異世界こんにちわ。
ゲーム世界のカルマであり、この世界のカルマでもある。そんな事を突然と言い出したカルマに驚きつつも、どういう事なのかと話を促した。
「つまり、ここはあのロストブレイブオンラインの世界ではありません。ましてや、主のいた世界の“地球”ですらありません」
な、なんだと!でも、やはりゲームの世界では無くなってるのか。
「この世界のカルマが持ってる知識が正しければ、とある光の神と、兄弟神の闇の神が創り出した世界らしく、何かの原因で、この世界と似た世界であったロストブレイブオンラインの世界が重なり、この世界の情報を上書きしてしまったようです」
ん、だんだん話が難しくなってきた…
「なので、今の我は、この世界に生まれて育った悪魔のカルマに、ロストブレイブオンライン上のデータであったカルマの記憶が追加されて出来た存在と言うわけです」
な、なんだそりゃ。ん、それだと、俺はどうなってるんだ??
「俺はどうなんだ?元々、ゲームデータではない俺はどうなったんだ??」
少し考える素振りをしてから、カルマが答えた。
「主は、この世界の魂と存在を持っていますね。しかし、魂の年齢が見た目より遥かに若い。だとすれば、あちらの記憶を持って、新しくこちらで生まれ変わったと言える存在のようです」
「それって、えーと。この世界にゲームスキル持ったまま転生したと言うことかな」
「その理解で概ねあっているかと。ちなみに、姿形は前の記憶を元に作られたようですね」
自分を見透すように、見ながらカルマはそう答えた。
これは、あれか?悪魔だから魂が見えるとかか?こえーな。
いや、それよりも気になることあるな。
「つか、そもそも、なんでそんなに詳しく解るんだ?そもそも、こっちの世界はいいとしても、地球とロストブレイブの事をなぜわかる?」
目をギラッとさせて(そういう風に見えた)、カルマが答えた。
「我は、レアモンスターの中でも、エリアボスという存在でしたので、ゲーム内である権限を持っていたのです」
「ある権限?」
「はい、エリアボスはそれぞれAIによるある程度の自我を持たされており、ゲームサーバー内のデータベースに接続して情報を集めることが許されているのです」
「え、なんのために?」
「恐らくですが、”地球”の言葉で命令を受けたり、会話の応答したりするのに対応するためと、独自クエスト発行する権限もあるので、”地球”の言葉でニュアンスを伝えたりして、柔軟性を高めるためかと」
「なるほどなー、それなら言葉と意味だけならデータとしてなら持っているわけか」
「はい、あとナビゲーションも出来るようにゲームシステムについても、回答出来るだけの情報も持ってました」
「持ってました?」
「はい、今日までに我に蓄積したデータは残ったままですが、今はサーバとのリンクが切れた状態です。なので、今まで検索したことのないデータはわからないのです」
「そっかー、全てと言うわけにはいかないよな。膨大すぎる情報を全個体に持たせるのは無理があるか」
「そうですね。しかし、こっちの世界にはかなり詳しいかと。なんせ、200年は生きているらしいですからね」
「まじか!すげーな。まじの悪魔か。仲間で良かったよ」
そこで、ふとカルマがニケの方を見て言った。
「あやつも、存在としては、同じようなものです。主のスキルを上げればあやつの知識も引き出すことが出来るようになるでしょう」
それって、ニケとも会話出来るようになるスキルがあるってことか!
それは、ロマンだなー。魔獣と会話出来るテイマー。
取り敢えず、現状で聞きたいことはかなり聞けた。
結局、自分は転移してきたのか、転生してしまったのかは分からないが、一つだけ確定したこと。それは、ここはゲーム世界ではなく、歴とした異世界であるということ!
