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聖女の光と魔王の正体

 リン、サナティ、アリアが手を繋いで輪を作る。

 そして、静かに目を閉じた。

 すると3人を中心に聖らかな輝きの光が集まる。


「「「愛と節制と智慧の聖女の祈りに応え、彼の者の呪いを討ち祓え!──『聖域サンクチュアリ』!!」」」


 3人が合わせて唱えると、光が輪を作り辺り一帯に広がっていく。

 そして、その光がサーヴァントに覆いかぶさるように集まっていく。


「あれは、まさか聖女のチカラ?!人間の国から出てこない筈の聖女がなんでこんな所にいるんだよ!?」


 カーズが驚くのも無理はない。

 王族であり、国の最重要人物である聖女が人間の領土から出てくるなど前代未聞なのである。


 先の王都襲撃で壊滅的な打撃を受けて、王家の秘宝が奪われるような事態が起こらない限り国の外に出して貰えるような人物ではないのだ。

 本人は自分の意思で冒険者になり俺と一緒に旅をしているつもりだろう。


 だけど、俺と一緒に旅をする事は分かり切っているので、本人の意思を尊重したフリをしているだけだろうな。

 それに今や王都に俺らよりも強い戦力は持っていない。

 つまり、大事な娘を一番安全な場所に送りこんでいるともいえる。


 まぁ、最も危険な魔族である魔王と対峙しちゃっているけどね。


 しかし、驚くところはそんなとこじゃないぞ?

 カーズ、お前の前にいる聖女は3人もいるのだから。


「でも、たかが聖女一人でサーヴァントがどうにか出来ると…、あれ?3人?あれ全部聖女なの??」


「教える義理は無いけど、そう言う事さ。だから、カーズ。お前も安心して成仏しなよ」


「僕を邪霊みたいな扱いをするな!というか、聖女が3人とか聞いた事ないぞ?

 あの女神め、僕らを謀ったか!」


 カーズが何のことを言っているのか分からないが、やはり聖女というのは普通は一人しかいないのか?

 呪詛めいた言葉を吐きながら、狙いを聖女切り替えるカーズ。

 しかしそれをカルマ達が悉く阻止していた。


「主達の邪魔はさせんぞ。カーズよ、もはや観念するがいい!─グラビティフィールド!」


『そのまま燃え尽きるが良い。〈不死鳥の嵐フェニックスストリーム〉!!」


 重力魔法によってカーズの動きを止めるカルマ。

 そこに重ね掛けるようにニクスが自身の最大奥義を放つ。

 灼熱がカーズを包み込み、その場から動けないカーズを何度も燃やす。


「うわわ!流石にあっついよ!僕を殺す気なのかい?」


「まだ、そんな事を言う余裕があるのか!」


 かなりのダメージを受けている筈なのに、まだ余裕を見せるカーズ。

 いや、元々あんな感じなのか?

