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たとえどんな世界でも  作者: 進藤 真道
第2章 付き合う為に剣を振れって!?……俺の努力は正しいの?
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第22話 修羅院の求めたもの

 —内海 昴—


 改良型“りんグ„は凄かった。

 友愛で起動した改良型“りんグ„は好きな気持ちが消えていくのがわかった。でも、緩やかに消えていくこの気持ちを手放したくないと思うと、どんどん新しく愛しいと思う気持ちが溢れ出てきた。

 その力のおかげで、俺はまだ動けた。


 ハラコウに着くと、瓦礫の山の中にポッカリと1つ穴が開いていた。

 おそらく先程の光の玉が通った道だ。

 穴を覗くと下は見えなかったが、俺は躊躇なくその穴を飛び降りる。


 数秒を空中で過ごし、俺は穴の底に辿り着く。穴はかなり深かったようだが足に痛みはない。

 たどり着いた穴の底には、電気が通っているのか、明るかった。

 辺りの景色は、液体が満たされた筒の中にモンスターの死体が入ったモノ、それに繋がる電子機器類で埋め尽くされている。

 そんなゴチャゴチャした空間の中に、ヨレヨレのスーツに身を包んだヒゲも髪も伸ばしっぱなしのだらしない男が一人立っていた。

 男はこちらをまじまじと見つめている。


「ドラゴンの力を追ってきたか……ようこそ少年、私の部屋へ」


 男の声は、ドラゴンの口から聞こえてきた声と同じもので、頭の上には文字が“表示„されている。

 [BOSS!!この人を倒したらこの世界から出られます]

 商店街に初めて行った時にすれ違ったおっさんだ。


「ドラゴンを動かしてたのはおっさんか。おっさんは何者だよ」


 俺はおっさんの事情が気になった。

 なぜあんな凶悪なモノを操って人を襲っていたのか。なぜ俺くらいの年の人間が気にくわないのか。なぜ“愛„の力を知っているのか。

 このおっさんへの疑問なんていくらでもある。でも何よりもこのおっさんはただの人に見えたんだ。

 だから殺し合いをする前に、なぜ普通のおっさんがこんなことをしているのか、おっさんが何者なのかが知りたくなった。


「さっき自己紹介は済ませたつもりだったんだけどなあ。私は修羅院の研究を継ぐ者——」

「——そこもよくわからないんだよ。おっさんの事はよく知りたいんだ。もっと詳しく話してくれないか。何もわからないまま人は切りたくないんだ……これからどうせ、戦うだろ」


 俺の言葉におっさんは高笑いする。

 おっさんは笑い終わる事もなく、上機嫌で俺の言葉に答え出した。


「いやー、人生ってやつは本当にクソだね。最近私は誰かに自分の気持ちをわかってもらいたいと思ってたんだよ。それが、久し振りに身の上話を聞いてくれる人間が今から殺す相手になるなんてね」


 おっさんの言葉から、ドラゴンの口からでた言葉と同じ殺意を感じる。

 しかし殺気を振りまきながらも話を続けた。

 誰かに話を聞いて欲しかったのは本当なのかもしれない。


 ◇


 おっさんの自分語りは十数分に及んだ。

 その内容で俺はおっさんの心は壊れているのだと理解した。


 異世界転移が社会問題になるまで、おっさんはただのサラリーマンだった。おっさんの家族は幸運にも誰一人欠ける事なく、異世界転移に巻き込まれなかった。やがて住民が減っていったこの町で、おっさんは町長のような存在になる。それから献身的に業務をこなしていき、おっさんはより大きなコミュニティの長になった。県知事の様なものだろう。修羅院に力を貸すかどうかの超世界会議にも参加しないかと誘われさえしたそうだ。

 社会が混乱する中で真面目に献身を続けたおっさんには人望まであったようだ。修羅院のモンスターが溢れた、どこもかしこも危険な世界になろうともその真面目な姿が変わらなかったのだろう。

