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カルマとの再会

 ───村に入ると、ニケを見て皆が大騒ぎし出した。


「ま、魔物の襲撃だー!! 」


「キャー、なにあれ!見たこと無い魔物よ!」


「わーん!おかぁさーん!!」


 …うん、パニックだね。

 今までこんな事なったことないんですが…。


 急に反応をリアルに変更しないで欲しいなと思うんです。

 仕方無いから説明しないと。

 うるさいし。


「あ、あの。この子は大丈夫です!私のペットですので!!暴れないし、安全です!!」


 ニケから降りて、村人を説得した。こういう時は丁寧語に限る。

 話を聞いてる奥から、ひとりの村人が声を掛けてきた。


「あ、旦那!お帰りでしたかっ!」


 あれは、確かペット厩舎の主人だな。

 良かった、自分をわかる人がいて。


「あー、厩舎の主人。いま、貴方に会いに行こうとしてたんだ。取り敢えず、周りのみんなに大丈夫と説明してくれないか?」


 取り敢えず、この事態をどうにかしたい。


「分かりましたよ。ほら、お前ら。俺んとこの御得意さんの高位のテイマーさんだよ。大丈夫だ!」


 お前がそう言うならと、村人は、安堵して家に戻っていった。


「いやー、助かったよ。まさか、こんなに騒ぎになるとは思っていなかった」


「旦那も、正面から歩いて来てくれれば、こんなに騒ぎにならないんですよ。じゃないと魔物の襲撃かと思いますよ」


「あはは、ごめんごめん。悪気は無かったんだよ。次からはそうするよ」


 というか、前まではこんの騒ぎにならなかったと思ったんだけど…。


「そうだ、旦那に伝えないといけないことが…」


「ん、なんだ?」


 なんか、嫌な予感。


「取り敢えず、厩舎へ来て下さい!」


 そういう、主人についていき、厩舎に着いた。


 うん、ひとことで言うと廃墟寸前。

 さすがにここまでなってなかったはず。


「これ、どーしたんだ??」


「いやですね、昨日まではなんとも無かったんですよ?それが今朝になって…」


 主人は言いづらそうにしている。

 なんだ?嫌な予感って、だいたい当たるんだよねー。


「昨日までは、餌を残すくらい元気が無かったので、心配してたのですが、朝の餌やりのときにクスリタルからだしたら急に、旦那のペット達が暴れだしまして…」


 あわわ。


「ナイトメアと、フェニックス、シャドウウルフ、ホワイトファングがちりぢりに逃げてしまいまして。他のペットもそのときに重症になり、生き残ったのは、フレイムキャットと、カーゴタートルだけです…」


 え、えーーーー!

 いや、自分の主力ペットほとんどじゃん。


 つか、残ったの2匹だけか。

 動物系ペットは…全滅。

 かなりショックだ。

 つか、なにしてんの!?


「それで、逃げた先ですが…」


 フェニックスは、空高く飛び去り何処に行ったか不明。性格的に、見つけるのは厳しいな。

 シャドウウルフは、いつの間にか消えていたらしい。もしかしたら、ナイトメアといるかもしれない。


 ホワイトファングは、東の丘の方へ逃げていったみたい。あの中ではランクが低いし逃げるのも仕方無い。

 ナイトメアは、南の森へ優雅に去っていったらしい。


 去り際に、『主に、我を探しだし、もう一度我に勝ってみせろと伝えるがいい』と捨て台詞を残していったみたい。

 いや、どんだけ上からなんだ!


