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町へ行こう!

村での話が終わったので投稿しました。


準備編は、これで終わりです。

 素材集めから、3日が経った。


 その間に、自分のスキル上げのために近くの森に行ってテイムスキル試したり、小竜ピューイのスキル上げのために山に行ったりとしたが、特に他のプレイヤーに会うこともなかった。


 やはり、この地区には俺とガントくらいしかいないようだ。


 今日は約束の日、ガントもあとは仕上げだけですぜ!とか言ってたので、午後には完成するみたいだ。

 ついでに、武器の手入れもしてもらってる。

 久々に使う予定のクロスボウも出来てるはずだ。

 丈夫そうな木材が必要というから、樹齢1000年くらいの木をニケの風魔法で伐採してきたのを渡してある。


「相変わらず、あんたたちは…」


 と、ガントが遠い目になってたけど、何のことだか。


 兎に角、装備が新調されるのは、これほど冒険者として心躍ることはない。

 どんなのが出来てるかなー。

 いっそ、仕上げるとこ見に行くか?

 いや、邪魔になるだけか。

 と、ソワソワしていると…


「ユート!出来たぞ!見に来てくれ!」


 と、ガントが呼びに来た。


 ちなみにガントはAランク鍛冶屋で、かなりの腕前のようだ。


 素材もアダマンタイトという、オリハルコンよりも硬い素材も扱った事もあるらしい。

 俺は金属鎧とは無縁なので、金属とかは詳しくないから『へーっ』という感想しか出せないでいるとガントからは、


「おい!出た感想それだけ?!もっとないのかよっ!」


 と、言われた。

 いや知らないもんは、知らんし。


 だが、これから自分の装備になるものとなると興味の度合いは違う。

 いったい、どんな風になったかなー?

 と、考えている間に鍛冶屋に着いた。


 正面から入ろうとしたら、そっちじゃないと裏手に回された。

 裏側から工房に入れるらしい。


 入ったら、正面に飾ってある革鎧があった。


 目に入った瞬間、俺は見惚れた。


 派手な装飾などなく、しっかりなめされた革がコーティングされて艷やかに輝いている。

 各部を繋ぐ金具は、艶消ししてあり不用意には光らないようになっていた。

 革の色はキマイラの薄緑で、余計な染色はしていないようだった。

 各部を縫い付けるのに使われてるのは、ダイアウルフの黒革を使ってるようだ。


「ガント、これが?」


 分かっているが、聞かずにはいられない。


「ああ、そうさ。渾身の作だよ。鑑定でも高品質(ハイクオリティー)と出た。間違いなしさ!」


 胸を張り、自信アリげに言うガントを見て、今日ばかりは誇らしいと感じた。

 やっぱり、職人の魅力は腕で決まる。


「よし。早速装備しよう。手伝ってくれ」


 ガントに今着てる鎧を外して渡してから、新しい鎧を付けて貰った。

 新品の心地よい匂いがする。

 この、革の独特の香りは好きだ。

 着てみると予想よりも軽いし、とても動きやすかった。

 これなら、今のステータスで全力で動いても邪魔になる事は無さそうだな。


「そうそう、キマイラの革のお陰で炎耐性と毒耐性が付いたぜ。あとは、…なんでか闇属性耐性が付いたぜ」


 ガントの説明で、カルマの事が浮かんだがスルーした。

 気にしたら負けだ。


「どうだい、着た感想は」


 問題ないかを前後左右確認しながら、ガントが尋ねてきた。


「ああ、最高だよ。文句のつけようが無い」


「そうか、なら良かった!ついでにいうと、前の鎧よりも防御力もあがったぜ」


「そうか、いいことづくめだな。弓の方はどうだ?」


 頼んでいた、クロスボウについて聞いておく。


「いやー、さすがに専門じゃないから、こっちはまだまだだな。ほらよ」


 言う割には、しっかりとした作りだ。店売りとは明らかに違う。

 これでもまだまだと言うから、職人魂ははんぱない。

 俺もテイマー魂なら負ける気はしないが!


「こいつには、採ってきて貰った霊樹を土台にだけ使っている。というか、扱いが難し過ぎて細かい細工が出来なかったぜ」


 確かに、土台部分だけ色味の違う木が使われている。だが、これだけでもかなりの衝撃を吸収してくれそうだ。


「その代わりといっちゃ何だか、仕掛け部分にはミスリルを使った。鎧の金具と一緒だよ。軽いし、丈夫だからな」


 なんとも、贅沢なクロスボウだ。

 ちなみに矢の方は消耗品なので、普通の鉄という事だった。

 但しガントが精製してるので、鋼になっている。


「助かったよ、ガント。これで町に向かえる。これは約束の報酬だ。受け取ってくれ」


 そう言って、金貨5枚を渡した。


「うお、こんなにくれるのか?材料も用意してもらった様なもんなのにありがてぇ!」


 喜んで貰えて良かった。俺と違ってそんなに戦闘出来ないガントは、何かと入り用だろうしな。少しは余裕出来るといいなと思った。


「これから、町に向かうのか?」


「ああ、そのつもりだ。早いこと行かないとな」


「なぁ、ユート。…俺も連れて行ってくれないか?な、頼む!」


「へ?何言ってんだ?」


 俺は、きょとんとしながら言葉を返した。


「えっ。…だ、駄目か?」


「いや、駄目も何も、連れて行くに決まってるだろ?逆に来ないとか抜かしたら、引き摺っていくところだよ」


「うへ、そうかっ!…ありがとう、ありがとうな!」


 変なとこで気を遣うやつだったようだ。

 整備もして欲しいし、来てくれないと俺も困る。


 取り敢えず、行く準備するから酒場で落ち合おうという事になり一旦別れた。

 俺も、厩舎に用事があるのでそっちに向かった。


「ああ、旦那。もう出発するんですね」


 厩舎の主人が俺を見つけるなり作業を止めて来てくれた。

 建物は大分直ったようだ。


「ああ、近くの町に行こうと思う。なぁ、聞きたいんだが」


「はい、何でしょう?」


「ここって、転送クリスタルあるか?」


 転送クリスタルとは、厩舎から厩舎へ、ペットを転送してもらえる便利な魔法アイテムだ。

 ゲームでは存在しててとても便利だったが…


「ああ、町に送るんですか?もちろん有りますよ」


 あったーーーー!!

