カイト達のランクアップクエスト!(ミラ&アイナ&ザイン編)
ランクアップクエストはミラの番。
果たして、リッチロードを一人で倒せるのか?
「ここを乗り越えて、私も次のランクに上がるのです!!みんなの為にも、自分の為にも!」
ここに、ミラとリッチロードのガチンコバトルが繰り広げられる!
ミラはまず精神阻害系を防ぐのに、精霊魔法スピリットガードを使った。
実は、属性魔法を使うために精霊術も上げていたのだ。
そのため、攻防一体のソーサラーとなった。
但し、それでも物理攻撃に強くなったわけでは無いので、物理攻撃も強いリッチロード相手では、まともにやりあうと負けてしまう事は必須だ。
なので、一定距離を保ちつつ攻撃魔法を繰り出す。
「フレイムウィップ!」
中位炎系魔法を繰り出す。
一撃の威力より、手数を稼いで被弾を出来るだけ少なくする作戦だ。
ククククククッ……
リッチロードは不敵に笑い声をあげてミラを挑発する。
少しイラッとしたが、その手には乗らないと敢えて少し離れてからさらに魔法を繰り出した。
「ファイヤーボール!…燃え尽きよ!フレア!!」
ファイヤーボールを目眩ましにして、高位魔法を素早く発動して追撃した。
グガガッ!と怒りを顕にするリッチロード。
反撃とばかりに、ミラのいる地面に向けて魔法陣を展開する。
その紋様から当りをつけて、すぐさまに回避をするミラ。
今までいた場所に黒い槍が生えていた。
「シャドウジャベリンとか、エゲツないんですよっ!マジックブラスト!」
そういいながら、無属性魔法で反撃しダメージを重ねていく。
まだまだリッチロードは倒れる素振りは無い。
「流石に硬いな。あれだけ直激して、びくともしていない。」
「魔法に耐性が高いからな、長期戦は止む得ないだろうさ。ミラを信じるしかあるまい。」
カイトとザインがミラの戦いを見てそう話をしていた。
周りの敵は既に殲滅済みだ。
普段どおりなら30分は出てこないだろう。
このまま、終わるまでは出ないで欲しいと誰もが思っていた。
「スキル〈魔導の極み〉!…さあ、本気でいきますよ!」
ミラの周りに複数の魔法陣が浮かび上がる。
スキル〈魔導の極み〉は魔導師スキルの一つで、詠唱省略、即時発動、連続魔法と魔法使いなら誰もが憧れる内容だ。
但し、発動するとMP消費が1.5倍に上がるうえに、発動時にもMPが消耗する諸刃の刃だ。
「速攻なのです!スタンフィールド!ライトニング!フレア!」
グオオオオオオ…とリッチロードは連続で魔法を受けて呻き声をあげた。
進行阻害、中位雷魔法、高位火炎魔法の3連魔法で相手を動けなくしつつ、高威力魔法を重ねていく事で、次への布石を投じた。
そして…
「〈魔導融合〉!トニトロスをインフェルノに融合!!…奥義〈トールハンマー〉!」
なんと、ミラは最高位雷魔法と最高位炎魔法をスキルによって融合させて発動した。
まるで生き物のようにリッチロードにまとわり付き、雷と炎で焼払いながら、龍のように上昇したかと思うともう一度リッチロードに落ちてきた。
その結果、リッチロードは〈トールハンマー〉により黒焦げを通り越して灰になり、消滅した。
「なんだそりゃあ…」
と、初めて見た魔法にダンも口をあんぐりさせていた。
「あはは、成功した!やったよ!奥義かんせ…い。」
今の魔法でMPが無くなったらしく、ミラもそのまま倒れた。
「ミラ!」
と、いち早く気がついたザインが倒れるミラを抱き起こし、すぐさまMP回復ポーションを飲ませた。
「あはは、頑張りすぎちゃったかな?」
「お前はいつも頑張りすぎだ。だからこそ、こんな事をやり遂げるんだな。おめでとう、クエストクリアだぞ!」
そういって、ザインに褒めれれつつも祝福されて少し照れ笑いするミラだった。
