極寒の北大陸ノーセリア。
ユート達はサニアを出発し、西大陸を越えようとしていた。
ユート達は、今海の上を飛んでいる。
ここは、西大陸【ウルガイア】を北に飛び越え、そこから北東に進んだところだ。
見渡す限りの海原に、カルマですら感動していた。
ニケも海を見るのは初めてらしく、感銘を受けたようだ。
『マスター!これが海なんだね!私達も海は初めて見るよ!』
『そうですね、湖なら見た事を何度もあますが、海に出てくるのは初めてです。』
二人(2頭?)は、嬉しそうな声を出しながら優雅に飛んでいる。
そのおかげで、周りには魔物たちが寄り付かなかった。
なんせ、ドラゴンロードが2頭も飛んでいるのだ。
余程の命知らずじゃない限り近づいても来ないだろう。
じゃあここまで戦闘が無かったかと言えばそうでもない。
───時間を遡り海を越える前。
西大陸の山を越える時にハーピーの縄張りに入ったらしく、急に現れた俺らに驚いて若いハーピーが襲ってきた。
当然返り討ちにしてしまったのだが…。
そこからが大変だった。
"ハーピーリーダ"ーが怒り狂ってしつこく追いかけて来た。
最初は相手にしないで先を急ごうとしたが、しきりに攻撃を仕掛けてきたのでニケが、
『邪魔です。』
の一言と共に雷撃を喰らわせて落としてしまった。
それを見た仲間のハーピー達も襲ってきて、最後には"ハーピーロード"なる空域を支配するハーピー族の女王と、その番いの"セイレーン"が現れた。
流石にハーピーロードはSランクだったので、戦闘態勢に入ろうとしたが、俺らを見てハーピーロードが話しかけてきた。
『そこにいる人間よ、一体なんの真似だ。伝説級の魔獣達ばかり引き連れて来おって…我が一族と戦争をする気か?』
俺以外の仲間ペット達は、全員SSランク。
傍から見たら、一族を滅ぼしにやってきたと思われてもおかしくはないか。
「いやすまない。急いでいたもんで、君達の縄張りとは知らずに突っ切ろうとしただけなんだ。先に手を出して来たのはそっちだし、君達がこれ以上襲ってこないならこちらも手を出すつもりは無いよ。」
俺は正直に戦うつもりは無いことを告げた。
それまで心配そうにハーピーロードの傍らにいたセイレーンは、それを聞いてホッとした様子だった。
『そうか。我らの縄張りを荒すつもりでは無いのなら、これ以上こちらも手を出さない。』
「そうか良かったよ。じゃあ騒がせて悪かったな。」
これ以上面倒な事には巻き込まれたくないので、そう言って去ろうとした。
『まて。…そのまま行けば、また他の者たちが手を出すかも知れない。お前達相手では我等もただ数を減らすだけだ。よって、我等の縄張りを抜けるまで先導しよう。』
他のハーピー達がざわっとしていたが、王の言う事は絶対らしく俺等を守るかの様に取り囲み1時間ほど付いてきたのだった。
やっと縄張りを抜けて、またここを通るときはこの笛を吹いて欲しいと一本の角笛を貰った。
これを吹けば、ハーピーロードが迎えに来ると言う事だった。
───
そんな事があり、ハーピー達に見送られ、無事に海に出ることが出来た。
『しかし、彼等のお陰で大分時間を浪費してしまいましたね。』
「しょうが無いさ。彼等なりの誠意でもあったんだろ。それにまだ全力で飛ぶのは早いからな。誤差の範囲さ。」
そうは言ったが、少し速度を上げたほうがいいだろうな。
皆にも、ペースアップするように促した。
あれ以来は、とくに敵と遭遇する事は無かった。
ワイバーンの群れを一度見かけたが、金と銀の竜を見るやすぐに旋回して逃げていった。
逃げ去るワイバーンを見て、『お肉が逃げた…。』とへカティアが言ってたが、聞かなかった事にした。
海も見飽きた頃、遠目に大陸が見えてきた。
雲で隠れて見えて無かったが、その奥には雪に包まれた山々が聳え立っているのがわかった。
ほぼ白一色に染まった世界。
こうやって、海側から見るのは俺も初めてだったので純粋に綺麗だなと感じた。
それからしばらくして、ついに北の大地【ノーセリア】に辿り着いた。
まだ沿岸部は寒気が緩やかだと聞いていたのだが…
「ううっ、寒いよマスター。」
「これで暖かい方って嘘なのでは!?」
と、双子の竜姫でもこんな感じなので、かなり寒い。
俺もかなり着込んで来たが、手先の感覚が麻痺しそうなくらいに寒さを感じた。
一先ず正確な位置情報を確認するために、近くにあるはずの村を探すため地上に降りた。
双子がドラゴンロードの姿のままだと大変な事になる為、人型になっている。