 そんな世界でモンスターがこの近隣に多く出現する事に気が付いたおっさんは、その出現場所を探した。

 そして、ハラコウが怪しいと思ったおっさんは一人でこの地下施設を見つけ出した。


 この施設には最初、無惨剣・修羅院の死体があったらしい。ここが彼の研究施設でモンスターの産まれた場所だったんだ。

 おっさんは正義感からこの施設を調べ上げた。そして、修羅院の研究に誰よりも詳しくなった。


 修羅院は繁殖機能を持つ人型人口生命体の研究と言っていたが、元々修羅院は死んだ恋人を生き返らせる研究をしていたらしい。そして、その研究の中で修羅院は“愛„に力がある事に気が付いた。でも“愛„を生物の創造の観点から研究する内に、力の限界を知る事になる。“愛„で死人は蘇らなかった。

 修羅院は恋人の死に絶望し、この世界の奇跡の力に希望を持ち、そしてまた絶望した。


 恋人が死んだ時も世界を恨んだ。しかし、力が無かった。でも奇跡の力に絶望した修羅院には力があった。研究の末に得た、歪みきった“愛„と言う名の奇跡の力が。彼は恋人のいないその無価値な世界を消そうと考え、生きている全ての人間を殺そうとした。

 その計画こそがモンスターの創造に繋がる。


 異世界転移による世界の混乱は彼に味方した。彼はそこで研究を重ねた“愛„による生物の創造を成功させる。

 そして、進化していくモンスターのデータを取っていた修羅院は、彼の産み出したモンスターに殺されたようだ。


 修羅院は世界の破滅を望んだんだ。だから彼はその結果を見届けるために、最後の人類として生き残るために、モンスターに殺されるわけには行かなかった。

 修羅院はモンスターを制御し自決させるプログラムを、初期型のモンスターに絶対的優性遺伝として組み込んでいた。

 その弱点とも言える遺伝子は全世界のモンスターの中に、間違い無く残っているらしい。

 しかし、そんなものがあっても上手く使わなければ意味が無い。修羅院は研究に夢中になり過ぎ、引き際を間違えたんだ。


 おっさんはこれらの事実を、この施設に残された資料から見つけ出した。

 “愛„の力など信じられなかったが、モンスターには弱点があるのだと知って歓喜した。

 急いで自宅に戻った。自宅に戻る最中、町にはやけに人が沢山いた。町の知り合い達の顔には笑顔が見えた。よくはわからないが世界が自分の発見を祝福しているかのようにおっさんは感じた。なぜ人が突然増えたのかを気にはしなかった。

 おっさんが自宅に着くと、愛する妻と娘と見知らぬ少年が一人いる場面を目撃した。

 少年はおっさんに気付く事なくリビングの窓から考えられないほどのスピードで出ていった。娘と同じくらいの年頃に見えた。手に剣を持ち、剣からは血が滴り落ちていた。

 妻と娘は死んでいた。


 おっさんは妻と娘を殺したであろう少年を追ったが、すぐに見失った。

 呆然と町を歩く日々が続いた。

 そして世界の変化に気付いた。異世界転移と勇者の事を知った。そして理解した。

 妻と娘を殺したあの少年は勇者だ。


 勇者が結界を張り、町の復興は進み人々の笑顔が増えた。しかし、異世界へ行かなかった人々の性格は卑屈になっていった。力に怯え、隣人を刺激しないようにコソコソと生きるようになった。


 おっさんはここで決意する。

 この世界はもう腐り切ってしまっている。修羅院の研究を継ぎ、勇者達に勝てるモンスターを創り出し、この世界から一人残らず人類を消してしまおうと。


 おっさんはそれが死んだ家族の、この世界のためだと信じている。修羅院と同じ歪みきった“愛„の力で生物の創造を行い。あのドラゴンを作り出したんだ。

修羅院は死んでいた

修羅院とおっさんは歪んだ“愛„を武器とする

内海昴は真っ直ぐな“愛„でその愛と戦う事となる

次回『たとえどんな世界でも』

第2章 23話

力の融合


“愛„の力が知りたければ次話も読め

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