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天使の塔へ(4)

不気味な男が待ち構える18階層。

そこに、今まさに到着したユート達。

この出会いは、どうのような結果を生むのか?

 ───18階層に到着。しかし、敵が全然出現しない。

 不思議に思いながらも、先に進んだユート達は、この階層の真ん中付近に佇む『誰か』を発見した。


 

「あいつ何者だ?とういうか、こんな所で一人でいるとか普通じゃないな」


 ユートはかなり警戒をして、ひとつ前のフロアからその人物を観察していた。


 よく見たら、あいつの足元に無数の灰の塊が散らばっている。

 天使たちを倒した後のようだ。

 ということは、少なくとも天使たちの味方ではないようだ。

 目を瞑っていて、こちらにはまだ気が付いていないようだった。


「カルマ…どう思う?」


「主よ、正直に言いましょう。主では勝てないでしょう。回避したほうが良いです」


 なんで戦う前提!?…いや、違うな。敵対する可能性が大ということか。


 リンとシュウも、雰囲気を読んでか、黙っていた。

 ガントも戦闘の邪魔にならないように、後方に退避している。


 と、その時だった。

 あちらがこちらに気が付いたようだった。


 ニケとカルマ以外は下がらせた。

 俺とふたりで、前方からゆっくり歩いてきた人物と対面する。

 ニケとカルマは、密かに魔力を練り始めた。


「なんだ、ニンゲンか。やっとレアモンスターが出てきたと思ったけど、お前の下僕か」


 ちょっとイケメンの青年が現れた。

 だが、特徴が普通の人とは違った。


 髪の色は漆黒で、長髪。

 耳は先のほうが少し尖っている。

 そして、肌がグレーに近い黒色をしていた。


 こいつは、”魔族”か?

 LBOでは見たことあるけど、こっちでは初だな。

 で、ニンゲンである俺は敵対関係にある事になるはずだが…


「そうだね残念ながら、ここで出るモンスターではないよ。邪魔したようで済まなかったな」


 そう言いながら、冷や汗をかいてる自分がいた。

 対人戦は得意では無いがやったことが無いわけじゃない。

 むしろ、壁として重宝されるので良く募集があったので報酬目当てで参加していた。

 だから、これは本能から来る危険信号。

 ヤバい、何か、ヤバいと感じている。


「いいや、邪魔じゃないさ。むしろ歓迎だ。せっかく来たんだ、ここでさ…」


 そこで、男の表情が凶悪なものに変化する。


「死んでいけよっ!」


 言うと同時に刀を抜いて斬りつけてきた。


 うおっと、ギリかっ!と思ったのに胸元がぱっくり割れて、血が滲み出る。

 あと半歩深かったら、俺の胴はサヨナラしてた。


「貴様!主に傷をつけるとは!」


 カルマが怒りを滾らせ魔力を、乗せた攻撃で相手を踏み抜こうとする。〈闘気法〉を発動済のようだ。


『主様の命は奪わせません!』


 ニケも最初から全力でいく。

 全身に青いオーラを滾らせながら、羽の形をした魔力をミサイルのように撃ち出した。

 さらに、上空に飛び上がり極大の雷をピンポイントで落とした。

 そのまま、前足の大きなツメで止めの一撃を繰り出した!


「おー、結構ダメージくるなぁ。だが、まだヌルいな」


 男は平気な顔をして、ニケのツメを刀で受け止めた。

 さらに、そのまま弾き返すと技を繰り出した。


「つまらなくなるから、耐えろよ?〈月下桜舞連撃〉!」


 男の周りに、金色に輝いた桜の花びらが舞い散ると、それがそのままニケに降り注いだ!


