サニアの町でごきげんよう。
ランクアップから数日が過ぎた。
ランクアップから、数日が経った。
ここでの生活にも慣れてきて、最近は仕入れの他にも、近くの地域調査や、近くにあるダンジョンでの素材集め等を始めた。
メンバーは沢山いるので、色々な事を同時に出来るのはこのユニオンの強みでもある。
しばらくリンとシュウの戦いぶりを見ていなかったので、訓練も兼ねて外に連れ出した。
ステータスもかなり伸ばしているので、これから先も成長が楽しみなところだ。
ライと仲間の四人組は、予定通り儀式が終わり翌日にサニアに戻った。
時間が勿体無いのでディアナとへカティアの二人に頼み、特急で送って貰った。
片道5時間で着くのだから、かなり便利だよな。
そんなわけで、日帰りも可能になったので修繕の様子などは週に一回は確認しに帰ることにした。
住めるようになったらメイドを数人連れて帰り、準備をさせましょうとゼフが提案してくれたので、そうすることにした。
───
今日は、一回目の修繕工事の視察に帰ってきた。
ついでにセツナ達にも会おうと思っている。
リンが一緒に来たいと言うので、今日はニケに乗って二人でやって来た。
「ニケさんの背中に乗ってると、とっても気持ちよくて寝れそう…。」
「こらこら、寝ぼけて落ちたら痛いじゃ済まないぞ?」
『大丈夫ですよ、落ちない様になってますから。』
じゃあ、遠慮なく〜。と言ってすやすや眠りに入るリンを抱えつつ、空の旅をしているとサニアの町が見えてきた。
二人で来ているのと、風の精霊の力をフル活用出来るニケであればジョット機並の速さでも揺れすら感じないでここまでこれる。
その為、移動時間もディアナ達の半分の時間で着いた。
「んにゃ、あれっ、もう町?あっという間だねパパ!」
「だなー、段々と移動スピード上がっているなぁ!」
『はい!大精霊の力が戻ったので、風のコントロールが自在になりました!』
直線なら音の壁も超えて飛べるという、とんでも無い能力だ。
まずは修繕工事の様子を見に来た。
職人達が足場を組んで一生懸命に外壁を修理している。
もうすぐ冬になるので、寒い中働いてくれて感謝しかない。
「おっ、旦那!作業は順調だよ!この調子なら予定通り一月で終わるよ。」
「そうか、それなら有り難い。やっぱり、みんなこの屋敷が住みやすいっていうから、頼んだぞ!」
「ええ、任せてください!」
他の職人たちにも労いの言葉を掛けてから、その場を後にした。
その足でそのままギルドに向かう。
ついでに美味しいクエストがあれば暇潰しにやろうかなぁ。
「あ、ユートさん!ギルドにご用事ですか?」
「おー、ミルバはちゃんと働いているかなと見に来たんだよ。」
「ちょっと、何を言っているんですかっ!?これでも働き者で有名なんですよ!」
「ミルバさん、いつも一生懸命に働いてるもんね!」
「うう、リンちゃんだけよ分かってくれるの!お姉さん頑張るね!」
そう言いながら、よよよと泣き真似をしている。
なかなか芸の細かい人だな。
「ははは、冗談だよ。だけど、そんな真面目なミルバさんをお昼ごはんに誘いたかったんだが、無理そうだね。リン、二人で食べに行こーか。」
「ご飯!あっ、今急に暇になりました!大丈夫です、いきます!」
「ふふふ、ミルバさんって、面白い人だったんだね!」
そんな急に様変わりしたミルバを見て、リンはクスクスと笑っていた。
3人でご飯を食べに行くことになったのだが、先に寄りたい所があると宿屋の側の酒場に来た。
なんだか凄く懐かしく感じる。
ミルバがここでお昼ごはんですか?と言うので、いや一人拾っていくと伝えた。
中を見渡すと、ため息をつきながら水を飲んでいる女性を発見する。
少しやさぐれている?