そして、さっき死んでたらそこで終わってたという事実。まじ、危なかった。慎重派で良かったよ、ほんと。
「そう言えば、クロはこっちに来てないのか?てっきり、お前のとこにいると思ったのだけど」
カルマの眷属と化してた、シャドウウルフをキョロキョロと探すが、見当たらない。遺骸もないし、間違って倒した訳ではないようだ。
「クロならここにおりますよ」
カルマがそう言うと、地面に不自然な影が出来て、地面からぬうっとクロが現れた。
ワオオオーン!と雄叫びと共に、クロが現れた。
これで、クロの方は大丈夫だな。あとは、ホワイトファングことシロを探さないと。
「カルマ、シロは何処に行ったか分かるか?」
カルマは、じっと空を眺めてから首を横に振った。
「遠くにいるようで、気配は感じないですね。しかし、あの臆病な犬のことです、見晴らしのいい丘にでもいるでしょう」
確かに、ちょっとびびりなんだよなアイツ。しかし、ほっとくわけにもいかないし、丘の方に探しにいこう。
「よし、シロを探しに丘へ向かうぞ。シロを回収したら、村で休憩とって情報を集めないとだな」
「承知しました。では、我に乗ってください。森を抜けるならその方が早いでしょう」
「わかった、じゃあニケは空から俺らを追っかけてくれ」
クルァァァー!とニケが返事した。多分OKだってことだ。
カルマに、久々に乗って森を駆け抜けたが、するすると木々をすり抜けて森を抜けた。
来るときの半分も時間が掛からなかったので、さすがである。
ちなみに、ナイトメアは鞍を付けれないが、そのかわりに乗ったら黒いオーラに包まれて、しがみつかなくても落ちることがないようになっている。
魔法の力万歳だ。障害物なんかもある程度弾き飛ばす。
どういうわけか、風を感じることは出来るのだが。
そんな事を考えてたら、いつの間にか丘の前までやって来ていた。
さて、探すかと辺りを見回すと、先に着いていたニケが何か咥えてる。
…えーと、シロだな。目を回してぐったりしている。
うん、ちょっと可愛そうだけど、手間が省けた。
レアとはいえ、Bランクの実力しかないホワイトファングでは、Sランク級のファルコニア相手では、ライオンとウサギくらいの差がある。瞬殺だ。
気絶してるシロを叩き起こして(呼び掛けても起きないから、イラッとしたわけでなはい。違うったらちがう。)、念のためポーションを振りかける。
たちまち元気になって、尻尾をブンブン振って、顔をベロベロと舐められた。
クールな、クロと違ってシロは甘えん坊で愛嬌たっぷりだ。
もはや鍛えても主力にはならないだろうが、本当の意味でのペットとして大事にしてきてたので、無事でなによりだ。
取り敢えず、これで回収出来そうなペットは回収した。
フェニックスは縄張りである南の方角へ去って行ったらしいので、今行くのは準備が足りない。
もう少し、装備とか整えないと無理だろう。
ひとまず、村に戻って厩舎に戻ってきた。
カルマを見たとき、かなりひきつった顔をしていたが、撫でられて大人しくしている姿を見て、安心していた。
フレイムキャットのフィアと、カーゴタートルのゲンブの治療は終わったみたいだった。
ステータスの紋章で2匹の状態を確認したら従属状態のままだったので、リテイムする必要は無さそうだった。
2匹とも、俺の姿を見てすり寄ってきてくれた。
うん、可愛いなぁ。
と良く見ると、ゲンブの背中に一匹の子竜が乗っていた。
「あれ、こいつは…」
そうそうと、厩舎の主人が答えた。
「瀕死でもう駄目だとあのときは思っていたんですが、いつのまにかカーゴタートルの中で休んでたみたいでして、さっきひょこっと出てきたんです。ついでに、治療薬使ってやったら、この通り元気になりましたよ。あのポーションは、良く効きますねー!」
おー、やった!
いや良かったよ。
この子竜も当然レアモンスターで、捕獲の条件厳しかったんだよね。
しかも、見た目が可愛い。
体長80cmくらいの幼いドラゴンで、種族は一応ウインドドラゴンらしい。
成体でも細長いドラゴンなので、ミニサイズ版な感じだ。
子竜の名前は、ピューイ。名前の由来は、そう鳴くからだ。うん、センスないとか言わない。
ピューイは、瀕死になったせいなのか、従属が外れてた。なので、リテイムをした。
「よし、そのまま動くなよ?スキル〈魔獣調教Ⅳ〉!」
スキルを使ってすぐにピューイは、強い光に包まれた。
現時点で最高まで上げてるスキルなので失敗は心配はしてなかったが、いざ使うと成功するまでドキドキする。
光が消えて、出てきたピューイは、ピューイ!っと鳴き首を擦り付けてきた。スキルは、成功だ!よし、ステータスも確認した。…うん、従属なってるな。
しかし、瀕死になっていたからか、ステータスが下がりランクもAからBに下がっていた。
もともと、この子もマスコットみたいなもんだし、取り敢えずそのうち鍛えることにするか。
一通り構ったあと、皆を厩舎に再び預け、自分も宿を取ることにした。
気がついたら、もう日が落ちてた。
宿の部屋を取り、飯を食べる為に食堂兼酒場にやって来た。
村唯一なのもあり、かなり賑わっていた。
カウンター席に座り、酒と定食みたいなのを一つ頼んだ。
出てきた酒は、ビールみたいな飲み物。
そんなに冷えてはいないが渇いた喉を潤すには充分だった。
食事も程無くして出てきたが、これがウマイ!
大きなソーセージみたいなのと、硬めパンが出てきたのだが、これがビール(?)によく合った。
食事をして味わえるという事実に、やっぱりココは現実であり異世界であると実感させられた。
これからどうなるか分からないが、まずは装備を整えて町に向かおう。
そこでまた情報を集めないとだな。
カルマが色々と知ってるようだし、心配はいらんさとひとりごちてると、横から声を掛けてくる男がいた。
「なぁ、あんたももしかしてプレイヤーか?」
これが、自分以外のプレイヤーとの初遭遇となったのだった。
お読み戴きまして有難うございます!
次話も宜しくお願いします。