MP回復後すぐにミラは復帰し、ここからはボス討伐へ向かう事になった。
目的は、件のボスである"迷宮の番人ミノタウロス"だ。
ユートから肉を持って帰ってきてと言われているので、どちらにしろ倒す予定だった。
前来た時は厳しかっただろうが、今のカイト達なら問題無く倒せると確信はあった。
「さて、ステーキ狩りに行こうか!」
「「了解!」」
カイト達は陣形を組み直し、先に進むのであった。
───
ユート達は、神殿での目的を終えて地上へ戻ってきた。
ニケは、魔獣の姿に戻り全員を乗せて王都へ向かった。
”ファルコニアロード”になったニケだが、白い大きな翼が一対増えて、4枚の翼で飛んでいる。
体が一回り大きくなったが、翼をしまう事も元の大きさの体に戻ることも出来るようだ。
「高位の魔獣とか悪魔って、そういうところ便利だよな。偽装に近いのかな?」
『そうですね。種類にもよると思いますが、大体は出来ます。主様、高位ダンジョンに行くときは気を付けてくださいね。偽装した魔物が普通にいますから。」
なるほど。
LBOのときに、見た目よりかなり強い奴に遭遇する事があったので、そういう事だったのかとその時を思い出しながら頷いた。
もうすぐで日が落ちるので、王都へ着いたら一泊しようという事になった。
魔獣のままだと色々と都合が悪そうだったので、ニケにも人型になってもらい一緒に宿に泊まることにした。
ニケに予備をフードを被せて、宿屋へ向かう。
その途中で面白い物を見た。
【冒険者カイトとダンが数年ぶりのSランク冒険者となる。仲間と共に王から受勲パーティに招待される!】
というチラシが配られていた。
とっても大げさに書いているが、勇者がSSランクになったのが5年前だと言っていた。
それ以降にSランク以上になった者は居ないという事だったので、既にお祭り騒ぎとなっていた。
ん、でも…ガントの師匠のマリエルはSランク鍛冶屋だよな。
それよりも前にSランクなってたとしたら、若すぎる気がする。
だとすれば、相当の天才だと思うが何かありそうだな。
今度それとなく聞いてみよう。
「主様は、このパーティーには出ないのですか?」
人型になったニケが聞いてきた。
「ああ、どうだろうかな。タイミング次第だが、どうせ俺のランクアップの時にやってくれるだろうし、カイトのにわざわざ出ないでもいいさ。面倒だし。」
「マスター最後に本音が出てるね。ディアナ。」
「うん、確かにああいうのは面倒よね。へカティア」
王族とパーティーなんて、考えただけで面倒だ。
きっとカイト達も同じ気持ちかもしれないが、当事者が断るわけにはいかない。
そうなると後で必ず俺も呼ばれることになる(予定)ので、敢えて出る必要はないと考えていた。
「さて、酒場で飯を食べよう。お城のパーティーほど豪華なものは食べれないけど、酒場で頼めるものなら好きな物頼んでいいぞ~。」
そう言った瞬間に、双子の目の色が変わった。
「わ、私はお肉を所望します!分厚くておいしいやつ!」
「ディアナずるい!私もそれがいい!さ、早く行こうマスター!」
双子に手を引かれて、俺とニケも酒場へと連れていかれた。
酒場の中では、さすがにフードを被せたままには出来ない(逆に怪しい)ので、ニケは精霊魔法で視界を阻害する結界を自分の周りに展開して、注目を浴びないように細工していた。
そのまま、酒場に入り4人で飯を食べた。
双子はすぐに肉を頼み、そのあとも結構がっついてた。
ニケも同じくお肉を食べていたが、なかなか優雅な仕草で感心するほどだった。
俺もビールを飲みながら、肉とポテトを食べていたが何故か絡んできた奴がいた。
この街の警備兵らしいが、何か用だろうか?