二人にも分厚い羽毛と羊毛で包まれた分厚いコートを渡してあるのだが、ガタガタ震えていた。
そんな二人を見てカルマが一言。
「お前達、思ったいたより軟弱だな。そもそも魔力操作出来るだろう?魔力の膜を分厚く張れば寒くなくなるはずだが?」
と、さも当たり前に言うカルマにディアナとへカティアの二人は、
「「それを先に言え〜っ!!」」
と憤慨してから直ぐに魔力を練ってカルマが言った通りにしていた。
先程までの震えがピタリと止まる。
「くー、数百年生きてきて今初めて知るとか…」
「しょうがないわよへカティア。ほとんど城に居たのだし。こんな極寒の地に来る事なんて無かったものねぇ。」
そう言いながらも渡したコートを脱がないので理由を聞いたら、これは気に入ったので着ていたいという答えだった。
なんでも、もふもふしてて可愛いかららしい。
俺は機能性がいいので着ているだけだが、女子の感覚というのはおっさんには良く分からない。
(実際は双子の方がかなり年上だけどそこに触れてはいけない…。)
「しかし、周りを見渡しても家一軒無いな。本当にここら辺に村があるのか?」
「古い地図ですからね。我もここに来たのは数十年ぶりですし、もう廃村になってしまったのかもしれない。」
過去に人族が調査したときに作られた地図を元にここに来たのだが、あてが外れてしまったようだ。
LBOの時にも、ここら辺に小さな村があったがすべてが一緒というわけではないのだろう。
ちなみに、LBOの時はここには雪女やら雪男やらが住んでいて、プレイヤーを見掛けてるとすぐに襲ってきた。
氷雪系のスキルが得意で、雪女に至っては人型なのに吹雪のブレスを吐いてくる。
Bランクくらいの冒険者だと、かなりの確率でここで命を落とす事で有名だった。
しばらく歩いていると、ニケが何かを見つけたようだ。
『主様。あそこに建物らしきものがあります。生物の反応は…、ないように思えますね。」
「雪女って、生物なのか?」
『氷の精霊の眷属ではありますが、一応亜人族の一種ですね。』
人間からすると、人間以外の人型はすべて魔族と言われているが、厳密には種族ごとに色々分かれていると以前にもカルマが言っていた。
亜人族もその一種だ。
そんな話をしながらその建物に近づいていくと、それは氷で作られた家のようだった。
雪女や雪男は雪人という種族で、一般的に冷気属性に強い耐性を持っている。
そのため冷気魔法は全く通じないどころか、回復させてしまう。
逆に、炎属性にとても弱いので炎ブレスか炎魔法が効果的だ。
そんな彼らの住処は、やはり氷で作られた建物のようだ。
寒気が薄いここらでも氷が解けないところを見ると、やはり尋常じゃない寒さが包む大陸のようだ。
「ここらで野宿したら、凍死するな。」
『大丈夫です。主様は私が温めてあげますから。』
「いや、ありがたいけど孵化前の卵じゃあるまいし、それは遠慮しておくよ。それより大体の位置はあっているようだし早々に旅立とう。」
そう言った矢先だった。
あたりから冷気が吹き荒れた。
「な、なんだ?」
「あ、マスター敵襲だよ~。」
「ですねぇ~。」
いや、のんびり言ってないで迎撃しなさいよ…。
しばらくすると、大きなスノーゴーレムが現れた。
現れたスノーゴーレムは、躊躇せずにこちらに襲い掛かってきた。
豪腕が冷気を纏うことにより、さらなる威力をもって俺に目掛けて拳が繰り出される。
「ふん、雑魚が主に攻撃するとは不届きな!」
カルマがそう言うが早いか、立馬状態から前脚で頭から踏み抜いた。
アイスゴーレムは、ガラガラガランと大きな音と共に崩れ落ちてしまった。
「そこに隠れている者よ、出て来い。さもなくば、その魂を奪い取るぞ?」
カルマが建物の裏側に向かってそう言うと、物陰に隠れていた一人の子供が現れた。
現れたのは雪人族の子供の雪ん子だ。
雪ん子は成長すると、やがて雪女や雪男になる。
「あわわわ、オイラのガーディアンが一瞬でっ!お前達何もんだ!」
クリクリのつぶらな瞳と真っ白な肌、ほっぺが赤く染まった雪ん子が警戒を顕にしてカルマに抗議している。
「おっ父から貰った、大事なガーディアンなのにどうしてくれるんだい!」
「黙れ小僧。お前が襲わせたんだろう?もし主に怪我でもさせていたら…お前は既にこの世にいないところだぞ?」
カルマは、そんな子供相手にも容赦なく睨みながら話しかけた。
なんと言うか、ちょっと大人気ない…?