 クアアアアアッと!苦痛に呻くニケ、見ると花びらが触れた場所のあちこちから血飛沫が飛び散っていた。

 だが、そのままやられるふたりではない。


「アンチグラビティシールド!」


 カルマが珍しく余裕を見せ無いで魔法を撃つ。

 ニケに纏わりついていた黄金の花びらが、反重力によって吹き飛んだ。


「ふん、小癪な事を。しかし、これはどうだ?…〈黒閃〉!」


 黒い光が集まり、横一閃に空間を切り裂ていく。

 カルマとニケがその光で直撃を受けた。


「ぐがっっ、貴様ぁ・・・!」


『ぐうう、なんという力』


 カルマとニケが同時に呻く。

 だが、致命傷には至ってない。


「調子に乗るな小僧。イビルインフェルノ!」


『まだ、倒れませんよ。〈天嵐てんらん〉!!』


 ふたり同時に魔法とスキルを発動する。

 悪魔の炎が男に纏わりつきその体を焼いていくと同時に、その火を巻き起こすように嵐が包み込み、内側に青い雷が何度もつらい抜いていく。


「ぐおおお、なるほど…これほどまでの力を持っていたか…。いいなお前たちっ!うおおおおおおおお!!!」


 だが、男は魔力を体から吹き上げ、さらに気合裂帛で辺りを吹き飛ばした。


「な、なんて奴だ。あんなの出来るのか。…まさか、SSランクなのか!?」


 あまりに信じられない光景に、俺も一瞬呆然とした。


 Sランクのふたりとの戦闘を、純粋に楽しんでる奴がまともはハズがない。

 というか、本物のバケモノだ。


 ここは、なんとかして撤退しなければ。

 後ろには遥かに力が劣る仲間たちもいる。

 巻き込まれたら、ひとたまりもない。


「カルマ!ニケ!なんとか耐えてくれ!ビーストコマンダーⅣ!デーモンコマンダーⅣ!スピリチュアルコマンダーⅢ!アニマブーストⅢ!」


 ペットブースト系最高スキルを全部使い、ガリガリとMPが減っていくのがわかる。

 だが出し惜しみしては、ここで終わる。

 それだけは、ダメだ!


神聖術セイクリッドスキル…〈天啓〉!」


 さらに、全ステータスUPのスキルを使う。


「アークヒーリングライト!」


 魔法の範囲回復魔法も掛ける。

 もはや、効率度外視だ。

 やれることは、やっておく。

 …生き残るため、生き残らせるために!


「ん?そこのは…なんだテイマーか?こいつらの主人という事か。だが、今は邪魔だ!黙っていろ」


 と、刀を上に振り上げて、刃先に漆黒の魔力を練り上げて集めていく。

 その大きさは、直径1Mくらいになっている。


『主様!逃げてください!』


「なっ、それは!!主よあれを喰らってはいけません!下がってください!」


 ニケとカルマが同時に逃げろと言う。

 だが、そうするとスキル効果が失われる事になる。

 

 それは、今は下策だ。


「ダメだ!…ふたりとも、あれが発動する前にありったけをブチ込め!」


 逆に、攻撃命令を出す。

 勝負は、ここだ!


「!!承知!」


 無詠唱でカルマがありったけの魔法を展開する。

 と同時に黒いオーラがカルマを包み込んだ。


『わかりました、ここでやれなければ、私たちの存在意義など無いですよカルマ!』


 ニケが自分たちと俺の間に障壁をありったけ展開する。

 さらに、自分の体に眩く光って見えるほどの雷を纏いだす。


 ふたりが発動準備している間に、後ろに声を掛けた。


「ガントッ!!!撤退しろ!俺らは置いて行っていい。俺ら以外を連れて10階のポータルまで戻れ!1時間経っても俺らが来なかったら、そのままポータルを使って外に脱出しろ!!」


 ほとんど、怒鳴り声のように、ガントに指示をだした。

 暗に、リンとシュウを連れて逃げろと。


「ユートお前っ!…!!!あーくそう、分かった!俺に任せておけ。だが、必ず戻ってこい!待ってるぞ!」


 リンが何かを言いそうになったが、ガントが必死に二人が見えないようにカーゴに投げ入れて撤退しているのが見えた。

 ガードにクロとフィアがちゃんと付いてくれた事も確認出来た。


 これで、なんとか脱出させれるはずだ。


「そこのイケメン!俺らに喧嘩売ったことを後悔させてやるからな!」


 自分も、ボーガンと双剣に神秘で聖属性と光属性を纏わせて攻撃準備をしながら啖呵を切った。


「ふん、強い魔物の影に隠れるしか能のないテイマーが、何をほざくか…。さあ、死ね!」


 男がまさに技を発動しようとしたところだった。


「眷属召喚!”デーモン”!…くらえ、グラビティフィールド!…ダークネスバースト!」


 そこでカルマが俺が見たこともない眷属である悪魔を召喚し、同時に重力魔法で足止めし、さらに悪魔達と同時に闇魔法を無数に撃った。


『その刃を降ろさせません!雷の大精霊たるファルコニアが命ずる。すべてを貫く雷の炎で彼のものを撃ち抜け!〈天雷・閃〉!!!』


 カルマ達の魔法とほぼ同時に、ニケから極大の青い稲妻を纏った光が撃ちだされた!


 あたりが、二人の魔法とスキルの光で明滅する。


「ぐううううううううううううおおおおおおおおおおっ!!!!」


 男の断末魔のような声が聞こえてきた、直撃したはずだ!