「おい、おっさん!若い女連れていい気になってんじゃねーぞ!オレ様が可愛いがってやるから、一人よこしな!」
うーん、言ってる意味が分からんな。
良く見たら顔が赤い、酔っぱらいか。
つか、このモノ扱いな言い方を実際されるとカチンとくるな。
「なんだ若僧。相手見て物言えよ?」
少し威圧を掛けながら話し掛ける。
しかし、なんの冗談か分からないがニケを見てニヤけた面に変わり、この女でイイとか言って連れて行こうとした。
流石に頭に来たので、首根っこを掴まえて放り出してやろうかと考えていたら…。
「オジサン、うるさいんだけど?」
「そうそう、相手見て言って欲しいんだよね?」
双子がその男の腕を掴んだ。
メキメキメキッと音がしそうなほど強い力で握られた男は、うぎゃあっ!と悲鳴をあげる。
その手をなんとか振り解いてから双子を睨みつけて、さらに因縁をつける。
「て、てめぇ。Aランクの俺にこんな事をしてタダで済むと思ってるのかっ!?」
男のプレートを見ると確かにAランクのようだ。
なるほど、しばらくSランクを輩出していないとなると、Aランクが幅を効かせるようになってくる訳か。
だが、絡む相手を間違ったな。
「はぁっ?たかだかAランクくらいで、偉そうにしないで欲しいんですけど?」
「本当ね、へカティア。うちのマスターは、Sランクだと言うのに…。」
「はあっ!?何言ってるんだ!Sランクのおっさんなんて居るわけねーだろ……え、はぁっ?!」
取り敢えず、面倒なので俺のプレートを見せてやる。
ギルドのプレートは特殊なものなので、複製したり、偽造したりは出来ない。
なのにだ…。
「そ、そんなん偽物だ!おい、てめぇ、犯罪だぞ?いーのか?チクったら、パクられるぜ?」
そんなやり取りを聞き付けて周りに冒険者が集まってきた。
みな、ユートの事を知らないので男の言う事を半分ほど鵜呑みにして、やっちまえーっとか、ボコボコにしちまおーぜとか勝手な事を言っている。
そんな様子を、じっと我慢するかのように耐えていたニケだったが…。
ついに我慢の限界を超えたようだ。
バンとテーブルを叩いた後、すくっと立ち上がって声荒げて言った。
「いい加減にしなさいっ!下がれ、下賤な者共。我が主をこれ以上愚弄するのであれば、この場で消し炭にしますよ?」
ニケがその美しい顔で飛びきりの笑顔の上に青筋を立ててキレていた。
ニケの周りには漏れ出た魔力が雷となってパリパリ言っている。
勘のいいやつは、やべぇっ逃げろっと、すぐ逃げようとしたが時既に遅し。
放出した電撃により、俺らと店員以外の全員が放電に直撃しその場で感電して失神するのだった。
「ふう、これで少しは静かになるでしょう。」
と、スッキリした顔で食事を再開するのだった。
数分後に意識を取り戻した冒険者達は、触れてはいけない相手に喧嘩をふっかけたと悟り、その場で土下座したのだった。
その日のうちに、何故かユートというおっさんが連れている美女たちがヤバいから手を出すなと、知れ渡る事となった。
その日は、双子が一部屋、俺とニケが一緒の部屋で泊まることになった。
ニケは私は寝る必要が無いんですけどねと言っていたが、寝れないわけじゃ無いみたいなので、ベッドで寝るように言った。
「主様…折角ですから、夜伽でも致しましょうか?」
と言われた時は噴き出したが、丁重にお断りした。
目の前に、女神のような美貌とスタイルを完備した存在がそんな事を言うなんて露にも思わなかったので、一瞬グラついたが今後の関係性を考えるとOK出来るわけがない。
未練なんか、無いったら無い!
…タブン。
翌朝、すぐにギルドに向かった。
艶めかしい姿をしたニケがベッドに転がっていたが、何もしていない。
本当にしていないよ?