 残った2匹はかなりの傷を負ったみたいだけど、守備がピカイチのカーゴタートルは治療魔法で治る程度だったのと、フレイムキャットは、カーゴタートルに隠れていたみたいで大丈夫だったようだ。


 2匹を厩舎に再び預けて、治療に専念させることにした。


「さて、取り敢えずナイトメアの捜索かな」


 ナイトメアに付けた名前は、カルマ。

 悪そうだからって理由で付けた。


 本人は気に入ってたようで、名付けたら親密度が上がって、ステータスボーナスがついた。


 なんか喋れるみたいだし、見つけたら色々話してみよう。


 探し始める前に村で宝石と素材売って、資金を作らないとだね。


 さっき、ストレージ確認したけど、お金は無かった。

 その代わり、素材とか宝石とかは残ってた。


 さっき回復アイテムは、カーゴタートルのゲンブとフレイムキャットのフィアに使ったので手持ちがない。

 村でも回復ポーションくらいはあるはずだ。


「すいませーん、ペットポーションありますか?」


 ここは、魔法雑貨屋。

 ここに来る前に素材屋に素材と宝石を売って資金を作った俺は、この世界の共通通貨で金貨二枚、銀貨5枚、銅貨100枚を手に入れた。


 ちなみに、金貨一枚で銀貨10枚、銀貨1枚で銅貨100枚の価値がある。

 村の食堂で、1食が銅貨5枚なので、銅貨一枚で100円くらいな感覚かな。

 ちなみに、金貨十枚でちいさな家(掘っ立て小屋程度)が建てれる。


 宝石だけで金貨二枚だったので、宝石様様だね!

 この村は冒険者が良く来るらしく、比較的お金があるみたい。

 そのおかげで、すぐ換金出来たのも運が良かった。


「あー、さっきの冒険者だね。あんた、テイマーなんだってね。ここらじゃ珍しいねぇ。うちなら中級ポーションまでだよ。一瓶銀貨一枚だ」


 う、結構高い。


「じゃあ、10本くれ」


 金貨一枚を渡す。


「お、太っ腹だね。なら、おまけで低級ポーションを10本つけてやるよ。銀貨一枚相当だ」


 おお、有り難い。

 とりあえず、これでペットの回復はOKだな。

 ついでに自分用のポーションも買った。

 こっちの方が安く、中級ポーション10本で銀貨二枚だった。


「まいどありー!またご贔屓にね」


 準備を整えて、早速ナイトメアのいる森に入った。

 ここは、ダイアグリズリーとかいう魔物の縄張りらしく、ランクはA推奨地区。

 それなりに強い魔物が出てくるはずだったが、小物が数匹襲ってくるくらいだった。


 もちろん、戦うのはニケだ。

 楽なのはいいが、不気味だな。

 しっかり素材を回収しながら、慎重に奥に進む。


 入って暫くすると、噂の魔物が現れた。

 うぉ、でっかいな。自分の倍くらいある。


 ぐおおおおおおおおっ!!

 と、いいながら襲ってきた。

 ニケに前衛させて、後衛に配置しながら後ろから魔法で援護しながら戦った。


「ニケ、ライトニングブレス!」


 大きく開いた口から、眩いばかりの稲光を纏ったブレスを放ち出す。

 ニケこと、ファルコニアは、嵐の女神の眷属魔獣で、風と雷が得意な魔物だ。

 そのブレスの威力は絶大で、何度殺されたか…

 それだけに戦闘力は折り紙つきだ。


 あっさりと雷ブレスと、大きな爪がある前足による直接攻撃で森の主ダイアグリズリーを撃破した。


 まさに瞬殺。

 ランク的には当然だけど、前の世界と変わらない強さで一安心だ。


 そのまま前衛させながら探索を続けていると、ちょうど森の中央くらいぽっかりと拓けた空間があった。


 そこには…うん、いたね。

 改めて見ると、ヤツは禍々しいことこの上ない。


 この世界のナイトメアは、悪魔がユニコーンを殺し取り憑いて、受肉して生まれ変わったアークデーモンという設定だ。


 ユニコーンの特性は失われているが、魔法と物理攻撃共に強力なうえ、物理ダメージ半減という反則的な特性を持っている。


 まともにやったら、まず死ねる。

 なので大抵は数人で戦うかペット等で壁を作るかなのだが、今回はクエストと一緒で…


「良く来たな主よ。最近その白い鳥にうつつを抜かし、府抜けてしまったようだな。…なので、我が直々に叩き直してくれよう!」


 グルオオオオオオ!と吠えて威嚇してきた。


 なぜか上から目線で、かつお怒りモード。

 最近構ってなかったから、ご立腹なのか?