 しかし、カルマ達は手を緩めたりしない。


「まだまだ余裕ありそうだよ?ディアナ」

「ええ、それならとっておきを使って差し上げないとね、ヘカティア」


 双子の竜姫が、お互いの手を合わせ目を閉じて精神を集中させる。

 するとすぐに金と銀色の光を放ち出した。


「「顕現【皇竜カイザードラゴン 】!」」


 次第に光が強くなり、ぱあっと光が広がるとそれが竜の形を創り出した。

 そこに現れたのは、最強の竜と呼ばれし皇竜カイザードラゴン だ。


「「我らの本当のチカラで、お前を撃ち滅ぼしてくれよう」」


「うぇっ!皇竜カイザードラゴン !!?」


 逃げようとするも、カルマに動きを止められているせいで回避すら出来ない。

 皇竜カイザードラゴン がガバっと開けた口から、七色の光が漏れ出ている。


「ま、拙い!あれは!」


 皇竜カイザードラゴン は、カーズ目掛けて七色の超強力なブレスを吐きだした。

 着弾した瞬間に、七色のドームが作られて中が地面が溶ける程の高温となっていた。

 あまりの威力に、カルマのグラビティフィールドも吹き飛んでしまった見たいだが。


「が…、があっはぁっ。流石に…、ヤバかった…!!」


 ボロボロになったカーズ。

 体の至る部分が焼け爛れてしまい、受けたダメージの深刻さを物語っていた。

 しかも、自己再生能力すらも上回って継続ダメージが入っているらしく、このまま力尽きるのも時間の問題であろう。


「主よ、カーズは抑えました。今のうちです…!」


 カルマに言われ、俺も気持ちを切り替える。

 ニケが障壁を張る事で3人の聖女は守られている。

 更に、おれの覇王のスキルでステータスUPや状態異常無効化、SP・MPの回復等を同時に行っている。

 それのせいで、俺のMP・SPが切れそうだがここで切らすわけにもいかない。


 しかし、その心配ももうすぐ終わるだろう。

 なぜなら、3人が展開した『聖域サンクチュアリ』がサーヴァントの全てを包み込み終わったからだ。


 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴアアアアアアアアアァァァァァ!!!


 聖なるチカラに囚われて、呻き声を上げるサーヴァント。

 元々恐ろしい顔をしているが、さらに悍ましい表情を浮かべている。

 普通の人なら、あの顔を見ただけで倒れてしまいそうだ。


 『聖域サンクチュアリ』の中では、聖なる光が満ちておりその光に触れた個所からサーヴァンの体が浄化されたように塵と化している。

 しかし、サーヴァントもそこから抜け出そうと中で暴れているため、『聖域サンクチュアリ』を維持するだけでかなりの魔力を消耗しているようだ。


「絶対に、ここから出さないよ!パパの為にも絶対に!」


「いつまでも、ユートさんに護られてばかりではいられない!だから、ここで聖女の力を証明して見せます!」


「聖女として育てられたわたくしが、一番に音を上げるわけにはいかないですわ!この災厄となる存在は、聖女アリアネルの名において浄化して見せます!」


 しかし、3人の顔には疲れるどころか、その目には闘志すら見える程漲っている。

 もはや、サーヴァントが消滅するのは時間の問題だ。


「「「悪意よ、滅せよ!」」」


 3人が声を揃え、その聖女のチカラを最大限まで強めた。

 『聖域サンクチュアリ』の中から眩いほどの光が溢れ出す。


 ヴウウォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!


 サーヴァントが断末魔を上げる。

 それを合図かのように、一瞬固まったあと全身にひびが入り、巨大な体が弾け飛ぶ。

 次の瞬間にはそれが塵と化し、霧散して消えた。


「「「全ての魂を浄化し、天へ還せ!〈聖浄魂還〉!!」」」


 あれは神聖術セイクリッドスキルだ。

 前に屋敷に縛られた魂を解放するのに俺が使ったスキルだ。


 アリアだけでなく、リンとサナティまで使えるようになっているのは、聖女のスキルを獲得したからなんだろうか?

 系統的には一緒だし、聖女スキルを取ると神聖術セイクリッドスキルも獲得するという事か。


 サーヴァントに囚われていた魂が次々に解放され、天に昇っていくのが見えた。

 これで彼等も苦しむことなく、新しい生命へと生まれ変わるのだと信じたい。


「サ、サーヴァントが浄化された?しかも、囚われた魂まで解放したの?

 …はははっ、覇王が絡むと本当に碌な事起きないよね…。

 ………もう無理、降参!」


 さっきまで悪意の満ちた顔をしていたカーズだが、本当に諦めたのか柔和な表情に変わる。

 手に持つ杖を放り投げ、諸手を上げている。


 …え?

