どういうことなのだ!どうしてここにいる?!』
その姿を見たフレイヤは困惑と共に慄くのだった。
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