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氷山の決戦、そして東の大陸【イーガス】へ旅立ち。

氷山でフロストドラゴン達に囲まれたユート達。

果たして、どういう戦いをするのか。

「こうなったら、格の違いを見せてみろ!」

「「承知!」」


 ニケとカルマは、既に精霊の力を解放済みだ。

 ニケの力により辺りの風がピタリと止んだ。


 さっきまで吹雪いていたのが嘘みたいだ。


「これで見やすくなったでしょう?カルマ…始めましょう。」

「言われなくても、既にやっている。」


 いきなり風が止んだことで戸惑っていたレッサーフロストドラゴンが、数体その場に倒れて絶命した。


『!? な、なんだ今のは…貴様たちは何者なのだ?まさか魔王なのか?!』


 何をしたか分からない恐怖にフロストドラゴンロードが狼狽えてる。


 その正体は、カルマのスキルである〈闇の誘惑〉だ。

 自分より低ランクの敵に対し、抵抗できなければ死という凶悪なスキルで、それに耐えきれずに息絶えたようだ。


 だが流石はこの山の主だ。

 すぐに攻撃態勢に入る。


『ヤツらに好きにさせるな!皆の者、一斉攻撃!我に合わせろ!〈アイシクルブラスター〉!』


 氷竜たちが一斉にビームの様な極冷のブレスを吐き出した。

 狙う先はニケだ。


「流石は氷の精霊の眷属。かなりの冷気ですね。ですが、この程度の圧力では私には届きませんよ?」

『そんな強がり、いつまで続けれるものかよ!』


 ニケの言葉を強がりだと決めつけて、攻撃を続けているフロストドラゴン達。


 攻撃を受けているニケを見てみると、彼女の周りには白い膜が出来上がっていた。


 どうやら風の力で防壁を作りだし、完全に防いでいるようだ。

 防壁の外だけ凍るという不思議な光景が作り出されていた。


「お遊びはここまでです。さぁ風よ…散れ!」


 そういった瞬間に膜が弾けて、すべての冷気が跳ね返された。


 グオオオオオンと悲鳴のような鳴声をあげて、フロストドラゴン達が吹き飛んだ。


 続けてニケは攻撃をする。

 その女神の様な姿から、神の怒りの如く凄まじい雷が繰り出される。


「そのまま死に絶えなさい。打ち砕け!〈大召雷〉!!」


 撃ち出された巨大な雷がフロストドラゴンロードを撃ち抜く。

 たった一撃でHPが一気に失われ、耐えきれなくなり雪山に墜落した。


『ガハァッ、ば、馬鹿な。我がたった一撃で地に落ちるとは。』

「耐えたのね、偉いわ。さて、これならどうかしら?…切り裂け〈真空烈破〉!!」


 フロストドラゴンロードの周りに真空の刃で作られた竜巻が発生した。

 まだ、動けないフロストドラゴンロードを飲み込んで滅多に切り裂いていく。


『ガアアアアッ!ま、まだだ、このまま終わらぬ…喰らえっ〈悠久の氷嵐(エターナルブリザード)〉!!』

「あら、風属性には強いのね。…ふう、こんな氷の飛礫では私に傷ひとつ付けれないわよ?」


 風スキルがあまり効かなったことに残念がっている間に、反撃を受けてしまったが、余りにも弱い攻撃にゲンナリするニケ。


 実際は、高位氷魔法のブリザードの倍の威力があるのだが、相手が今のニケでは魔力障壁すら破れない。

 実力の差は歴然だった。


『我が最大の攻撃が、全く効かないだとっ!?』


 今まで、天敵と言えるほどの敵に会ったことがないフロストドラゴン達は驕り高ぶっていたが、相手との余りの実力差に一族が殲滅される窮地に立たされた。


 再び攻撃をしようとするニケ。

 そこで彼等のリーダーたる、ロードが取った行動は…。


『くっ…ま、待て!待ってくれないかっ。…我の命は差し出していい。だが、残りの者は見逃してくれないか?』


 そう言っている間にも、カルマが一体、また一体となぎ倒していく。

 辛うじて息をしているので、まだ生きてはいるようだ。


「ふん、貴様の命など興味がない。そんなものを貰っても…、ふむ、いい考えを思いついた。主よ。」

「お、おう?なんだカルマ。」

「この者を下僕に加えてはどうですか?」

「フロストドラゴンロードを?言う事聞くかなこいつ。」

「ですから、下僕です。我等は魂の契約により従属しておりますが、隷属させるスキルを使えば命令は絶対になる。」

「ああ、そっちか…。」


 テイマーがよく使う『調教師テイマー』スキルは、心を揺り動かし手懐ける通常の<動物調教テイム>と、力の差を見せつけてから従わせる<調伏プロテスト>と、抵抗出来ないようにしてから強制的に従わせる<隷属化スレイブリー>と3つある。