「あんまり虐めてやるな。君、ここの村の住人かい?」
「んん、おっさんは怖い感じがしないな。オイラは、ヒョウっていうんだ。そう、ここに住んでるんだよ。」
「驚かせたなら謝るよ。しかし…、君以外の人はいないのか?」
そう聞いてみると、カルマとの対応の落差であっさり警戒を解いてくれたヒョウは、今この村で起きていることを説明してくれた。
氷の精霊の眷属でもある彼らは、寒さにはかなり強いが流石に食べ物がないと生きていけないらしく、比較的寒さの弱いこの地域に住んでいるらしい。
それが2週間ほど前から急に寒気が強まってしまい、食べ物がほとんど取れなくなってしまったらしい。
困った村人達は、別の村に食料を分けてもらいに行くと言って出ていったらしい。
数日あれば近くの村に行けるはずなのに、未だに帰ってこないのでとても心配していると話してくれた。
ちなみに、さっきのアイスゴーレムは大人がいない間に何かに襲われたら使うといいと言って父親が置いていったものらしい。
さすがに壊したものを元に戻せないので、諦めてもらうしかないが…。
「ちなみに食料と言ってたけど、何を食べるんだ?」
「えっと、普通のものだよ?獣の肉とか、植物とかなんでも。ただ、焼いたりに煮たりするものはあんまり食べないかな。」
なるほど、火が通ったもの以外なら食べるということか。
ならば…。
「じゃあ、魔物の肉とかも食べれるのか?」
「え、勿論だよ!というか、魔物の肉なんて滅多に手に入らないからごちそうなんだ。食べたくても食べれないよ。」
それならば、さっき倒したハーピー数体がストレージに入っている。
まだ解体していないけど、獣の肉を食べてるならそれくらいは可能だろう。
「じゃあ、これをやろう。お詫びじゃないけど、少しは腹の足しになるだろう。」
そう言って、ハーピーの遺骸を取り出した。
「わぁ、これはハーピーかい?昔おっ父が捕ってきてくれた事があるけど、すごい美味しかったんだ。ありがとう!これだけあれば、少しは持ちこたえれるよ。」
「そうかそうか。しかし、なんで寒気が強くなったんだろうな…?」
「良く分からないけど、おっ父は山の神様がお怒りになっているとか言ってたよ。」
山の神が何かしているんだろうか。
でもLBOの時には山の神なんていなかった気がするけど、この世界にはいるんだろうか。
『主様、ここらの精霊に聞いたら教えてくれました。どうやら氷の大精霊が暴れているようですね。』
「それは何が原因なんだ?」
『…どうも、何者かが神殿に侵入して氷の大精霊の依り代である【永久氷晶】を破壊してしまったようです。』
「一体誰がそんな事を…。」
『それは…どうやら、ニンゲンのようですね。多分王国から出ていった冒険者達ではないでしょうか?』
ニケが精霊達から聞いた話によると(聞いたら愚痴のようにペラペラと喋ってきたらしい)、1か月くらい前に数人の人間たちがやってきて【氷の神殿】の攻略に挑んだらしい。
かなりのハイペースで進んでいたらしく、3日で神殿の表側のダンジョンを攻略してしまった。
そのあと、隠された地下への道を見つけて隠し通路を進んで最下層まで踏破し、ついには地下の隠し祭壇まで見つけてしまったらしい。
そのあとは、先ほどの話と一緒で氷の大精霊の依り代を破壊して、その【永久氷晶】を回収して去っていったようだ。
そのあと依り代を失った”氷の大精霊”が暴走して寒気をばら撒き辺りに甚大な被害を出しているという事だった。
「じゃあ、依り代があれば収まるのか?」
『そうなりますね。ですが、難しいかと。なにせ永久氷晶じゃないと依り代にならないのですが、それがあるのはこの大陸で一番高い山である【ノーガス大山脈】の天辺にあるのです。時間がない今は取りに行くのは厳しいかと。』
ニケの言う通り、このまま山脈まで行って取りにいったとして戻ってくるほど時間の余裕はない。
「そうか…。確か山脈はここからだと東側か。高さを考えなければ通り道にもなるか。」