「はぁ、グラムには捨てられるし、ユート殿には放置されてるし、一体なんなのよ…。」
もう何度も同じことを言っている気がするが、それでも愚痴は止まらなかった。
最近、話す相手もいないため独り言が増えたと自覚はあったが、少しでも発散しないとやってられないと自制しないでどんどん吐き出すセツナ。
「グラムなんて、大体キャラだけかと思ったら本当におっさん顔の男だったのに、なんでついて行っちゃったんだろ。別に好みの顔でもなかったのになぁ。…次に出会ったのは本当のおっさんだし。まぁ、多少若く見えなくもないけどさー。私ってオジサマ趣味じゃなかった筈なのに…。しかもポイ捨てとか!連絡も寄こさないし、鬼畜だわ!ひとでなし!ひどい、酷すぎるぅ〈ゴンッ!〉っったーい!」
「いないと思って、好き放題言ってんじゃないっ!」
途中から、まるで酷い男扱いになってきたのでげんこつで止めておく。
断じておっさんおっさん言われてムカついた訳ではないったらないッ!
「やっときだァァァ!」
半ベソかきながら、いきなり抱きついてきた。
ちょっ、待ちなさいっ!といいつつ剥がそうとするも、SSランク騎士の筋力は伊達ではない。
全く離れなかった。
「ユートさ〜ん?これは一体ど〜いう事ですかぁ?人を誘っといて他の女子に手を出すとか!!」
「パ〜パぁ?その人だぁ〜れ?」
二人して怖い目をしてこちらを見ている!
いや、まて誤解だっ!俺は何もしてないわけじゃないけどしてな〜い!
ぎゃあああ!!
「──いや、取り乱してすいません。色々な事が重なって情緒不安定になってました。」
しょぼんとしながら、謝るセツナだが。
「ほんとだよ、俺を見ろよ!ボロボロだぞ?」
二人にあらぬ嫌疑を掛けられ、顔に引っかき傷やらぐーぱんちの跡やら残っている。
「ご、ごめんねパパ。でも、ちょっとパパも悪いと思うんだ!」
「そ、そうですよ。変な疑い掛けられるような態度を取るのが悪いんです!」
やらかした二人はバツが悪そうにしながらも、拗ねたような顔で言い訳している。
しかし、ここで反論しようものなら火に油だと長い人生経験の中で経験済みである。
男は黙って謝るのみだ。
「悪かったよ、今度からちゃんと説明を先にするから。機嫌直してくれよ。とりあえず、気分転換も兼ねてみんなでご飯いこう?ね?あれ…そういや、セツナ。他の五人はどうしたんだ?」
「ああ、あの子達はじっとしてられない質だから、外に狩りに出掛けてる筈よ。クエストは受けれないけど、素材の換金なら誰でも出来るからお小遣い稼ぎしてるんじゃないかしら。」
なんだ、折角だから昼飯に連れてってやろうと思ったのだが、いないんじゃ仕方ない。
次に会ったときに、色々聞くついでにご飯に連れて行ってやろう。
「じゃあ、5人で行こうか。」
3人とも素直にはーいと返事をして、何処にしよっかと女子同士で盛り上がっていた。
お互い軽い自己紹介しつつ、この町に詳しいミルバがいくつか行きたい店を提案していた。
外で待っていたニケは不思議そうな顔で俺を見ていたが、何かを察したのか『主様も大変ですね…。』と言うだけだった。
しばらくして、行く店が決まったらしく郊外にある少し高めのお洒落なレストランに決まったようだ。
セツナは最近戦う事もないため、普段着でいたのでそのまま向かう事になった。
俺らも、ミルバを誘いに行く前に着替え済みである。
店の近くまでニケに乗って空を飛んでいく。
あっという間について、俺らを降ろすとニケも人型に変身する。
「ここは良い香りがしますね主様。私も楽しみです。」
「そういえば、ニケはレストランで食べるの初めてだよな?作法とか分かるのか?」
「大丈夫ですよ。皆様の見て真似させていただきますから。」
あ、なるほど。
賢い選択だな、長年生きているだけはあるな。
「主様、何か余計な事を考えませんでしたか?」
「きのせいだろ。さーいこう。」
いくつになっても、歳の事は言ってはいけないのは異世界も共通らしい…。
店に入ると、すぐにウェイターがやってきた。
俺のギルドプレートを見て一瞬ぎょっとするも、何も言わずに一番いい席へ案内してくれた。