ギルドに到着すると皆が忙しいそうに働いていた。
とうやら、カイト達のクラスアップの準備が忙しいらしい。
取り敢えず、ドルガーはいるかと聞いたら訝しげに聞いてきたので、プレートを見せて催促する。
職員は慌てて、奥にドルガーを呼びに行ったようだ。
「なんだ。用事はもう終わったのか?で、クエストを受けに来たか?」
「ああ、そんなとこだよ。ランクアップクエストを受けたい。手続きしてくれ。」
既に準備が出来てると言うことで、早速奥の部屋に通して貰った。
「その前にだ、その女何もんだ?さっきからヤバい感じがビリビリ感じられるんだが?」
「んー、あんたには隠してもしょうがないか。名前はニケ。嵐の精霊だよ。」
「な、精霊だと?お前精霊術師だったか?」
「いや?スキルはあるけど、本職は動物調教師さ。成り行きで、飼ってたペットが進化して精霊になっただけだ、気にするな。」
「いや、従属動物が進化とか聞いたことないぞ?どうやったんだ。」
ドルガーには珍しく、驚きの表情を顕にする。
確かに、LBOのときにペットが進化したり種族が変わったりするなんて聞いたことはない。
ニケやカルマがそうなったのは世界の統合に関わる部分なので、さすがに説明出来ない。
なので。
「そんなの、…企業秘密に決まってるだろ。まぁ、俺も聞いたことない事については同意だ。そうなるとは思ってなかったさ。」
「確かに、そんな事を公にしたら大騒動が起こるな。秘匿するのが一番か。まぁこれからSSになるんだ。とんでもないヤツを連れていても、可怪しくは無いかもな。安全なんだろ?」
それよりも見た目が人間なだけの人外が、王都で暴れたらそれこそ大事件だ。
そっちの方が気になる様だった。
「ああ、問題ない。万が一、暴れるような事があった場合は俺が止めるさ。」
「それならもう何も言わん。本題に入ろうか。まず、これがランクアップクエストのプレートだ。見たことはあるだろ?」
「ん?こんなのだったか?ああ、カイトの時もこんなのだったな。」
「Sランクなのに、なんで知らないんだ?わかっているとは思うが失くすなよ?これもアーティファクトの1つらしいからな。」
なんでも、古来よりランクアップクエストのクエスト書はこの特殊なプレートを使うらしい。
というよりも、これを元にクエスト書が作られたんだとか。
「これで受けたクエストが達成された状態になった場合だけ、ランクアップを受けれる。達成したら儀式は隣の教会で行うから、終わったらすぐギルドに連絡して来い。こっちにも準備があるからな。」
「ああ、分かったよ。取り敢えず内容確認したらすぐに出発したい。すぐにやってくれ。」
「ふん、そんな簡単な内容じゃ無いぞ?クエスト内容を見て諦めた者が過去何人いたか…」
「俺は諦めないよ。そういう性格なんでな。」
俺に諦めるという選択肢は無い。
この世界で生き抜く為には、これだけは達成しないといけない。
既に覚悟は決まっている。
「どっちかというとだ、対象の敵よりも場所が問題になる事が多い。」
「場所が?そんな辺境地に行かないといない奴が対象なのか?」
正直言って、この大陸で行けない所は俺には無い。
だから心配はしていなかった。
「こっちに来い。」
そう言うとドルガーは、クエスト発行するためのカウンターまで俺を連れてきた。
そこでプレートを置き、俺に判定の水晶に触れさせた。
カッと光り、それと同時にプレートも光りだした。
「よし、うまくいったな。だが、本当に条件を満たしているとは、見掛けによらん奴だな。」
「軽く失礼な事言われている気がするが、褒め言葉と受けとくよ。」
光が収まった後に、文字が刻まれたプレートを渡された。
そこに、クエストの内容が刻まれていた。
「なっ?!おい、ここに書かれてる場所、東の大陸じゃないのか?」