 <動物調教テイム>や<調伏プロテスト>の方が仲間にしてからの成長がいいのと、信頼度を上げることでさらにステータスボーナスが付くので一般的にはこの2つを使う。


 <隷属化スレイブリー>は負けを認めた相手に対して強制的に結ばせる為、信頼が上がりにくくてそこからの成長度が低い。

 その代わりに、命令には絶対逆らえない呪いみたいなのがあるので、命令違反しやすい相手には適している。

 

 仲良くしたいヤツには絶対に使わないが。


「隷属させると言っても、ここに帰ってくるまででいいのです。それまで、【永久氷晶】を守らせましょう。」

「ああ、なるほど。そういう事か!それはいいかもしれないな。」


 【永久氷晶】だが、思った以上にデカかった。

 なんせ俺の背よりもデカイのだ。


 ストレージに入れれなくも無いが、容量の関係で他に何も入れれなくなりそうだった。

 かと言って、割ってしまっては元も子もない。


 そのため、移動させなくていいなら都合が良いかもしれない。


「よし、それでいこう。どうだ、フロストドラゴンの長よ。俺が帰ってくるまでソレを守り帰ってきたら渡す。それだけで、お前たちの命を奪う事はしない。」

「断っても良いのですよ?その場合は、この場で全ての力を奪いますが。」


 ニケさん、それは脅迫っていうんだよ?

 笑顔でそれ言うの怖いから…、そういうのはカルマだけにして欲しい。


「さあ、どうする?俺に従うか、一族もろとも心中するか。二つに一つだ。」

『くっ…、もはや道は無い。お前に従おう。さあ、下僕の証を焼き付けるがいい。』


 フロストドラゴンロードは、そう言うと俺の前に来て頭を垂れた。


「<隷属化スレイブリー>スキル発動!さあ…俺に従え!」


 そう言って、フロストドラゴンロードに隷属の紋章を刻み込んだ。

 抵抗せずにフロストロードは受け入れた。

 

「さてと、そういえばお前に名前は無いのか?」

『我には名前など無い。種族を表すフロストドラゴンが私の名であり、一族の名でもあるのだ。』


 なんだ、てっきり言わないだけかと思ったら本当にないとは。

 でも呼ぶときに不便だし、名前を付けようか。


「じゃあ、不便だから名前を付けてやろう。そうだなー…決めた。セリオンにしよう。こないだスペインに行ったときに教えてもらったんだ。つららの意味らしいよ。」

『ふ、変わったヤツだな。下僕にわざわざ名前を付けるとは。では、我はこれよりセリオンと名乗ろう。ところで主の名はなんと言う?』

「俺はユートだよ。よろしくなセリオン。」

『ユートか。承知した。我の主であるユートに代わり、この【永久氷晶】を保護しよう。皆の者、ユート達が帰ってくるまで、【永久氷晶】を守るのだ。』


 カルマとニケにボコボコにされて、飛んでいるドラゴンは一体もいない状態だったが、生きているドラゴンはクアアアアア!と返事をしたようだった。


 ちなみに、死んでしまったフロストドラゴンはすべて回収した。

 肉の一部は、ニケとカルマ、そして双子の竜姫のヘカティアとディアナに渡した。


 ニケとカルマも魔獣の姿になり、肉を食べていた。

 その方が魔力に変換しやすいらしい。


 魔物の世界は弱肉強食だ。

 力で負けたのであれば受け入れるしかない。

 そのため、怯えるものがいても憎しみを向けてくるものはいなかった。


 残った肉はシロの育成の為と自分たちの食料の為に取っておいた。

 移動中の食料になりそうだ。


 これで、帰ってくるまではなんとかなるだろう。

 氷の神殿を突破したやつらが、ここまでやってこなけば問題はないはずだ。


「大体1週間くらいで帰ってくる。それまでの守護は頼むぞ?」

『承知した。なくなる筈だった命だ。身命を掛けて守って見せよう。』

「無事終わったら解放してやるから、頑張るんだぞ。」

『その言葉を信じよう。』


 流石に、ボロボロの状態では守護もままならないのでフロストドラゴン達を治療してから、山を後にした。


 念のため、遠くから光が感知されないようにカルマの闇魔法で【永久氷晶】を隠蔽しておいた。

 かなり近くに行かないと、気が付かないだろう。



 一先ず山をあとにして、東側に飛んだ。

 へカティアと、ディアナは人型に戻っている。


「ニケとカルマのチカラは凄かったねディアナ。」

「ええ、あれでもまだ余力を残してたみたいですし、もう今の私達では勝てる見込みは無さそうね。もう、何かする気なんてないですけど。それに…いまさら、あの時に戻りたくないわ。ね、へカティア。」