「カルマ、今はそんなことしてる場合じゃないんだ。すぐに戻ってこい」


 一応、説得を試みる。

 だが、カルマは応じる気はないようだ。


「我を従えたければ、今一度、我を征服してみせよ!!」


 そう言うと、カルマは戦闘態勢になった。


 一度は、倒してるとは言え、前は死にたい放題のゲームだったわけで。

 今は、死んだらどうなるかわかったもんじゃない。


 なので、かなり安全マージンとりながら戦わないといけない。


 殺すだけなら、ニケをけしかければ可能だが、それでは意味がない。

 何より、手塩にかけたペットを殺すなんて出来るはずがなかった。


 まずは補助魔法で強化して、耐性アップとステータスアップする。

 Sランクになった俺は、かなりステータスが強化されている。


 中でも耐久と力が高く、ついで知性、魔力、速度の順となっている。

 その為HPはかなり多く、ランクMAXの1800あるのだ。


 たとえカルマの最高魔法を2~3発食らっても死ぬことはない。


 しかし、真正面から食らい続ければ負けるのは当然の道理だ。

 カルマも最大まで鍛えてるので、HPは1200くらいある。

 そうなると、あとは戦略勝負だ。


「いくぞ、カルマ!主人の威厳を見せてやる!」


 言うと同時に魔法を展開する。

 相手の魔法は闇属性が殆どで、打ち消すには反対属性しかない。


「ライトバースト!」


 唱えるのと同時に魔方陣が現れる。

 カルマを中心に光が集まり、一気に膨れ上がった。


 激しい光属性の爆発を食らいカルマはたじろいだが、まだまだ余裕だ。

 一瞬の隙をついて、カルマの懐に潜り込み、双剣で凪ぎ払う。


 ぐああっっとカルマが呻いたが、気に留めないでさらにもう一丁打ち付けた。


「やるな主っ、だが、その程度ではっ!」


 くわっと目を見開いたあと、カルマの回りからどす黒いオーラが溢れだす。

 あれは確か、触れると継続ダメージ貰う、ナイトメア固有スキル〈黒炎〉だ。


 とっさに離れて回避したが、少し触れてしまった。

 そこからじわじわと焼けた感覚が広がっていく。


 うわっ、地味にダメージくらうなこれとか内心でぼやきつつ、それなら短期決戦だ!とありったけをぶちこむしかないと考えて再び魔法を繰り出す。


「ホーリープリズンフィールド!アークレイ!アークライトバースト!」


 高位の魔法スキル〈連続魔法〉を使い光呪縛魔法で動きを封じて、光高位魔法で畳み掛けた!


 光の檻がカルマを捕らえ、天から降り注ぐ強力な光の柱が撃ち抜き、トドメとばかりに中心に現れた光の珠が爆発した。


 辺りが光の嵐に包まれる。


 どうだ?

 結構ダメージいったと思うが…


「ぐっ、がはっ。さすがですね…。あのときよりも、かなり魔力があがっている。ですが、まだ終わりではない!」


 光の奥から、カルマが無詠唱で魔法を放つ。

 出現した魔方陣から無数の眷属と、闇高位魔法のエビルジャベリンが飛んでくる。


 コウモリの形をした眷属たちは、その翼に魔力を纏わせカッターのようにして切り込んでくる。

 また、頭上からもエビルジャベリンが無数降り注いだ。


 咄嗟に回避するが、間に合わずに数発食らってしまった。

 ズザッズザズザッ、ダンダンダンダン!


 ―――がぁっ、いってええっ!!

 痛覚がやばいくらいリアルになってる。

 つか、もうこれゲームじゃなくね?