「マスター!まさか、山脈の頂上行く気?あそこは”フロストドラゴン”の縄張りだよ?さすがの私達もあいつらを言う事聞かせれないよ?」
”ドラゴンロード”であるヘカティア達は、下位の竜族を従わせることが出来る。
大抵のドラゴンは服従させる事が出来るらしいが、特殊な個体や固有の種族は難しいらしい。
フロストドラゴンはそのどちらにも該当する固有種で、普通のドラゴンよりも細身で綺麗な氷のような鱗に覆われていて、吹くブレスは冷気のブレスだ。
魔法も高位のものを使ってくるので、単体でもかなり強い。
だからといって、このまま放っておいたらこの地域は壊滅的なダメージを負うことになりそうだ。
帰りの事などを考えると、このまま放置は出来ない。
「なあ、ヒョウ。ここらで採れる特産品みたいなのは無いか?」
「んー、氷属性を持っている木材の【氷樹】とか、常温でも溶けにくい【氷晶】とか?…あ!あとはね、魔都でも人気の”一角雪ウサギ”の毛皮とかもあるね。うちの村でも結構街に卸したりしてたんだよ。俺も良く手伝っているんだ。」
えっへんと、胸を張って偉ぶっている姿は微笑ましい。
見た目通り、まだまだお子様らしい。
なるほど、どれも西の大陸【ウルガイア】では見たことないものばかりだな。
いい商材になりそうだ。
これなら、救う価値もあるかもしれないな…。
LBOでは商売とかしてなかったから特産品とか気にしてなかった。
けど、現実世界でもあるこの【アストラ】で生活していくなら、ユニオンも作ったことだし商売の事も考えた方がいいだろうと思った。
「よし、俺はユートって言う”流れの商人”なんだが、この寒気をどうにかしたら今の言った特産品を俺に安く譲ってくれないか?」
「うえっ!?そんな事出来るのか?!やってくれるなら、是非もないよ!」
「よし、商談成立だな。原因はそこらの精霊から聞いたから分かった。解決までは1週間くらいかかるが、耐えれそうか?」
流石に、そっちを優先してランクアップを失敗するわけにもいかない。
だが、行きがけに永久氷晶を取ってくるくらいの余裕ならあると思うので、先に手に入れといてクエストが終わったら氷の神殿に潜るつもりだ。
「1週間か…。みんながどうなっているか心配だけど、どうせオイラにはどうにも出来ないよ。それにこの食料があれば1週間くらいならオイラは平気だよ。頼むよ、なんとかしてくれよ!」
「よし、分かった。じゃあ、終わったらここに知らせに来るよ。」
「うん、よろしくな!」
ヒョウと再会する約束をし、俺らは先を急いだ。
色々と急がねばならない。
気になるのは、わざわざ氷の大精霊を暴走させる行為に及んだ、ニンゲン達だ。
王国から追い出されたとはいえ、わざわざそんな事をする理由が分からない。
あまり良い予感はしないのだが…。
とりあえず次の目的地は、【ノーガス大山脈】だ。
目的は、もちろん永久氷晶を手に入れる事だ。
さっき話をしていたフロストドラゴンとはやり合うつもりは無いが、いざとなればやるしかないだろう。
戦力的にはさして問題ない。
テイマーとしては、狙っている相手じゃないのに倒すのは忍びないが致し方ない。
障害となるのであれば、それしか方法は無いのだ。
ニケに乗っかり山頂を目指す。
近づくほどに吹雪が激しくなり、視界が真っ白になって殆ど前が見えない。
頼りはニケとカルマの探索能力のみだ。
「マスター、ずっと真っ白で何も見えないよぅ?」
「しかし、さすがニケさんとカルマさんですね。私達ではまともに頂上を目指すことすら困難です。」
へカティアとディアナは、逸れる恐れがある為に一緒にニケに乗っている。
二人くらい増えても大してた問題じゃないのだが、カルマに乗らないのは苦手意識が残っているからだろう。
カルマも分かっているようで、特には口を出さなかった。
「主よ、この先に強い魔力を感じます。恐らくはフロストドラゴンかと。」
「やはりいるか。回避出来そうか?」
「…難しそうですね。奴等の巣に例の【永久氷晶】があるようです。」