 というか勝手に終わった気にならないで欲しいのだけど。


 俺らは、まさかの手の平返しを受けて混乱するのであった。


「貴様…!不利になるや否や、降参するとはそれでも魔王か!いや、それともまだ何かを企んでいるのか?」


『カルマよ、メンドクサイのでこの者は魂ごと消滅させようぞ』


「うん、私もさんせーい。あのクロノスっていう魔王もそうだけど、このカーズも胡散臭いからね。油断は禁物だと思うんだ。ね、ディアナ」


「そうですわね。このまま生かしておいては、またマスターに害を成すに違いありません」


 4人の言う事は、尤もだ。

 俺もそう思う。

 これだけの事を俺達に仕掛けておいて、勝てないとなったら降参では調子が良すぎる。

 ここは心を鬼にして、止めを刺すのが今後の為だ。


「あー、そりゃあそうなんだけどさ。ぶっちゃけ、切り札をなくした時点で詰んでいるんだよねー。

 僕としては自分の命なんかはどうでもいいのだけど、これ以上暴れて町に被害を出したくないんだよねぇ…」


 そう言われて周りを見ると、土地が無茶苦茶になっていた。

 いや、元々そっちが仕掛けて来たんだし謂われる事はないんだが、それでもこの国の住民には関係ない話である。


 まさか魔王が真っ当な理由で降参してくるとは思わなかったが…。

 だとしても、それこそ魔王が相手なのだから最後まで油断するべきじゃないか。


「降参という事は、俺らに投降するという事で良いんだな、カーズ」


「あー、勿論さ。これ以上やっても、僕に勝ち目が薄いからやる意味もないしね」


「主よ、このままこの者の言を信じるのは危険です」


「だよなぁ」


 カーズの周りをカルマ、ニクス、ヘカティア、ディアナが油断なく取り囲む。

 いつ再度攻撃を仕掛けて来ても対応出来るように、攻撃の構えは解いていない。


「パパ!」

「「ユートさん」」


 リンとサナティ、アリアもサーヴァントが完全に消滅したのを確認すると俺の傍にやって来た。

 MPの大部分を消費したようで、少し顔に疲れが出ている。


「3人とも良くやってくれたな。お陰でカーズを追い詰めるのに成功したみたいだぞ。

 降参すると言ってきているから、実際アイツもかなり消耗したようだよ。

 しかし、このままと言うわけにはいかないんだが…」


 降参すると言っているカーズの処遇に困り顔になってしまう。

 そんな俺に、すかさずアリアが提案をしてきた。


「それなら、『誓約オース』により魂の宣誓を行ってはどうでしょう?」


誓約オース?それをやると、どうなるんだ?」


「『誓約オース』とは、戦争で勝利した側が負けた相手国の代表に対して二度と歯向かわないように魂の宣誓をする事なのです。それを行ったあとは、敵対行動を取ろうと考えただけで魂に苦痛が与えられ、弱い者ならそれだけで死に至る、強力な契約なのです」


 すぐにそんな事を思いつくとか、流石は王族だな。 

 なるほど、まえにカルマがヘカティアとディアナに掛けた契約と同じ様なものか。

 流石に魔王でも、それだけの制約が掛かれば簡単に裏切るとかは無いか?


「カルマはどう思う?」


「なるほど。誓約オースであれば、主とカーズとの間でも成立します。それならば、しばらくは安心出来るかと」


 ()()()()()か。

 ヘカティアもディアナも今は俺との主従契約が優先されているため、カルマが掛けた契約は切れている。

 同じように、俺よりも上位の者に解除されてしまえば、また襲ってくる事も可能という事か。

 ただ、その場合は俺以上に危険な相手に従う事になるので、カーズにもメリットは少ない様に見えるな。


 よし、決めた。


「呪詛王カーズ。俺に降参するというのであれば、誓約オースを受けて貰うよ。

 もしそれが嫌ならさ、ここで消滅して貰う事になるけど…。どっちがいい?」


 カーズの調子に合わせて、軽い感じで言ってみる。

 ここで断られたら戦闘再開になるんだけど、多分そうはならないと思う。

 断るつもりなら、降参なんかする前に逃げてしまえばいいだけだからだ。

 カーズなら、そのくらいやれなくはないだろう。


「う~~ん。困ったな。

 それを持ちかけられるとは思っていなかったなぁ。

 ここの王の僕がそれを受けちゃうと、色々と問題なんだけどなぁ…。

 それ、どうしても受けないとダメ?」


「うん、駄目」


 爽やかな笑顔で、そう返す。

 ぶっちゃけて言うと、カーズ本人には特段恨みはない。

 あるとしたら、グラムとかだろうけど。

 俺には関係ないのだ。


 そもそもの目的は、ヒョウ達の救出なのだから。

 その首謀者は、俺に恨みを持ったロペの仕業。

 もちろん、その裏でこのカーズが糸を引いていてもおかしくないのだけど、どうもそのように感じない。


 カーズが言ってた通り、ロペが独断でやったと言われた方が納得いくのだ。

 なぜなら…。


「うーん、しょうがないか。

 一つ確認したいんだけどさ、君はここの王様になる気はあるのかい?」


「は?いや、無いよ。嫌だよ、そんな面倒な事」


「え、本当?