結果から言って、大満足だった。
ミルバに好きな物なんでも頼んでいいよと言って任せてたら、いろんな物をこれでもかと頼んでいたが、どれも美味しくてルガーの料理に引けを取らなかった。
逆に考えたら、一流店の料理に引けを取らないルガーの腕はやはり一流なのだなと違うところで感心していた。
一通り食べ終わって、女子たちは(ニケ含む)デザートに移行していた。
そんな時だった。
「なんで私達は入れないのよ!」
「いいえ、そう言われましても。防具を付けたままでは他のお客様にご迷惑をお掛けしますので。」
「なによ!着替えるったって、わざわざ宿屋なんて戻ってられないわっ。」
なんか、女の子とウェイターの争う声が聞こえる。
「レーナさん、一回帰りましょう?着替えてまた来ればいいじゃない。」
「なんでよ!お金は払うんだから食べさせてくれてもいいじゃない!戻ったら往復一時間はかかるわよ!」
「そうだそうだ!俺らもレーナに賛成だ!もう、腹ペコだし戻ってられない!」
「どうしてもダメだって言うなら、こうだぞ!」
一人が剣を抜き、ウェイターに突き付けようとしている。
あれはダメだ、あからさまにやりすぎである。
というか、見たことある顔だな…。
「ひいっ!だ、だれかっ!」
さすがに飯を食っている時に、傷害沙汰に巻き込まれては堪らないので瞬時に移動して、間に割り込んだ。
「…おい、お前ら。いい加減にしなさ…あれ?」
「なんだよおっさん!やろうっていうのか!?いってててて!!!すとっぷすとっぷ!」
とりあえず、危ないので剣を持っている手を捻っておく。
痛みに堪えかねて、少年は剣を落とした。
それよりもだ。
「あら?そう…やっと戻ってきたのね、おじ様?」
「やはり、お前らか…。はぁ、ちょっと外に出なさい。」
有無を言わさないで、そのまま外に押し出す。
流石に俺の実力も理解しているので、子供たちも反抗しなかった。
「いいじゃんか、防具つけて飯食べるくらいさー。」
「そういうのも、時と場所によるんだよ。それに、一般人に剣を向けるとか普通に犯罪だからな?」
「えっ、でも…。グラムのおっちゃんとか普通にやってたし。」
「はぁ。アレを見本にするなよ。」
それでも、さすがにまずいと思ってたらしく反省していたのでとりあえずウェイターには金貨を握らせて無かったことにしてもらった。
「だいたい、おじ様が私達を放置してどっか行っちゃうからいけないんじゃないっ!」
「いや、ちゃんとお金渡していっただろ?セツナに言えば、ご飯くらい毎日自由に食べれるだろう?」
外で話をしていると、どうしたのかとセツナ達も出てきた。
「あなた達だったの!?なんてことしてるの!」
「だ、だって、お腹空いてるのに入れれないって!」
「そんな恰好で来たら言われるに決まっているでしょう!」
セツナに叱られて、必死に謝る男の子を余所にお嬢様っぽい口調の女の子は、どうもでいいけどお腹空いたわとため息をついていた。
マイペースな子だなぁ。
「パパ、どうしたの~?」
セツナと一緒に出てきたリンは、そういいつつも少年たちを見てあーなるほどと言う顔をした。
「ああ、リン。こいつらが腹を空かせて、苛立ってちょこっと揉めただけだよ。そのままでも入れるところ連れて行こうか。」
「えっ、りん?その顔…もしかして、あなたりんなの?」
「ん?そうだよ?…え!?れいなさん?それにそちらはあやねさん?」
「え、りんさん!?ご、ごきげんよう!」
「ご、ごきげんよう!?」
その後、ミルバをギルドに送り届けて装備付けたままで食事出来る、バルコニーのあるお店に5人を連れてきた。
外でボリュームのあるサンドウィッチやら、ホットドックみたいなものを頬張りつつ話をする。
「まさか、鈴さんまでこちらにいらっしゃってたとは!」
「私も、まさかこっちで玲奈さんにお会い出来るだなんて!でも、どうしてこちらに?それに彩音さんまで。」
