最終話 たとえどんな世界でも
「あんまり外に出なかったから気が付かなかったけど、この世界もまた、俺たちの世界にそっくりなんだな」
私達の眼下にはいつもの街並みが広がっている。空にいるのだから遮るものは何もなく、まさに絶景だ。
「うん、学校も元の世界と同じ人達が通ってたよ。誰をカップルにすれば良いんだろ」
「あー、そういうことか」
「どうしたの?」
「この羽根と頭の輪っか。きっとキューピッドってことなんじゃ無い?」
なるほど、神様からは説明はなかったけど、この世界を出る方法と今の姿を照らし合わせるとそういうことなのかもしれない。
「あー。でも、私誰かの恋を手伝うなんてしたことないや」
「そうだね。誰と誰ならくっついてほしいかせーので言ってみようか」
私は少しだけ考えたのだが、すぐにベストカップルになりそうな2人を頭に思い浮かべられた。
「おっけー。せーの」
「「瀬戸 (くん)と丸井さん」」
昴くんと声と意見が揃ったのが嬉しくて私は笑った。
でも、昴くんはちょっと真剣な表情になってしまった。
「やっぱり、俺に聞いてきた感じだとそういうと思った」
昴くんは私に意見を合わせたってことだろうか。
どういうことだろうか。
「言った手前なんなんだけどさ。あの2人より、俺はカップルにしたい人が居るんだ」
「ま、あの2人は私達が何もしなくてもくっつくか。うん、わかった。昴くんがカップルにしたい人ってだれ?」
昴くんは私がそういうと笑い出した。
「左凪さん。君の異世界生活観てたけどさ、左凪さんは自分に自信がないよね。後、勘違いも多いよ」
「えっ!?」
私は急にけなされたので少々腹が立ち、言い返す。
「なにさ、私だって昴くんの異世界生活は観てたよ!昴くんは調子に乗りやすくて、あと、鈍感だよ!」
私は言い返してやったつもりだったのだけれど、昴くんは私の言葉を聞いても優しげに笑っている。
「そっか。左凪さん、さっき神様が言ってた中で、俺嬉しくてたまらない言葉があったんだ『君達は記憶が無くてもお互いを想い合い、好きだと思うことが出来た』ってとこさ。俺がカップルにしたいのは、君と俺だ」
昴くんはそういうと私の手を取り、空へと急上昇していく。
「左凪さん。君は自信が無いかもしれないけど、君の事が大好きな人だっているんだ。異世界に行ったって、君の異世界生活を観たって、記憶が無くなったって君が好きになった。きっと、たとえどんな世界でも、俺は君を好きになる!俺と付き合ってください!」
昴くんは真剣な顔でこちらをじっと見ている。
昴くんを好きだと気付いた時からずっと私から言いたかった事だったのに、先に言われてしまった。
そうなのだ、昴くんは鈍感なだけで、丸井さんに好きだって言った時だって私が素で対応していた記憶を無くしている時だって、私のことを好きでいてくれたんだ。
「……私だって、お調子者だなぁとか思ったし、昴くんは努力の方向性がおかしいけど、けど、昴くんが好きです。……さっきの申し出、喜んでお受けします」
こうして私は、昴くんと空を飛びながら告白を受けるなんてすごい思い出を作ってしまった。
「ごーかーく!よし、元の世界に戻してあげよう。これから君達は様々な人生の壁を乗り越えていかなきゃならない。君達は両想いになれたからこの異世界生活の記憶は元の世界に戻っても消える事はない。でも、この異世界で全ての悪い所が見えたわけじゃない、それに全ての良いところを見たわけでもない。相手の悪いとこも良いとこも認めて、これからも愛し合っていってね」
神様の声が聞こえ、辺りの景色が徐々に変化していく。
変化していく世界の中でも、私は昴くんの手を握りしめて離さなかった。
「二人には僕からの祝福をあげよう。お互いの事を愛している限り、他の人たちよりほんの少しだけ幸せを感じる出来事が増えて、ほんの少しだけ、笑える場面が多くなる祝福を」
身体の芯がほんのりと温かさを感じ、辺りの景色は空の上ではなく、校舎裏の樹の下に私達は立っていた。
—内海昴—
校舎裏の樹を見たら、長いような短い異世界生活から帰ってきた実感が湧いた。
目の前には想い人が俺の手を握りしめ立っている。
俺はなんだか恥ずかしくて、恥ずかしさを誤魔化せるように話した。
「えっと、帰還おめでとうございます」
左凪さんは、キョトンとした顔をしながら、お互いにですね。と言った。
「あー、では改めまして……」
異世界では告白をして受けて貰えたが、この世界でもう一度好きだと伝えたくて、俺はもう一度告白をする。
「左凪さん!俺と結婚を前提に付き合ってください!」
「……昴くんは本当に面白いな。告白から飛ばすねぇ」
俺の告白に左凪さんは、満足そうに細い眼をさらに細め楽しそうに笑った。
「その申し出、喜んでお受けします」
人を好きになって、がむしゃらになって、異世界でドラゴン倒しちゃったりなんかして……変な努力ばかりだったけど、左凪さんにも努力の方向性が間違ってるなんて言われたけど、でも続けてよかった。
どんな努力も無駄じゃない。
これからどんなことが起きたって、左凪さんのためにきっと俺は頑張れる。
頑張っていれば、努力はいつか身を結ぶんだ。
おわり。