「ああ、そうだろうな。俺も遥か昔に受けようとしたが、それが原因でクエストを達成出来なかった。」
そこに書かれていのは以下の通りだ。
<ランクアップ条件>
場所:【幻夢の森】
依頼対象:SSランク 幻龍を1体テイムを成功する事。(テイム完了時点で達成)
条件:一人で達成すること。
報酬:金貨1000枚
期限:7日間
「ほう、幻龍か。またレアなモンスターだな。大陸に到着する事すら難しいのに、7日で見つけてテイム成功か。達成したら色んな意味で偉業だぞ?カッカッカ!」
「他人事だと思って、楽しそうにしているな。しかし、受けてしまったからにはやるしかないか…。」
「お前、東の大陸は魔族領だぞ?しかも、真っ直ぐは向かえない。大体良く【幻夢の森】を知ってたな。行ったことあるのか?」
「ああ、あるさ。というより、全ての大陸を制覇したよ。」
「な、まじか?そんな奴、勇者かそのパーティメンバーくらいだぞ?まさか…」
「違う違う。ユートという名前も俺の名前だし、勇者には会った事もないよ。」
「そうか…そうだな。あの時の生き残りはサニアのゼオスただ一人だ。まして、テイマーなんてサポート職なんて、居なかったしな。」
どうやら、勇者メンバーの生き残りがいて、偽名でも使って生きてたのかと思ったらしい。
それくらい、Sランクしかもランクアップ出来るほどの人間は、もう殆ど居ないらしい。
「そういえば、うちの執事に聞いたんだが、ここ最近に高ランク冒険者が結構登録されたって聞いたんだが?」
「!そいつは、それを何処で聞いた?」
「町の噂話らしいが。」
「ちっ、かん口令布いてたのに、筒抜けだったか。大方王都に来ていた商人あたりだな、全く。いいか、これはお前にだから言うんだからな?」
言外に、もうギルドと縁は切れない仲だからと言いながら、教えてくれた。
どうやら、ゼフの言うとおりに突然現れた冒険者が軒並み高ランクであったため、魔族の使いじゃ無いかと疑われ一悶着あったらしい。
その為、王都には居着かずにすぐに旅立ったようだ。
「多分、中立地帯がある北の大陸か、比較的緩い南の大陸に行ってるだろうよ。」
「ちなみに、SSはいたか?」
「そんな化け物いたら、野放しにするかよ。なんとしても懐柔して残らせるだろうよ。」
「それもそうか。歩く最終兵器だもんな。」
「変な言い方する奴だな…。だか実際にいたらそうなんだろうな。」
ちなみに、カイト達のときもかなり話題になったらしいが、余りにも人が良いのと要領が良くなかったようで、すぐに疑いが晴れたらしい。
逆に居心地が悪くなって、サニアに来たんだろうな。
「じゃあ、Sランクは居たか?」
「…ああ、居たよ。何というか戦闘狂みたいな奴で、仲間も相当な奴らだった。大体、そいつの行動がヤバかったから問題になった様なもんだ。聖女様が居なかったら、俺も死ぬとこだったよ。」
な、そいつらと戦うまで拗れたのかよ。
相手もそうだが、大人げないな。
だけど、そのパーティだけは保護する必要はなさそうだな。
酒も普通に飲んでたらしいし、成人はしてるんだろう。
流石の俺も、そんなヤバい奴らと一緒に居たくないしな。
「わかった、情報有難う。そういう野良冒険者の若いやつで、路頭に迷いそうな奴がいたら俺の屋敷を訪ねるように言ってくれないか?」
「なんだ?慈善家には見えないが、目的があるのか?」
「ああ、同じ故郷から来た迷子の可能性があるんだ。成人しているのはほっとくけど、未成年の場合は保護してやりたい。」
「ふーむ。そうだな。だが、戦力が偏るのはギルドとしても好ましくない。お前がSSになったら手配してやるよ。」
どの冒険者もランクB以上であったため、1つのユニオンにそんな戦力が集まれば途轍も無い勢力となる。
ギルドとしては、手放しに許すわけにはいかないようだ。
なので、暗に儀式で王族と繋がりをもたせるとそう言っているのだ。