 じゃあ、君に敵対しない代わりに僕がここの王様のままでいいって事かい?」


「ああ、元よりそのつもりだよ。

 代変わりされたら、誓約オースした意味がなくなるだろ。

 その代わり、今後は部下がやったとしてもお前の責任だからな」


「いいよ、それならその誓約オースを受けよう。

 僕は、この国が平和で僕が楽しく暮らせれば他はどうでもいいからね」


 やっぱり、このカーズは外の世界に興味を持っていない。

 これだけの実力を持ちながら、この大陸全土を支配していないのはおかしいと思っていた。

 それに、最初からカーズだけは兵士以外の民が死なないように配慮していたように見える。


 つまり、彼はこの国の民は大事にしているが、それ以外には興味はさほどないという事なんだろう。



 ──


 目を閉じて、お互いの手の平を合わせる。

 周りには俺の仲間達が、取り囲む形を俺達の様子を心配そうに伺っていた。


「「誓約オース。ここに、カーズとユートが魂の宣誓を行う」」


「我、カーズは、汝、ユートに敗北を認め、決して敵対しないと誓う」


「我、ユートは、汝、カーズの敗北を受け入れ、ここに誓約を結ぶ」


 すると、二人の間に一つの魔法陣が創り出された。

 魔法陣から光が溢れると、紋様のようなものが浮かび上がり、それがカーズの胸のあたりに吸い込まれていく。

 カーズの胸のあたりが光り、そして消えた。


「これで、誓約オースは為されました。その証が、カーズの胸に刻まされている筈です」


 自然に皆の視線がカーズの胸にいく。

 カーズは、何の気なしに胸元を開けて自ら確認をしていた。

 何と気なしに見ると、割と大きなふくらみの上にしっかりと刻印がされているのが分かった。


 …んん!?

 なんで、胸にふくらみがあるんだ!!?


「なるほど、こういう風になるんだね。僕は呪詛のエキスパートだけど、呪いとは少し違うみたいだね…、って僕の胸をみて目を丸くしてどうしたんだい?」


「お前…、女だったの??」


「あれー、僕の色気にやっと気が付くなんてとても鈍いんだねぇ~。

 僕は、歴とした女の子だよ?