 頼む、終わってくれ。

 

 光が引いて視界が戻ってくる。

 しかし。

 男はまだ立っていた。


 体中から煙を上げている。

 満身創痍であることは間違いない。

 だが、その手には刀が握られたまま。

 そしてその先には…


「ぐ…惜しか…ったな。だが…もうこれで終わりだ。〈絶・界〉!ふふ、楽しかったよ獣どもよ。さらばだ」


 刀を振り下ろすと、すぐさま男は空間に吸い込まれるように消えていった。


 だが、振り下ろされて発動したスキルは、そのままこちらに向かってきた。


 その大きな黒い球体が地面に落ちると、暗黒の巨大な光が辺りを覆いつくした。

 と、同時に。


「うがああああああああああああああああっ!」


 体がちぎれるような激痛が走った。

 一瞬で、俺の意識は飛び、失われた。


 …遠くで、『主を守れ!』というカルマの声と『私達が盾になるのです!』という、ニケの言葉だけが聞こえた気がした。



 ───その時、ガント達は全力で引き返していた。


 後ろで、すごい爆音や振動が響いてきていたのを無理やり意識から外し走り続けた。


「いくらなんでも、あんなのないぜ・・・」


 ガントはボヤかずにはいられなかった。

 いままで、無敵のように戦ってきたユートやペット達が、一方的にやられている姿など想像もしなかった。

 特に、カルマとニケは、自分的にはあの二匹がラスボスなんじゃないかと思う程だったのだ。


 それが、一瞬でも地に伏せる姿を見たときに、死を感じてしまった。

 先日の、ユートの言葉が思い出された。

 この世界で死ねば、俺らはそこで終わりだと。

 ここはゲームの世界ではないんだと。


「ちくしょう!ちくちょう!あいつを置いて逃げるなんて!…でも、せめてこの子たちを逃がさないと、ユートに顔向け出来ないっ!!」


 唇の端を悔しさで血を滲ませながら、全速力で逃げる。


 後ろからは追ってはこない。

 幸いにも、まだ天使たちにも遭遇していない。


 そのまま、ひたすらダッシュしていたとき階段が見えた。

 …天使たちは…いない。

 まだ、生まれる時間にはなっていないようだった。


 そのまま階段を下りていき、目の前にある部屋を見渡した。

 大丈夫、誰もいない。


「くそぅ!なんだったんだ。とりあえず1時間ここで待つ。フィア、クロ、ゲンブ!頼んだぞ。ここで俺等を守ってくれ!」


 にゃーとウォン!とグオオンと返事を貰った、ガントはありがとうと言うことしか出来なかった。


 しばくらして、中から顔面蒼白になったリンとシュウが出てきた。

 二人も、あの壮絶な光景を目の当たりにしていたのだ、恐怖で泣き出してもおかしくないくらいである。

 しかし…。


「パパは…パパどうなったの!?」


「ガントさん!ユートさんは?ニケは?カルマは!?」


 だが、それよりも二人にとっても大切な人物になっていた、ユートの事が心配であることが勝っているようである。


「あいつなら、…絶対なんとかする。信じろ。信じてここで待つんだ。今の俺らでは、戻っても、単なる足手まといでしかない!」


 悲痛な表情で、だが反論は許さない厳しさを持って二人に言う。


「でも!!…ううん、そうだね。その通り、…その通りだね。それなら…ここでパパが戻ってくるのを待つ。それくらいしか出来ないから!」


 既に、こぼれた涙を気にもせずに、しっかりと前を見据えてリンが頷いて言った。

 いつも思うが、本当に芯の強い子だ。


「俺も、待つよ。まだまだ弱っちいけど、でもここを守るくらいなら役に立って見せるから!」


 シュウも、ユートがここに戻ってくるのを信じて、しっかりと返事をした。


「よし、二人ともエライぞ。そうだ、俺らがここを守ってあいつが戻ってきたらすぐ帰れるようにするんだ」


 そういいながら、ガントは荷物チェックをする。

 最悪の一歩手前を想定し、最高級ポーションの数を数えた。

 魔法で回復出来るものはここにいない。

 なのでアイテムだけが頼りだ。


 ポータルまで戻れと言っていたが、途中のボスの事もある。

 ユートの指揮が無い状態で、どこまで今のメンバーが戦えるか不明だった。


 最悪の場合は、このメンバーでSランクボスを倒さないといけない。

 それならば、雑魚相手に戦ってここで待ってたほうが安全だ。


 もし1時間が過ぎたら、かなり分が悪い賭けになりかねないが戻るしかない。ボスは、時間的にはぎりぎり出現してないと思われるが(LBO時代と同じ間隔ならばだが。)、出来るだけ回避したいのが本音だ。

 

 さっきの男が追ってきた場合だが、その場合はもはやどうにもならない。

 遭遇した時点で、正直諦めるしかないと思っていた。


 三人と三匹は、ユートがいつでも戻ってきてもいいように準備を進めるのだった。

 


いつもご覧になって戴きましてありがとうございます。

また、ブックマークをしていただいて、本当に励みになっています。

重ねて有難うございます。


今回は、謎の男との遭遇を書きました。

ライバルって必要だよね!ということで登場しました。


天使の塔は、そろそろ終わる予定です。

もうちょっとだけ、お付き合いいただけたらと願っております。


次回更新予定は、9/5 25:00迄を予定しています。

次回もよろしくお願いします!


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