「うん、そうだね。マスターと居る方が段前楽しいね!ディアナ!」


 隣に俺が居るのを忘れてるのか、そんな事を話をしていた二人。

 取り敢えず、今の生活が気に入っているようで良かった。


 このまま、ずっと居てくれると良いのだけど。


 そのまま飛んでいくと、海が見えた。

 その遙か先に緑色の大地が見えた。


「結構先にあるな。そのまま行けそうか?」

『問題ありません、主様。このまま行きましょう。』

「我も平気です、主。」

「よし、このまま行こう。海を渡った先に亜人族の村がある筈だ。」


 まだまだ元気な様なので、まっすぐ東大陸に向かう事にした。

 次の目的地は亜人族が集まる村だ。


 そこで一泊し、【幻夢の森】の情報を集めるつもりだ。

 クエストの基本は情報収集だ。


 ついでに美味しいものでもあればいいんだけどね。



 北の大陸【ノーセリア】から東の大陸【イーガス】に渡る海で、魔族軍の警戒に掛かるかと思ったが、全く遭遇しなかった。


 北の大陸経由で渡る酔狂な人間なんて、滅多にいないからでは?とディアナが言っていたので、きっとそうなのだろう。


 自分が考えているよりも、渡航するだけでも難易度が高いようだな。

 改めて、テイマー最高!と思ったが、口には出さなかった。


『主様、何やら機嫌が良いようですね?』

「あ、マスターニヤけてる!や〜らしー。」


 と思ったのに、どうやら顔に出ていたらしい。


「違うわっ!何が違うのか分からないけど、いやらしくはないっ!」

「慌てて否定する所が余計怪しいですよね、へカティア。」

「ふふふ、やせ我慢は良くないよ~?」


 ニケなんか、『そんな我慢されているのですか!?主様が仰っていただければ、私はいつでも!』とか言い出す次第だ。


 あらぬ方向に話が向っていくので困りつつも、今度は喜びを隠さない。


「ソッチの話じゃなくてさ、お前たちとこうしていられるのも、空を飛んで冒険出来るのも、『調教師テイマー』取ったおかげだなと。本当に良かったと思っているよ。」


 そう言うと、さっきまでからかってきた双子も満面の笑顔になった。


「本当ですね。主が居なければ我もニケもココにはいなかったでしょう。貴方がいて、我らが居る。今もこの先もこの関係だけは変わらないのですからね。」

「カルマって、そんな殊勝な事言えるんだ?!ビックリだねディアナ!」

「私も耳が壊れたのかと思いましたわ、へカティア。」


 双子の標的は、カルマに移った様だ。


 カチンと来たカルマが"プチグラビティボール"を二人の間に作り出し、頭をゴチンとさせていた。

 相変わらず器用な事をするもんだ…。


「いったーい!てか普通こんなことに、そんな高等技術を使う?!」

「うう…カルマは相変わらず容赦が無い…。しかし、相変わらず闇精霊くらいしか使えないと言われる重力魔法は強力ですね。私も使えたらいいのに。」


 あ、重力魔法って闇精霊の魔法だったのか。

 しかも、種族特性ないと使えないとか、けっこう高位魔法だったのな…。

 なるほど、通りで強力な訳だ。


「この魔法は、闇精霊の上位種か我が眷属くらいしか使えないのです。もしくは、我と契約したものだけです。なので、過去の勇者で数人は重力魔法が使えたものがいるようです。」

「勇者で闇の精霊と契約したものがいるのか。」

「意外と多いですよ。光と対をなす闇の魔法は強力なものが多いですからね。」


 勇者というと光魔法だけかと思いきや、闇魔法を使うのだそうだ。

 万能に魔法を扱えるものが多いため、基本はすべての属性を扱うのだという。

 

「ちなみに光の魔法だと、何があるんだ?」

「光は、天空魔法というのが有名ですね。」

 