 飛びそうな意識をなんとか繋ぎ止めて、残りをギリかわした。


 手を止めたら死ぬ。

 土魔法で壁を作り、視界をブロックし、死角から出が早い光魔法のライトジャベリンを撃ち込んでいく。


 ガンガンガンと、数発命中し、HPをガリガリ削っていく。

 カルマが怯んだところで、飛び込んで双剣で、ザクザクっと切り込んでを繰り返した。


〈黒炎〉と闇魔法を何度かくらい、残ったHPは、600切った。

 さらに…


「主よ!これで決着だ!我の最大魔法を受けてみせよ!」


 カルマの回りにいくつものかなりの大きさの魔方陣が広がっていく。

 間違いなく、カルマの最大攻撃魔法の闇属性上位魔法ダークネスバーストだ。

 広範囲に大きな魔方陣が浮かび上がると同時に、高圧縮された黒い球状が現れた。次の瞬間、込められた魔力が一瞬で膨張し、辺りを闇の波動で吹き飛ばした!


 しかし、発動までのタイムラグを活かし、こちらも自分の最大武器を用意していた。


「うおおりょあぁ!!これでどうだっ!スキル[調伏の波動]」


 テイマースキルで相手の残りHPを確認しつつ、タイミングを見計らっていたが、…その時が来た。

 自分の最大最高スキルは、やはり調教師テイマースキル。

 さっきの光魔法で衰弱マークがついたカルマに、調教スキルを発動させた。


 うおぉぉ!頼む効いてくれっー!

 そう祈りつつ放った光のエフェクトがカルマを包み込んだ。

 スキルが成功すれば、大人しくなるはず。


「…こ、この力は…、懐かしき感覚。あぁ、やっと()()()()が修復される…」


 光が収まると、さっきまでと違いカルマが大人しくなっていた。

 自分の残りのHPを見ると、200を切っていた。

 やべー、前よりギリだったと冷や汗を掻いた。


 ふと回りを見渡すと、カルマと俺の魔法で小さなクレーターが数個出来てた。

 自然破壊もいいとこだ。


 …うん、誰も見てないからOKだよね!


 辺りを彷徨っていた眷属も消えていた。

 カルマがこちらに近づいてきて、足元に頭を下げた。


「主よ、再び我が忠義を捧げることを御許し下さい。我の主が再び貴方になったこと嬉しく思います」


 …えーと、さっきまでのお前はどこ行った?


 まぁ、お互い無事ならいい。

 いや、無事とは言えないけど。

 取り敢えず、気になってた事を聞いてみる。


「しかし、なんでまた決闘なんか挑んできたんだ?というか、再調教出来たということは、契約切れてたか?」


「ええ、主がそこの白い鳥と飛び立って、暫く留守にされていたあの日に、我らが封印されていたクリスタル内に異変が起きたのです。我とは違った、異次元の悪意の力。それが中に充満し、我ら全員の意識を奪ったのですよ」


 厩舎の主人の話を思い出しつつ、カルマに聞いてみる。


「それって、昨日の朝のことか?」


 カルマは、首を横に振りながら答えた。


「いや、我の体感では数日も前です」


 数日前?と言うことは、こっちに来るまで数日経過してるのか。


「我らが意識を取り戻すと、クリスタルから解放されたのです。我と火の鳥、黒狼、白犬、子竜の絆が消えていき、正気を失いあの場で暴れたようです。数時間ほどして、意識を取り戻しましたが、他の冒険者が止めに入ってきたので退散して来たのです」


 他の冒険者がいるのか。

 なら、他のプレイヤーもいそうだな…。あとで、町を探してみよう。


「俺にここに呼び寄せたのはなんでだ?そのまま、逃げ去っても良さそうだが」


 そう、わざわざここで待たなくても、どっかで縄張り作っても良さそうだが。


「何をいうか主よ、我は、貴方にもう一度使役していただく為に待っていたのだ」


「え、じゃぁ、戦わなくても良かったんじゃない?」


「いえ、クエストと同じ条件でしか、スキルは成功しないようになっているので無理でしょうな」


 うげっ、まじか。

 そういうとこは、前のままなのかよっ!

 ゲームと違って超痛いし。

 てか、クエストって言った?なんでクエストとか理解出来るんだ?


「カルマは、クエストの事を知っているのか?」


「?…もちろんです」


 当然だという顔で答えた。そして、衝撃的な事を言い出した。


「なぜならば、我はあの世界のカルマであると同時に、()()()()()()()()()()()()からだ」

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