 男だと思ってただなんて、あー傷つくなぁ~、クフフッ」


 いかんいかん、あまりの衝撃に口がぽかんと開いてしまった。

 予想してなかったので不意を突かれた形だった。

 取り合えず、目線を外そうとしたら…。


「ほ~ら、これでハッキリ見えるかな~?」


 と悪戯っぽい笑顔を見せて、両手で胸を大きく開いて見せてきた。


『カーズ!主様を、誑かそうなどと良からぬ事を考えているなら、ここで誅殺しますよ!』


「パパを誘惑するなんて、許さないんだから!」


「そうです。その程度大きさなら私の方が…!」


 こらカーズ、余計な混乱を起こすんじゃない。

 途中、サナティがとんでもない事を言い出したけど、ひとまずスルーだ。

 こういう時は、彼に任せるに限る。


「カルマ…」


「承知」


 カルマがそう言うと同時に、カーズの真上に強力な斥力が発生する。

 無防備な状態で真上から押さえつけられたカーズは、そのまま『ぎゃんっ』といいながら地面に押しつぶされた。



 ───

 ──

 ─



「で、この先君たちはどうするんだい?」


 場所は、カーズの居城にある応接間。

 応接間と言っても、パーティー出来るんじゃないくらい広い。


 そこにある豪奢な応接テーブルに備え付けられたソファに座りながら、話をする事になった。


 あの後、『いや~、冗談冗談!ちょっとからかっただけだよ~』と言ってすぐに復帰したカーズが、ちゃんと話をしないかと言ってきたので、ここにお邪魔した次第だ。


 ここには、俺と聖女の3人とセツナ。

 あとは俺の護衛としてカルマ、ニケ、ディアナ、ヘカティア、ニクスがついて来ている。

 ちなみに魔獣の姿だと大きすぎるので、全員が人化している。


「とりあえず、今回の事は謝るよ。ロペが勝手にやってた事だったけど、面白そうだから放置していたんだよね。

 まさか、サーヴァントを倒せるとは思っていなかったから、びっくりしたよ」


「あのサーヴァントは、マジでヤバかったぞ?というか、俺らが勝てなかった場合は、お前の民も只では済まなかったんじゃないのか?」


 カーズは物々しい恰好からうって変わってゴシックワンピースに着替えて来た。

 さすがにその恰好だと女性だとわかるが、今度はさっきまでと同一人物とは思えなくなる。

 しかし、俺には神眼があるので別人だと見紛う事は無い。


「あー、それはねぇ。…ネタをばらしちゃうとさ、あれは劣化版。

 君たちが止めなくても、半日もすれば自壊して消えてしまうんだよね」


「はあぁっ!?」


「あっはっは、びっくりしている?

 だってさ、あんなもの本気で召喚したら、この国滅ぶからね?

 もしやるんだったら、他人の国で召喚するよぉ~、クフフッ」


「じゃあ、最初からコケ脅しって事か」


「ううん、それは違うかなぁ。

 あの状態のサーヴァントでも、人間の国くらいなら1日で滅ぶんじゃない?人間は弱いからさ。

 …でも、その人間の国から来たんだよね?君、本当に人間なの?」


 優雅に紅茶を啜りながら、片目だけ器用に開いてこちらを覗き見るカーズ。

 その所作だけ見ればどこぞのお嬢様なのだが、口調と姿が合っていない。

 それだけでどうも調子が狂わされる。


「人間だった筈さ。『覇王』とか良く分からないものにされるまではね」


「ふーん、君は色々変わっているんだね。

 でもまさか、自分の国に覇王が来るなんて思っても居なかったな~。

 おかげで、数百年ぶりに楽しかったけどさ」


「もしかしたら死んでいたかもしれないのに、随分余裕だな」


「えー?いやぁ、やろうと思ったらもうちょっとやれたよぉ。

 僕の本気は、まだまだ先にあるからね」


「ふん、今更負惜しみか?魔王を名乗る割に小物だな」


 最後にカルマに言われて少し不服そうな顔をするカーズ。

 しかし、その挑発には乗らずに素直に答えた。


「うん、負けたのは僕だからね。そこは否定しないよ。

 そもそも、自国で戦争なんてするもんじゃないんだよぉ。

 ロペもなんで不利になるような戦いを仕掛けたんだか…、次はもっとしっかり調整しないとだなぁ」


「領内じゃなかったら、もっと違ってたと?」


「そうだね…。これでも、遥か昔は中央の魔王と互角だったんだよ。

 でも僕ら魔王が本気で戦うとさ、辺りが跡形もなく吹き飛ぶから~。

 戦いに勝っても、国民が全員死んじゃったら誰が僕のお世話してくれるのさ!って話だよね~」


 と、出されたクッキーを頬張りながら話すカーズ。

 あまり行儀が良くないが、いつもの事なのか誰も咎める者はいない。

 そんなカーズの傍には、さっきからメイドさんやら執事らしい人がひっきりなしに世話をしている。


 でも、なるほどなと思った。

 カーズの言う事は尤もな話で、俺も共感する話だ。

 話を聞きながら、屋敷にいる今の家族を思い浮かべていた。


「──じゃあ、そろそろ本題にもどろうか。

 僕に勝った君たちは、何を求めるんだい?」



いつもお読みいただいてありがとうございます!


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評価★★★★★をチェックいただけると今後の励みになります!

是非、よろしくお願いいたします。

ブックマークもとっても嬉しいです、ありがとうございます!


これからまだまだ続きますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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