 これで、かなり楽できる。

 流石に全員ぞろぞろ連れて歩いたら、魔王軍が行進していると思われかねない。


 それに移動に時間が掛かってしまうので、今は回避したい。

 カーゴタートルにしまうという手もあるが、全員となると狭い。

 しかも、容量オーバーとなりかねない(重量は制限が無いが、容量に制限がある)。


 馬車も考えたが、生憎と使ってない荷台が無かった。

 なので、転送してもらえたらと思ったのである。


 しかし、ここで新たな問題だ。

 LBOのとき、ランクと重量で値段が変った。

 仕組みが一緒ならゲンブだけでかなり取られる。

 ガントを運ぶことを考えるとニケとカルマは連れて行くとして、他をどうするか…


「旦那、料金なんですが…」


 ごくり。


「今回は、料金サービスして無料でいいですよ!」


 むりょおおおおおっ!!


「旦那が鉱山の魔物追っ払ったお陰で、兄弟や仲間達がまた働けるって喜んでて。村長からの御達しもあって、タダに出来たんですよ」


 いやー、路銀のために受けた依頼だったが、思わぬ副産物を貰えてラッキーだ。

 いい事はするもんだな、うんうん。

 …ん、さっきも言った?


「じゃ、ニケと、カルマ以外を頼む」


「分かりました。では、明日の朝には転送しておくんで向こうで受け取ってください。サニアの町でいいですか?」


 ん、聞き慣れないな。そういや、ここの村なんていうんだ?


「なぁ、ここって何ていう村だっけ?」


「ここですか?ここは、パドの村ですよ。名前、知らなかったんですか?」


 あはは、ど忘れしてなと誤魔化しておいた。

 それよりも必要なものが増えた。


「ここらで、周辺地図売ってるとこあるか?」


 そう、地図だ。

 LBOと、村の名前も町の名前も違う。

 これだとこの先転送するのに違うとこに行ってしまう可能性がある。


「ああ、はい。それなら道具屋で売ってますよ。周辺地図というか、大陸地図ですね」


「そうか、助かるよ。じゃ、転送は頼んだな!」


 厩舎の主人と別れて、道具屋に来た。

 ここ数日、色々買い込んでるのですっかり顔馴染みだ。


 なぜ地図が売ってるか気が付かなかったとツッコまれそうだが、今まで必要なかったのだ。

 なにせ、今のところ地形はまったく一緒なのだ。


 それも記憶と寸分も違わないくらいにだ。

 なので、町の名前とか気にしてなかった。

 正直盲点だったよ。


「いらっしゃーい。何ご利用ですかー?」


 店員のおねーさんがフレンドリーに話し掛けてくれる。


「えーと、地図が欲しいんだ。大陸地図。世界地図もあったらそれも欲しい」


「はーい、2枚合計で銀貨2枚よー」


 と、両手でお椀を作って差し出してきた。なんかこの仕草いいよな。


「じゃ、これね」


 銀貨2枚を渡して、地図を貰った。

 店を出て、早速眺めてみた。


「やっぱりか」


 地図を見て確信した。

 地形は全く一緒なのに、町や大陸の名前が違う。

 やはり、ここは自分の知ってる世界ではないと確信する。


「ゲーム世界がそのまま現実になったとかなら、良かったのに。ま、でもやる事は変わらないか」


 そう、独り言を言いながら酒場に向かった。


「おう、ユート遅かったな。なんかあったか?」


 微妙な顔をしている俺にガントはどうしたと聞いてきたので、現状把握した内容を伝えた。


「なるほどなー。俺たちはどこか知らない世界に来ちまったんだな。しかも、帰る手立てとか全く検討もつかねぇと」


「ああ、そうだ。そもそも、()()()()()()()というのも、違うかも知れない」


「え、それはどう言う事だ?」


 そこで、カルマから聞いた話をある程度した。


「はぁ、なんと言うか凄い話だな。どこまで信じたらいいか頭の悪い俺には分からんな」


「俺もさ、だからこそ、世界を回って情報を集めないといけない」


「でもさ、もし本当に生まれ変わったのだとしたらどうするよ?」


 ガントは、真剣な顔で聞いてきた。

 だが、その答えだけは決まってる。


「そんときはさ、新しい人生を謳歌するしかないだろ?」


「そりゃあ、違いねえな。よし、やることは変わらないんだし、そろそろいこうぜ。逆にワクワクしてきたぜ!」


 このポジティブさは、正直助かる。

 ま、自分もそこまで悩んでた訳じゃないが。


「オッケー、出発しよう!」


 村を出て、地図の通りにサニアの町へ向かうことにした。

 カルマは、俺以外の人間は乗せないと言うので、ガントはまたニケの乗せた。

 俺は、カルマに跨り出発の合図を出した。


「新しい町へ出発だ!」


「おー!」


 ニケもクルァァァ!と鳴き、カルマもグオオオッーと嘶いた。


 さて、新しい町で何に会うかな。

 期待と少しの不安を抱いて、俺らは新しい世界への冒険を始めた。


お読み戴きまして有難うございます!

次話も宜しくお願いします。

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