「…分かった。すぐに達成して帰ってくる。それまで、カイト達のこと頼んだな。」
「おうよ。あの坊主達はしっかり見とく。だから、必ず生きて帰ってこいよ。」
「ああ、戻ったら一杯やらうぜ!あ、マーズさんもな!」
調子に乗るなと小突かれたが、案外仲良くなれそうだ。
マーズさんも困ったように微笑んでいた。
「ニケ、一旦屋敷に帰るぞ。へカティアとディアナは街でカイト達を待っててくれ。多分明日には戻ってくるはずだ。」
おれの言葉に三人共頷いた。
「分かりました、マスター。」
「カイト達には、私達が伝えるね。」
双子は、素直にそう言って俺とニケがギルドを出ていくのを見送った。
街の外に出てから飛んでいくのは時間が勿体なかったので、その場でニケを変身させて出発する事にした。
ドルガーにも許可を貰い、ついでにニケの姿を見せてやった。
「はははっ、こりゃあスゲーな。伝説の魔獣じゃねーか。」
「ああ、そうだったな。【ファルコニアロード】っていうんだ。格好良いだろ?」
ニケは俺を乗せると大きな4枚の翼を広げ飛び立つのだった。
その後、見たこともない大きな魔獣が現れたと街中騒ぎになり、騒ぎを収めるのに苦労したらしいが俺の知るところではない。
───
カイト達は、あの後無事に【迷宮の番人ミノタウロス】を倒していた。
Sクラス二人にAクラスでもトップレベルのソーサラーが本領を発揮すれば、いかにボスのミノタウロスでも立ち打ちは出来なかった。
さらにもう一つ…
「やった、やったよカイト!クエストクリアしたよ!」
アイナが珍しく興奮気味に叫んだ。
なんと戦闘中にランクアップクエストを達成したようだ。
アイナはここまで被弾しないように細心の注意を払い、ダンとカイトが少しでもHPが減ったら回復アイテムの包帯を使っていた。
お陰で大したダメージを残さずに万全な体制で戦うことが出来たのだった。
ザインも回復をしていたが、ミラにも回復をしていたので意外と時間が掛かっていた。
「おめでとうなのです、アイナ!これであとは、ザインだけだね。」
「ええ、有難うミラ。ザインがミラをしっかり回復してくれてたから、集中出来てた分、早く終わったわ。」
二人は、戦場にいるのにも関わらず手を取り合って喜びを顕にしていた。
ザインも苦笑いしていたが、あとは自分だけだと思うと焦りよりも安堵感の方が強かった。
「ぬ…。主が街についたようだ。ザインとやら、早く終わらせるぞ。」
ニケから、街に入った事が分かるサインが送られてきた。
そうなると、次はランクアップクエストとなるので早く戻ってユートと合流しないといけない。
「俺としても、早くしたいのはやまやまなんだけど、高位回復を十回連続って厳しいんだよ。包帯でも可能なのがせめてもの救いだけど。そもそもHPが減ったSランク以上の相手に回復しないといけないんだ。」
「なに、案ずることはない。要は減らせばいいのだろう?我に考えがある。」
そう言って、カルマは真っ直ぐポータルゲートへ向かうのだった。
───
へカティアとディアナは、ユートを見送った後に街へ繰り出した。
前回来たときは屋台に立寄ったくらいで、あまり街の中は見れていない。
ユートの護衛で来ているのに離れる訳にはいかないからだ。
それが与えられた役目なので全く異論も不満も無いが、折角時間が空いたのならと二人で服屋などを回っていた。
二人はまともな人間の街に来るのは数十年ぶりだった。
前に他の人間の街に訪れたのは戦争に駆り出された時で、既に戦禍に巻き込まれていたため、ここまで綺麗な街に来たのは初めてかも知れないというくらい記憶に無かった。
「さすが、王都だけあって綺麗ね、へカティア。」
「うんうん、こんな綺麗な人間の街に来たの初めてかも、ディアナ。」
二人はどこか嬉しそうに、そして楽しみながら散策する。