「ふふふ、あなたがどうしてもこの世界を見たいって言ってお勉強を頑張ってらっしゃったから、私達もこっそりやってみましょうって。そうしたら、結構面白くて。それで、どうせならすっごく強くなって偶然を装ってお会いしましょうって思ってたのですけど、なかなかタイミングを合わすことが出来なくて…。」
「そうですね!あんな野蛮な大人とお仲間になった時はどうなるかと思いましたが、ユートおじ様に引き取られて貴女にお会い出来るだなんて、これも運命ですわね。」
聞いてる方がむず痒くなるようなお嬢様の会話だが、リンにとっては自然なようだ。
シュウが言ってた通り、リンはお嬢様だったようだな。
「あ、そうでした。玲奈さん、彩音さん。こちらでは私はそのままリンとお呼びください。ここではお嬢様ではないので。」
「ふふふ、そうでしたわね。なんか、懐かしくてつい。では、私もこちらではレーナと呼んでください。」
「あ、わたくしもアーヤとお呼びくださいね。」
「じゃあ、レーナとアーヤ。こちらでも宜しくね!」
「ええ、リンよろしくね!」
「リンさ…リンですね。なんか、慣れないわ~。頑張ります、よろしくね!」
そんな3人を見て男子たちは、
「やっぱあいつらお嬢様だったんだな。本当にいるんだなお嬢様って。」
「だねー、変な口調と思ってたけど本物だったとか。まじウケる。」
「ボクは、いいと思うけどなぁ。3人とも可愛いし。」
と3種3様の感想を述べていた。
セツナはセツナで。
「育ちがいいわりに、発想が危ないのはどうしてなのか…。」
と変に悩みだしたのだった。
あ、こいつ天性の苦労人だ。
俺は、心の中で合掌するのであった。
「あ、お前たちの名前をちゃんと聞いてなかったな。俺はユート、テイマーメインでやっている。ユニオン【ウィンクルム】のリーダーだ。こっちではリンの保護者でもあるから、変なことしたら…わかっているな?」
と、一応脅しも入れておく。
「パパ?あんまり怖がらしちゃダメだよ?えっと、わたしはリン。剣士メインで、今はドラゴンナイトもやってるよ。レーナとアーヤはあっちでお友達で同い年だからよろしくね!」
おー、と男子のひとりがパチパチと拍手していた。
「では、私も。私はレーナ。剣と回復が出来るホーリーナイトよ。よろしくね!」
焦げ茶色のセミロングに頭に大きな赤いリボンを付けたレーナは、お嬢様風にスカート部分をつまんで挨拶をした。
「えっと、私はアーヤです。職業は同じくホーリーナイト。斧で戦っています!よろしくお願いします!」
三つ編みにした黒髪を揺らしながら、アーヤも挨拶した。
「俺は、ショウタ!剣メインの剣士だよ。この子達より2つ上の中学1年だ。よろしくなおっちゃん!」
「オレはユウマ。職業はレンジャー。弓と短剣で戦えるぜ?中学2年だよー。」
「あ、ボクは、ダイキ。職業はウィザードだよ。同じく中学2年生です。よろしくお願いいたしますねユートさん、リンちゃん。」
元気な短髪頭がショウタ、長い髪を一本に纏めてるのがユウマ、大人しめの性格なのがダイキだな。
とりあえず覚えれそうだ。
「そういや、おっちゃんはランクアップしに王都に行ってたんだろ?何ランクになったんだ?」
「ん?SSランクだよ。」
「「「え!?」」」
なぜか5人全員顔を見合わせる。
というか、知らなかったんだな。
「という事は、前までSランクのテイマー?で、ユート…。あれ、もしかして奇人テイマーユート!?」
「お前ら、なぜをそれを知っている!?」
こんな子供たちにまで、俺の恥ずかしいあだ名を知られているとは思わなかった…。
その後は、子供たちで今までの冒険談やグラムへの愚痴合戦などで日が暮れるまで盛り上がったのだった。
いつもご覧になって頂き、本当に有難うございます。
日々評価やブックマークが増えて、皆様に応援されていると感じることが出来ています。
執筆の励みになっています、本当に有難うございます!!
これからも、楽しく書いていきますので、
是非一緒に楽しんでいただければと思います。
第3章が始まりました。
新しいストーリーが展開していきますので、是非ともよろしくお願いします。
次回は、休日投稿予定です。
よろしくお願いします。