そう言われてよく見ると、ドラゴンらしき影を照らす強い光を放つ何かが見えた。
恐らくはあれが永久氷晶だろう。
「あれを取るとなると、戦闘になりそうだな…。」
「マスター、従属させることは無理だけど交渉する事は出来ると思うんだ。」
「そうですね。やる価値はあるかと。」
双子が珍しく戦わない方法の提案をしてきた。
これに乗らない手はない。
「そうしてくれると助かる。面倒な戦闘は避けておきたい。」
「分かりましたマスター。」
「うんうん、こう言う時くらいは役に立ってみせるよ。あ、念の為に竜玉を出しておいてね。」
そう言うと、二人はニケから飛び降りて竜化した。
突如として現れた眷属とは違う竜の登場に、あたりのフロストドラゴンが警戒する。
『何者だ!ここが我等の住処と知っての行動か?』
フロストドラゴンのリーダーらしい、一際大きな個体がふわりと飛び上がり俺らの行く手を阻む。
『我らは皇竜の娘、竜姫ディアナとへカティアだ。』
『我らはこの地を治める大精霊の暴走を止める為にやって来た。』
双子がいつもとは違う雰囲気で話をする。
金と銀のドラゴンロードが、他のフロストドラゴンを威圧しながら、目の前のリーダーらしき竜に話し掛けた。
『お前がここの長か?力あるお前なら今の現状を把握しているのだろう?』
『あの氷の精霊を止める為にはそこにある永久氷晶が必要だ。それを我らに託せ。』
さらに魔力を込めて相手にプレッシャーを与える二人。
しかし…
『何を言うかと思えば、魔王の手に堕ちた裏切り者達ではないか。竜族の恥晒しが偉そうに何を言う。この暴走騒ぎもどうせお前たちの仕業だろう。どうしても欲しいのであれば、力ずくでも奪っていくがいい。出来るものならな。』
そう言うと、フロストドラゴンのリーダーがクオオオオオオオオンと鳴き声を上げた。
すると、あたりにいた20頭ほどのフロストドラゴンが飛び上がり俺等を囲んだ。
『愚かな、我らに刃向かえばタダでは済まないぞ?やる気なのか?』
『ふん、魔王の手に落ちる愚か者など恐るるに足りん。そちらこそ、このまま帰れると思うなよ?』
相手は既にやる気だ。
しかも相手は20体だし、正直かなり旗色が悪いな。
相手を生物鑑定してみると、
フロストドラゴンロード 種族:氷竜王 ランクSS HP:4200
フロストドラゴン 種族:氷竜 ランク:S HP:2200
レッサーフロストドラゴン 種族:氷竜 ランクA+ HP:1200
ロードが1体、ノーマルが10体、レッサーが9体という結果だった。
全力戦なら勝てる相手なんだろうな。
…俺が途中で死ななければだけど。
そう考えていたら、ニケが光りだした。
『ディアナ、主を預かって下さい。傷1つでも付けられたら、後でお仕置きですからね?』
そう言うと、俺はディアナの背中に投下された。
「うおおいっ!やるなら先に言えーっ!」
『わわわっ、ニケさん無茶ぶりが過ぎます!!』
辛うじて、背中で受け止められた俺はすぐにディアナの魔力障壁に守られて、攻撃してきたフロストドラゴンの攻撃を難なく弾いてくれた。
「ったく!発動〈アニマブーストⅣ〉!こうなったら、格の違いを見せてみろ!」
「「承知!」」
二人は既に力を解放し、大精霊の姿になっていた。
二人が真の姿を取り戻してから初めてのタッグだな。
正直、年甲斐もなくワクワクしている。
そして、二人によるフロストドラゴンとの戦闘が繰り広げられるのだった。
いつもご覧になって頂いている方、本当に有難うございます。
評価やブックマークが増えていくと、皆様に応援されているようでとっても励みになっています。
本当に有難うございます。
これからも、楽しく書いていきますので、是非一緒に楽しんでいただければと思います。
今回、王城のパーティの様子を書くことが出来なかったので次回に盛り込みたいと思います。
次回も気合入れて書くのでお楽しみにしてください。
では、宜しくでお願いします。
次は、平日に更新の予定です。