二人の容姿はとても目立つので、予めユートが用意したケープを纏っていた。
「こうやって、自分で買い物するのも楽しいわね!へカティア。」
「うん、楽しいね。そういえば魔王城にいた時、あんまり買い物行かなかったね。」
「そうね、そう言えば滅多に出歩かなかったわね。」
「あんまり、あそこの街は活気が無かったし、いいもの無かったし。」
「確かに…そう考えると、こちらに来てからマスターのお陰で楽しい事ばかりね。」
「なんだかんだ言っても、我侭を結構聞いてくれるし、遊んでくれるし。」
「マスターに従う様になってからは、あちこち出掛けられて退屈しなくなったわ。」
「魔王遊んでくれないし、ケチだし、寝てばっかりだし。」
「ほんと、あの人は何をしたかったんでしょうね。」
「ほんと、なぞっ!あ、これ見てディアナ。あの子に似合いそうじゃない?」
そう言うと、腰の上に大きなリボンが付いた水玉模様のワンピースが売っているをへカティアが発見した。
「あら、可愛いい。これならきっと似合うわね。」
「でしよ?これくださーい!」
ユートは、二人にもちゃんとお金を持たせている。
理由は力づくで物を盗んだりしないようにだ。
元の育ちはとてもいいが、自分で物を買ったこと無いとかだったりすると色々とまずい。
そこで社会学習として、買い物を自分でさせていたのだ。
案外頭の出来がいいので、すぐモノの相場とか金貨の価値とかを理解していた。
値切り交渉しているのを見て、ユートが感心するほどだ。
二人は商才も有りそうだし、いつか手伝ってもらおうかなとユートは二人に話をしていた。
いま買ったのは、実はリンの服だ。
二人がユートに従属した日にすぐ懐いたのはリンだった。
あれから、まだ日が経って浅いが、そんなリンを二人はまるで年の離れた妹の様に可愛いいと思っている。
「これお土産にしたら、きっと喜ぶわ。」
「うんうん!あの子の笑顔好きなんだよね。太陽みたいで。」
リンのキラキラ輝くような笑顔は色んな人を惹きつけていく。
シュウも、ユートも、そしてまだ出会ったばかりのディアナとへカティアも。
「あ、あっちはアクセサリーだって!」
「じゃあ、次はどっちが似合うものを見つけるか勝負だよ!」
「いいわね!じゃ、よーい、スタート!」
二人は、はしゃぎながら買い物を楽しむのだった…。
───
「おおっし!終わった!終わっだぞカイト!」
興奮したザインがガッツポーズでカイトに笑顔を向ける。
ちょっと老け顔なので、似合わないなとは、決して本人には言えない。
しかし、これで全員クエストを達成することが出来た。
これでやっと帰れる。
「ひとまずは、王都へ帰ろう。また例の儀式があるけど、それは明日にして欲しいな。」
「どちらにしろ、帰ったら夜だし報告も明日にして宿に帰りましょう。さすがに疲れたわ。」
ザインもアイナも疲れた果てたようだった。
カイトも賛成し、すぐに帰ることにした。
「主も町に居るはずだ。すぐに移動を始めるぞ。」
そう言って、すぐに召喚ナイトメアを呼び出す。
来るときと同じ割振りで各自乗り込んだ。
「じゃあ、急いで戻ろう!」
既に待ち切れなくなったカルマに苦笑しながら、全員王都へ向かうのだった。
いつもご覧になって頂いている方、本当に有難うございます。
評価やブックマークが増えていくと、皆様に応援されているようでとっても励みになっています。
本当に有難うございます。
これからも、楽しく書いていきますので、是非一緒に楽しんでいただければと思います。
さて、今回でカイト達のランクアップクエストは完了となりました。
次回は、纏めて行う3人の儀式の様子とランクアップクエストの旅に出るユート達を書いて行く予定です。
やっぱり主人公の話を書いていくのが一番楽しいです。
気合入れて書くので次回をお楽しみにしてください。
では、宜しくでお願いします。