 天空魔法?聞いたことがないな。

 スキルとして覚えれる物の中で、該当するものは無い。

 重力魔法と一緒で、習得条件付きの魔法ということだろう。


「それはどんな魔法なんだ?」

「天空魔法というのは、重力魔法と対をなす魔法で、魔力を消費する代わりに()()()()()()()()()()()()がメインです。効果は仲間にも発揮できるので、MPが多い物が使えば自在に空を飛べますよ。」

「なるほど、それは凄いな。まぁ、俺はニケとカルマ達がいるから必要無いだろうけどな。」

「ああっ!私達もいるよー!?」

「そうです、私達だってマスターの羽になりますからね!!」


 そう文句を言ってくるヘカティアとディアナ。

 それを見て、もうすっかりこの二人も俺の仲間なんだなと感じた。


「そうだな。二人とも頼りにしているよ。」


 そう言って頭をわしわしすると、もう子供じゃないんです(だから)!といいながらも、気持ちよさそうにしている二人は振り払う素振りも見せなかった。

 ニケが『わ、私も!!』と主張したので背中をなでなでしてあげた。

 元気出ました!といって、更にスピード上げたおかげで重力が掛かりすぎて窒息しそうになった。


「主、もうすぐで海を抜けます。この先をまっすぐ行けば村に着くはずです。」

『そうですね。ここは、我らファルコニアの生息地に近い故に、土地勘は多少あります。”幻龍”もすぐに見付けて見せますよ。』


 今時点で、三日目の朝だ。

 ここまでで既に丸二日使ってしまっている。


 今日含めてあと五日のうちに幻龍を探して捕まえないといけないので、結構時間が無い。

 かといって、当てずっぽうに探しても見つからないので、ニケとカルマの探知能力と、ディアナとヘカティアの同族検知能力に期待している。


 さらに、的を絞るためにこれから寄る村で情報を仕入れるのだ。

 但し、あんまり人間の俺が出歩くのも問題があるので、とりあえず宿を取って俺は仮眠を取る予定だ。


 夜になれば、暗くなるので酒場とかに出入りしても顔を隠す魔族が多いのであまり目立たない。

 それまでは、ニケとカルマと双子達に情報収集してもらう手筈になっていた。



 そして、ついに東の大陸【イーガス】に到着した。

 ここからは、カルマとニケが人型になり、ヘカティアとディアナに乗る。


 二人が高貴な魔族であると思わせるためと、逆だと舐められるのが目に見えているからだ。

 それに、成長しているとは言え、ヘカティアとディアナの顔を覚えている者がいたら困るからだ。


 もちろん、人化中はフードで顔を隠す予定である。

 竜族の証である角はわざと隠さないでいることにより、龍神族≪ドラゴニア》だと思わせる狙いもある。


 そんな打ち合わせも終わり、予定通りに村に到着した。

 村人や、魔族の冒険者らしき者たちが二人を見ておおーっ!と、歓声を上げていた。

 やはり、ドラゴンロードを従わせている者は格が違うらしい。


 そんな群衆の中から、魔力を秘めた老人が出てくる。

 こそっと鑑定してみた。


 老魔シャール ランクS 種族:魔人族 HP:2800


 うん、俺と同格くらいがいる。

 これで老人って、やっぱ魔族側はやべーな。

 

「これはこれは、高貴なる方とお見受けします。この村になんのようですかな?」


 シャールという老人は、カルマを見て話しかけた。

 気配を隠さないカルマがリーダーだと感じたようだ。


「我は、バイス(偽名)。近くでクエストをしていたんでな。少し立ち寄らせてもらった。」

「なるほど、バイス様ですか。こんな辺鄙な村にようこそお越しくださいました。荒くれ者たちが多いので、突っかかるものがいますでしょうが、寛大な対応をおねがいしますね。フォッフォッフォ。」


 なんか、怖い笑顔をするじーさんだな。

 一瞬、こちらを見てドキッとしたが、なんとかスルーして切り抜けれた。


 シャールの紹介という事で、良い宿を教えてもらった。

 魔族のお金が無かったので、フロストドラゴンの肉と鱗をいくつか素材屋に買い取ってもらい、お金に換えておいた。


 ひとまずは、宿屋で部屋を取り俺は先に寝させてもらう事になった。

 ついでに、近くの魔物を狩って路銀を少し稼いでおきますとカルマは言っていた。


 こうして、ようやく東の大陸【イーガス】に到着し探索をすることが出来るようになったのだった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] とりあえずでも仲間にした生物の一族を食糧扱いするのはかなり気持ち悪いです
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